PMプロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ

平成22年度春期 プロジェクトマネージャ 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 新システムの構築に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 金融機関のC社は,これまで地域の個人客を中心にマーケット展開をしていたが,業容の拡大を図るために,法人分野を得意とするE社と業務面・システム面での包括的な協力関係を1月に結んだ。その一環として,E社の法人向け商品を基にしてC社独自の商品を開発して販売することにした。E社の法人向け商品の販売管理システム(以下,E社システムという)をC社用に改造したシステム(以下,新システムという)を,E社の支援を受けながら,図1のスケジュールに従って構築し,10月からの商品販売開始を目指すことにした。 図1 スケジュール 〔プロジェクトの発足〕 E社と合同の新システムの構築プロジェクトが組織され,プロジェクトマネージャにはC社システム部のD課長が任命された。C社からは,システム部の新システム開発対応メンバ3名(以下,新システム担当という)と,利用部門のメンバ3名がプロジェクトに参加した。 外部設計から結合テストまでは,E社システムの構築経験が豊富なF社に請負で委託する予定である。一方,E社では4月の稼働開始を目標とする大規模な改修を厳しいスケジュールの下で進めている。また,次の大規模な改修を10月以降に予定しており,F社がこれらの対応を行う。この状況を踏まえ,D課長は,外部設計を円滑に進めることができるように,次の対応を行った。 ・外部設計の開始時期を考えると,4月向け大規模改修後のE社システムを基にして外部設計以降の開発作業を進める方法もある。しかし,①本番稼働前のE社システムを基にして開発作業を進めると,十分な稼働実績がないことから,新システムの開発スケジュールに悪影響を及ぼす追加の作業が頻発するおそれがある。そこで,4月向け大規模改修前のE社システムを基にして開発作業を進めることにした。 ・外部設計以降の開発作業におけるC社にとってのメリットを考え,E社の支援を受けながら,新システム担当にE社特有の用語を収集して解説した用語集を作成させた。 〔利用部門との連携〕 4月から9月末までの6か月間という短期開発なので,D課長はE社システムに業務を合わせることで開発規模を絞り込むこと,及び3月末に要件定義が完了することを重要視した。そして,②開発作業を予定どおりに進める上でのリスクを軽減するために,1月末に行うキックオフミーティングではE社システムを極力利用して業務プロセスを組み立てるように,CIOから利用部門に協力を要請してもらうことにした。 また,利用部門が精度の高い要件定義を効率よく行えるように,E社システムを利用してプロトタイプを構築することにした。 〔結合テストの品質評価方法の検討〕 D課長は,E社システムの過去の改修時にF社が作成した結合テストの計画書をE社から入手し,F社の品質評価方法を確認した。その結果,F社の結合テストにおける品質評価の考え方は次のとおりであり,C社と大きな違いのないことが分かった。 ・単位ステップ数当たりのテストケース数(以下,テスト密度という)及び障害検出数(以下,障害密度という)を基準値として用いる。 ・③品質評価の基準値を算出する際に使用するステップ数としては,新規に開発又は修正したステップ数に対して,ある条件に該当するプログラムのステップ数の一定割合を加えた値を使用する。これは,テスト密度及び障害密度について,新規に開発又は修正した部分の全体への影響を加味して適切に評価するためである。 ただし,F社の基準値はF社の過去のプロジェクトの実績値に基づいて設定されたものであり,C社の基準値と単純に比較評価することはできない。結合テストが終了した際は,テストの対象となる約50個の機能について図2の例に示すグラフを作成するようにF社に要請し,F社の品質の確保状況を次の方法で確認する必要があるとD課長は考えた。 図2 品質評価のグラフ(例) ・障害密度の実績値が基準値の上限を超える機能については,品質面での問題があることが想定されるので,原因分析に基づいた適切な対応が行われたかどうかを確認する。④例えば,当該機能の開発を担当したチームの体制面に原因があると想定される場合は,結合テストを開始するまでの開発作業の実施状況について,体制面の問題を踏まえた再確認が行われ,再確認の結果に基づいた適切な対応が行われたかどうかを確認する。 ・障害密度の実績値が基準値の下限に満たない機能については,十分な品質が確保できている場合と,もう一つの場合が想定される。どちらに該当するかを判断するためにテストケースの内容が適切であるかどうかを確認する。 ・テスト密度の実績値が基準値の範囲外となる機能については,テストケースに着目した適切な対応が行われたかどうかを確認する。 〔E社システムの障害への新システムでの対応〕 D課長は,E社システムの稼働中に発生する障害の中で,新システムでも対応が必要なものについては,8月に対応するスケジュールとした(図1)。これは,⑤障害発生の都度対応するのではなく,結合テストの後半にまとめて対応する方が,作業効率の面で優れているという考えによる。ただし,対応にかなりの工数を要する重大な障害が発生することも想定される。その場合は,10月に確実に稼働開始できるように,障害の新システムへの影響の有無,障害対応の内容及び必要工数を基にして,納期の観点からある確認をした上で,障害への対応方針を整理する必要があるとD課長は考えた。 設問1 〔プロジェクトの発足〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の下線①における,本番稼働前のE社システムを基にして開発作業を進めた場合に頻発するおそれがある追加の作業の内容を答えよ。 (2)D課長が,用語集を新システム担当に作成させたのは,C社にとってどのようなメリットがあると考えたからか。20字以内で述べよ。 設問2 〔利用部門との連携〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の下線②においてD課長は,開発作業を予定どおりに進める上での,どのようなリスクを軽減しようとしたのか。20字以内で述べよ。 (2)D課長が,E社システムを利用してプロトタイプを構築することによって,利用部門が精度の高い要件定義を行えると考えた理由を,20字以内で述べよ。 設問3 〔結合テストの品質評価方法の検討〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1)本文中の下線③における,ある条件に該当するプログラムとはどのようなプログラムか。30字以内で述べよ。 (2)本文中の下線④における,体制面の問題を踏まえた再確認では,具体的にどのようなことを確認するのか。30字以内で述べよ。 (3)障害密度の実績値が基準値の下限に満たない機能について想定される,もう一つの場合とはどのような場合か。20字以内で述べよ。 (4)テスト密度の実績値が基準値の範囲外となる機能について行う,テストケースに着目した適切な対応とはどのような内容か。20字以内で述べよ。 設問4 〔E社システムの障害への新システムでの対応〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の下線⑤において,結合テストの後半にまとめて対応する方が,作業効率の面で優れているとD課長が考えた理由を,30字以内で述べよ。 (2)D課長は,10月に確実に稼働開始できるように,納期の観点からどのような確認をする必要があると考えたのか。25字以内で述べよ。
図1 スケジュール。1月から10月までのプロジェクトのマイルストーン,新システム開発,E社システム改修の予定を示すスケジュール表。
図1 スケジュール。1月から10月までのプロジェクトのマイルストーン,新システム開発,E社システム改修の予定を示すスケジュール表。
図2 品質評価のグラフ(例)。テスト密度を横軸,障害密度を縦軸とし,両指標の基準値の上下限と約50機能の実績値を示した散布図。
図2 品質評価のグラフ(例)。テスト密度を横軸,障害密度を縦軸とし,両指標の基準値の上下限と約50機能の実績値を示した散布図。
解き方のヒントを見る

目的と時点をそろえて整理する

各記述を、何を防ぎたいのか、いつ確認・対応するのかという一つの軸で読み比べ、用語の印象ではなく役割と適用場面の整合性を確かめてください。対策の対象と期待する結果が同じ方向を向いているかも見ます。

この問題で問われていること

個々の記述を単独で覚えているかではなく、対象となる事象、確認する時点、期待される目的の三者が同じ整理軸に収まるかを確認することに集中してください。

視点

記述を読んだら、対象・時点・目的の関係を一つの流れとして整理し、似た印象の用語でも役割の置かれ方が同じかを落ち着いて確認しましょう。

確認ポイント

  • 対象となる事象が何かを確認する
  • 確認や対応の時点を整理する
  • 期待される目的とのつながりを確かめる
正解と解説を見る

解説

E社システムを基盤とする短期の協業開発を題材に、開発計画、利用部門との連携、品質評価、障害対応を多面的に問う問題です。

問題の全体像

C社は、E社の法人向け販売管理システムを改造し、10月の販売開始を目指して新システムを構築する。短期開発であり、E社システムの改修やF社への開発委託も並行するため、D課長は、安定した版を基にした開発、用語集、利用部門の協力、プロトタイプ、定量的な品質評価、障害対応時期の集約を計画した。出題の狙いは、協業先のシステムを改造する場合に必要な開発計画、体制整備、要件定義、品質管理、納期管理を、本文の状況に即して説明できるかを確認することです。

設問1(1)

着目するのは、4月向け大規模改修後のE社システムが本番稼働前で、十分な稼働実績を持たないという記述です。この状態では、稼働開始後に初期障害が発生し、それへの対応や修正作業が追加で必要になる。公式解答例は、その内容を「初期障害への対応」としている。

設問1(2)

E社特有の用語を新システム担当が収集・解説する点に着目する。用語集により、C社側の担当者がE社システムを早く、また深く理解でき、F社との外部設計以降の作業を円滑に開始できる。20字以内では、理解の促進または開発作業の円滑な立上げを一つの因果として書く。公式解答例もこの方向を示している。

設問2(1)

本文では、E社システムに業務を合わせて開発規模を絞り込むことが重視されている。利用部門が協力しないと独自要望や修正要望が増え、改修量が想定を超えて開発規模や予算が膨らむリスクがある。公式解答例では、改修量・修正要望の増大や予算超過が挙げられているため、20字以内では規模が想定以上に膨らむ点を押さえる。

設問2(2)

E社システムを使ってプロトタイプを作ることで、利用部門は画面や業務の流れを実際に確認できる。したがって、E社システムの使い勝手や特徴、新システムの内容を正確に把握し、要件を具体化できる。公式解答例では、使い勝手を実感できることや特徴を正確に把握できることが示されている。

設問3(1)

基準値算出に加えるのは、新規開発・修正部分の影響を受ける範囲です。したがって、該当するプログラムとは、新規に開発又は修正した部分と関連性が深く、その影響を受けるプログラムです。公式解答例の「影響を受けるプログラム」「関連性が深いプログラム」に対応させて書く。

設問3(2)

障害密度が高く、原因が担当チームの体制にあると想定する場合は、その機能だけでなく同じチームの他の成果物にも同様の問題がないかを確認する。公式解答例では、当該チームが担当したほかの機能、または作成したすべての成果物に品質上の問題がないことの確認が示されている。

設問3(3)

障害密度が基準値の下限未満でも、品質が高いとは限らない。テストケースが不足していて障害を検出しきれていない、つまり十分なテストが行われていない場合がもう一つの場合です。公式解答例も、テストケース不足や障害の未検出を挙げている。

設問3(4)

テスト密度が基準範囲外なら、テストケースの数だけでなく内容の妥当性を確認する必要がある。20字以内では、「テストケースの妥当性を確認する」または「テストケースを再レビューする」と、ケースそのものへの対応を書く。

設問4(1)

障害発生の都度対応すると、開発中の作業に何度も割り込み、対応や確認が重複する。結合テスト後半にまとめれば、品質が比較的安定した段階で処理でき、作業の重複や既存作業への影響を抑えられる。公式解答例では、まとめて行うことによる重複削減、品質安定、開発作業への影響低減が示されている。

設問4(2)

重大障害では、影響や必要工数を基に、10月の稼働開始時点で対応が必須かを確認する。さらに、納期を守るため、一部の対応を稼働開始後に回せないかも検討する。公式解答例では、稼働開始時に必須かどうか、および一部対応を稼働開始後にできるかどうかの確認が示されている。

学習のポイント

本文の因果関係を読み取り、字数内で原因と対応を簡潔に結び付ける力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度春期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針