PMプロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ

平成24年度春期 プロジェクトマネージャ 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 外部設計の状況確認に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 金融機関のA社は、支店の営業活動に使用する営業情報を提供するシステムを構築するために、今年の1月にプロジェクトを立ち上げた。 プロジェクトでは、翌年1月の稼働開始に向けて、図1のスケジュールに従って作業を進めており、現在はプロジェクト計画を策定している。利用部門である支店を統括する営業部は、外部設計を行う3月及び4月が繁忙期に当たる。プロジェクトマネージャであるA社情報システム部のB課長は、外部設計の中で営業部の意向を十分に組み入れて合意形成ができるかどうかがプロジェクトの成否につながると考え、この点に特に留意して、外部設計の進め方を検討することにした。 図1 スケジュール 〔外部設計の進め方〕 外部設計は情報システム部が主体となって行う。また、内部設計から結合テストまでを請負契約で委託する予定のX社から、要員2名が委任契約で外部設計にも参加することで、A社の要員不足を補う。B課長の部下のC主任から、外部設計の進め方について次の原案が示された。 ・要件定義を基に業務面での仕様を整理した上で、設計作業を行う。 ・A社の開発標準には、“内容を熟知し、適切な意見を出すことのできるレビューアが各レビューに必ず参加する”というレビューに関するルールがあるので、外部設計のレビューには、業務を熟知した営業部のメンバが必ず参加する。 ・各業務の関連性及び規模を考慮して、DチームとEチームの2チーム構成とする。チーム間の整合性を確保するには、両チームが共同で成果物のレビューをすることが望ましいが、効率を重視したいので、レビューはチームごとに行い、レビュー結果は他チームに電子メールで伝達する。 C主任の原案に対してB課長は、レビュー結果を電子メールで伝達するだけではチーム間の連携が不足し、設計内容の確認が不十分になることをおそれ、両チーム及び営業部による複数回のウォークスルーを実施することにした。また、営業部のレビューアの大半は、業務を熟知しているが責任者ではない。そこで、B課長は、【a】に関して組織として責任をもってもらうために、【b】を交えた外部設計の最終確認会を、内部設計の開始前に開催することにした。 〔外部設計の状況確認の計画〕 B課長は、外部設計を予定どおり終えるには、プロジェクトの状況を的確に把握し、問題がある場合は早めに対処することが重要であると考えた。そこで、開発標準の終了判定基準に従って、“設計品質の状況”、“問題の解決状況”及び“スコープの変動状況”の三つの観点から外部設計の状況を3月中旬に確認する計画とした。 〔設計品質の状況〕 B課長が、3月中旬に、外部設計の状況を確認した結果は次のとおりである。 開発標準では外部設計に関して、レビューへの投入時間と指摘件数の基準値をプロジェクトごとに設定した上で設計品質を評価し、必要な品質向上対策を実施することを規定している。B課長は、類似プロジェクトの実績を基に、各成果物の1ページ当たりの許容投入時間の下限を3分、1ページ当たりの許容指摘件数の下限を0.16件、上限を0.24件とする基準値を設定していた。また、外部設計の各成果物は難易度に差がないので同じ基準値を適用することとしていた。B課長は、成果物の中で3月中旬までに完成した分の画面定義書、入力チェック仕様書及び帳票定義書のレビュー状況を確認した。確認結果を表1に示す。 表1 外部設計のレビュー状況 B課長は、表1中の網掛け部分に着目し、各チームのリーダに説明を求めた。 Dチームのリーダは、“画面定義書については、対象業務全般を熟知したメンバが作成に関与したので、指摘も少なく、短時間でレビューできたものと評価し、特段の対策は不要と考えた”と説明した。B課長は、基準値の考え方からすると、画面定義書だけ短時間でレビューできた理由の分析が不足していると考えた。そこで、Dチームのリーダに確認したところ、画面定義書のレビューを短時間で行えたのは、類似する画面が多かったので、複数の画面をまとめてレビューできたからであるということが分かった。 一方、Eチームのリーダは、“帳票定義書については、業務を熟知した営業部のレビューアが多忙で、ほとんどのレビューに都度異なる代役が参加したので、その場で意思決定ができなかった。営業部での意見の調整後、再度レビューが必要となったのでレビューへの投入時間が増えてしまった。また、意見を調整した結果、取下げとなった指摘も誤って件数に含めていた。それを除けば許容範囲内である”と説明した。B課長は、Eチームのリーダに指摘件数の再集計及び品質評価のやり直しを指示し、その結果、帳票定義書の設計品質に問題がないことを確認した。また、開発標準のレビューに関するルールが守られずにこのような事態を招いたことへの対策として、“外部設計での【c】を向上させるために、レビューのルールを守るよう徹底してもらいたい”と営業部長に申し入れた。 更にB課長は、指摘内容にも着目し、①外部設計のレビューにおける、要件定義の内容に起因する指摘の発生状況が、類似プロジェクトの実績と同程度であることを確認し、現時点では、要件定義工程に遡るような作業を行う必要はないと考えた。 〔問題の解決状況〕 3月中旬の時点で、外部設計に関する次の二つの問題の解決に手間取っていた。 問題1:DチームとEチームに共通する月次処理に関わる問題である。営業部での意見の取りまとめが必要だが、取りまとめ役が多忙で方針が確定できない。 問題2:Dチームの担当業務の一部(以下、業務D1という)に特化した問題である。検討の中核となる営業部のメンバが急きょ約2週間、海外に出張することになり、検討が内部設計の期間に1週間程度、ずれ込みそうである。 B課長は、営業部長に体制強化を申し入れた。また、②問題1による遅れを極力抑えるために、作業順序を工夫するよう両チームに指示した。一方、問題2は業務D1に特化したものなので、内部設計が終わるまでに遅れをばん回できるように業務D1のスケジュールを見直した上で、体制面の調整が可能かどうかX社に確認した。その結果、“要員はひっ迫しているが、何とか対応できる”との回答がX社から得られた。 〔スコープの変動状況〕 3月中旬の時点で、次のようなスコープの変動が発生していた。 ある照会画面(以下、画面Fという)の項目について、要件定義では前月末時点の情報を表示する仕様であったが、外部設計のレビューにおいて、前日時点の情報を表示したいという変更要望が営業部から出されていた。B課長も加わって対応方法を検討したところ、基幹系システムから約30種類のデータを受け取り、日次でマスタファイルを更新するプロセスを新規に構築する必要があることが分かった。X社の見積りでは、内部設計以降の総工数が予算策定時の想定工数を20%超える見込みとなった。 B課長はX社の見積結果を精査した上で、営業部に対して、画面Fの変更要望への対応についての優先度を判断するための情報の提供を求めた。また、X社の開発要員の供給力を考えると、スケジュールどおり画面Fの変更要望に対応するのは難しいと判断し、B課長は、画面Fの取扱いについて営業部と調整することにした。 設問1〔外部設計の進め方〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) B課長は、設計内容についての、どのような点での確認が不十分となることをおそれたのか。25字以内で述べよ。 (2) 本文中の【a】に入れる適切な字句を答えよ。 (3) 本文中の【b】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2〔設計品質の状況〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) B課長が、基準値の考え方からすると、画面定義書だけ短時間でレビューできた理由の分析が不足していると考えたのはなぜか。25字以内で述べよ。 (2) 本文中の【c】に入れる適切な字句を答えよ。 (3) 本文中の下線①における、要件定義の内容に起因する指摘とはどのようなものか。30字以内で述べよ。 設問3〔問題の解決状況〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線②で指示している作業順序の工夫を、25字以内で述べよ。 (2) B課長がX社に確認した体制面の調整内容を、30字以内で述べよ。 設問4〔スコープの変動状況〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 画面Fの変更要望への対応についての優先度を判断するために、B課長が、営業部に提供を求めた情報の内容を、30字以内で述べよ。 (2) B課長は、画面Fの取扱いについて営業部とどのような調整をすることにしたのか。30字以内で述べよ。
図1 スケジュール。1月から翌年1月までの計画、要件定義、外部設計、内部設計、製造・テスト、移行、稼働開始の工程を示すスケジュール図。
図1 スケジュール。1月から翌年1月までの計画、要件定義、外部設計、内部設計、製造・テスト、移行、稼働開始の工程を示すスケジュール図。
表1 外部設計のレビュー状況。DチームとEチームについて、画面定義書、入力チェック仕様書、帳票定義書のレビュー投入時間と指摘件数を比較した表。
表1 外部設計のレビュー状況。DチームとEチームについて、画面定義書、入力チェック仕様書、帳票定義書のレビュー投入時間と指摘件数を比較した表。
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判断に使う前提をそろえる視点

この分野を学ぶ際は、判断の土台となる前提に注目しましょう。結論だけを急いで決めず、与えられた情報のうち、何が明示され、何を自分で補っているかを分けると、考え方を整理しやすくなります。

この問題で問われていること

考える対象に対して、どの前提を置いて判断しているかを確かめてください。明記された条件と、自分の経験や印象から付け足した条件を混ぜずに捉えることが、今回の検討で意識したい一つの観点です。

視点

判断には、出発点として置いている条件があります。その条件の出どころを意識すると、与えられた情報と自分の推測が混ざっていないかを振り返りやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の前提としている条件を言葉にできるか
  • その前提は与えられた情報のどこに基づくか
  • 自分で補った前提を、明示された条件と区別できているか
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解説

外部設計で営業部との合意を形成し、品質・未解決問題・スコープ変動から状況と見通しを把握する問題です。レビュー数値の原因分析、影響を受けない作業の先行、要員確保、変更要望の効果と対応時期の調整を、事例に即して判断します。

問題の全体像

A社は翌年1月の稼働開始に向けて営業情報システムを構築しますが、外部設計の期間は営業部の繁忙期に重なります。B課長は営業部との合意形成を重視し、3月中旬に設計品質、問題の解決、スコープの変動を確認します。公式資料の出題趣旨では、内部設計以降のスコープ変動を極力抑えるための合意形成と、状況・見通しの把握、問題発生時の対処が主題とされています。各設問では、本文の原因や制約に対応する具体的な判断を示します。

設問1(1)

C主任の原案では、レビューをチームごとに実施し、結果だけを他チームへ電子メールで伝えます。着目するのは、本文の「チーム間の整合性を確保する」という目的です。結果の伝達だけでは、両チームの設計を突き合わせた確認が不足するおそれがあります。公式解答例では、他チームが担当する業務との整合性、又はインタフェースを挙げています。25字以内では「他チームが担当する業務との整合性」と、確認対象を具体的に示します。

設問1(2)

空欄aは、営業部に「組織として責任をもってもらう」対象です。業務を熟知したレビューアの参加だけでなく、内部設計に進む前に営業部として設計内容を確認する場を設ける点に着目します。公式解答例では「外部設計の内容」又は「レビュー結果」とされています。空欄には、最終確認会で営業部が責任をもつ対象として、例えば「外部設計の内容」を入れます。

設問1(3)

空欄bの直前には、営業部のレビューアの大半が「業務を熟知しているが責任者ではない」とあります。したがって、最終確認会に加えるべき人は、営業部として責任をもって確認できる立場の人です。公式解答例では「営業部の責任者」又は「営業部長」とされています。業務知識のある参加者を増やすだけでなく、組織としての責任を担う人の関与が必要だと読み取ります。

設問2(1)

本文では、各成果物の難易度に差がないため、同じ基準値を適用しています。Dチームの画面定義書は投入時間2.5分、指摘件数0.12件で、いずれも下限を下回ります。「業務を熟知したメンバが作成に関与した」という説明だけでは、画面定義書だけ短時間になった理由を十分に説明できません。公式解答例では、同じ基準値の適用、又は難易度に差がないことが理由です。25字以内では「各成果物に同じ基準値を適用しているから」とまとめます。類似画面をまとめてレビューできたことは、その後の分析で判明した具体的な原因です。

設問2(2)

Eチームでは、業務を熟知したレビューアの代わりに都度異なる代役が参加し、その場で意思決定できず、意見調整後の再レビューによって投入時間が増えています。指摘件数を再集計した結果、設計品質には問題がないと確認されているため、ここで改善する対象は繰り返しレビューすることによる非効率です。公式解答例では「レビューの効率」又は「作業の効率」とされています。採点講評では、この設問で複数の視点を列記した答案に不適切な内容や矛盾が見られたと指摘されており、空欄には「レビューの効率」と焦点を絞ります。

設問2(3)

下線①では、指摘の原因が外部設計の作業自体ではなく、前工程である要件定義の内容にあることに着目します。要件が不明確だったり矛盾していたりすると、それを基に設計する段階で問題が表面化します。公式解答例では、要件定義の不明確な点、矛盾する点、又は品質確保の不足による指摘を挙げています。30字以内では「要件定義の内容に不明確な点があることによる指摘」と、原因と指摘の関係を示します。

設問3(1)

問題1は、両チームに共通する月次処理の方針が確定しないことです。求められているのは、方針の確定を待つ間の「作業順序の工夫」なので、月次処理の問題に影響されず進められる作業を先に行います。公式解答例では「月次処理に関連しない作業を先に行う。」などとされています。この表現は25字以内に収まります。採点講評では、レビューアの交代や体制強化などの関係者との調整を答えた誤りが多かったとされており、実施順序の変更に絞って答えます。

設問3(2)

問題2は業務D1に限られ、検討が内部設計の期間にずれ込む見込みです。B課長は内部設計の終了までに遅れを取り戻すようスケジュールを見直し、その実行に必要な体制をX社に確認しています。「要員はひっ迫しているが、何とか対応できる」という回答からも、確認対象が要員の確保だと分かります。公式解答例では、見直したスケジュールに対応する要員の確保、又は内部設計期間の追加要員投入の可否を挙げています。30字以内では「スケジュールの見直しに対応した要員の確保の可否」とまとめます。

設問4(1)

前日時点の情報を表示する変更には、日次更新プロセスの新規構築が必要で、内部設計以降の総工数は想定を20%超える見込みです。工数の見積りはX社から得ているため、営業部には変更の優先度を判断できる業務側の情報を求めます。公式解答例では、変更による業務上の効果、予定どおり対応する必要性、又は対応しなかった場合の業務への影響を挙げています。30字以内では、例えば「変更要望に対応することによる業務上の効果」と、一つの判断材料を明確に示します。

設問4(2)

X社の開発要員の供給力を考えると、変更要望への対応を予定どおり終えるのは難しいという判断に着目します。そこで営業部と調整するのは、変更への対応時期を後ろにずらし、稼働開始時は要件定義どおり前月末時点の情報を表示することです。公式解答例でも、この二つの表現が示されています。30字以内では「変更要望への対応時期を後ろにずらす。」とまとめられます。変更対応の延期を答え、システム全体の稼働開始を延期するという内容に広げないことがポイントです。

学習のポイント

設問が求める対象と問題の影響範囲を区別し、本文の原因から具体的な対処を導く練習を重点にします。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度春期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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