PMプロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ

平成23年度特別 プロジェクトマネージャ 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 システム開発プロジェクトにおけるスケジュール管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 S社は,大型製造装置の設計から施工までを請け負うエンジニアリング企業である。大型製造装置の設計から施工までの業務は,本社,現場事務所,協力会社などで,設計ドキュメントを確認しながら進める必要がある。そこで,クライアントサーバ型のT社製の文書管理ソフトウェアパッケージに様々な機能を追加開発した設計ドキュメント管理システム(以下,現EDMSという)を使い,業務を遂行してきた。設計データの整合性を保つために,本社のサーバと現場事務所,協力会社の事務所などの拠点に設置しているサーバの間で,夜間バッチ処理によってデータを複製して運用してきたが,次のような問題が顕在化してきた。 ・拠点間でデータがリアルタイムに共有できない。 ・拠点ごとにサーバの構築や運用支援が必要であり,拠点の運用要員の負荷が大きい。 ・文書管理ソフトウェアパッケージはWebに対応した新しいバージョン(以下,新バージョンという)が既に発売されており,今後,現EDMSが使っているバージョン(以下,旧バージョンという)のサポートが受けられなくなる。 S社は,これらの問題を解消するために,本社にサーバを設置し,各拠点からはインターネットを経由して本社のサーバ上にあるデータを利用する新しい設計ドキュメント管理システム(以下,新EDMSという)を構築するプロジェクトを立ち上げた。構築に当たっては,文書管理ソフトウェアパッケージの新バージョンへの移行も併せて行う。プロジェクトマネージャは,S社情報システム部で,現EDMSの開発を担当したK氏が担当することになった。新EDMSの利用者となる事業部門からは,次の大型製造装置の設計開始が予定される1年後までに開発を完了させるよう要請を受けている。 〔プロジェクト計画の策定〕 K氏は,プロジェクトの本格的な活動に先立ち,主要メンバとともに2か月を掛けて,新バージョンの機能調査,現EDMSの課題の洗い出しと新EDMSに求められる要件の調査・分析を行った。 K氏はこの結果を基に,プロジェクト計画の策定に取り掛かった。まず,成果物を洗い出し,それらを作成するための作業項目を設定した。次に,それらの作業項目の所要期間の見積りと,要員の検討を行った。K氏は,作業項目を2チームに割り振り,開発チームが新バージョンをベースにした新EDMSの開発を担当し,基盤チームがインターネット経由で新EDMSを利用するためのサーバの導入を含めた基盤整備を担当することにした。 K氏は,開発チームの要員の検討に当たって,品質確保・生産性向上の観点から,外部設計,内部設計,プログラム製造には,新バージョンでの開発スキルをもった要員の確保が必要であると考えた。そこで,T社に要員の派遣を要請したが,“開発のできる要員をプロジェクトの開始段階からすぐに専任で参加させることを確約することはできない。プログラム製造からであれば,開発のできる要員を専任で参加させることは約束できる。”との回答であった。この回答を受けてK氏は,品質確保の観点で不安はあるものの,外部設計,内部設計はS社の要員にスキルを習得させて対応することに決め,旧バージョンに詳しく,新バージョンの機能調査を行った要員に設計を担当させることにした。S社の要員だけで実施する場合,資料の確認や,機能調査や問合せの時間が必要となり,生産性が低下することを考慮し,外部設計と内部設計の期間を長めに設定することにした。T社に対しては,新バージョンの技術情報の提供,外部設計と内部設計での必要に応じた支援,及びプログラム製造から要員を専任で参加させることを依頼し,同意を得た。 これらの結果を踏まえ,K氏は,作業項目ごとの所要期間(月数)を設定し,表1に示す一覧表にまとめ,さらに,図1の作業工程図を作成した。K氏は,この作業工程図を基に,今後10か月のプロジェクト計画を策定し,プロジェクトをスタートした。 表1 作業項目の一覧表 図1 作業工程図(一部未記入) 〔スケジュールマネジメント計画〕 K氏は,プロジェクトを進めるに当たって,スケジュールマネジメント計画を検討した。 K氏は,この作業工程図から判断する限り,開発チームの作業の進捗状況を重点的に管理する必要があると考えた。また,開発チームの外部設計と内部設計の進捗状況を管理する上では,本プロジェクトの体制面のリスク要因を考慮し,その影響が出ていないかどうかを把握するために,ある観点に注意して管理する必要があると考えた。そこで,成果物をより詳細な要素成果物に分解した上で,各要素成果物の完成の判定基準を設定し,定例ミーティングで確認することにした。K氏は,その状況把握を更に徹底するために,開発チームに対して,社内のレビューに加えて,あるアクティビティを実施し,結果を報告するよう指示した。設計以外の作業項目についても,それぞれの担当チームに対して,主要なマイルストーンを設定し,定例ミーティングでの状況確認を徹底し,報告するよう指示した。 〔計画変更〕 K氏がプロジェクトを開始した直後に,S社は海外の企業から大型製造装置の設計から施工までを受注した。それを受けて,事業部門から情報システム部に対して,“受注した大型製造装置の業務の遂行には,新EDMSを使いたいので,8か月で完成させてほしい”との要望が寄せられた。その大型製造装置の設計から施工までの業務は期間が長く,一度システム環境を設定してしまうと途中で変更するわけにはいかず,かつ,多くの海外の協力会社が参加するので,どうしても最初から新EDMSを使いたいとのことであった。 K氏は,拠点の運用要員の負荷を軽減するためにも,事業部門の要望を満足させたいと考えた。そのためには,スケジュールを2か月間短縮する必要があり,その対策を検討することにした。 K氏は,できるだけ前倒しで作業期間を短縮するために,システムテスト開始までの作業でスケジュールを2か月間短縮することにした。まず,開発チームに追加要員を投入し,外部設計からプログラム製造までの作業期間を短縮する対策を検討した。特に,外部設計と内部設計についての対策においては,ある内容について,T社と改めて交渉しなければならないと考えた。また,K氏は,作業工程図を基に,T社の同意が得られたとしても,この一つ目の対策だけでは,スケジュールを2か月間短縮する対策としては十分でないと判断し,もう一つの対策についても検討を行った。その結果,二つの作業項目について,S社の要員を追加で投入することで,作業期間を短縮できると判断し,スケジュールの再設定を行った。 設問1 〔プロジェクト計画の策定〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 図1の作業工程図中の①~⑧に入れる適切な数字又は作業IDを答えよ。 (2) K氏が,作業項目を設定するときに,成果物の洗い出しから始めた理由は何か。30字以内で述べよ。 設問2 〔スケジュールマネジメント計画〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) K氏が,作業工程図から判断する限り,開発チームの作業の進捗状況を重点的に管理する必要があると考えた理由は何か。30字以内で述べよ。 (2) K氏が,開発チームの外部設計と内部設計の進捗状況を管理する上で,考慮すべきと考えた,本プロジェクトの体制面のリスク要因とは何か。30字以内で述べよ。また,注意して管理する必要があると考えたある観点とは何か。25字以内で述べよ。 (3) K氏が,ある観点からの状況把握を更に徹底するために,社内のレビューに加えて実施するように指示した,あるアクティビティとは何か。20字以内で述べよ。 設問3 〔計画変更〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) K氏が,外部設計と内部設計についての対策において,T社と改めて交渉しなければならないと考えた内容は何か。20字以内で述べよ。 (2) K氏が,作業工程図を基に,この一つ目の対策だけでは,スケジュールを2か月間短縮する対策としては十分でないと判断した理由は何か。30字以内で述べよ。 (3) K氏が,もう一つの対策として,S社の要員を追加で投入することによって作業期間が短縮できると判断した,システムテスト開始までの作業項目のうちの二つの作業項目とはどれとどれか。表1の作業IDで答えよ。
表1 作業項目の一覧表。作業ID A~Iについて作業項目・所要期間(月数)・先行作業・担当・成果物をまとめた表。A基盤設計2,B製品調達2(A),C基盤構築・テスト2(B),D外部設計2,E内部設計2(D),F プログラム製造3(E),Gシステムテスト1(C,F),H運用テスト1(G),I教育・移行1(H)。
表1 作業項目の一覧表。作業ID A~Iについて作業項目・所要期間(月数)・先行作業・担当・成果物をまとめた表。A基盤設計2,B製品調達2(A),C基盤構築・テスト2(B),D外部設計2,E内部設計2(D),F プログラム製造3(E),Gシステムテスト1(C,F),H運用テスト1(G),I教育・移行1(H)。
図1 作業工程図(一部未記入)。StartからA→B→Cの基盤系列とD→(未記入)→(未記入)の開発系列が合流し、①~⑧を含むノードを経て未記入の2ノードからEndへ至る作業工程図。各ノードはES・EF・LS・LF・TF・FFを示し、凡例付き。
図1 作業工程図(一部未記入)。StartからA→B→Cの基盤系列とD→(未記入)→(未記入)の開発系列が合流し、①~⑧を含むノードを経て未記入の2ノードからEndへ至る作業工程図。各ノードはES・EF・LS・LF・TF・FFを示し、凡例付き。
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判断の前提をそろえて考える

工程計画や進捗管理を考えるときは、判断の前提がそろっているかに注目しましょう。与えられた条件と、自分で補っている想定を区別し、途中で前提を置き換えていないか確かめながら検討を進めます。

この問題で問われていること

期間短縮を検討する際も、結論を急ぐ前に、どの条件を前提として考えているかを明確にしましょう。検討の途中で別の想定を加えていないかを振り返り、示された条件の範囲で判断できるか確認することが手掛かりになります。

視点

判断の前提とは、考えを進める土台となる条件です。明示された条件と、自分が補った想定を分けて整理すると、検討の途中で土台が変わっていないかを確認しやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の土台にした条件を明確にできているか
  • 明示された条件と自分の想定を区別できているか
  • 検討の途中で前提を置き換えていないか
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解説

成果物を基に作業の漏れを防ぎ、工程の依存関係からクリティカルパスと余裕を把握する問題です。さらに、設計要員のスキル不足に対して品質を確認する管理とレビューを行い、納期短縮時には並行する基盤工程も見直す必要があります。

問題の全体像

S社は、拠点間のリアルタイム共有、サーバ運用負荷の軽減、旧版のサポート終了への対応を目的に、新EDMSを構築します。開発工程と基盤工程を並行して進めますが、設計段階では新バージョンの開発スキルをもつT社要員の専任参加を確保できていません。公式の出題趣旨では、WBS作成のための成果物の要素分解、ネットワークスケジュールの作成、ドキュメントレビューの観点などを問うとされています。工程の計算に加え、品質を伴う進捗管理と、納期短縮によって別の工程が制約になる点を読み取ります。

設問1(1)①

①は凡例のXに対応する作業ID欄です。図1では、基盤工程のCと開発工程のFが合流した直後の作業にあります。表1で先行作業がC、FとなっているのはシステムテストのGなので、公式解答例では「G」です。合流位置と表の先行作業を対応させて判断します。

設問1(1)②

②は凡例のDRに対応する所要期間欄です。①の作業はGのシステムテストであり、表1の所要期間は1か月です。したがって、公式解答例では「1」です。所要期間と開始・終了の月番号を区別して読み取ります。

設問1(1)③

③はGの最早開始ESです。先行するCは第6月、D→E→FのFは第7月に最早終了します。Gは両方の終了を待つため、遅い方の第7月の翌月に開始します。したがって、公式解答例では「8」です。複数の先行作業がある場合は、その最早終了の最大値に1を加えます。

設問1(1)④

④はGの最早終了EFです。図1のAは、第1月開始、期間2か月で第2月終了となっているので、開始月を含めて数えます。Gは第8月開始、期間1か月のため、EF=ES+DR−1=8+1−1=8です。公式解答例では「8」です。

設問1(1)⑤

⑤はGの最遅開始LSです。計画は10か月で、Gの後には各1か月のHとIがあります。Iを第10月、Hを第9月に実施するには、Gを第8月に終える必要があります。Gの期間は1か月なので、最遅開始も第8月です。公式解答例では「8」です。最遅時点は後続作業から逆算します。

設問1(1)⑥

⑥はGの最遅終了LFです。後続するHの最遅開始は第9月なので、Gはその前月の第8月までに終了しなければなりません。したがって、公式解答例では「8」です。Gを第9月以降まで延ばすと、HとIも後ろにずれて10か月の計画を守れません。

設問1(1)⑦

⑦はGのトータルフロートTFです。これはプロジェクト全体の終了を遅らせずに、その作業を遅らせられる期間を表します。Gは最遅開始も最早開始も第8月なので、TF=LS−ES=8−8=0です。公式解答例では「0」です。Gはクリティカルパス上にあり、全体納期に対する余裕がありません。

設問1(1)⑧

⑧はGのフリーフロートFFです。これは後続作業の最早開始を遅らせずに、その作業を遅らせられる期間です。Gの最早終了は第8月、後続Hの最早開始は第9月なので、FF=9−8−1=0です。公式解答例では「0」です。Gの終了を遅らせれば、直後のHの開始にも影響します。

設問1(2)

本文では、成果物を洗い出してから、それらを作成する作業項目を設定しています。必要な成果物を網羅すれば、作成に必要な作業も漏れなく定義できます。公式解答例では、作業項目の漏れを防ぐ目的と、検証可能な成果物で進捗を把握する目的が示されています。30字以内なら「成果物を基に作業項目の漏れを防ぐため」とまとめられます。採点講評では、策定手順を引用するだけでなく、作業を漏れなく定義する目的を理解することが求められています。

設問2(1)

表1から、D→E→F→G→H→Iは2+2+3+1+1+1=10か月、A→B→C→G→H→Iは9か月です。前者がクリティカルパスであり、開発チームが担当する作業はすべてこの経路上にあります。公式解答例では、開発チームの全作業がクリティカルパス上にあることを理由としています。30字以内なら「開発チームの全作業がクリティカルパス上にあるから」とまとめます。遅れが全体納期に直結する点が、重点管理の根拠です。

設問2(2)リスク要因

T社は、設計開始時から開発可能な要員を専任で参加させることを確約できず、外部設計と内部設計はS社要員がスキルを習得しながら担当します。旧バージョンの知識や機能調査の経験があっても、新バージョンの開発スキルをもつ要員は確保されていません。公式解答例では、この要員確保の不足がリスク要因です。30字以内なら「新バージョンの開発スキルをもつ要員が未確保である」とまとめます。品質低下や遅延という影響ではなく、その原因となる体制を答えます。

設問2(2)観点

要員のスキルが十分でなければ、設計書の作成が予定どおり進んでも、内容の品質が不足する可能性があります。そのため、要素成果物の完成判定では、作成量や予定との差だけでなく品質も確認します。公式解答例では「品質が確保された上で進捗しているか」という観点が示されており、25字以内に収まります。採点講評でも、リスク要因を理解しながら品質のチェックポイントを明示できていない解答が指摘されています。

設問2(3)

設計を担当するS社内のレビューだけでは、新バージョンの開発スキル不足に起因する問題を見逃すおそれがあります。本文ではT社から設計段階の必要に応じた支援を受ける同意が得られているので、その専門知識を設計内容の確認に用います。公式解答例では「T社の要員による設計レビュー」であり、20字以内に収まります。単にレビューを増やすのではなく、誰の知識によって品質を確認するかを明示します。

設問3(1)

当初の合意では、T社要員の専任参加はプログラム製造からであり、外部設計と内部設計では必要に応じた支援にとどまっています。設計期間を短縮するには、新バージョンに詳しいT社要員を設計段階から専任で参加させることを改めて交渉します。公式解答例では「T社要員を専任で参加させること」であり、20字以内に収まります。技術情報の提供など、既に合意済みの支援と区別するのが要点です。

設問3(2)

システムテストGの開始には、開発側のFと基盤側のCの両方が完了している必要があります。当初、Fは第7月終了、Cは第6月終了なので、基盤工程の余裕は1か月です。開発側を2か月短縮してFを第5月に終えても、Cが第6月終了のままではGは第7月開始となり、全体では1か月しか短縮できません。公式解答例では、基盤チームの工程に1か月しか余裕がないことを理由としています。30字以内なら「基盤チームの工程には1か月しか余裕がないから」とまとめます。

設問3(3)

基盤工程はAの基盤設計、Bの製品調達、Cの基盤構築・テストで構成されています。表1では、AとCは基盤チームが担当し、Bはメーカも担当に含まれます。S社要員の追加で作業期間を短縮する対象として、公式解答例では「A、C」が示されています。自社要員による設計や構築・テストと、メーカが関与する製品調達を区別して読み取ります。開発工程を2か月短縮する場合、基盤工程も少なくとも1か月短縮しなければ、Gの開始を2か月前倒しできません。

学習のポイント

月数の計算規則、クリティカルパスの変化、リスク要因と品質確認・予防策のつながりを学びましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度特別 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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