PMプロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ

平成27年度春期 プロジェクトマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 システムの構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 金融機関のA社は、事務センタ内の業務運用の効率向上を図る一環として、現在稼働している事務センタ内の事務のサポートシステム(以下、現システムという)を更改し、新システムを構築することにした。プロジェクトマネージャにはシステム部のB課長が任命された。スケジュールは図1のとおり、今年の3月末に現システムの仕様を凍結した上で、12月末までにデータ移行を終え、来年1月から3か月間の並行運用を行った後、来年4月から稼働を開始する予定である。 図1 スケジュール 〔業務部からの検討依頼〕 プロジェクトは4月末の現時点まで順調に進み、内部設計の終盤に差し掛かっている。ある日、業務要件の取りまとめの責任者である業務部のC課長から、「新システムの業務要件に追加したい項目があるので相談に乗ってもらいたい」という依頼があった。その内容は次のとおりである。 ・今年の4月から手作業で作成し始めた約10種類の帳票について、外部設計の時点で、現行事務マニュアルには反映されていなかったということを、システム部に伝えることを失念していた。 ・これらの帳票をシステム化するという検討が外部設計で漏れてしまった。現在行っている、新システムの入出力操作マニュアルの作成中に、このことに気が付いた。新システムの稼働開始に合わせて、手作業の開始時に追加した要員を削減したいので、稼働開始時期を遅らせずに対応する方法について検討してもらいたい。 B課長はC課長からの依頼について対応方法を検討する前に、外部設計に関して、このような問題が他にはないかどうか確認することにした。そのために、現時点で最新の現行事務マニュアルを用いて、ある作業を行うようC課長に依頼した。また、社内の開発標準に規定された手順に従って外部設計を行ったにもかかわらず、このような問題が起きたことから、①外部設計のインプットとなる資料の確認項目を、社内の開発標準に追加する必要があると考えた。 〔対応方法の検討〕 C課長が外部設計に関する問題が他にないかどうか確認したところ、問題がないことが分かった。そこで、B課長は、システム化の対象とする帳票を増やしたいというC課長からの依頼について対応方法を検討した。検討結果は次のとおりである。 ・この対応(以下、追加開発という)は、当初計画の開発対象部分(以下、当初開発分という)との独立性が高い新規プログラムの開発が大半を占めている。 ・入力項目の追加に伴うマスタファイルの修正が発生する。したがって、既に約3分の2の内部設計が完了している当初開発分について、マスタファイルのレイアウト変更への対応が必要となる。 ・必要な追加要員については、現システムの開発経験者を何とか確保できるめどが立っている。 ・②要員を急きょ追加した場合、開発工数上の手当てはできていても、新システムに関する知識不足から問題が発生し、内部設計が計画どおりに進められないリスクが高い。 B課長は、これらの検討結果から、並行運用期間を1か月短縮して、来年2月から開始することにした上で、次の二つの案について検討することにした。 案1:現在実施中の当初開発分の内部設計の終了時期を、当初計画よりも1か月遅らせる形で作業計画を見直し、内部設計が終了する6月中旬までに追加開発分の仕様を取り込む。その上で、当初計画よりも1か月遅らせたスケジュールでプログラム製造・単体テスト以降の作業を行う。 案2:現在実施中の当初開発分の内部設計、及び次工程のプログラム製造・単体テストは、追加開発分の仕様を取り込まずに当初計画のスケジュールどおり継続する。当初開発分への追加開発分の仕様の取込みは別タスクとして行い、9月中旬までに単体テストを終了させる。その上で、当初計画よりも1か月遅らせたスケジュールで結合テスト以降の作業を行う。 〔両案の比較〕 案1は内部設計が終了するまでに追加開発分の仕様を取り込むので、案2よりも早期に内部設計全体の整合性を確保できることによる、品質面でのメリットがある。一方で、追加開発分の仕様を取り込むことによって、現在実施中の当初開発分の内部設計において、作業の停滞、中断などが発生するおそれがある。 案2は当初開発分について、現在実施中の内部設計を当初計画のスケジュールどおり継続できるというメリットがある。一方で、当初開発分の単体テストまでの作業と、追加開発分の仕様の取込みを別タスクとして行うので、構成管理に関する漏れがないように配慮する必要がある。 B課長は、③案1における、作業の停滞、中断などが発生するおそれがあるという懸念については、ある作業を最優先で行った上で作業計画を見直すことによって解消できると考えた。そこで、案1の方が案2よりも早期に内部設計全体の整合性を確保できることによる品質面でのメリットを重視し、C課長に打診した上で、案1をベースに以降の検討を進めることにした。 〔並行運用の検討〕 次の二つの目的のために並行運用を実施する。 ・利用者が操作訓練を通じて新システムの操作に慣れること ・要件定義と外部設計を通じて業務部と合意した、業務運用の効率向上の目標が達成できることを確認し、稼働開始後の業務運用体制を確定させること そのため、並行運用期間の前半を操作訓練の期間、後半を業務運用の効率向上の目標達成度を確認する期間として想定していた。B課長が並行運用について検討した結果及び対策は、次のとおりである。 (1)並行運用の開始時期を仮に1か月遅らせた上で、C課長の要望に沿うように稼働開始時期を遅らせない場合、並行運用期間が短縮されても並行運用の所期の目的を達成するには、並行運用に向けた準備を周到に行うことが重要である。そこで、新システムの利用方法について利用者に事前に周知し、システムの利用イメージを把握しておいてもらう。これによって、並行運用期間中に新システムの操作に慣れるという操作訓練の目的を確実に達成できるようにする。 (2)当初開発分の外部設計が終了した時点で一度実施している、利用者を交えたウオークスルーを、追加開発分の外部設計が終了した時点で再度実施する。④こうすることで、利用者の認識の相違によって並行運用で混乱が起きるリスクを軽減する。 しかし、このような対策を講じても、稼働開始時期を遅らせない場合は、並行運用の所期の目的を達成できず、その結果、品質面で問題はなくても、稼働開始後に混乱が起きるというリスクが残る。B課長は、これらを踏まえて、C課長から要望があった要員削減の時期については、稼働開始後の状況を評価した上で決定するよう提言することにした。 設問1〔業務部からの検討依頼〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)B課長が、外部設計に関して問題が他にはないかどうか確認するために、C課長に依頼した作業を、30字以内で述べよ。 (2)本文中の下線①で追加する必要があるとしている確認項目の内容を、20字以内で述べよ。 設問2〔対応方法の検討〕について、本文中の下線②における、新システムに関する知識不足から発生する問題とはどのような内容か。30字以内で具体的に述べよ。 設問3〔両案の比較〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1)案2において配慮する必要がある、構成管理に関する漏れを、40字以内で述べよ。 (2)本文中の下線③における、最優先で行う作業の内容を、30字以内で述べよ。 (3)B課長が重視した、案2よりも早期に内部設計全体の整合性を確保できることによる案1の品質面でのメリットを、15字以内で答えよ。 設問4〔並行運用の検討〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)B課長は、並行運用期間が短縮されても、新システムの利用方法について利用者に事前に周知することによって、操作訓練の目的が確実に達成できると考えた。その理由を30字以内で述べよ。 (2)本文中の下線④における、B課長が想定した、利用者の認識の相違によって起きる並行運用での混乱の内容を、30字以内で述べよ。
図1 スケジュール。現システムの仕様凍結から要件定義、外部設計、内部設計、製造・テスト、データ移行、並行運用、稼働開始までの月別工程を示すスケジュール図。
図1 スケジュール。現システムの仕様凍結から要件定義、外部設計、内部設計、製造・テスト、データ移行、並行運用、稼働開始までの月別工程を示すスケジュール図。
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変更とリスクを結び付ける視点

変更管理とリスク対応を考えるときは、変更の背景、影響する範囲、対応後に残る不確実性を順に見比べ、計画全体の整合性を確認する視点に集中しましょう。個々の表現に引きずられないことが大切です。

この問題で問われていること

一つの変更を単独で評価せず、なぜ変更が必要になったのか、その影響をどの領域で受け止めるのか、対応状況を後から追えるかという関係性だけを確認してください。この一点に絞ります。

視点

変更の理由と想定される影響を起点に、リスクの見立て、対応の記録、見直しの契機が互いに矛盾していないかを整理します。個別の手順や結論ではなく、情報のつながりと確認可能性に注目しましょう。

確認ポイント

  • 変更の背景と、影響を受ける対象の範囲が対応しているか
  • リスクへの対応内容と、その判断根拠を後から確認できるか
  • 対応後に残る不確実性を見落とさず、見直す契機が整理されているか
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解説

現行マニュアルに反映されていない帳票の追加を契機に、外部設計の確認、追加開発の計画変更、構成管理、並行運用のリスク対策を検討する問題です。

問題の全体像

A社の新システム開発では、内部設計の終盤に、現行事務マニュアルに載っていなかった約10種類の帳票を追加でシステム化する必要が判明した。出題の狙いは、PMがスコープ変更に対して、既存設計との整合性、工程遅延、要員の知識不足、構成管理、利用者の習熟といった影響を洗い出し、品質と稼働時期の制約を踏まえて対応する力を問うことです。

設問1(1)

B課長は、帳票の追加漏れが外部設計上ほかにもないか確認するため、最新の現行事務マニュアルと外部設計書を突き合わせる作業をC課長に依頼した。最新資料と設計成果物を比較することで、現行業務に存在する未反映項目を網羅的に発見できる。答案は「最新の現行事務マニュアル」と「外部設計書」の突合せを30字以内で示す。

設問1(2)

開発標準に従っていても漏れが起きたため、外部設計の入力資料について、将来変更される予定の有無と、既に発生しているが資料に未反映の項目の有無を確認する項目を追加する。公式解答例でも、この二つの確認が示されている。20字以内では、変更予定と未反映項目の確認を簡潔に押さえる。

設問2

追加要員は現システムの開発経験者だが、新システム固有の知識は不足している。そのため、要員を急に加えると教育に想定以上の時間がかかり、内部設計を計画どおり進められない問題が生じる。公式解答例に沿って、追加要員の教育時間が想定以上に必要になる点を30字以内で具体化する。

設問3(1)

案2では、当初開発分と追加開発分を別タスクで進め、後から仕様を取り込むため、その間に当初開発分へ行った修正の反映漏れが起きやすい。特に、プログラムのバグ対応結果や設計ミスへの対応結果を追加開発側へ取り込めないことが構成管理上の漏れとなる。40字以内では、修正結果の取込み漏れを対象とする。

設問3(2)

案1では追加開発分の仕様を既存の内部設計へ取り込むため、影響を受ける部分と受けない部分を整理しないと作業が停滞する。したがって、最優先で追加開発分の影響を受けない部分を洗い出し、そこから設計を進められるようにする。公式解答例の内容を30字以内で示す。

設問3(3)

案1は内部設計の段階で追加開発分を統合するため、後工程に進む前に設計全体の整合性を確認できる。その結果、上流工程で品質を確保し、後のテストで発生するバグを抑止できることが品質面のメリットです。15字以内では「上流工程での品質の確保」または「テストでのバグ発生の抑止」に相当する内容を選ぶ。

設問4(1)

並行運用期間が短縮されると、操作訓練の時間も減る。そこで事前に利用方法を周知しておけば、利用者は操作訓練の開始時点で内容を理解し、訓練を円滑に始められる。答案では、事前理解によって短い期間でも操作訓練を円滑に進められる因果関係を30字以内で述べる。

設問4(2)

追加開発分の外部設計後にウォークスルーを再実施するのは、利用者が新旧の業務処理や変更内容を同じように理解しているか確認するためです。認識差が残ると、質問や改善要望が多発して並行運用が進まない、または利用者が従来どおり手作業で処理してしまう。公式解答例では、この二つの混乱が示されている。

学習のポイント

スコープ変更時の影響分析と、品質・工程・利用者運用を両立するPM判断を学ぶ。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度春期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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