SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成23年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 利益管理システムの改善に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 C社は首都圏に50店舗をもつ総合スーパマーケットチェーンで,店舗ごとの利益管理を行っている。近年,業績の悪化に伴い,利益管理の強化に取り組むこととなり,経営企画部の主導によって,現在の利益管理システム(以下,現行システムという)の改善を行うことを決定した。 〔C社及び現行システムの概要〕 (1) C社の各店舗はビルを一棟借りしている。各店舗には3桁の一意な店舗番号が付与されている。 (2) 各店舗は,部門(生鮮食品,加工食品,紳士服,婦人服,子供服,日用品,家電,寝具,店舗事務,店舗会計など)ごとに場所が分かれている。各部門には3桁の一意な部門番号が付与されており,上位1桁で売場部門か非売場部門かを区別している。また,売場部門ごとにレジを設置してあり,商品の精算はその商品を扱っている売場部門のレジで行っている。 (3) 部門ごとに,商品売上高から仕入原価を引いた粗利から,当該部門の販売員の人件費及び売場家賃を減じた額を部門責任利益として,部門の評価に活用している。 (4) 各店舗では,部門責任利益の合計から,店舗共通経費及び本社から等分で配賦される全社経費を減じた額を店舗責任利益としている。 店舗共通経費には,部門単位で発生する物流費用と,店舗単位で発生する水道光熱費,駐車場賃料及び店舗管理費用が含まれる。店舗管理費用には非売場部門の家賃や人件費などが含まれる。また,全社経費には,広告宣伝費と,本社費用としての本社の人件費と情報システム費用などが含まれる。 〔現行システムの問題点と改善案の作成〕 現行システムは,業績が好調だった時期に,全社経費や店舗共通経費の取扱いなどの厳密な検討を行わずに前述の仕様で開発された。しかし,一部の店舗が赤字となり,不採算部門を把握しようとした際に,当該店舗の全ての部門の部門責任利益は黒字であり,どの部門で採算が悪いのかが分からない,といった事態が発生した。 経営企画部では,部門責任利益をより厳密に把握するために,費用計上方法を変更することを決定し,それに合わせて現行システムを改善することにした。改善後のシステム(以下,新システムという)の要件を次のように決定した。 (1) 店舗共通経費及び全社経費の全ての実績(以下,費用実績という)を各売場部門に配賦するように改める。現在の部門責任利益から,配賦された費用実績を減じた額を新たな部門責任利益として,部門の責任を明確にする。当該店舗の店舗責任利益は部門責任利益の合計とする。 (2) 全社経費は,店舗ごとの売上金額の合計や客数の合計に応じて各店舗に配賦する。 (3) 各店舗の店舗共通経費及び(2)で各店舗に配賦した全社経費を,部門ごとの面積,客数,売上金額などに応じて各売場部門に配賦する。 これらの配賦の基準となる面積,客数,売上金額などを総称して配賦基準と呼ぶ。また,費用が全社で発生するか,店舗単位で発生するか,部門単位で発生するかの区分を費用発生区分と呼ぶ。費用発生区分が“部門”の場合は,直接当該部門の費用として計上されるので,費用の配賦は行わない。費用計上方法の変更内容を表1に示す。 なお,広告宣伝費は,厳密には広告1本ごとに恩恵を受ける部門に費用を配賦すべきだが,対応するためには広告宣伝業務の大幅な変更を伴うので,客数に応じて配賦する方法とした。 表1 費用計上方法の変更内容 経営企画部からは,今後,費用分類が増える可能性があること,広告宣伝費などは配賦基準を変更する可能性があることを考慮し,それらに柔軟に対応できるシステムにしてほしい,という要望が付け加えられた。 〔新システムの設計〕 新システムの要件を基にして,情報システム部で新システムの設計を行った。 (1) 客数計算 C社では,売場部門のレジから送信されてくる売上実績ファイルに,属性として,店舗番号,部門番号,レシート番号,商品コード,売上金額などを保有しており,レジでのレシートの発行枚数(以下,レシート枚数という)が分かる。新システムでは,このレシート枚数を客数とみなして処理を行う。レシート枚数は,実際に店舗を訪れた客数(以下,来店客数という)とは異なるが,新たな仕組みを作らずに来店客数の近似値が得られることを,経営企画部に説明し,了承された。 (2) 構成比計算 毎月の会計処理終了後,当月分の売上実績ファイル,部門別面積ファイルから,3種類の配賦基準に基づいて各部門の配賦比率を計算し,結果を構成比ファイルに出力する。構成比には,店舗合計に対する比率を表す店舗内構成比と,全社合計に対する比率を表す全社構成比がある。構成比は四捨五入して小数第4位までを求める。 (3) 部門費用計算 毎月の会計処理で確定した費用実績ファイルから,配賦指示ファイルに定義した費用分類ごとの費用発生区分及び配賦基準に基づいて,構成比ファイルを用いて各部門に配賦する金額を計算し,結果を部門費用ファイルに出力する。 配賦指示ファイルを設けてコントロールする方式を採用したのは,費用分類の追加や配賦基準の変更に柔軟に対応するためである。 構成比計算,部門費用計算の処理概要を図1に示す。 図1 構成比計算,部門費用計算の処理概要 主要ファイルとその属性を表2に,それぞれの処理の手順を表3に示す。 表2 主要ファイルとその属性 表3 構成比計算,部門費用計算の処理の手順 〔テスト結果に基づいた修正〕 新システムのテストを行ったところ,全店舗の店舗責任利益の合計が,現行システムの全店舗の店舗責任利益の合計と一致しない事象が発生した。 新システムの全店舗の店舗責任利益の合計を現行システムと一致させるために,部門費用計算の処理において,特定の部門の配賦費用に特別な調整を行う処理を追加して対応した。 設問1 経営企画部の要望に基づき,新システムでは配賦基準の変更に柔軟に対応できる設計を行った。新システムにおいて,費用分類の配賦基準を既存の別の配賦基準に変更する場合に必要となる修正の内容を35字以内で述べよ。 設問2 〔新システムの設計〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) レシート枚数を客数として使用した場合,実際の来店客数より多く計上されるケースと少なく計上されるケースがある。それぞれのケースを一つずつ挙げ,その内容を35字以内で述べよ。 (2) 配賦指示ファイルに必要な属性を三つ挙げ,主キーを下線で示せ。 (3) 表3中の[a]~[d]に入れる適切な字句を答えよ。 設問3 表3中の構成比計算の配賦基準“面積”の作成において,構成比ファイルを作成する処理で面積の合計を求める際に,売場の部門だけを対象としている理由を40字以内で述べよ。 設問4 〔テスト結果に基づいた修正〕において,新システムのテストで全店舗の店舗責任利益の合計が現行システムの合計と一致しなかったことについて,考えられる原因を30字以内で述べよ。ただし,システムが仕様どおりに正しく動作することは確認できているものとする。
表1 費用計上方法の変更内容。販売員人件費・売場家賃・水道光熱費・駐車場賃料・店舗管理費用・物流費用・広告宣伝費・本社費用の各費用分類について、費用発生区分、現行システムの費用計上方法、新システムの配賦基準(なし・面積・客数・売上金額)と売場部門への配賦方法を比較した表。
表1 費用計上方法の変更内容。販売員人件費・売場家賃・水道光熱費・駐車場賃料・店舗管理費用・物流費用・広告宣伝費・本社費用の各費用分類について、費用発生区分、現行システムの費用計上方法、新システムの配賦基準(なし・面積・客数・売上金額)と売場部門への配賦方法を比較した表。
図1 構成比計算,部門費用計算の処理概要。①構成比計算では売上実績ファイルと部門別面積ファイルから構成比計算を行い構成比ファイルを出力する。②部門費用計算では費用実績ファイル・配賦指示ファイル・構成比ファイルを入力して部門費用ファイルを出力する。
図1 構成比計算,部門費用計算の処理概要。①構成比計算では売上実績ファイルと部門別面積ファイルから構成比計算を行い構成比ファイルを出力する。②部門費用計算では費用実績ファイル・配賦指示ファイル・構成比ファイルを入力して部門費用ファイルを出力する。
表2 主要ファイルとその属性。売上実績・部門別面積・構成比・費用実績・配賦指示(省略)・部門費用の各ファイルの属性と主キー(下線)の一覧。注で店舗番号・部門番号が特定できない費用実績レコードには999を設定すると記している。
表2 主要ファイルとその属性。売上実績・部門別面積・構成比・費用実績・配賦指示(省略)・部門費用の各ファイルの属性と主キー(下線)の一覧。注で店舗番号・部門番号が特定できない費用実績レコードには999を設定すると記している。
表3 構成比計算,部門費用計算の処理の手順。構成比計算では配賦基準“売上金額”“面積”“客数”の構成比レコード作成手順を示し、空欄a~cを含む。部門費用計算では費用発生区分が全社・店舗・部門の場合の配賦費用の算出手順を示し、空欄dを含む。
表3 構成比計算,部門費用計算の処理の手順。構成比計算では配賦基準“売上金額”“面積”“客数”の構成比レコード作成手順を示し、空欄a~cを含む。部門費用計算では費用発生区分が全社・店舗・部門の場合の配賦費用の算出手順を示し、空欄dを含む。
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検討の前提と対象範囲をそろえる

利益管理に関する検討では、与えられた情報がどの前提と対象範囲に結び付いているかに着目しましょう。用語から内容を補わず、示されている条件と自分の解釈との対応を確かめることが、考えを整理する手掛かりになります。

この問題で問われていること

この問題に取り組む際は、検討の途中で前提や対象範囲の捉え方が変わっていないかを意識してください。判断に使おうとしている情報について、明示された条件に基づく部分と、自分で補っている部分を区別して整理しましょう。

視点

ここでの視点は、検討に用いる前提と対象範囲の一貫性です。自分の解釈を短く言葉にして、与えられた条件との対応を確かめると、判断の土台を整理しやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の前提を、与えられた条件に結び付けているか
  • 対象範囲の捉え方が、検討の途中で変わっていないか
  • 明示された条件と、自分で補った解釈を区別しているか
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解説

本問は、店舗単位で控除していた共通経費を売場部門に配賦し、部門の採算を把握する改善を扱う。配賦指示のデータによる管理、客数の近似、構成比の集計範囲と使い分け、丸めによる総額の不一致を理解することが要点となる。

問題の全体像

C社では、店舗が赤字でも全ての部門責任利益が黒字となり、不採算部門を把握できなかった。現行システムでは店舗共通経費と全社経費を部門責任利益から控除していなかったため、新システムではこれらを各売場部門へ配賦する。公式の出題趣旨では、業務の変更要件を理解し、システム要件の設定、設計・開発、業務要件を満たすかの確認まで行う能力を評価するとしている。各設問は、変更への柔軟性、近似値の限界、配賦計算の設計、総額の整合性を問う。

設問1

〔新システムの設計〕(3)の、費用分類ごとの費用発生区分と配賦基準を配賦指示ファイルに定義する記述に着目する。既存の別の配賦基準へ変更するので、その基準の構成比を使うよう、当該費用分類の設定を変えればよい。公式解答例では、配賦指示ファイルの該当レコードの配賦基準を変更するとしている。35字以内では「配賦指示ファイルの当該費用分類の配賦基準を変更する。」とまとめられる。採点講評では、変動要素をファイルのデータで管理すれば、プログラムを変更せずに要件の変動へ対応できる点を強調している。

設問2(1)(多く計上されるケース)

〔新システムの設計〕(1)では、レシートの発行枚数を客数とみなしている。また、商品はその商品を扱う売場部門のレジで精算する。したがって、一人の客が複数回精算すると、来店した人数は一人でもレシートは複数枚になる。公式解答例では、一人の客がレジで複数回精算し、複数人として計上されるケースを挙げている。35字以内では「一人の客が複数回精算し、複数人として計上される場合。」と、行動と過大計上の関係を示します。

設問2(1)(少なく計上されるケース)

レシート枚数で把握できるのは精算した客であり、来店した全ての客ではありません。来店しても商品を購入しなければ、レシートが発行されず、客数に含まれない。公式解答例では、この未購入の来店客を挙げている。35字以内では「来店した客が商品を購入せず、客数に計上されない場合。」とまとめられる。「来店していること」と「購入せず計上されないこと」の両方を押さえる。

設問2(2)

表3の部門費用計算①では、費用実績ファイルの費用分類と等しい配賦指示レコードを探し、費用発生区分と配賦基準を取り出している。この検索と取得に必要な属性は、公式解答例の「費用分類、費用発生区分、配賦基準」の三つです。費用分類ごとに配賦方法を定義するので、主キーは費用分類となる。答案では費用分類に下線を付ける。費用発生区分は全社・店舗・部門の処理分岐に、配賦基準は使用する構成比の選択に使われる。

設問2(3)(a)

表3では、u1が当該店舗・部門の売上金額、u2が当該店舗の売上金額合計、u3が全社の売上金額合計です。全社構成比は全社合計に対する部門の比率なので、公式解答例では「u1÷u3の値」となる。全社経費を店舗へ配賦し、さらに部門へ配賦する関係を式で表すと、店舗の比率u2÷u3と店舗内の部門の比率u1÷u2の積はu1÷u3になる。採点講評では、この設問は構成比計算だけでなく、部門費用計算の仕様も理解して解く必要があるとしている。

設問2(3)(b)

配賦基準が面積の場合、店舗番号・売場の部門番号ごとの面積を取得し、その合計を求める必要がある。表2で面積を保持しているのは「部門別面積ファイル」であり、公式解答例でもこれがbに入る。同じbが二か所にあるのは、部門の構成比レコードを作成する際と、店舗・全社の面積合計を求める際の両方で、このファイルを参照するためです。

設問2(3)(c)

表3では、m1が当該売場部門の面積、m2が当該店舗の売場面積合計、m3が全社の売場面積合計です。求めるのは全社構成比なので、分子を当該部門の面積、分母を全社の売場面積合計とする。公式解答例では「m1÷m3の値」となる。店舗内構成比として示されているm1÷m2と対比し、配賦する費用の範囲に応じて分母が変わることを確認する。

設問2(3)(d)

表3の部門費用計算③では、費用発生区分が店舗の費用について、当該費用分類かつ当該店舗番号の費用実績を合計している。この費用を同じ店舗の売場部門へ振り分けるため、掛ける比率は「店舗内構成比」となる。公式解答例でもdは店舗内構成比です。全社構成比を使うと分母に他店舗の実績も含まれ、当該店舗の費用をその店舗内へ配賦する処理に対応しない。

設問3

新システムの要件(1)では、店舗共通経費と全社経費の配賦先を各売場部門としている。したがって、面積構成比の分母も売場部門の面積合計に限定する必要がある。非売場部門の面積まで含めると、丸め前でも売場部門の構成比合計が100%に達せず、費用を全額配賦できない。公式解答例では、配賦先が売場部門だけなので非売場部門を構成比計算から除外するとしている。40字以内では「費用の配賦先は売場部門だけで、非売場部門を構成比計算から除くため。」と書ける。採点講評でも、売場部門の構成比合計を100%にするための計算対象の問題として説明している。

設問4

〔新システムの設計〕(2)の「構成比は四捨五入して小数第4位までを求める」という仕様に着目する。各部門の構成比を個別に丸めると、その合計が必ずしも1にならず、費用実績に構成比を掛けた配賦費用の合計に差が生じる。その結果、控除する費用総額が変わり、全店舗の店舗責任利益の合計も一致しなくなる。公式解答例では、構成比を四捨五入して小数第4位まで求めていることを原因としている。30字以内では「構成比を小数第4位まで四捨五入しているため。」とまとめられる。特定部門の配賦費用を調整する処理は、この差額を吸収する対応として理解できる。

学習のポイント

業務要件をファイル属性と処理手順に対応付け、比率の分母・分子と丸めが配賦総額に与える影響を確認する。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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