SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成23年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 購買管理システムの設計に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。 機械部品メーカのB社は,材料・部品などの資材を調達するための購買管理システムを開発中である。 〔購買管理システムの位置付け〕 現在B社は,全社統合生産システム構築の一環として購買管理システムの開発を行っている。全社統合生産システムは,購買管理システムの他に,生産管理システム,在庫管理システムで構成されている。 購買品目検収後の買掛金計上から支払までの管理は,既存の会計システムで行う。 〔B社の購買方式〕 B社の購買方式は,次の三つである。 (1)計画購買方式 生産管理システムの資材所要量計画から出された,資材の購買要求(以下,計画購買オーダという)に応じて購買を行う。計画購買オーダには,購買品目の品番,所要量,所要時期の情報が含まれる。 (2)定量購買方式 在庫管理システムから出された,発注点を割った資材の一定数量の購買要求(以下,定量購買オーダという)に応じて購買を行う。定量購買オーダには,購買品目の品番,数量の情報が含まれる。 (3)都度購買方式 不定期,不定量での資材の購買要求(以下,都度購買要求という)に応じて購買を行う。 〔購買業務の概要〕 購買業務は資材部が担当しており,主な業務として,購買先及び購買品目の選定・契約業務,購買計画業務,発注業務,検収業務,納期管理業務,資材倉庫管理業務がある。 購買計画,発注,検収,納期管理の各業務は,現在開発中の購買管理システムを利用する。図1に,業務の流れを示す。 図1 業務の流れ (1)購買計画業務 計画購買オーダは生産管理システムから,定量購買オーダは在庫管理システムから購買管理システムに連携する。都度購買要求は,資材部で受け付け,入力する。 資材部では,購買要求の状況を見て,購買先,納期,購買単価,発注数量の調整・決定を行い,決定した結果の情報(以下,発注オーダという)を購買管理システムに入力する。ここで,納期は納入予定日である。 購買要求の購買先,発注予定日,納期及び発注数量については,表1に示す発注内容の決定方法で決められる。 なお,一つの購買品目を,複数の購買先候補から選定して購買する場合があり,購買単価も異なることがある。また,一つの購買先から複数種類の購買品目を購買する場合もある。 表1 発注内容の決定方法 (2)発注業務 決定した発注オーダは,発注予定ファイルを経由して発注ファイルに登録され,発注予定日に達したものに対して,資材部の発注担当者が発注指示をして,注文書を発行し,購買先に発注を行う。未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは,発注残として発注ファイル上で管理する。 また,未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは,在庫管理システムにおける入庫予定情報になり,生産管理システムの資材所要量計画で利用される。資材所要量計画は,製品の生産計画に基づいて算出した資材の総所要量に対して,現在の在庫及び今後の入出庫予定を加味して,正味の資材所要量を決めるものである。 (3)検収業務 発注された資材は,資材部所管の資材倉庫へ納品される。B社では,分割納品は認めていない。受入・検品後,倉庫担当が検収入力を行う。納品され検収が完了した発注オーダは,検収済みとして発注ファイル上で管理される。検収後の資材は,在庫の入庫計上と同時に,棚卸資産の原材料勘定に計上される。 (4)納期管理業務 発注済みで未検収の発注オーダの中で,納期に遅れそうな発注オーダについては,資材部から購買先に督促する。 〔購買管理システムの主要ファイル〕 購買管理システムで使用する主要ファイルである,購買先マスタ,購買品目マスタ,単価マスタ,発注ファイルのレイアウトを図2に示す。 購買品目マスタの品目区分は,計画購買方式の対象品目か,定量購買方式の対象品目か,都度購買方式の対象品目かの区分を示す。基準発注ロットは,その品目の発注単位となる数量のことである。例えば,基準発注ロットが100個で所要量が180個の場合,発注数量は200個になる。また,検収日数は,納品されてから検収を完了するまでに掛かる日数のことである。 単価マスタの購買リードタイムは,発注から納品までに掛かる日数のことである。 発注ファイルの発注状態は,発注オーダが現在どのような状態にあるかを示す区分である。 図2 購買管理システムで使用する主要ファイルのレイアウト 設問1 購買計画業務の発注内容の決定方法における,発注予定日,納期及び発注数量の決定に関して,(1)〜(3)に答えよ。 (1)計画購買オーダの発注予定日の決定について,計画購買オーダの所要時期からの算出方法を,40字以内で述べよ。 (2)定量購買オーダの納期の決定について,定量購買オーダの発注予定日からの算出方法を,35字以内で述べよ。 (3)計画購買オーダの発注数量の決定方法を,購買品目マスタの項目名を用いて,30字以内で述べよ。 設問2 発注ファイルに関して,(1),(2)に答えよ。 (1)発注状態において,管理すべき発注オーダの状態が三つある。一つは,“登録されている発注オーダが未発注”の状態である。残りの二つについて,それぞれ20字以内で述べよ。 (2)図1の業務の流れにおいて,購買管理システムから在庫管理システムに渡されるのは,発注ファイルのどのような状態のレコードか。35字以内で述べよ。 設問3 図1の業務の流れにおいて,検収処理後,購買管理システムは検収情報を在庫管理システム及び会計システムに渡す。在庫管理システムは,渡された検収情報に基づいて,実在庫数を算出する入庫処理を行う。会計システムが渡された検収情報に基づいて行う処理を,20字以内で述べよ。 設問4 単価マスタの主キーとなる項目について,図2中の[a],[b]に入れる適切な項目名を答えよ。
図1 業務の流れ。資材部、購買管理システム、関連システム、購買先の間で、購買要求から発注、検収、納期管理までの業務の流れを示す図。
図1 業務の流れ。資材部、購買管理システム、関連システム、購買先の間で、購買要求から発注、検収、納期管理までの業務の流れを示す図。
表1 発注内容の決定方法。計画購買オーダ、定量購買オーダ、都度購買要求について、購買先、発注予定日、納期、発注数量の決定方法を整理した表。
表1 発注内容の決定方法。計画購買オーダ、定量購買オーダ、都度購買要求について、購買先、発注予定日、納期、発注数量の決定方法を整理した表。
図2 購買管理システムで使用する主要ファイルのレイアウト。購買先マスタ、購買品目マスタ、単価マスタ、発注ファイルの項目配置と主キーを示すレイアウト図。
図2 購買管理システムで使用する主要ファイルのレイアウト。購買先マスタ、購買品目マスタ、単価マスタ、発注ファイルの項目配置と主キーを示すレイアウト図。
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業務情報の対応関係を確認する

まず、扱われる情報が業務上の何を表しているのかという対応関係に着目しましょう。用語の印象だけで判断せず、与えられた条件の中で同じ情報が同じ意味で扱われているかを、落ち着いて確認することが大切です。

この問題で問われていること

検討の中心は、情報とその業務上の意味との対応が一貫しているかという点です。どの情報について考えているのかを確かめ、与えられた条件を読み進める間も、その情報の意味を同じ基準で捉えられているかを確認しましょう。

視点

情報の名称と、その情報が業務上表している内容とを分けて捉えます。判断の根拠にするのは名称からの連想ではなく、与えられた条件の中で読み取れる意味です。

確認ポイント

  • 扱う情報が何を表すかを、条件に沿って捉えたか
  • 名称から連想した意味を付け加えていないか
  • 同じ情報の意味を検討の途中で変えていないか
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解説

購買業務の定義を基に、発注日と納期の計算、基準発注ロットによる数量の切上げ、発注・検収の状態管理を設計する問題です。さらに、入庫予定情報の連携、原材料と買掛金の仕訳、品番と購買先コードによる複合主キーを押さえます。

問題の全体像

B社は、全社統合生産システムの一部として購買管理システムを開発しています。生産管理・在庫管理システムから購買要求を受け、発注内容を決め、発注と検収を管理し、在庫管理・会計システムへ情報を渡します。出題趣旨では、購買業務の流れと内容を正しく理解し、処理設計、データベース設計、関連システムとのインタフェース設計に結び付ける能力を問うとしています。用語の定義と処理の前後関係を根拠に、各設問の答案を組み立てることが要点です。

設問1(1)

着目するのは、単価マスタの「購買リードタイム」と購買品目マスタの「検収日数」の定義です。購買リードタイムは発注から納品まで、検収日数は納品から検収完了までの日数です。所要時期に資材を使用できるようにするには、両方の期間を見込んで発注日を逆算します。公式解答例では、所要時期から購買リードタイムと検収日数だけ前の日を発注予定日としています。40字以内の答案は「所要時期から購買リードタイムと検収日数を引く。」とまとめられます。採点講評では、購買リードタイムだけを使い、検収日数を考慮しない解答が指摘されています。

設問1(2)

購買計画業務の説明にある「納期は納入予定日である」に着目します。求めるのは納品される日なので、発注から納品までの購買リードタイムを発注予定日に加えます。検収日数は納品後の期間であり、この納期計算には加えません。公式解答例では、発注予定日から購買リードタイムだけ先の日を納期としています。35字以内の答案は「発注予定日に購買リードタイムを加えた日を納期とする。」とまとめられます。

設問1(3)

購買品目マスタの「基準発注ロット」が発注単位となる数量であることと、100個単位で所要量180個なら200個を発注する例に着目します。必要量を満たし、発注単位にも合わせるため、所要量以上となる最小のロット整数倍まで切り上げます。公式解答例では「基準発注ロットの整数倍になるように所要量を切り上げる。」としています。この表現は指定された項目名を含み、30字以内に収まります。採点講評では、所要量と基準発注ロットの関係の理解不足による計算の誤りが指摘されています。

設問2(1)(①)

発注業務の説明にある「未発注の発注オーダ及び発注済みで未検収の発注オーダは、発注残として発注ファイル上で管理する」に着目します。既に示されている未発注の状態に続くのは、発注を行ったものの検収が完了していない状態です。公式解答例の①もこの状態を示しています。20字以内の答案は「発注済みだが、未検収の状態」です。納品されていても検収前なら、この状態に含まれます。採点講評では、システム上把握していない納品という行為を基準にした解答が指摘されています。

設問2(1)(②)

検収業務の説明にある「納品され検収が完了した発注オーダは、検収済みとして発注ファイル上で管理される」に着目します。未発注、発注済みで未検収に続く三つ目は、検収が完了した状態です。公式解答例の②に沿った20字以内の答案は「納品され検収が完了した状態」です。単に納品済みと書くと検収完了が示されません。受入・検品後に倉庫担当が検収入力を行うという、システム上の状態を確定する処理まで押さえます。

設問2(2)

図1の発注ファイルから在庫管理システムへの矢印と、発注業務の説明にある入庫予定情報の対象を確認します。本文では、未発注の発注オーダと、発注済みで未検収の発注オーダの両方が入庫予定情報になると明記されています。公式解答例も、この二つの状態のレコードを対象としています。35字以内の答案は「入庫予定となる未発注及び発注済みで未検収のレコード」です。未発注分も、決定済みの発注オーダとして今後の入庫予定に含まれ、生産管理システムの正味所要量の計算に利用されます。

設問3

システムの位置付けにある検収後の買掛金計上と、検収業務にある棚卸資産の原材料勘定への計上を結び付けます。検収によって資材を取得したことが確定すると、原材料という資産と、購買先に支払う買掛金という債務の両方が増加します。公式解答例では、会計システムが行う処理を「原材料、買掛金への仕訳計上処理」としています。この表現は20字以内です。採点講評では、買掛金か原材料の一方だけを記述した解答が多かったとされており、答案には両方の勘定を含めることが重要です。

設問4(a)

一つの購買先から複数種類の購買品目を購買する場合がある、という条件に着目します。購買先コードだけでは、どの品目の購買単価なのかを識別できないため、単価マスタの主キーには品目を識別する「品番」が必要です。公式解答例ではaを「品番」としています。図2ではaとbを合わせて主キーとしており、両項目の組合せで単価のレコードを識別します。公式解答例の備考では、aとbは順不同とされています。

設問4(b)

一つの購買品目を複数の購買先候補から選定し、購買単価も異なる場合がある、という条件に着目します。品番だけでは、どの購買先に対応する単価なのかを識別できないため、主キーには「購買先コード」も必要です。公式解答例ではbを「購買先コード」としています。品番と購買先コードの組合せによって、品目と購買先の関係に対応する購買単価や購買リードタイムを識別できます。公式解答例の備考ではaとbは順不同ですが、ここでは解答例の並びに沿っています。

学習のポイント

納品と検収、入庫予定と実在庫を区別し、業務の条件を日付計算・状態管理・会計処理・複合主キーへ落とし込む練習をしましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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