PMプロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ
平成23年度特別 プロジェクトマネージャ 午後Ⅰ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題

解き方のヒントを見る
判断に用いる前提をそろえる
要件や計画について考えるときは、判断の前提が途中で変わっていないかに注目しましょう。誰かの役割や管理方法を決めつけず、与えられた条件と自分の想定を分けて整理することが、検討の出発点になります。
この問題で問われていること
責任や進め方を検討する際も、まず、その判断がどの条件を前提にしているかを確かめましょう。明示された条件と、経験や印象から補った条件が混ざっていないかを確認し、同じ前提を保ったまま考えることに集中してください。
視点
判断の前提とは、考える土台として置いている条件のことです。与えられた条件と、自分が補った想定を区別すると、何を根拠に考えているかを整理できます。ここでは、検討を通じてその前提が一貫しているかに注目しましょう。
確認ポイント
- 与えられた条件を判断の前提として捉えていますか。
- 明示されていない条件を無意識に補っていませんか。
- 検討の途中で前提を変えていませんか。
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解説
ERP導入の要件定義を題材に、標準機能との適合状況、顧客と支援企業の責任分担、担当者の参加や理解に関するリスクを捉え、開発期間の余裕と経営層の働き掛けによってプロジェクトを調整する問題です。
問題の全体像
D社は、ERPの標準機能を利用して業務の効率を高めるために基幹システムを再構築します。要件確定は2か月、運用開始は来年4月という制約があり、導入支援を行うM社とは要件定義工程の準委任契約を結んでいます。利用部門の参加時間不足や販売部の業務変更への抵抗が生じる中で、N氏が責任分担と作業方法、スケジュールを調整する事例です。公式の出題趣旨では、ステークホルダの能力や特性を踏まえた計画立案と利害調整、問題発生時の対応を通じて、PMの実践的な能力を問うとされています。
設問1(1)
着目するのは、標準機能で業務の大部分を実現できそうだという見込みがある一方、詳細なフィット&ギャップ分析は未実施という記述です。標準機能でどこまで対応でき、どこに差があるかは、まだ確定していません。その結果によって追加開発の規模やスケジュールの前提が変わります。公式解答例では「ERPの標準機能で対応できる業務要件の範囲」又は「ERPの標準機能と業務要件とのギャップ」が示されています。25字以内では、例えば後者のように、標準機能と業務要件の対応関係を端的に表します。
設問1(2)
要件定義を行う4月・5月は、経理部の年度決算の繁忙期と重なります。要件定義は各利用部門が実施するため、経理部のメンバが通常業務に追われ、要件定義作業に参加できなくなることが遅延につながる要因です。公式解答例でも、この参加困難を挙げています。採点講評では、リスク要因を問う設問に対して、リスクそのものを述べた解答が目立ったと指摘されています。30字以内では「経理部のメンバが要件定義作業に参加できなくなること」とし、結果である工程の遅延だけを答えないようにします。
設問2(1)(責任分担)
本文では、業務要件を定義する主体はD社の各利用部門です。M社はERPの説明や文書作成を支援できますが、D社がどのような業務を行うかを決める責任まで引き受けることはできません。公式解答例では、D社が決めるべき業務要件をM社で決めることはできないとしています。変更後の手順でも、M社が文書を作成し、D社の責任で要件定義書として完成させています。30字以内では「D社が決めるべき業務要件をM社では決められない」とまとめ、作成担当と決定責任を区別します。
設問2(1)(契約との整合性)
着目するのは、要件定義工程について準委任契約を締結している点です。この契約でM社が要件定義作業を支援することと、成果物である要件定義書の完成責任を負うことは区別する必要があります。公式解答例では、準委任契約では成果物の完成責任を負うことは適切でないとしています。30字以内では「準委任契約で成果物の完成責任を負うのは適切でない」とまとめます。M社が文書を作成すること自体ではなく、完成責任まで負うことが現在の契約と整合しない点を示します。
設問2(2)
M社がヒアリング内容を基に文書を作成し、D社とのレビューで指摘を受ける手順に着目します。M社が業務要件を十分に理解していなかったり、誤って理解していたりすると、文書の修正が必要となり、手戻りが発生します。公式解答例では「業務要件に関する理解不足」「業務要件に関する理解の誤り」「業務に関するスキル不足」が示されています。20字以内では、これらのようにM社側の能力や理解に関する原因を表します。採点講評では「ERPの標準機能と業務要件とのギャップ」という一般的な問題を答えた誤答が指摘されており、「M社側の要因」という限定を捉えることが重要です。
設問2(3)
本文には、ERPの適合率が一定以上なら、追加開発の規模によって開発期間が決まるとあります。また、文書には追加開発が必要な画面、帳票、機能などの見積りに必要な情報を記載します。その情報を抽出・集計することで、追加開発の規模を早期に把握できます。標準機能で対応できる範囲を整理することは、ERPの適合率の把握にもつながります。公式解答例では「追加開発の規模」「ERPの適合率」が示されています。答えるべきなのは、これらの開発期間を左右する数値であり、集計元となる画面や帳票の名前だけではありません。
設問3(1)
標準スケジュールの開発期間には、20%のスケジュールの余裕が含まれています。ほかの部門の要件定義は順調であり、販売管理業務も標準機能を利用して追加開発を中規模開発の範囲に抑えられることが、調整を考える前提です。その上で、遅れに対応できる根拠となるのが開発期間の余裕です。公式解答例では「開発の期間に20%のスケジュールの余裕を含んでいるから」としています。35字以内では、この余裕を明示します。追加開発が中規模に収まるという条件だけでなく、日程を調整できる具体的な根拠を答えます。
設問3(2)
販売部の遅れは、標準機能で業務を実施できないためではなく、担当者が業務プロセスの変更に抵抗しているためです。一方、経営層は標準機能の利用による業務の効率向上を再構築の目的としています。そこで経営層から、その目的に沿って標準機能を利用するよう社内に指示してもらい、担当者の意識を変える必要があります。公式解答例では、再構築の目的を理解した推進、標準機能の利用を前提とした要件定義、標準機能の活用による効率向上が示されています。35字以内では「ERPの標準機能を極力利用し、業務の効率向上を実現すること」とまとめられます。採点講評でも、目的の達成を妨げる行動に対し、経営層などの上位者を通じて積極的な協力を促す必要性が述べられています。
学習のポイント
リスク要因とその結果、文書作成支援と完成責任、技術的なギャップと業務変更への抵抗を区別し、設問の条件に沿って答える力を養いましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度特別 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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