NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

令和6年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 データセンターのネットワークの検討に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。 K社は国内にデータセンターを所有する大手EC事業者である。データセンターのネットワークには,VXLAN(Virtual eXtensible Local Area Network)を利用している。K社の情報システム部は,ネットワークの拡張性を向上させるためにEVPN(Ethernet VPN)の適用を計画しており,EVPNを用いたVXLANの技術検証を行うことを検討している。 〔VXLANの概要〕 RFC 7348で規定されたVXLANでは,VXLANヘッダー内の[a]ビットのVNI(VXLAN Network Identifier)を用いて,約1、677万個のレイヤー2のオーバーレイネットワークをレイヤー[b]のネットワーク上に構成できる。VXLANトンネルの端点であるVTEP(VXLAN Tunnel End Point)は,VXLANのカプセル化及びカプセル化の解除を行う。VTEP及びVXLANトンネルの構成例を図1に示す。 図1 VTEP及びVXLANトンネルの構成例 図1中のL3SWのVTEPは,サーバから受信したイーサネットフレームに,VXLANヘッダー,[c]ヘッダー及びIPv4ヘッダーを付加したIPパケット(以下,VXLANパケットという)を,宛先のVTEP(以下,リモートVTEPという)に転送する。転送されるVXLANパケットの送信元及び宛先には,各VTEPに割り当てられたIPアドレスを利用する。VXLANパケットの構造を図2に示す。 図2 VXLANパケットの構造 VTEPは,イーサネットフレームの宛先に応じてVXLANパケットの宛先を決定するための情報として,リモートVTEPから受信したVXLANパケットから次の情報を組み合わせて学習する。 ・①リモートVTEPに接続されたサーバのMACアドレス ・②VXLANトンネルのVNI ・③リモートVTEPのIPアドレス K社の現行のネットワークでは,VTEPは,自身に接続されたサーバからリモートVTEPに接続されたサーバ宛てのイーサネットフレームを,次の方式を選択して転送する。 ・イーサネットフレームが,VTEPによって学習されているサーバ宛てのユニキャストの場合には,図2中のIPv4ヘッダーの宛先IPアドレスに,リモートVTEPのIPアドレスをセットして転送する。 ・④イーサネットフレームが,BUM(Broadcast、 Unknown Unicast、 Multicast)フレームの場合には,図2中のIPv4ヘッダーの宛先IPアドレスに,IPマルチキャストのグループアドレスをセットして転送する。 〔現行の検証ネットワーク〕 K社は,現行のネットワークの維持管理のために,検証ネットワーク(以下,検証NWという)を構築している。現行の検証NWを図3に示す。 図3 現行の検証NW(抜粋) 図3の概要を次に示す。 ・物理サーバに接続するL3SWのポートには,タグVLANを設定している。 ・物理サーバの二つのNICはアクティブ/スタンバイ構成であり,L3SW11,L3SW21及びL3SW31に接続するNICをアクティブにしている。 ・L3SWの経路制御にはOSPFを用いている。 ・L3SWは,OSPFで交換するLSA(Link State Advertisement)の情報から[d]というデータベースを作成する。次に,[d]を基に,それぞれのL3SWを根とする[e]ツリーを作成して,ルーティングテーブルに経路情報を登録する。 ・⑤LSAに含まれるルータIDには,それぞれのL3SWのループバックインタフェースに割り当てたIPアドレスを使用している。 ・⑥OSPFのECMP(Equal-Cost Multipath)によって,トラフィックを負荷分散している。 ・PIM-SM(Protocol Independent Multicast - Sparse Mode)によるIPマルチキャストルーティングを用いており,L3SW01及びL3SW02にIPマルチキャストのランデブーポイントを設定している。 現行の検証NWのVLAN,VXLAN及びVTEPを図4に示す。 図4 現行の検証NWのVLAN,VXLAN及びVTEP(抜粋) 図4の概要を次に示す。 ・図3の物理ネットワーク上に,VXLANトンネルを論理的に構成している。 ・L3SW11,L3SW12,L3SW21,L3SW22,L3SW31及びL3SW32にVTEPを設定している。 ・⑦VTEPのIPアドレスには,それぞれのL3SWのループバックインタフェースに割り当てたIPアドレスを使用している。 ・VTEPのBUMフレームの転送には,IPマルチキャストを用いる設定にしている。 ・VTEPでは,図4中の「VXLANのカプセル化に用いる対応表」に示す次の三つの情報を対応させてカプセル化を行っている。 -受信したイーサネットフレームの「VLAN ID」 -VXLANトンネルの「VNI」 -BUMフレームを転送するときに使うIPマルチキャストの「グループアドレス」 レイヤー2のネットワークにおけるVM11及びVM23と各VMの通信可否を表1に示す。 表1 レイヤー2のネットワークにおけるVM11及びVM23と各VMの通信可否(抜粋) 〔現行の検証NWにおけるVTEPの動作〕 図4中のVM11とVM31のARP通信におけるVTEPの動作を,次に示す。 (1) L3SW11のVTEPでは,⑧VM11から受信したVM31のMACアドレスを問い合わせるARP要求フレームに対してVXLANのカプセル化を行い,IPマルチキャストのグループアドレスを宛先にして,グループに参加する全てのリモートVTEPに転送する。 (2) L3SW12,L3SW21,L3SW22,L3SW31及びL3SW32のVTEPでは,受信したVXLANパケットのカプセル化を解除して,対応するVLANにARP要求フレームをブロードキャストする。 (3) L3SW31のVTEPでは,⑨VM31から受信したARP応答フレームに対して,VXLANのカプセル化を行い,L3SW11のVTEP宛てに転送する。 (4) L3SW11のVTEPでは,受信したVXLANパケットのカプセル化を解除して,VM11宛てにARP応答フレームを転送する。 (1)~(4)の動作完了後に確認できる,L3SW11及びL3SW31が学習したVXLANについての情報を,表2に示す。 表2 L3SW11及びL3SW31が学習したVXLANについての情報 〔EVPNの概要〕 K社の情報システム部では,S課長から指示を受けたQ主任が,EVPNを用いたVXLANの技術検証を検討することになった。Q主任が調査したEVPNの概要を示す。 RFC 7432及びRFC 8365で規定されたEVPNは,RFC 4760で規定されたMP-BGP(Multiprotocol Extensions for BGP-4)を用いて,オーバーレイネットワークを制御するための情報を交換する。VXLANのネットワークにEVPNを適用した場合,コントロールプレーンにEVPNを用いてオーバーレイネットワークを制御して,データプレーンにVXLANを用いてイーサネットフレームを転送する。 図1の構成例に対してEVPNを適用した場合のEVPNの主な機能について,Q主任がK社の現行のネットワークと比較して確認した内容を次に示す。 機能1:リモートVTEPに関する情報の学習について 現行のネットワークでは,VTEPは受信したVXLANパケットからリモートVTEPの情報を学習する。EVPNを適用した場合,VTEPはMP-BGPを用いて,リモートVTEPのIPアドレス及びVNIなどの情報をあらかじめ学習する。 機能2:リモートVTEPに接続されたサーバに関する情報の学習について 現行のネットワークでは,VTEPは受信したVXLANパケットから,リモートVTEPに接続されたサーバのMACアドレス,VNI及びリモートVTEPのIPアドレスの情報を学習する。EVPNを適用した場合,VTEPはMP-BGPを用いて,リモートVTEPに接続されたサーバのMACアドレス,VNI及びリモートVTEPのIPアドレスなどの情報をあらかじめ学習する。 機能3:サーバとの接続について 現行のネットワークでは,複数のVTEPとサーバの接続にリンクアグリゲーションを利用できない。EVPNを適用した場合,VTEPはMP-BGPを用いて,自身に接続されたサーバを識別するESI(Ethernet Segment Identifier)という識別子を交換できるようになる。同じESIを設定した論理インタフェースをもつ複数のVTEPは,サーバとの接続にリンクアグリゲーションを利用できる。 〔新検証NWの設計〕 Q主任は,現行の検証NWを基に,EVPNを用いたVXLANを検証するためのネットワーク(以下,新検証NWという)を設計することにした。新検証NWを図5に示す。 図5 新検証NW(抜粋) 現行の検証NWから新検証NWに流用される設計を次に示す。 ・新検証NWのL3SW及びVMには,図3及び図4中のIPアドレス及びVLAN IDと同じ値を割り当てる。 ・物理サーバに接続するL3SWのポートには,タグVLANを設定する。 ・L3SWの経路制御にOSPFを用いて,現行の検証NWと同じ設定にする。 ・新検証NWのVLAN,VXLAN及びVTEPを図4と同じ論理構成にする。 ・L3SW11,L3SW12,L3SW21,L3SW22,L3SW31及びL3SW32にVTEPを設定する。 ・VTEPには,それぞれのL3SWのループバックインタフェースに割り当てるIPアドレスを使用する。 新検証NWに追加されるEVPNについての設計を次に示す。 ・L3SWのEVPNを有効にする。 ・L3SWにMP-BGPを設定して,ASを65001にする。 ・⑩L3SW01及びL3SW02をMP-BGPのルートリフレクタにして,L3SW01とL3SW02との間でiBGPピアリングを行う。 ・L3SW11,L3SW12,L3SW21,L3SW22,L3SW31及びL3SW32をルートリフレクタのクライアントにして,L3SW01及びL3SW02とiBGPピアリングを行う。 ・iBGPのピアリングに使用するIPアドレスには,それぞれのL3SWのループバックインタフェースに割り当てるIPアドレスを使用する。 新検証NWにおける,現行の検証NWから変更される設計を次に示す。 ・現行の検証NWで用いていたIPマルチキャストルーティングについては,利用しない。 ・VTEPのBUMフレームの転送には,IPユニキャストを用いる設定にする。 ・物理サーバの二つのNICをアクティブ/アクティブ構成にして,リンクアグリゲーションを用いてL3SWに接続する。 Q主任は,EVPNの機能1~3,図3~5を参照して,新検証NWの設計及びEVPNの機能を,上司のS課長に説明した。2人の会話を次に示す。 Q主任:EVPNの技術検証を行うための新検証NWを設計しました。図5のとおり,L3SWにMP-BGPを設定して,EVPNを用いたVXLANを構成するための物理ネットワークを構築します。VLAN,VXLAN及びVTEPについては,図4と同じ論理構成を組みます。 S課長:新検証NWでEVPNをどのように利用するのか教えてください。 Q主任:EVPNの「機能1」では,L3SWのVTEPはMP-BGPを利用して,リモートVTEPの情報をあらかじめ学習します。BUMフレームを受信したVTEPは,学習したリモートVTEPの情報を参照して,VLAN IDに対応するVNIをもつ各リモートVTEPを宛先に転送できるようになります。VTEPのBUMフレームの転送には,IPユニキャストを用いる設定にします。 S課長:IPマルチキャストルーティングを利用できないネットワークであっても拡張できるようになるのですね。ほかの機能についても説明してください。 Q主任:EVPNの「機能2」では,VTEPはMP-BGPを利用して,リモートVTEPに接続されたVMのMACアドレス,VNI及びリモートVTEPのIPアドレスをあらかじめ学習します。VTEPは,リモートVTEPに接続されたVM宛てのイーサネットフレームを,学習した情報を参照して転送します。「機能2」によって,BUMフレームのうちの[f]によるフラッディングの発生を低減できます。 S課長:ネットワーク負荷の軽減を期待できそうですね。ところで,図5中の物理サーバとL3SWの接続方法は,図3中の接続方法と異なるのですか。 Q主任:物理サーバとL3SWとの間は,⑪EVPNの「機能3」によって,リンクアグリゲーションを用いて接続します。同一の物理サーバに接続する2台のL3SWに作成するリンクアグリゲーションの論理インタフェースには,同一の物理サーバに接続されていることを識別させるために,同じ[g]を設定します。 S課長:新検証NWを使ってどのようなテストを実施するのか教えてください。 Q主任:VM同士の通信可否を確認します。 S課長:現行の検証NWから設定を変更するBUMフレームの転送についても,動作を確認してください。 Q主任:分かりました。⑫ARP要求フレームをカプセル化した全てのVXLANパケットをキャプチャして,宛先IPアドレスを確認します。 Q主任が検討した新検証NWの設計及びテスト内容は,情報システム部で承認された。Q主任はEVPNの技術検証の実施のため,新検証NWの構築に着手した。 設問1 〔VXLANの概要〕について答えよ。 (1) 本文,図1及び図2中の[a]~[c]に入れる適切な字句又は数値を答えよ。 (2) 本文中の下線①~③について,それぞれの情報が図2中のどのヘッダー又はイーサネットフレームに含まれるか。図2中の字句を用いて答えよ。 (3) 本文中の下線④について,宛先IPアドレスをIPマルチキャストのグループアドレスにして転送する目的を,45字以内で答えよ。 設問2 〔現行の検証ネットワーク〕について答えよ。 (1) 本文中の[d],[e]に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 本文中の下線⑤について,K社においてルータIDは,OSPFのネットワーク内で何を識別するものか。20字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線⑥について,ECMPを用いるために必要となる設計を,「経路」と「コスト」という字句を用いて45字以内で答えよ。 (4) 本文中の下線⑦について,VTEPのIPアドレスに物理インタフェースのIPアドレスではなく,ループバックインタフェースのIPアドレスを使用するのはなぜか。45字以内で答えよ。 (5) 表1中の[ア]~[カ]に入れる適切な通信可否を,表1の凡例に倣い「○」又は「×」で答えよ。 設問3 〔現行の検証NWにおけるVTEPの動作〕について答えよ。 (1) 本文中の下線⑧について,VXLANパケットの宛先IPアドレスを答えよ。 (2) 本文中の下線⑨の動作について,L3SW31がL3SW11のVTEP宛てに転送するために,L3SW11からARP要求フレームを含むVXLANパケットを受信したときに学習する情報を,45字以内で答えよ。 (3) 表2中の[キ]~[コ]に入れる適切な字句を,図3及び図4中の字句を用いて答えよ。 設問4 〔新検証NWの設計〕について答えよ。 (1) 本文中の下線⑩について,ルートリフレクタを用いる利点を「iBGP」という字句を用いて25字以内で答えよ。また,図5中のL3SW01及びL3SW02をルートリフレクタとして冗長化するときに,ループを防止するために設定するIDの名称を答えよ。 (2) 本文中の[f],[g]に入れる適切な字句を,本文中の字句を用いて答えよ。 (3) 本文中の下線⑪について,現行の検証NWと比較したときの利点を25字以内で答えよ。 (4) 本文中の下線⑫について,VTEPは宛先IPアドレスにセットするリモートVTEPのIPアドレスをどのように学習するか。20字以内で答えよ。 (5) 本文中の下線⑫について,あるVLAN IDをセットされたARP要求フレームは,VTEPによってどのようなリモートVTEPに転送されるか。「VNI」という字句を用いて40字以内で答えよ。
図1 VTEP及びVXLANトンネルの構成例。複数のL3SWに配置されたVTEP間をVXLANトンネルで接続し,各VTEPにサーバが接続される構成を示す図。
図1 VTEP及びVXLANトンネルの構成例。複数のL3SWに配置されたVTEP間をVXLANトンネルで接続し,各VTEPにサーバが接続される構成を示す図。
図2 VXLANパケットの構造。IPv4ヘッダー,UDPヘッダー,VXLANヘッダー,イーサネットフレームの順に並ぶVXLANパケットの構造を示す図。
図2 VXLANパケットの構造。IPv4ヘッダー,UDPヘッダー,VXLANヘッダー,イーサネットフレームの順に並ぶVXLANパケットの構造を示す図。
図3 現行の検証NW(抜粋)。OSPFエリア内のL3SWと物理サーバ,NIC,仮想スイッチ,VMの接続構成及びL3SWのループバックIPアドレス表。
図3 現行の検証NW(抜粋)。OSPFエリア内のL3SWと物理サーバ,NIC,仮想スイッチ,VMの接続構成及びL3SWのループバックIPアドレス表。
図4 現行の検証NWのVLAN,VXLAN及びVTEP(抜粋)。L3SWごとのVTEP,VLAN,VNI,VM及びIPマルチキャストグループアドレスの対応関係を示す図表。
図4 現行の検証NWのVLAN,VXLAN及びVTEP(抜粋)。L3SWごとのVTEP,VLAN,VNI,VM及びIPマルチキャストグループアドレスの対応関係を示す図表。
表1 レイヤー2のネットワークにおけるVM11及びVM23と各VMの通信可否(抜粋)。VM11及びVM23を通信元,各VMを通信先として,レイヤー2通信の可否を○と×で示す表。
表1 レイヤー2のネットワークにおけるVM11及びVM23と各VMの通信可否(抜粋)。VM11及びVM23を通信元,各VMを通信先として,レイヤー2通信の可否を○と×で示す表。
表2 L3SW11及びL3SW31が学習したVXLANについての情報。L3SW11及びL3SW31について,接続VMのMACアドレス,VNI,リモートVTEPのIPアドレスを示す表。
表2 L3SW11及びL3SW31が学習したVXLANについての情報。L3SW11及びL3SW31について,接続VMのMACアドレス,VNI,リモートVTEPのIPアドレスを示す表。
図5 新検証NW(抜粋)。MP-BGP AS65001及びOSPFエリア内で,ルートリフレクタ,iBGPピア,VTEP,物理サーバを接続した新検証ネットワークの構成図。
図5 新検証NW(抜粋)。MP-BGP AS65001及びOSPFエリア内で,ルートリフレクタ,iBGPピア,VTEP,物理サーバを接続した新検証ネットワークの構成図。
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記述が成り立つ範囲を意識して整理

この分野を学ぶときは、記述がどの範囲を対象としているかに注目しましょう。与えられた情報に沿って、明示された条件と自分で補った前提を区別し、対象の範囲を広げずに整理することが大切です。

この問題で問われていること

検討するときは、ある対象について述べられた内容を、別の対象にも当てはめていないかを確認しましょう。各記述の対象と条件を与えられた情報の中で確かめ、明示されていない範囲まで一般化していないかを振り返ります。

視点

記述には、それが対象とする範囲があります。範囲を定める条件を外して受け取ると、情報の意味が変わることがあります。知っている用語から内容を補う前に、その記述がどこまでを対象としているかを整理しましょう。

確認ポイント

  • 記述の対象となる範囲を確かめたか
  • 範囲を限定する条件を読み落としていないか
  • 明示された範囲を自分の推測で広げていないか
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解説

VXLANのカプセル化とVTEPの学習情報を理解し、図表からレイヤー2の通信範囲とARPの転送先を読み取る問題です。さらに、OSPFの経路計算と冗長性、EVPNによる情報の事前学習、ルートリフレクタ、リンクアグリゲーションの効果を説明する。

問題の全体像

K社は、データセンターで利用中のVXLANにEVPNを適用し、ネットワークの拡張性を高めようとしている。現行構成では受信したVXLANパケットから転送情報を学習し、BUMフレームにはIPマルチキャストを使用する。新構成ではMP-BGPによる事前学習、BUMフレームのIPユニキャスト転送、サーバ接続のリンクアグリゲーションを導入する。公式の出題趣旨では、レイヤー2とレイヤー3の技術を正しく理解し、VXLANとEVPNの導入・運用に活用できるかを問うとしている。

設問1(1)(a)

本文の「約1、677万個のレイヤー2のオーバーレイネットワーク」に着目する。VNIはネットワークを識別する値であり、24ビットなら2の24乗、すなわち16、777、216通りを表現できる。本文の規模と対応するため、公式解答例では「24」となる。

設問1(1)(b)

本文では、イーサネットフレームをIPv4パケットにカプセル化し、VTEPのIPアドレスを使って転送している。したがって、レイヤー2のオーバーレイネットワークを載せる基盤はレイヤー3のネットワークです。図1の中央のネットワークもこの基盤を示しており、公式解答例では「3」となる。

設問1(1)(c)

図2の構造は、外側からIPv4ヘッダー、空欄cのヘッダー、VXLANヘッダー、イーサネットフレームの順です。VXLANのカプセル化ではUDPを使用するため、公式解答例では「UDP」となる。採点講評では、この空欄の正答率が低かったことと、カプセル化がVXLANを理解する上で重要であることを指摘している。

設問1(2)(①)

下線①は、リモートVTEPに接続されたサーバのMACアドレスです。これは外側のIP通信の情報ではなく、カプセル化された元のフレームに含まれる情報です。受信時には内側の送信元MACアドレスから学習するので、図2の字句を使い、公式解答例では「イーサネットフレーム」となる。

設問1(2)(②)

下線②はVXLANトンネルのVNIです。本文冒頭に「VXLANヘッダー内の[a]ビットのVNI」と明記されているため、格納場所をその記述から判断できる。公式解答例では、図2の表記どおり「VXLANヘッダー」となる。

設問1(2)(③)

下線③はリモートVTEPのIPアドレスです。本文では、VXLANパケットの送信元と宛先に各VTEPのIPアドレスを使うとしている。受信したパケットの外側の送信元IPアドレスが送信側VTEPを示すため、公式解答例では「IPv4ヘッダー」となる。

設問1(3)

下線④のBUMフレームは、特定の学習済み宛先だけに送ればよいフレームではありません。本文のARP要求の動作では、グループに参加する全てのリモートVTEPへ転送している。同じレイヤー2のネットワーク全体へ届ける目的を答える。公式解答例では「同じレイヤー2のネットワークをもつ全てのリモートVTEPに転送するため」としており、45字以内では転送対象と目的を押さえる。

設問2(1)(d)

空欄dは、OSPFで交換するLSAの情報から作成され、経路計算の基になるデータベースです。LSAによるリンク状態の情報を保持するLSDBを指すため、公式解答例では「LSDB」となる。LSAという交換情報と、それを集めたデータベースを区別する。

設問2(1)(e)

本文は、LSDBを基に各L3SWを根とするツリーを作り、その結果をルーティングテーブルに登録する流れを示している。OSPFが求めるのは各宛先までの最短経路であり、公式解答例では「最短経路」となる。空欄の後ろに「ツリー」があるので、その語まで重ねて書かない。採点講評でも、この空欄の正答率が低かったと指摘されている。

設問2(2)

下線⑤では、各L3SWのループバックIPアドレスをルータIDとして使用している。ただし、問われているのは使用する値ではなく、識別する対象です。公式解答例では「OSPFが動作する各L3SW」となる。20字以内で対象を示し、インタフェースやネットワークを識別すると取り違えない。採点講評では、この設問の正答率が低かったとしている。

設問2(3)

下線⑥のECMPは、等しいコストの複数経路を利用する仕組みです。図3に複数の物理経路があるだけでは条件を満たさず、同じ宛先へ至る各経路のコスト合計をそろえる必要がある。公式解答例では「複数ある経路のそれぞれの経路について,コストの合計値を同じ値にする。」としている。45字以内で、指定語の「経路」「コスト」と合計値が等しいことを含める。

設問2(4)

図3では各VTEPを設定するL3SWが、上位の2台のL3SWへ接続されている。VTEPのアドレスを特定の物理インタフェースに依存させなければ、一つの物理インタフェースに障害が起きても、別の経路で通信を継続できる。公式解答例では「一つの物理インタフェースに障害があってもVTEPとして動作できるから」となる。45字以内では、障害の対象とVTEPの動作継続を結び付ける。

設問2(5)(ア)

アはVM23からVM11への通信可否です。図4の対応表では、VM23のVLAN 230はVNI 10040、VM11のVLAN 110はVNI 10010に対応する。所属するレイヤー2のネットワークが異なるため、公式解答例では「×」となる。IPアドレスのプレフィックスが同じでも、VNIによる分離を確認する必要がある。

設問2(5)(イ)

イはVM23からVM12への通信可否です。VM23はVLAN 230からVNI 10040に、VM12はVLAN 120からVNI 10020に対応する。図4で異なるVNIに所属しているので、レイヤー2では通信できず、公式解答例では「×」となる。

設問2(5)(ウ)

ウはVM23からVM13への通信可否です。図4では、VM23のVNIは10040、VM13のVLAN 130に対応するVNIは10030です。同じレイヤー2のネットワークに属さないため、公式解答例では「×」となる。物理ネットワーク上で接続されていることと、論理的な通信範囲を区別する。

設問2(5)(エ)

エはVM23からVM31への通信可否です。VM31のVLAN 310はVNI 10010に対応し、VM23のVNI 10040とは異なる。両者が異なるレイヤー2のネットワークに属するため、公式解答例では「×」となる。VM31がVM11と通信できることを、VM23との通信可否に混同しない。

設問2(5)(オ)

オはVM23からVM32への通信可否です。図4では、VM23のVLAN 230とVM32のVLAN 320が、どちらもVNI 10040に対応する。各拠点のVLAN IDは異なっていても、同じVNIによって同じレイヤー2のネットワークを構成するため、公式解答例では「○」となる。

設問2(5)(カ)

カはVM23からVM33への通信可否です。VM23はVNI 10040、VM33のVLAN 330はVNI 10030に対応する。VM32とVM33は同じ物理サーバ上にあるが、所属する論理ネットワークは異なるため、公式解答例では「×」となる。

設問3(1)

下線⑧のARP要求はブロードキャストであり、現行構成ではIPマルチキャストで転送する。図4の対応表で、送信元VM11のVLAN 110をたどると、VNI 10010とグループアドレス239.0.0.1に対応する。したがって、公式解答例では「239.0.0.1」となる。問い合わせ先VM31のIPアドレスやVTEPのユニキャストアドレスを答える設問ではありません。

設問3(2)

本文の下線①~③で示した学習情報を、ARP要求の送信元に当てはめる。L3SW31は、内側の送信元であるVM11のMACアドレス、VXLANヘッダーのVNI、外側の送信元であるL3SW11のVTEPのIPアドレスを対応付けて学習する。公式解答例では「VM11のMACアドレス,VNI及びL3SW11のVTEPのIPアドレス」となる。45字以内でも、この三つの情報をそろえる。

設問3(3)(キ)

キは、L3SW11がVM31のMACアドレスに対応付けて学習したVNIです。図4では、VM31のVLAN 310とVM11のVLAN 110がともにVNI 10010に対応する。ARP応答もこのVNIを使って転送されるので、公式解答例では「10010」となる。

設問3(3)(ク)

クは、L3SW11から見たVM31側のリモートVTEPのIPアドレスです。ARP応答をカプセル化して送るのはL3SW31であり、図3のループバックアドレスは10.0.0.31です。公式解答例では「10.0.0.31」となる。採点講評では、クとコの逆転やVMのIPアドレスを答える誤りが指摘されている。

設問3(3)(ケ)

ケは、L3SW31がVM11のMACアドレスに対応付けて学習したVNIです。L3SW11から届いたARP要求は、図4のVLAN 110に対応するVNI 10010でカプセル化されている。したがって、公式解答例では「10010」となる。表2の両行とも同じレイヤー2のネットワークについての学習結果です。

設問3(3)(コ)

コは、L3SW31から見たVM11側のリモートVTEPのIPアドレスです。ARP要求を送ったVTEPはL3SW11であり、図3のループバックアドレスは10.0.0.11です。公式解答例では「10.0.0.11」となる。表の機器自身のアドレスではなく、その行のVMへ転送するときの相手側VTEPのアドレスを入れる。

設問4(1)(利点)

新構成では、各クライアントがL3SW01とL3SW02のルートリフレクタとiBGPピアリングを行う。ルートリフレクタが経路情報を反映することで、各装置間に個別のiBGPピアを設ける数を減らせる。公式解答例では「iBGPピアの数を減らすことができる。」となる。25字以内では指定語のiBGPとピア数の削減を明記する。採点講評では、設問4(1)の正答率が低かったとしている。

設問4(1)(ID名称)

問われているのは、2台のルートリフレクタを冗長化するときに、経路情報の反映によるループを防止するためのID名称です。公式解答例では「クラスターID」となる。OSPFで各L3SWを識別するルータIDや、サーバ接続を識別するESIと区別して覚える。

設問4(2)(f)

EVPNの機能2では、VMのMACアドレス、VNI、リモートVTEPのIPアドレスをあらかじめ学習する。その結果、宛先MACアドレスに対応する転送先を知らないために起きるフラッディングを減らせる。本文のBUMの表記から選び、公式解答例では「Unknown Unicast」となる。機能2の説明だけから、全てのブロードキャストがなくなるとは判断しない。

設問4(2)(g)

機能3の説明では、同じESIを設定した論理インタフェースをもつ複数のVTEPが、サーバとの接続にリンクアグリゲーションを利用できるとしている。会話中の空欄gも、2台のL3SWが同一の物理サーバに接続していることを識別する値です。公式解答例では「ESI」となる。

設問4(3)

現行構成のNICはアクティブ/スタンバイであり、新構成ではアクティブ/アクティブとリンクアグリゲーションへ変更する。比較すべき点は、通常時に二つの回線の帯域を利用できることです。公式解答例では「二つの回線の帯域を有効に利用できる。」となる。25字以内で帯域の有効利用を示し、現行構成にもある冗長性だけを述べない。

設問4(4)

下線⑫は新検証NWのテストであるため、現行構成の受信パケットによる学習ではなく、EVPNの機能1を参照する。機能1では、MP-BGPでリモートVTEPのIPアドレスやVNIをあらかじめ学習すると明記されている。公式解答例では「MP-BGPを用いて学習する。」となり、20字以内で学習に使う方式を答える。

設問4(5)

会話では、受信したBUMフレームのVLAN IDに対応するVNIをもつ各リモートVTEPへ転送すると説明している。ARP要求もこの対象なので、ネットワーク内の全VTEPではなく、該当するVNIをもつ全てのリモートVTEPを選ぶ。公式解答例では「VLAN IDに対応するVNIをもつ全てのリモートVTEP」となる。40字以内で指定語のVNI、VLAN IDとの対応、対象全体を含める。

学習のポイント

内側のVMのMAC・IPアドレスと外側のVTEPのIPアドレスを区別し、VNIによる通信範囲、OSPFの最短経路、EVPN適用前後の学習方法を重点的に学ぶ。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和6年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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