PMプロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ

平成21年度春期 プロジェクトマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 プロジェクト推進方法の見直しに関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 M社は中堅のSI企業であり、通信事業者Q社の動画配信管理システムの開発を行っている。Q社の動画配信管理システムは、M社とは別のSI企業によって開発され、利用者へサービスを提供している。M社は、2年前に開発を引き継ぎ、これまでに数回、機能を追加する開発(以下、追加開発という)を行ってきた。今回、利用者へのサービス向上を目的に、追加開発を行うことになった。稼働開始は半年後である。 M社は、Q社から今回の追加開発の概要について説明を受けた。この説明の際に、Q社からM社に対して「これまでは全工程を委任契約とし、掛かった工数を費用精算してきた。今回は過去に開発を依頼した機能が対象なので、内部設計から結合テストまでは事前に発注額を決めて請負契約としたい。」との要請があった。M社は、Q社とのビジネス継続の観点とこれまでの追加開発の経験から、要請を了解した。 【プロジェクト推進方法の見直し】 M社では契約形態の変更を機にプロジェクト体制を強化することにし、今回の追加開発のプロジェクトマネージャ(PM)にN課長を任命した。N課長は、Q社のシステムの開発は初めてであるが、類似機能を有するシステムの開発経験や、請負契約でのプロジェクト推進の経験も豊富である。プロジェクトには、これまでの追加開発を担当してきた各リーダと配下の担当者が引き続き参加する。 N課長は、契約形態の変更に伴うプロジェクト推進方法の見直しに着手した。①まず、請負契約の締結に向けて、リスクを低減するために、Q社との間で、作成すべき成果物の種類や記述のレベルを合わせようと考えた。また、これまでの追加開発の中で、今後の問題となる点があれば改善しようと考えた。N課長は、これまでの経験から、問題点の改善に当たっては、実際の作業の進め方やルールの整備状況を分析して、原因を突き止めることが重要だと考えている。 【Q社訪問】 N課長はQ社開発部を訪問し、今回の追加開発の責任者であるR課長と、Q社内の取りまとめ役であり、M社との窓口担当者でもあるS主任と面談した。N課長が、「契約形態の変更もあるので、今後の作業の進め方をはじめとしていろいろ相談させていただきたい。」と話をしたところ、R課長から、「相談にはいつでも応じます。ところで今回の追加開発では、開発途中でサービス提供部門から仕様変更要求が発生するかもしれません。」と話があった。また、S主任から、「報告や連絡についての改善点があれば、提案をお願いします。」と話があった。 【仕様変更ルールの見直し】 N課長は、仕様変更の発生に備えて、これまでQ社との間で使用してきた仕様変更ルールを確認し、内部設計から結合テストまでを請負契約とする前提で、仕様変更ルールの見直しを開始した。これまでの仕様変更ルールを、表1に示す。 表1 これまでの仕様変更ルール N課長は、次のように仕様変更ルールの見直しをしようと考えた。 ・②項番2の検討・見積りについて、仕様変更ルールの見直し後も外部設計開始から総合テスト終了までの見積りを行うが、その報告内容の見直しをする。 ・③請負契約締結のために、外部設計終了後に再見積りをする手順を追加する。 ・項番5の契約について、全工程の一括契約から、外部設計、内部設計から結合テスト、総合テストそれぞれに分けて契約を締結するように変更する。 ・④項番6の報告について、定期的に報告している、その報告内容の見直しをする。 【過去のプロジェクトの状況の整理】 N課長は、これまでの追加開発の中で問題となる点がなかったかどうかを調べるために、ここ半年ほどのM社内の報告資料を閲覧した。そこから、各リーダと配下の担当者の残業時間が多いという問題点をつかんだ。そこで、N課長は、これまでの経験に基づいて、原因を突き止めて改善しようと考え、各リーダと配下の担当者を集めてヒアリングを行った。このヒアリングでは、出席者に自由に発言をするよう促したが、各リーダの発言が大半を占めた。N課長は、ヒアリングでの発言を整理し、⑤これまでのQ社との定例会議の運営に原因があると考えた。N課長は定例会議の運営状況を表2にまとめた。Q社との間に、報告内容の似た二つの定例会議があり、各リーダは会議の出席や準備に追われ、残業時間が増加していたことが分かった。 表2 これまでのQ社との定例会議の運営状況 進捗会議では毎回、検討項目のすべての未決事項についての状況報告を求められることから、事前の報告資料の作成と、進捗会議での報告に各リーダが多くの時間を費やしていることも分かった。⑥また、N課長は、各リーダと配下の担当者を集めて行ったヒアリングの様子から、各リーダ配下の担当者と個別にヒアリングをした。その結果、各リーダは忙しいので配下の担当者に適切な指示を出すことができず、作業の誤りとそれによる手戻りなどが多くなり、配下の担当者の残業時間が増加していることが分かった。 【プロジェクトの進め方の改善】 N課長は、Q社との定例会議の運営ルール案を表3のように作成した。 表3 Q社との定例会議の運営ルール案 ・進捗会議は、進捗状況と、遅れがある場合はその改善対策の報告、検討項目の状況報告と、Q社訪問時に話のあった【a】を目的の会議とする。 ・連絡会は、R課長と1対1で話をする機会として、原則、月次で開催する。ただし、急ぎの相談事項の発生の可能性を考え、【b】開催することを付け加えておく。 また、⑦検討項目の未決事項の状況報告に関して各リーダの負担を低減する改善案を、Q社への提案事項とした。 N課長は、仕様変更について、S主任に仕様変更ルールの見直し案を提案して合意を得た上で、見直した仕様変更ルールに従って対応していこうと考えている。しかし、⑧サービス提供部門からの仕様変更要求の多発などで、プロジェクト推進に問題が発生した場合、S主任との調整だけでは問題の解決が難しいときは、別の解決手段をとろうと考えている。 N課長は、これらの提案を実現させることで、各リーダが配下の担当者に対して適切に指示できるようになり、プロジェクトの進め方が改善できると考えた。 設問1 本文中の下線①について、成果物の種類や記述のレベルを合わせることで低減しようとしたリスクを、35字以内で述べよ。 設問2 【仕様変更ルールの見直し】について、(1)~(3)に答えよ。 (1)本文中の下線②について、見直しの内容を、35字以内で述べよ。 (2)本文中の下線③について、再見積りをする理由を、30字以内で述べよ。 (3)本文中の下線④について、見直しの内容を、25字以内で述べよ。 設問3 【過去のプロジェクトの状況の整理】について、(1)、(2)に答えよ。 (1)本文中の下線⑤について、N課長は、どのようなことをヒアリングして、定例会議の運営に原因があると考えたのか。20字以内で述べよ。 (2)本文中の下線⑥について、個別にヒアリングをしたねらいを、20字以内で述べよ。 設問4 【プロジェクトの進め方の改善】について、(1)~(3)に答えよ。 (1)表3中の【a】、【b】に入れる適切な字句を、10字以内で答えよ。 (2)本文中の下線⑦について、改善案の内容を、20字以内で述べよ。 (3)本文中の下線⑧について、別の解決手段とは何か。15字以内で述べよ。
表1 これまでの仕様変更ルール。仕様変更要求の提示から検討・見積り、承認・回答、認識合わせ、契約、報告までの従来ルールを示す表。
表1 これまでの仕様変更ルール。仕様変更要求の提示から検討・見積り、承認・回答、認識合わせ、契約、報告までの従来ルールを示す表。
表2 これまでのQ社との定例会議の運営状況。進捗会議と連絡会について、開催間隔、Q社・M社の出席者、会議で報告・協議する内容を整理した表。
表2 これまでのQ社との定例会議の運営状況。進捗会議と連絡会について、開催間隔、Q社・M社の出席者、会議で報告・協議する内容を整理した表。
表3 Q社との定例会議の運営ルール案。進捗会議と連絡会の目的、開催間隔、出席者、備考を示した改善後の定例会議ルール案。
表3 Q社との定例会議の運営ルール案。進捗会議と連絡会の目的、開催間隔、出席者、備考を示した改善後の定例会議ルール案。
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変更を扱う手順の見極め視点

契約や計画に関わる変更を検討するときは、関係者間の合意、影響範囲、記録と承認のつながりに注目し、個別の用語や順序を暗記せず、管理の一貫性を確かめる姿勢を持ちましょう。

この問題で問われていること

この問題では、変更や判断をその場の都合で進めるのではなく、誰が何を確認し、影響を整理し、合意内容を後から追える形で扱っているかという一点に絞って読み比べましょう。

視点

契約上の約束とプロジェクト運営上の判断は、関係者の認識をそろえ、変更の影響を見えるようにし、決定の根拠を記録へ結び付けて考えると整理しやすくなります。

確認ポイント

  • 変更の発生から判断・記録までが、関係者にとって追跡できる流れになっているか確認する。
  • 費用・納期・品質・責任分担などへの影響を、判断前に整理する考え方になっているか見る。
  • 個人の判断だけで進めず、契約や合意された権限に沿って承認される前提か確かめる。
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解説

請負契約への変更を前提に、成果物と見積りを明確化し、仕様変更ルール、会議運営、ヒアリング方法を見直して、契約上のリスクとプロジェクトの負担を低減する問題です。

問題の全体像

M社は、従来の委任契約から、内部設計から結合テストまでを請負契約とする追加開発に移行します。N課長は、請負契約に適した成果物・見積り・報告のルールを整え、過去の追加開発で発生した残業や手戻りの原因も分析します。設問では、契約時の成果物不明確リスク、仕様変更時の見積りと報告、会議・ヒアリングの改善、問題発生時のエスカレーションが問われています。

設問1

請負契約では、作成すべき成果物や記述レベルが曖昧だと、契約後に想定外の成果物を要求され、費用や期間が超過したり、成果物の認識違いからトラブルになったりします。したがって、35字以内では「成果物が不明確なまま契約して後でトラブルが発生する」または「想定外の成果物要求で費用・期間が超過する」という因果を押さえます。

設問2(1)

本文では、外部設計開始から総合テスト終了まで見積もる点は変えず、報告内容を見直すとあります。公式解答例では、工程を外部設計、内部設計から結合テスト、総合テストに分けること、また請負契約部分は工数ではなく金額で提示することが示されています。請負対象を明確に分離する点が要所です。

設問2(2)

外部設計終了後なら、仕様や作業内容が具体化し、請負対象工程の見積り精度を高められます。また、当初見積りとの差を確認して作業内容や金額を見直せます。30字以内では「外部設計の結果に基づき請負工程を見積もるため」など、再見積りによって請負契約の精度・リスクを改善する点を書きます。

設問2(3)

請負契約では、委任契約のように工数実績を費用精算の根拠として定期報告する必要はありません。公式解答例は、請負契約部分の工数実績を報告せず、結合テストの結果を報告する内容を示しています。25字以内では、請負部分の報告対象を工数から成果・品質へ変更することを示します。

設問3(1)

N課長は、残業時間が多いという結果だけでなく、実際の作業の進め方やルールの整備状況を分析しようとしています。さらに、報告内容が似た進捗会議と連絡会が存在し、リーダが出席・準備に追われている事実を表2から把握しました。20字以内では、作業方法・ルール、または重複した定例会議の存在を簡潔に示します。

設問3(2)

リーダと担当者を集めた場では、リーダの発言が大半を占めました。そのため担当者が大勢の前や利害関係者の前では話しにくい内容を述べられない可能性があります。個別ヒアリングのねらいは、担当者が話しやすい環境を作り、表面化しにくい問題を聞き出すことです。

設問4(1)(a)

S主任は訪問時に「報告や連絡についての改善点があれば、提案をお願いします」と述べています。その発言を受け、進捗会議の目的に加えるのは「報告や連絡の改善提案」です。公式解答例では「仕様変更に関する調整」も示されていますが、いずれもQ社訪問時の相談事項に対応する字句です。

設問4(1)(b)

連絡会は原則月次ですが、急ぎの相談事項にも対応する必要があります。したがって、空欄には「必要に応じて随時」が入ります。定例開催に加えて、緊急性のある相談を遅らせない運営ルールを表しています。

設問4(2)

進捗会議では、すべての未決事項について毎回報告を求められ、資料作成と報告がリーダの負担になっています。改善案は、全件を報告するのではなく、優先度が高い、解決期限が近い、重要な動きがあった未決事項に絞ることです。20字以内では、報告対象を重要な未決事項に限定する趣旨を示します。

設問4(3)

仕様変更要求が多発し、S主任との調整だけでは解決が難しい場合には、より上位の責任者へ相談する必要があります。本文では、R課長と1対1で相談できる連絡会を設けています。したがって、別の解決手段は「連絡会でR課長に相談する」です。

学習のポイント

契約条件と作業ルールを対応付け、本文の事実から改善策の目的を簡潔に表現する力を養います。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度春期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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