PMプロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ

平成22年度春期 プロジェクトマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 システム再構築に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 A社は、通信事業者である。契約情報を管理している現行システムが、これまでの機能の追加・変更によって保守性が低下してきたので、システムを再構築することにした。新システムは、9か月後の4月1日にサービスを開始する。プロジェクトマネージャには、情報システム部のB課長が任命された。 〔データ作成に関する確認項目〕 B課長は、新システムの業務機能の内容と、新システムのデータ作成に関して、利用部門で新システムへの対応をとりまとめるZ課長に確認した。データ作成に関して確認した項目を次に示す。 ・現行システムのデータを新システムに適した形に変換した上で新システムに反映させる(以下、データ移行という)。変換は、移行プログラムによって行う。 ・データ移行の対象となるデータは、全体で200万件である。 ・3月31日から4月1日にかけて行うデータ移行(以下、本番移行という)は、利用部門へのサービス提供時間帯を避けて実施するので、6時間以内に終えなければならないという制約がある。 B課長は、現時点では本番移行を6時間以内に実現できるかどうかの確証がなく、この点がリスクになると考えた。 〔データ移行計画の作成〕 B課長は、次の(1)~(5)に示すデータ移行にかかわる作業(以下、移行作業という)を計画した。 (1) 移行方式設計 データ移行の方式を評価して決定する。B課長が評価の候補に考えたデータ移行の方式を次に示す。 案イ:すべてのデータ移行を、本番移行だけで行う。 案ロ:本番移行に先立ち、本番移行までの間に現行システムで変更されることがないデータをできるだけ多く新システムにデータ移行しておく。残りのデータの移行を、本番移行で行う。 案ハ:本番移行に先立ち、現行システムのすべてのデータを対象にデータ移行を行う。その後に現行システムで変更されたデータを対象に本番移行を行う。 B課長は、案ロ、案ハは、本番移行のリスクを軽減させるために効果があると考えた。 データ移行の方式を決定するために、本番移行が必要なデータの件数と種類を基にして、本番移行の実現性を評価する作業を行う。 決定したデータ移行の方式に基づいてデータ移行の一連の作業手順を設計する。 (2) 移行プログラムの開発 データ移行に用いるプログラムの設計、製造、単体テスト、結合テストを行う。 (3) 移行総合テスト 移行方式設計で決定したデータ移行の方式によって、データ移行を行い、新システムのデータを作成する。新システムに反映した後、データ件数やデータの内容を確認する。さらに、現行システムと新システムで業務処理を実行して課金システムへ提供する課金インタフェースファイルを作成する。課金インタフェースファイルの仕様は変更されないので、両システムの処理結果は一致しなければならない。処理結果を比較し、新システムのデータが正しく作成できていることを確認する。移行総合テストは、新システムの本番稼働向けに構築した環境で行う。 (4) 移行リハーサル 移行方式設計で設計したデータ移行の一連の作業手順を実施して、手順の正しさを検証する。また、その作業手順で作成した新システムのデータの確認も行う。さらに、本番移行が制約の下で確実に実施できることを検証する。移行リハーサルは、新システムの本番稼働向けに構築した環境で行う。 (5) 移行実施 移行リハーサルで検証した一連の作業手順に従ってデータ移行を行う。 〔体制とスケジュールの検討〕 B課長は、体制の検討に着手した。B課長は、部下の中からメンバを選任した。部下には現行システムの開発経験者がいなかった。 次にスケジュールの検討に着手した。業務機能開発のスケジュールを策定し、移行作業は、新システムのデータ設計が終盤に差し掛かる10月上旬から開始しようと考えた。B課長が現行システムの設計書を確認したところ、データ項目の更新契機と更新内容についてのまとまった記述がなかった。B課長は、移行方式設計に、当初想定していた以上の作業期間が必要になると考え、移行方式設計の開始時期を早め、現行システムのデータ項目について、更新契機と更新内容の整理を行うことにした。また、その作業を確実に進めるために、現行システムの業務機能の追加開発と運用保守を担当している情報システム部の責任者に、新システムの体制に関してある要請を行い、了解を得た。 システム構築のスケジュールを図に示す。 図 システム再構築のスケジュール 〔移行方式設計の状況〕 10月中旬となった。データ移行の方式は、評価の結果、案ロに決定した。決定したデータ移行の方式に基づいて、データ移行の一連の作業手順の設計を進めた。 〔総合テストの計画〕 11月に入り、B課長は新システムの業務機能開発の総合テストの計画を作成した。 B課長は、総合テストの後半から、テストデータとしてデータ移行で作成した新システムのデータを使用することにした。テストデータを充実させることによって、サービス開始後に安定したサービスを提供できると考えた。 また、総合テストの後半からは、移行作業の担当者と業務機能開発の担当者で合同の調査チームを編成することにした。合同の調査チームを編成することで、発生した不具合事象の原因を迅速に究明できると考えた。 総合テストは、新システムの本番稼働向けに構築した環境で行う。総合テストと移行総合テスト、移行リハーサルの作業が重なる期間は、実施時間帯を分けて、相互に影響がないように進める。 〔移行総合テストの状況〕 2月の最終週となった。移行総合テストで課金インタフェースファイルの比較を行った結果、本番移行の対象データのうちの200件のデータの値が一致していないことが判明した。原因を追究したところ、過去に利用部門が業務機能を利用して、これら200件のデータの値を個々に変更していたことが分かった。この変更に関して利用部門から情報の提供はなく、移行プログラムで対応していなかった。この200件のデータを、現行システムでの変更に合わせた値となるように、移行プログラムで対応するには、多くの箇所に修正を加える必要がある。B課長は、対策案として次の二つの案を検討した。 案1:移行プログラムを修正する。 案2:本番移行の中で、利用部門が業務機能を利用して、対象データの値を個々に変更する。 B課長は、案1で想定されるリスクへの対策を検討した。また、案2が本番移行時に確実に実施できることの検証を行った。 設問1 〔データ移行計画の作成〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) B課長が、案ロ、案ハは、本番移行のリスクを軽減させるために効果があると考えた理由を、20字以内で述べよ。 (2) 本番移行が必要なデータの件数と種類を基にして、実施する本番移行の実現性を評価する作業とは何か。20字以内で述べよ。 (3) B課長が、移行リハーサルで本番移行を確実に実施できることを検証する上で考慮すべき観点を、20字以内で述べよ。 設問2 〔体制とスケジュールの検討〕について、B課長が、現行システムの業務機能の追加開発と運用保守を担当している情報システム部の責任者に対して行った要請の内容を、25字以内で述べよ。 設問3 〔総合テストの計画〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) B課長は、総合テストの後半から、テストデータとしてデータ移行で作成した新システムのデータを使用することにした。B課長が、テストデータを充実させることによって、サービス開始後に安定したサービスを提供できると考えた理由を、25字以内で述べよ。 (2) B課長が、移行作業の担当者と業務機能開発の担当者で合同の調査チームを編成することで、発生した不具合事象の原因を迅速に究明できると考えた理由を、40字以内で述べよ。 設問4 〔移行総合テストの状況〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) B課長が、案1で想定したリスクを、30字以内で述べよ。 (2) B課長が、案2が本番移行時に確実に実施できることを検証するために行った内容を、35字以内で述べよ。
図 システム再構築のスケジュール。新システムと現行システムのサービス提供期間、業務機能開発、移行方式設計、移行プログラム開発、各種テスト、移行実施の月別スケジュールを示す図。
図 システム再構築のスケジュール。新システムと現行システムのサービス提供期間、業務機能開発、移行方式設計、移行プログラム開発、各種テスト、移行実施の月別スケジュールを示す図。
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データ移行の検討で前提をそろえる

データ移行について考えるときは、判断の根拠となる前提が明確かという一点に注目しましょう。与えられた情報から確認できることと、自分の経験や印象で補っていることを区別すると、検討の筋道を整理できます。

この問題で問われていること

この分野では、ある判断がどの前提に基づいているかを意識して検討しましょう。一般に当てはまりそうだという印象だけで結論を急がず、その前提が与えられた情報に含まれているかを確かめることが、考えを整理する手掛かりになります。

視点

考えの根拠をたどり、明示された前提と自分が補った仮定を分けて整理します。仮定に気付いたら、確定した情報として扱っていないかを振り返りましょう。

確認ポイント

  • 判断の土台にした前提を言葉にできているか
  • その前提を支える情報が与えられているか
  • 自分が補った仮定を確定した情報として扱っていないか
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解説

本問の要点は、200万件のデータを正しく移行し、本番移行を6時間以内に完了させる計画を作ることです。事前移行による作業軽減、現行システムの経験者の参加、実データに近いテスト、合同調査及び不具合対策の検証を関連付けて理解する。

問題の全体像

A社は契約情報管理システムを再構築し、4月1日に新システムのサービスを開始する。移行対象は200万件で、本番移行は6時間以内に終える必要がある。公式資料の出題趣旨では、制約の下でのデータ移行計画、関連作業との連携、新たな課題への対応が問われている。設問では、移行時間とデータの正しさを中心に、必要な体制、テストの進め方、発見された不具合への対策を説明する。

設問1(1)

案ロは変更されないデータを先に移行し、案ハは全データを先に移行して、その後に変更されたデータを本番移行する。どちらも本番移行で扱うデータを減らせるため、6時間制約に対するリスクを軽減できる。公式解答例では、時間短縮、作業軽減、対象データ削減が示されている。20字以内では「本番移行の時間短縮ができるから」のように、事前移行の効果を端的に表す。

設問1(2)

着目するのは、本番移行が必要なデータの「件数と種類」を基に、方式決定前に実現性を評価するという記述です。件数や種類に応じて必要な作業時間を見積もり、6時間以内に完了できるかを判断する。公式解答例では「本番移行の作業時間を見積もる。」と示されている。20字以内では、評価のために行う具体的な作業を答える。後工程の移行リハーサルと区別する。

設問1(3)

移行リハーサルでは、手順や作成データの確認に加え、本番移行を「制約の下で確実に実施できること」を検証する。その制約は、サービス提供時間帯を避け、6時間以内に終えることです。公式解答例では「本番移行が6時間以内で終わること」と示されている。20字以内では、単に時間を確認すると書かず、6時間以内という判断基準まで含める。

設問2

選任した部下に現行システムの開発経験者がおらず、設計書にもデータ項目の更新契機と更新内容のまとまった記述がない点に着目する。必要な情報を整理するには、現行システムを知る人材の参加が必要になる。公式解答例では「現行システムの開発経験者を参加させる。」と示されている。25字以内では、要請した人材の経験と参加させることを明確にする。

設問3(1)

総合テストの後半から、現行システムのデータを移行して作成した新システムのデータを使う点に着目する。このデータを使えば、本番で利用するデータに近い条件で業務機能をテストでき、稼働後に現れる不具合の発見につながる。公式解答例では「本番環境に近いデータでテストができるから」と示されている。25字以内では、テストデータを充実させる具体的な効果を表します。

設問3(2)

移行したデータを用いる総合テストでは、不具合の原因が移行作業にあるのか、業務機能開発にあるのかを調べる必要がある。両担当者の合同チームなら、双方の知識を使い、並行して調査できる。公式解答例では、原因の切分けの迅速化、両面からの並行調査、担当者の連携が示されている。40字以内では「移行作業と業務機能開発の両面から並行して原因を調査できるから」のように、迅速化の仕組みを書く。

設問4(1)

不一致が判明したのは2月最終週であり、200件に対応するには移行プログラムの多くの箇所を修正する必要がある。サービス開始までの時間が限られることと、修正範囲が広いことからリスクを考える。公式解答例では、修正が間に合わずサービス開始が遅延すること、デグレードによってデータ移行の見通しが立たなくなることが示されている。30字以内では、修正によって生じる具体的な支障を簡潔に述べる。

設問4(2)

案2は、本番移行の中で利用部門が業務機能を使い、対象データを個々に変更する案です。確実に実施できるかは、変更の正しさと作業時間から確認する。公式解答例では、実際の業務機能で正しく変更できることの確認、変更後のデータによる比較結果の一致確認、作業時間の測定による時間内実施の確認が示されている。35字以内では、例えば「作業時間を測定し、本番移行の時間内に実施できるか確認する」のように、行った検証を具体的に表す。

学習のポイント

作業時間の見積りとリハーサルによる検証を区別し、データの正しさ、担当者の連携、修正リスクを本文の条件から説明する練習をする。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度春期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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