NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

令和6年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 電子メールを用いた製品サポートに関する次の記述を読んで,設問に答えよ。 Y社は,企業向けにIT製品を販売する会社であり,電子メール(以下,メールという)を使用して,販売した製品のサポートを行っている。Y社では,取扱製品の増加に伴って,サポート体制の強化が必要になってきた。そこで,サポート業務の一部を,サポートサービス専門会社のZ社に委託することを決定し,Y社の情報システム部のX主任が,委託時のメールの運用方法を検討することになった。 Y社のネットワーク構成を図1に,外部DNSサーバYが管理するゾーン情報を図2に,社内DNSサーバYが管理するゾーン情報を図3に示す。 図1 Y社のネットワーク構成(抜粋) 図2 外部DNSサーバYが管理するゾーン情報(抜粋) 図3 社内DNSサーバYが管理するゾーン情報(抜粋) Y社では,サポート契約を締結した顧客企業の担当者(以下,顧客という)からの製品サポート依頼を,社内メールサーバYに設定された問合せ窓口のメールアドレスである,support@y-sha.comで受け付けている。このメールアドレスはグループアドレスであり,support@y-sha.com宛てのメールは,Y社のサポート担当者のメールアドレスに配信される。サポート担当者は,送信元メールアドレスがsupport@y-sha.comにセットされた製品サポートのメール(以下,サポートメールという)を,社内メールサーバYを使用して顧客に返信している。 〔Y社のネットワーク構成とセキュリティ対策の背景〕 Y社のネットワーク構成とメールのなりすまし防止などの情報セキュリティ対策の背景について次に示す。 ・サポート担当者が送信したサポートメールが①社内メールサーバYからメール中継サーバに転送されるとき,②DNSラウンドロビンによってメール中継サーバY1又はY2に振り分けられる。 ・転送先のメール中継サーバが障害などで応答しないとき,社内メールサーバYは,他方のメール中継サーバ宛てに転送する機能をもつ。 ・顧客が送信したサポートメールがメール中継サーバに転送されるときは,外部DNSサーバYに登録されたMXレコードの[a]値によって,平常時は,ホスト名が[b]のメール中継サーバが選択される。 ・FWには,インターネットからDMZのサーバ宛ての通信に対して,静的NATが設定されている。 FWに設定されている静的NATを表1に示す。 表1 FWに設定されている静的NAT(抜粋) 送信元メールアドレスの詐称の有無に対しては,DNSの[c]と呼ばれる名前解決によって,送信元メールサーバのIPアドレスからメールサーバのFQDNを取得し,そのFQDNと送信元メールアドレスのドメイン名が一致した場合,詐称されていないと判定する検査方法が考えられる。しかし,③攻撃者は,自身が管理するDNSサーバのPTRレコードに不正な情報を登録することができるので,ドメイン名が一致しても詐称されているおそれがあることから,検査方法としては不十分である。このような背景から,受信側のメールサーバが送信元メールアドレスの詐称の有無を正しく判定できるようにする手法として,送信ドメイン認証が生まれた。 送信ドメイン認証の技術には,送信元IPアドレスを基に,正規のサーバから送られたかどうかを検証するSPF(Sender Policy Framework)や,送られたメールのヘッダーに挿入された電子署名の真正性を検証するDKIM(DomainKeys Identified Mail)などがある。Y社ではSPF及びDKIMの両方を導入している。 〔Y社が導入しているSPFの概要〕 SPFでは,送信者のなりすましの有無を受信者が検証できるようにするために,送信者のドメインのゾーン情報を管理する権威DNSサーバに,SPFで利用する情報(以下,SPFレコードという)を登録する。Y社では,外部DNSサーバYにSPFレコードをTXTレコードとして登録している。 Y社が登録しているSPFレコードを図4に示す。 図4 Y社が登録しているSPFレコード Y社が導入しているSPFによる送信ドメイン認証の流れを次に示す。 (i)サポート担当者は,送信元メールアドレスがsupport@y-sha.comにセットされたサポートメールを,顧客宛てに送信する。 (ii)サポートメールは,社内メールサーバYからメール中継サーバY1又はY2を経由して,顧客のメールサーバに転送される。 (iii)顧客のメールサーバは,メール中継サーバY1又はY2から,メール転送プロトコルである[d]の[e]コマンドで指定されたメールアドレスのドメイン名の[f]を入手する。顧客のメールサーバは,DNSを利用して,[f]ドメインのゾーン情報を管理する外部DNSサーバYに登録されているSPFレコードを取得する。 (iv)顧客のメールサーバは,④取得したSPFレコードに登録された情報を基に,送信元のメールサーバの正当性を検査する。 (v)正当なメールサーバから送信されたメールなので,なりすましメールではないと判断してメールを受信する。なお,正当でないメールサーバから送信されたメールは,なりすましメールと判断して,受信したメールの隔離又は廃棄などを行う。 〔Y社が導入しているDKIMの概要〕 DKIMは,送信側のメールサーバでメールに電子署名を付与し,受信側のメールサーバで電子署名の真正性を検証することで,送信者のドメイン認証を行う。電子署名のデータは,メールの[g]及び本文を基に生成される。 DKIMでは,送信者のドメインのゾーン情報を管理する権威DNSサーバを利用して,電子署名の真正性の検証に使用する鍵を公開する。鍵長は,2、048ビットより大きな鍵を利用することも可能である。しかし,DNSをトランスポートプロトコルである[h]で利用する場合は,DNSメッセージの最大長が[i]バイトという制限があるので,[i]バイトに収まる鍵長として,一般に2、048ビットの鍵が利用される。 DKIMの電子署名には,第三者認証局(以下,CAという)が発行した電子証明書を利用せずに,各サイトの管理者が生成する鍵が利用できる。 Y社では,Y社のネットワーク運用管理者が生成した鍵などのDKIMで利用する情報(以下,DKIMレコードという)を,外部DNSサーバYにTXTレコードとして登録している。 Y社が登録しているDKIMレコードを図5に,DKIMレコード中のタグの説明を表2に示す。 図5 Y社が登録しているDKIMレコード 表2 DKIMレコード中のタグの説明(抜粋) DKIMにおける送信側は,電子署名データなどを登録したDKIM-Signatureヘッダーを作成して送信するメールに付加する処理(以下,DKIM処理という)を行う。DKIMでは,一つのドメイン中に複数のセレクターを設定することができ,セレクターごとに異なる鍵が使用できる。セレクターは,DNSサーバに登録されたDKIMレコードを識別するためのキーとして利用される。 DKIM-Signatureヘッダー中のタグの説明を表3に示す。ここで,DKIM-Signatureヘッダーの構成図は省略する。 表3 DKIM-Signatureヘッダー中のタグの説明(抜粋) Y社は,顧客宛てのサポートメールに対するDKIM処理を,メール中継サーバY1及びY2で行っている。Y社では,ドメイン名がy-sha.comでセレクター名がsel.yshaのセレクターを設定している。Y社が送信するメールのDKIM-Signatureヘッダー中のsタグには,図5中に示したセレクター名のsel.yshaが登録されている。 Y社が導入しているDKIMによる送信ドメイン認証の流れを次に示す。 (i)サポート担当者は,送信元メールアドレスがsupport@y-sha.comにセットされたサポートメールを,顧客宛てに送信する。 (ii)サポートメールは,社内メールサーバYからメール中継サーバY1又はY2を経由して,顧客のメールサーバに転送される。 (iii)メール中継サーバY1又はY2は,サポートメールに付加するDKIM-Signatureヘッダー中に電子署名データなどを登録して,顧客のメールサーバに転送する。 (iv)顧客のメールサーバは,DKIM-Signatureヘッダー中のdタグに登録されたドメイン名であるy-sha.comとsタグに登録されたセレクター名を基に,DNSを利用して,当該ドメインのゾーン情報を管理する外部DNSサーバYに登録されているDKIMレコードを取得する。 (v)顧客のメールサーバは,⑤取得したDKIMレコードに登録された情報を基に,電子署名の真正性を検査する。 (vi)正当なメールサーバから送信されたメールなので,なりすましメールではないと判断してメールを受信する。なお,正当でないメールサーバから送信されたメールは,なりすましメールと判断して,受信したメールの隔離又は廃棄などを行う。 〔Z社に委託するメールの運用方法の検討〕 まず,X主任は,自社のメールシステムのセキュリティ運用規程に,次の規定があることを確認した。 (あ)社内メールサーバYには,Y社に勤務する従業員以外のメールボックスは設定しないこと (い)社内のPCによるメール送受信は,社内メールサーバYを介して行うこと (う)メール中継サーバY1及びY2にはメールボックスは設定せず,社内メールサーバYから社外宛て,及び社外から社内メールサーバY宛てのメールだけを中継すること (え)Y社のドメインを利用するメールには,なりすまし防止などの情報セキュリティ対策を講じること 次に,メールの運用方法の検討に当たって,X主任は,Z社のネットワーク構成とサポート体制を調査した。 Z社のネットワーク構成を図6に,外部DNSサーバZが管理するゾーン情報を図7に示す。 図6 Z社のネットワーク構成(抜粋) 図7 外部DNSサーバZが管理するゾーン情報(抜粋) Z社は,複数の企業から受託したメールを用いたサポート業務を,チームを編成して対応している。 X主任は,Z社のネットワーク構成,サポート体制及びY社のメールシステムのセキュリティ運用規程を基に,Z社に委託するメールによるサポート方法を,次のようにまとめた。 ・Z社のサポートチームYのサポート担当者は,現在使用している問合せ窓口のメールアドレスsupport@y-sha.comでサポート業務を行う。 ・support@y-sha.com宛てのメール中から,Z社に委託した製品のサポート依頼メール及びサポート途中のメールが抽出されて,Z社のサポートチームYのグループアドレス宛てに転送されるようにする。 ・サポートチームYのサポート担当者は,送信元メールアドレスがsupport@y-sha.comにセットされたサポートメールを,社内メールサーバZを使用してY社の顧客宛てに送信する。 次に,セキュリティ運用規程の(え)に対応するために,Z社に委託するサポートメールへのSPFとDKIMの導入方法を検討した。 SPFには,⑥DNSサーバにSPFで利用する情報を登録することで対応できると考えた。 DKIMには,図6中のメール中継サーバZで,送信元メールアドレスがsupport@y-sha.comのメールに対してDKIM処理を行うことで対応できると考えた。このとき,顧客のメールサーバが,外部DNSサーバYを使用してDKIMの検査を行うことができるように,DKIM-Signatureヘッダー中のdタグで指定するドメイン名には[j]を登録し,⑦sタグで指定するセレクター名はsel.zshaとして,Y社と異なる鍵を電子署名に利用できるようにする。また,外部DNSサーバYに,sel.zshaセレクター用のDKIMレコードを追加登録する。 委託時のメールの運用方法がまとまったので,検討結果を上司のW課長に説明したところ,⑧「Z社のサポートチームY以外の部署の従業員が,送信元メールアドレスにsupport@y-sha.comをセットしてサポート担当者になりすました場合,顧客のメールサーバでは,なりすましを検知できない」との指摘を受けた。そこで,X主任は,追加で実施する対策について調査した結果,S/MIME(Secure/MIME)の導入が有効であることが分かった。 〔S/MIMEの調査と実施策〕 S/MIMEでは,受信者のMUA(Mail User Agent)によるメールに付与された電子署名の真正性の検証で,なりすましやメール内容の改ざんが検知できる。 MUAによる電子署名の付与及び電子署名の検証の手順を表4に示す。 表4 MUAによる電子署名の付与及び電子署名の検証の手順 X主任は,S/MIME導入に当たってY社とZ社が実施すべき事項について検討し,次の四つの実施事項をまとめた。 ・Y社のホームページ上で,サポートメールへのS/MIMEの導入をアナウンスし,なりすまし防止対策を強化することを顧客に周知する。 ・取得した電子証明書は,Z社にも秘密鍵と併せて提供する。 ・Y社のサポート担当者及びZ社のサポートチームYのサポート担当者は,自身のPCに電子証明書と秘密鍵をインストールする。 ・Y社及びZ社のサポート担当者は,送信するメールに電子署名を付与する。 X主任は,サポートメールにSPFとDKIMだけでなく新たにS/MIMEも導入したメールの運用方法と,サポート委託を開始するまでにY社及びZ社で実施すべき事項をW課長に報告した。報告内容が承認されたので,X主任は,委託時のメールの運用を開始するまでの手順書の作成,及びZ社の窓口担当者との調整に取り掛かった。 設問1 〔Y社のネットワーク構成とセキュリティ対策の背景〕について答えよ。 (1)本文中の下線①について,転送先のメール中継サーバのFQDNを答えよ。 (2)本文中の下線②について,社内メールサーバYからメール中継サーバY1又はY2へのメール転送時に,振分けの偏りを小さくするために実施している方策を,25字以内で答えよ。 (3)本文中の[a]~[c]に入れる適切な字句を答えよ。 (4)表1中の[ア],[イ]に入れる適切なIPアドレスを答えよ。 (5)本文中の下線③について,攻撃者がPTRレコードに対して行う不正な操作の内容を,次に示す図8を参照して45字以内で答えよ。 図8 PTRレコードの形式(抜粋) 設問2 〔Y社が導入しているSPFの概要〕について答えよ。 (1)図4中の[ウ],[エ]に入れる適切なIPアドレスを答えよ。 (2)本文中の[d]~[f]に入れる適切な字句を答えよ。 (3)本文中の下線④について,正当性の確認方法を,50字以内で答えよ。 設問3 〔Y社が導入しているDKIMの概要〕について答えよ。 (1)本文中の[g]~[i]に入れる適切な字句又は数値を答えよ。 (2)図5のDKIMレコードで指定されている暗号化方式のアルゴリズム名,及び表2中の[オ]に入れる適切な鍵名を答えよ。 (3)本文中の下線⑤について,電子署名の真正性の検査によって送信者がなりすまされていないことが分かる理由を,50字以内で答えよ。 設問4 〔Z社に委託するメールの運用方法の検討〕について答えよ。 (1)本文中の下線⑥について,登録するDNSサーバ名及びDNSサーバに登録する情報を,それぞれ,図1又は図6中の字句を用いて答えよ。 (2)本文中の[j]に入れる適切な字句を答えよ。 (3)本文中の下線⑦について,異なる鍵を利用することによる,Y社におけるセキュリティ面の利点を,50字以内で答えよ。 (4)本文中の下線⑧について,顧客のメールサーバでは,なりすましを検知できない理由を,40字以内で答えよ。 設問5 〔S/MIMEの調査と実施策〕について答えよ。 (1)表4中の下線⑨の電子署名データの作成方法を,25字以内で答えよ。 (2)表4中の下線⑩のハッシュ値aを取り出す方法を,20字以内で答えよ。 (3)表4中の下線⑪について,どのような状態になれば改ざんされていないと判断できるかを,25字以内で答えよ。 不備により設問5(1)~(3)は成立しない。
図1 Y社のネットワーク構成(抜粋)。Y社のインターネット接続、FW、DMZ、内部LAN、メール中継サーバ、外部・内部DNSサーバ及びサポートチームのネットワーク構成図。
図1 Y社のネットワーク構成(抜粋)。Y社のインターネット接続、FW、DMZ、内部LAN、メール中継サーバ、外部・内部DNSサーバ及びサポートチームのネットワーク構成図。
図2 外部DNSサーバYが管理するゾーン情報(抜粋)。y-sha.comのMXレコードと、メール中継サーバY1・Y2のグローバルIPアドレスを示す外部DNSゾーン情報。
図2 外部DNSサーバYが管理するゾーン情報(抜粋)。y-sha.comのMXレコードと、メール中継サーバY1・Y2のグローバルIPアドレスを示す外部DNSゾーン情報。
図3 社内DNSサーバYが管理するゾーン情報(抜粋)。社内DNSに登録されたメールサーバ、メール中継サーバ及びメールサーバセグメントのホスト名とプライベートIPアドレス。
図3 社内DNSサーバYが管理するゾーン情報(抜粋)。社内DNSに登録されたメールサーバ、メール中継サーバ及びメールサーバセグメントのホスト名とプライベートIPアドレス。
表1 FWに設定されている静的NAT(抜粋)。DMZ上のメール中継サーバY1及びY2について、宛先ホスト、宛先IPアドレス、変換後IPアドレスを示す静的NAT表。
表1 FWに設定されている静的NAT(抜粋)。DMZ上のメール中継サーバY1及びY2について、宛先ホスト、宛先IPアドレス、変換後IPアドレスを示す静的NAT表。
図4 Y社が登録しているSPFレコード。y-sha.comのTXTレコードとして、二つの送信元IPv4アドレスと、それ以外を拒否する指定を示すSPFレコード。
図4 Y社が登録しているSPFレコード。y-sha.comのTXTレコードとして、二つの送信元IPv4アドレスと、それ以外を拒否する指定を示すSPFレコード。
図5 Y社が登録しているDKIMレコード。sel.yshaセレクターとy-sha.comドメインを用い、RSA方式及び本番運用を指定したDKIMのTXTレコード。
図5 Y社が登録しているDKIMレコード。sel.yshaセレクターとy-sha.comドメインを用い、RSA方式及び本番運用を指定したDKIMのTXTレコード。
表2 DKIMレコード中のタグの説明(抜粋)。DKIMレコードのバージョン、鍵形式、運用状態及び公開鍵データを示すタグの説明表。
表2 DKIMレコード中のタグの説明(抜粋)。DKIMレコードのバージョン、鍵形式、運用状態及び公開鍵データを示すタグの説明表。
表3 DKIM-Signatureヘッダー中のタグの説明(抜粋)。DKIM-Signatureヘッダーの電子署名データ、署名ドメイン及びセレクターを示すタグの説明表。
表3 DKIM-Signatureヘッダー中のタグの説明(抜粋)。DKIM-Signatureヘッダーの電子署名データ、署名ドメイン及びセレクターを示すタグの説明表。
図6 Z社のネットワーク構成(抜粋)。Z社のインターネット接続、FW、メール中継サーバ、社内メールサーバ、DNSサーバ、二つのサポートチームの構成図。
図6 Z社のネットワーク構成(抜粋)。Z社のインターネット接続、FW、メール中継サーバ、社内メールサーバ、DNSサーバ、二つのサポートチームの構成図。
図7 外部DNSサーバZが管理するゾーン情報(抜粋)。z-sha.co.jpのMXレコードと、メール中継サーバz-mail1のグローバルIPアドレスを示す外部DNSゾーン情報。
図7 外部DNSサーバZが管理するゾーン情報(抜粋)。z-sha.co.jpのMXレコードと、メール中継サーバz-mail1のグローバルIPアドレスを示す外部DNSゾーン情報。
表4 MUAによる電子署名の付与及び電子署名の検証の手順。送信者側でハッシュ値から電子署名を作成し、受信者側で署名から値を取り出して比較する手順表。
表4 MUAによる電子署名の付与及び電子署名の検証の手順。送信者側でハッシュ値から電子署名を作成し、受信者側で署名から値を取り出して比較する手順表。
図8 PTRレコードの形式(抜粋)。ホストのIPアドレスからPTRレコードによってホストのFQDNを対応付ける形式を示す図。
図8 PTRレコードの形式(抜粋)。ホストのIPアドレスからPTRレコードによってホストのFQDNを対応付ける形式を示す図。
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判断の前提となる範囲を確かめる

判断するときは、扱う内容がどの範囲を前提としているかに注目しましょう。身近な経験や用語の印象から結論を急がず、示された条件の中で考える範囲と、自分が補っている想定の範囲を分けて整理してみてください。

この問題で問われていること

ここでは、考えようとしている判断と、その判断の前提となる範囲が対応しているかを確認しましょう。与えられた情報に含まれる条件を押さえ、書かれていない事情まで広げて考えていないか、立ち止まって見直すことが手掛かりになります。

視点

同じ言葉でも、考える範囲を自分で広げたり狭めたりすると、判断の前提が変わります。情報として示されている範囲と、自分の推測で補った範囲を区別して整理しましょう。

確認ポイント

  • 考える範囲を、示された条件に沿って捉えているか
  • 明示されていない前提を、自分で付け加えていないか
  • 整理の途中で、判断の対象となる範囲を変えていないか
正解と解説を見る

解説

Y社のサポート業務をZ社へ委託する事例を通じて、DNSによる転送先の選択、静的NAT、SPFとDKIMの検証方法を整理する問題です。委託先の送信サーバを認証対象へ追加する方法、鍵の漏えいによる影響の分離、送信ドメイン認証だけでは担当者のなりすましを検知できない理由が要点です。

問題の全体像

Y社は、顧客向けのメールサポートの一部をZ社に委託し、従来のsupport@y-sha.comを継続して使用します。出題趣旨では、この委託に伴うなりすまし防止対策を題材に、ネットワーク技術を送信ドメイン認証の導入検討へ活用できるかを問うとしています。まずDNSとNATによるメール転送の仕組みを読み取り、次にSPFとDKIMの認証方法、委託先への適用、認証の限界を検討します。設問5は、問題冊子と公式解答例の両方に、不備により成立しない旨が示されています。

設問1(1)

社内メールサーバYからY1又はY2へ転送する場面なので、図3の社内向け名前解決に着目します。mail.y-sha.lanには、Y1の192.168.0.1とY2の192.168.0.2に対応する二つのAレコードが登録されています。この共通名を名前解決することで転送先を振り分けるため、公式解答例ではmail.y-sha.lanです。図3でこの名前に設定されているのはAレコードであり、MXレコードではありません。

設問1(2)

図3では、mail.y-sha.lanの二つのAレコードにTTLとして60が指定されています。名前解決結果を長時間キャッシュすると、送信元が社内メールサーバYだけの本構成では、同じ転送先が選ばれ続けて偏りが生じます。採点講評では、キャッシュの生存時間を短くして名前解決要求を頻繁に発生させる必要があると説明しています。公式解答例に沿う25字以内の答案は「TTLを60秒と短い値にしている。」です。

設問1(3)(a)

顧客側からY社への配送では、図2のMXレコードに記載された20と1が選択の基準になります。この数値は配送先の優先順位を表すPreference値で、小さい値の配送先が優先されます。公式解答例では、aはPreferenceです。

設問1(3)(b)

図2では、y-mail1.y-sha.comのPreference値は20、y-mail2.y-sha.comは1です。平常時は小さい値の配送先が優先されるので、公式解答例ではbはy-mail2です。設問はホスト名を求めているため、この回答単位ではFQDNではなくy-mail2を答えます。

設問1(3)(c)

本文は、送信元メールサーバのIPアドレスからFQDNを取得する名前解決を説明しています。IPアドレスから名前を求める処理は逆引きで、本文の続きにはPTRレコードも登場します。公式解答例では、cは「逆引き」です。

設問1(4)(ア)

表1のアは、インターネットからy-mail1.y-sha.comへ到達する通信の、NAT変換前の宛先IPアドレスです。図2のAレコードに、このFQDNのグローバルIPアドレスとして200.a.b.1が記載されています。公式解答例でも、アは200.a.b.1です。

設問1(4)(イ)

表1のイは、静的NATによる変換後の宛先IPアドレスです。図3では、同じホスト名y-mail1の社内向けFQDNに192.168.0.1が登録されています。外部向けの200.a.b.1を、このDMZ内のアドレスへ変換するため、公式解答例ではイは192.168.0.1です。

設問1(5)

図8では、PTRレコードがIPアドレスをホストのFQDNへ対応付けています。攻撃者がそのFQDN欄に詐称したメールアドレスのドメイン名を登録すると、逆引き結果との一致だけで行う検査を欺けます。公式解答例は、このFQDNへの不正登録を挙げています。45字以内の答案では「メールサーバのFQDNに、詐称したメールアドレスのドメイン名を登録する。」と、操作対象と登録内容を示します。

設問2(1)(ウ)

顧客のメールサーバへ実際に接続するのはメール中継サーバY1又はY2なので、SPFには両サーバのグローバルIPアドレスを登録します。図2に示されたY1のアドレスは200.a.b.1です。公式解答例では、ウは200.a.b.1で、ウとエの順序は不問です。

設問2(1)(エ)

図2に示されたメール中継サーバY2のグローバルIPアドレスは200.a.b.2です。Y1とY2のどちらを経由してもSPFの検査を通過できるよう、両方を送信元として許可します。公式解答例では、エは200.a.b.2で、ウとエの順序は不問です。

設問2(2)(d)

本文のSPF認証の流れでは、中継サーバから顧客のメールサーバへのメール転送プロトコルを問うています。このサーバ間の転送に使用するのはSMTPです。公式解答例でも、dはSMTPです。

設問2(2)(e)

SPFレコードを取得する対象は、SMTPで指定された送信元メールアドレスのドメインです。そのアドレスを指定するコマンドがMAIL FROMなので、公式解答例ではeはMAIL FROMです。メール本文側のヘッダーではなく、SMTPのコマンドで指定されるアドレスに着目します。

設問2(2)(f)

サポートメールの送信元アドレスはsupport@y-sha.comです。そのドメイン名はy-sha.comであり、図4のSPFレコードもこの名前に登録されています。公式解答例では、fはy-sha.comです。顧客側は、このドメインのSPFレコードを外部DNSサーバYから取得します。

設問2(3)

本文の下線④は、SPFレコードを取得した後の正当性検査です。顧客側が観測した送信元メールサーバのIPアドレスが、SPFレコードで許可されたアドレスかを確認します。公式解答例も、送信元IPアドレスがSPFレコードに登録されていることを要点としています。50字以内の答案は「送信元メールサーバのIPアドレスがSPFレコードに登録されていることを確認する。」です。

設問3(1)(g)

本文では、電子署名のデータをメールのg及び本文から生成すると説明しています。また、署名データなどはDKIM-Signatureヘッダーへ登録されます。署名の基となるメールの構成要素を答えるので、公式解答例ではgは「ヘッダー」です。

設問3(1)(h)

本文では、DNSをあるトランスポートプロトコルで利用した場合のメッセージ長の制限を問うています。公式解答例では、hはUDPです。ここでは、本文が想定しているUDPを使用したDNSの条件と、続く512バイトという数値を対応付けて読み取ります。

設問3(1)(i)

iは、本文が想定するUDP利用時のDNSメッセージの最大長です。公式解答例では512であり、単位は本文にあるバイトです。この設問では、本文の条件に対応する数値として512を答えます。

設問3(2)(アルゴリズム)

図5のDKIMレコードにはk=rsaと記載されています。表2では、kタグは署名作成に利用する鍵の形式を指定すると説明されています。この指定から、公式解答例ではアルゴリズム名はRSAです。

設問3(2)(オ)

表2では、pタグにBase64でエンコードした鍵のデータを指定するとしています。本文では、DNSを使って電子署名の真正性検証に使用する鍵を公開すると説明しています。受信側が検証に使用する鍵なので、公式解答例ではオは「公開鍵」です。

設問3(3)

本構成では、メール中継サーバY1及びY2がDKIM署名を付与します。顧客側が外部DNSサーバYから取得した公開鍵で署名の真正性を確認できれば、正規のメールサーバから送信されたメールだと判断できます。採点講評も、この構成と署名の真正性を結び付けることを求めています。公式解答例に沿う50字以内の答案は「受信したメールが正規のメールサーバから送信されたものかどうかが分かるから」です。

設問4(1)(DNSサーバ名)

Z社から送信するサポートメールもsupport@y-sha.comを使用するため、顧客側が取得するSPFレコードの対象は引き続きy-sha.comです。このドメインのSPFレコードを管理する外部DNSサーバYへ情報を追加します。公式解答例では「外部DNSサーバY」又はそのホスト名「y-ns1」が示されています。

設問4(1)(登録する情報)

図6では、Z社から顧客へのメールはメール中継サーバZを経由します。その送信元をSPFで許可するため、登録する情報は「メール中継サーバZのIPアドレス」です。公式解答例の「z-mail1のIPアドレス」は、同じサーバをホスト名で表した解答表現であり、別の登録対象ではありません。図7では、このサーバのグローバルIPアドレスが222.c.d.1と示されています。

設問4(2)

本文では、顧客側が外部DNSサーバYを使用してDKIMの検査を行えるようにするとしています。表3のdタグは署名を行ったドメイン名を示し、sタグと組み合わせてDKIMレコードを取得するために使われます。外部DNSサーバYに追加するレコードを参照させるので、公式解答例ではjはy-sha.comです。

設問4(3)

Y社はsel.ysha、Z社はsel.zshaを使い、署名鍵を分けます。Z社の鍵が漏えいしてもY社の鍵は別なので、Y社で実施中のDKIM処理への影響を分離できます。採点講評では、漏えい時の具体的な影響から利点を導くことを求めています。公式解答例に沿う50字以内の答案は「メール中継サーバZから鍵が漏えいしても、Y社で実施中のDKIM処理は影響を受けない。」です。

設問4(4)

Z社の別部署の従業員がsupport@y-sha.comを詐称しても、メールは正規のメール中継サーバZから送信されます。この送信元はSPFで許可され、該当メールには同じサーバでDKIM署名も付与されるため、担当者の違いを検知できません。採点講評も、同じ中継サーバから送信される構成を根拠にするよう求めています。公式解答例に沿う40字以内の答案は「なりすましメールも、メール中継サーバZから社外に転送されるから」です。

設問5(1)

表4の手順2にある電子署名データの作成方法を問う設問ですが、問題冊子には設問5(1)~(3)は不備により成立しないと明記されています。公式解答例も同じ扱いで、作成方法の解答は示していません。この設問の正答として、一般的な署名作成方法を補うことはしません。

設問5(2)

表4の手順4にあるハッシュ値aの取り出し方法を問う設問ですが、問題冊子と公式解答例では、不備により成立しないとされています。20字以内という指定はありますが、この設問に対する解答方法は示されていません。一般的な署名検証の説明を、この設問の正答として扱うことはしません。

設問5(3)

表4の手順6にあるハッシュ値の比較結果を問う設問ですが、設問5(1)~(3)全体が不備により成立しないと明記されています。公式解答例にも比較結果についての解答はありません。そのため、25字以内の答案を補って正答と断定せず、成立しない設問として扱います。

学習のポイント

DNSレコードの種類と役割を区別し、メールの転送経路、認証対象、鍵の管理範囲を結び付けて説明できるようにしましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和6年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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