PMプロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ

平成23年度特別 プロジェクトマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 金融機関のA社は、約16か月後の来年6月末に到来するハードウェア保守期限に合わせて、メインフレームで稼働している審査システム(以下、現行システムという)をサーバ環境で稼働するシステム(以下、新システムという)に再構築している。 新システムの構築は、表1に示すとおり1次開発と2次開発に分かれており、いずれもシステム部が開発を担当している。1次開発分は10月に、2次開発分は来年4月にそれぞれ稼働を開始する予定であり、システム部のB課長がプロジェクトマネージャを担当している。1次開発は内部設計まで順調に進み、3月からプログラム製造・単体テストに着手したところである。また、新システムの構築に伴う、サーバ環境における通信、データベース関連などの機能を提供するソフトウェア(以下、ミドルソフトという)の開発は、別プロジェクトとして技術部が進めている。 表1 新システムの構築方法 〔新システム構築のスケジュール〕 昨年の10月から今年の10月までの、新システム構築のスケジュールは図1のとおりである。新システムの構築は、次の考え方に従って進めている。 (1) 1次開発 ・外部設計を1月に開始し、4月末にプログラム製造・単体テストを完了させる。5月からの結合テストではミドルソフトを使用して、業務プログラム(以下、業務APという)の機能確認を行う。 ・総合テストでは、新システムの業務APの機能確認に加えて、現行システムの数日分のオンライン処理の入力データ全件を新システムに入力して現行システムのバッチ処理に引き継ぎ、現行システムのバッチ処理とのインタフェースに問題がないことを確認する。 ・1日当たり数千件に及ぶ現行システムの入力データ数日分をすべて新システムに手入力すると、総合テストで混乱が生じるおそれがある。それを避けるために、現行システムの入力データを新システム用の入力データに変換するツールを開発する。 ・①現行システムのオンライン処理用の業務APについては、昨年12月末に機能追加を凍結し、その後の機能追加は新システムの稼働後に対応することによって、現行システムから提供される機能との関連で懸念されるリスクを軽減する。 (2) 2次開発 ・新規に開発するバッチ処理用の業務APと、1次開発に対する修正が大半となるオンライン処理用の業務APについては、結合テストの開始までは別スケジュールで作業を進める。 ・②オンライン処理用の業務APについて、2次開発のプログラム製造・単体テストと1次開発の結合テストの時期が重なると、1次開発の品質の状況によっては2次開発での混乱が生じるおそれがある。その点を考慮して、2次開発のプログラム製造・単体テストは、1次開発の結合テスト完了後の7月に開始する。 〔ミドルソフトの不具合の発生〕 1次開発は順調に進んでいたが、3月下旬にミドルソフトの開発において不具合が発生し、1次開発の結合テスト開始までに対応できない事態となった。B課長が技術部に状況を確認したところ、次のことが判明した。 ・不具合は、出力要求を行っている端末の台数が5台以上になると印刷処理の性能が急激に悪化するというものである。排他処理のロジック全般への影響を確認する必要があるので、対応が完了するのは6月中旬になる。 ・この不具合を除けば、当初の予定どおり、5月から業務APでミドルソフトを使用しても問題はない見込みである。 来年7月の審査基準の改定に向けて、オンライン処理用の業務APの大幅な修正が必要であり、その対応には少なくとも8か月掛かる見込みである。ミドルソフトの不具合の発生を受けて1次開発の稼働開始を遅らせると、審査基準の改定への対応スケジュールに影響する。そこで、B課長は次の考え方に従って、1次開発の結合テスト及び総合テストを進めることにした。 ・ミドルソフトの開発状況と不具合の内容からすると、4月末時点のミドルソフトを使用しても、テストの実施方法を工夫すれば1次開発の業務APの機能確認を進める上での影響は少ないと考えられるので、結合テストは予定どおり5月に開始する。 ・ミドルソフトの不具合への対応が完了する6月中旬にミドルソフトを入れ替えると、結合テストで混乱が生じるおそれがあるので、結合テストではミドルソフトを入れ替えないことにする。一方で、不具合への対応が完了したミドルソフトを使用して業務APの機能確認を行う必要がある。そこで、結合テストとは別に、6月中旬から6月末までに結合テスト2を設定してこの機能確認を行う。また、総合テストの環境を使用して結合テスト2を行うことによって、総合テストが円滑に進められるようにする。 〔現行システムの障害の多発〕 4月の第2週に入ったとき、現行システムの保守担当の責任者から、「昨年12月末の凍結直前に追加した機能のうち、4月に初めて稼働した機能について、仕様の不備に伴う障害が多発している。原因分析、類似障害の有無の調査は済んでおり、対応のめどは立っている」という連絡があった。これまで、現行システムで障害が多発することはなかったので、現行システムの障害については、現行システムから提供される障害対応の修正仕様を基に、1次開発の結合テストの後半にまとめて対応する方針であった。B課長は急きょ、状況を確認し、対応方針を次のように見直すことにした。 ・障害が多発している機能について1次開発との関連を調べた結果、結合テストの後半にまとめて対応した場合に、結合テストに関するリスクが懸念された。そのリスクを軽減するために、結合テストの初期の段階で障害対応の取込みを行う。 ・修正作業量が想定していたよりも多いので、障害対応の取込み結果を効率よく確認したい。そのために、障害対応の修正仕様に加えて、ある情報の提供を現行システムの保守担当の責任者に依頼する。 設問1 〔新システム構築のスケジュール〕について、(1)~(3)に答えよ。 設問2 〔ミドルソフトの不具合の発生〕について、(1)~(3)に答えよ。 設問3 〔現行システムの障害の多発〕について、(1)~(3)に答えよ。
表1 新システムの構築方法。1次開発と2次開発に分けた新システムの構築方法を、オンライン処理やバッチ処理の開発内容とともに示した表。
表1 新システムの構築方法。1次開発と2次開発に分けた新システムの構築方法を、オンライン処理やバッチ処理の開発内容とともに示した表。
図1 新システム構築のスケジュール。昨年10月から今年10月までの1次開発と2次開発の要件定義、設計、製造、テスト、運用開始の時期を示す工程表。
図1 新システム構築のスケジュール。昨年10月から今年10月までの1次開発と2次開発の要件定義、設計、製造、テスト、運用開始の時期を示す工程表。
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判断の前提をそろえて考える

計画やリスクを考える際は、判断の前提がそろっているかという一点に注目しましょう。示された情報と自分で補った想定を区別し、どの条件に基づいて考えているのかを意識すると、思い込みを避けやすくなります。

この問題で問われていること

検討の対象が変わっても、根拠となる条件を無意識に置き換えないことが大切です。気になる判断について、その前提が与えられた情報に含まれるのか、自分の経験から付け足したものなのかを確かめてみましょう。

視点

判断を支える条件に目を向けましょう。普段の経験から思い浮かぶ条件も、今回示された条件とは分けて扱うと、前提を整理しやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の根拠となる条件を意識できているか
  • 示された条件と自分で補った想定を区別できているか
  • 考える途中で前提を無意識に置き換えていないか
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解説

本問は、現行システムと並行する開発の状況を踏まえ、再構築の期限と品質を両立させる問題です。仕様の凍結、開発工程の依存関係、テスト環境の事前確認、障害修正の早期取込みを、それぞれ軽減するリスクと結び付けて理解します。

問題の全体像

金融機関のA社は、来年6月末のハードウェア保守期限に合わせて審査システムを再構築しています。1次開発でオンライン処理を移し、2次開発でバッチ処理などを開発する一方、ミドルソフトは別プロジェクトで開発しています。さらに、来年7月の審査基準改定への対応も必要です。こうした期限と依存関係の下で、ミドルソフトの不具合や現行システムの障害にどう対応するかが問われます。公式の出題趣旨では、関連システムの開発・稼働状況を考慮した計画立案、品質確保、リスク軽減などの実践的な能力を問うとしています。各設問では、対策そのものと、その対策で避けたい問題を対応させて読み取ります。

設問1(1)

着目するのは、総合テストで「1日当たり数千件」の入力データを数日分扱う点です。大量のデータを手入力すると、入力作業に時間が掛かるだけでなく、入力ミスの確認や訂正が必要になり、予定したテストが進みにくくなります。公式解答例では「総合テストが予定どおりに進まない」「入力ミスによる手戻りが発生する」を挙げています。20字以内では、例えば「入力ミスによる手戻りが発生する」と、混乱の内容を具体的に表します。変換ツールの開発は、この入力作業に起因する混乱を避けるための対策です。

設問1(2)

下線①の機能追加の凍結は、新システムが引き継ぐ現行機能の仕様を安定させる措置です。新システムの設計・開発中に現行システムへ機能が追加されると、開発の前提が変わり、新システムの仕様と現行機能との間に相違が生じるおそれがあります。公式解答例では「現行機能との仕様の相違が発生する」「現行機能が保証できない」を挙げています。20字以内では「現行機能との仕様の相違が発生する」とまとめられます。採点講評では、二重開発による作業量の増加に着目した解答が多かったとされていますが、ここで求められているのは、現行システムから提供される機能との不一致というリスクです。

設問1(3)

表1では、2次開発のオンライン処理は、1次開発で作った業務プログラムを修正して進めるとされています。このため、1次開発の結合テストで障害や仕様変更が発生すると、その影響が2次開発にも及びます。2次開発の製造・単体テストを既に進めていれば、修正の取込みやテストのやり直しが必要になります。公式解答例では、1次開発の障害対応による手戻りの多発、又は仕様変更による単体テストのやり直しを挙げています。30字以内では「1次開発の障害に対応するための手戻りが多発する」と表せます。7月まで着手を待つのは、修正元となる1次開発の品質を安定させるためです。

設問2(1)

不具合の発生条件は、出力要求を行っている端末が5台以上になることです。また、本文には、この不具合を除けば5月からミドルソフトを使用しても問題はない見込みとあります。したがって、結合テストでは同時に出力要求を行う端末数を制限することで、不具合の条件を避けながら業務APの機能確認を進められます。公式解答例では「5台以上の端末から同時に出力要求を行わない」などを挙げています。30字以内では、この発生条件と回避方法をそのまま示します。不具合を修正したミドルソフトでの確認は、別途設定する結合テスト2で行います。

設問2(2)

着目するのは、結合テストの途中でミドルソフトを入れ替えるという変更です。業務APを確認している最中に、その動作を支えるミドルソフトも変えると、障害が起きた際に業務APとミドルソフトのどちらに原因があるのかを判断しにくくなります。公式解答例では「障害の原因の切分けが難しくなること」、又はミドルソフトに関する不具合の発生を挙げています。20字以内では「障害の原因の切分けが難しくなること」とまとめられます。結合テストではミドルソフトを固定し、修正版の確認を結合テスト2に分ける方針を、原因の切分けという観点で捉えます。

設問2(3)

総合テストの環境を使って、先に結合テスト2を実施する点が根拠です。実際に業務APを動かすことで、その環境に不具合がないか、設定内容が適切かを総合テスト開始前に確認できます。公式解答例では、総合テスト環境の不具合を事前に摘出できること、又は設定内容の妥当性を事前に確認できることを挙げています。30字以内では「総合テストの環境の不具合が事前に摘出できるから」と表せます。採点講評では、結合テスト自体のメリットを書いた誤答が多かったとされています。答案では、総合テストの環境を先に検証できる効果を明確にします。

設問3(1)

設問が求めるのは、現行システムの障害と1次開発との関連です。1次開発は現行のオンライン機能を引き継ぐため、現行機能の仕様不備に対する修正は、新システムにも取り込む必要があります。本文の「修正作業量が想定していたよりも多い」という記述にも着目します。公式解答例では「1次開発の仕様に大きな影響があること」「1次開発への取込みの工数が大きいこと」を挙げています。20字以内では「1次開発の仕様に大きな影響があること」とまとめられます。障害が多発しているという事実だけでなく、その修正が1次開発に大きく波及する点を答えます。

設問3(2)

大きな修正を結合テストの後半にまとめて取り込むと、それまでの確認結果に影響し、修正後の確認や再テストが必要になります。残り期間が少ない段階で手戻りが生じれば、結合テストの完了が遅れるおそれがあります。また、修正によって、それまで正常だった機能に不具合が生じる可能性もあります。公式解答例では、結合テスト完了の遅延、手戻りによる進捗の遅延、デグレードによる品質の劣化を挙げています。20字以内では「手戻りの発生による進捗の遅延」と表せます。設問3(1)の大きな影響・工数を原因とし、本設問ではその結果としてのリスクを答えます。

設問3(3)

修正仕様は、何を直すかを示す情報ですが、取込み結果を効率よく確認するには、どのようなデータや条件で確認するかという情報も必要です。現行システム側では既に原因分析と類似障害の調査が済んでいるため、その知見を確認作業に利用することが考えられます。公式解答例では「修正結果の確認用データの仕様」「修正結果の確認用のテストケース」を挙げています。20字以内では「修正結果の確認用のテストケース」と答えられます。単に障害の説明を追加で求めるのではなく、修正が正しく取り込まれたかを確認するための具体的な情報に着目します。

学習のポイント

リスクの原因と結果を区別し、変更の波及先、テストの目的、障害対応に必要な確認情報を具体的に説明する力を養います。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度特別 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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