NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
令和5年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題









解き方のヒントを見る
前提条件が適用される範囲をそろえる
この分野を考えるときは、各条件がどこまで当てはまるかという適用範囲に注目しましょう。同じ言葉でも、対象や場面が変われば検討の前提が変わり得るため、範囲をそろえて捉えることが大切です。
この問題で問われていること
検討の焦点は、ある条件を別の対象や場面にも当てはめてよいと、無意識に考えていないかという点です。与えられた情報に立ち戻り、その条件の範囲が明示されている部分と、自分で補っている部分を区別しましょう。
視点
条件の適用範囲とは、その条件を前提として扱える対象や場面の広がりです。考察の途中で範囲を広げていないかを意識し、記載された情報と自分の仮定を分けて整理しましょう。
確認ポイント
- 条件が当てはまる対象を確認したか
- 場面が変わっても同じ範囲だと仮定していないか
- 適用範囲の根拠を与えられた情報に求めているか
正解と解説を見る
解説
ECサーバの処理能力不足に対し、LBによるスケールアウトを設計する問題です。DNS、NAT、戻りの通信経路、アクセス元の記録、TLS、セッション維持を整合させ、さらにSAMLとケルベロスによる認証連携の仕組みを読み解きます。
問題の全体像
Y社のECサイトでは、サーバのCPU使用率が設計値を超え、応答速度が低下しています。そこでECサーバを3台に増やし、LBで負荷を分散する構成を検討します。後半では、会員企業のアカウント情報を利用するため、SAMLによる認証連携を設計します。公式の出題趣旨では、LB導入に伴う構成設計とSAML2.0の方式検討に、習得した技術を活用できるかを問うとしています。各機器の役割を押さえ、アドレス変換、通信経路、セッション、鍵の関係を図表と本文から具体的に追うことが中心です。
設問1(a)
図2の項番2と8では、レコードの値として、それぞれのドメインのDNSサーバ名が指定されています。これは、そのゾーンを管理する権威DNSサーバを示すレコードです。公式解答例では「NS」としています。IPアドレスを指定するAレコードとは、設定する値と役割が異なる点に着目します。
設問1(b)
図2の項番3と9では、「10」に続いてメールサーバの名前が記載されています。メールの配送先サーバと優先度を指定する形式なので、公式解答例では「MX」としています。この10はIPアドレスやポート番号ではなく、メール配送先を選ぶ際の優先度を示す値です。
設問1(c)
図2の上段はインターネット向けドメインexample.jpのゾーンで、cはDNSサーバnsのAレコードです。表1では、DNS用のTCP/53とUDP/53について、100.α.β.1を192.168.1.1へ変換しています。インターネットからアクセスするためのアドレスを登録するので、公式解答例では「100.α.β.1」としています。
設問1(d)
dはインターネット向けゾーンにあるメールサーバmailのAレコードです。表1のTCP/25の行を見ると、外部からのメール配送先である100.α.β.3が、DMZ内の192.168.1.3へ変換されます。したがって、公式解答例では「100.α.β.3」としています。公開するアドレスとサーバ自身の内部アドレスを区別します。
設問1(e)
図2の下段は社内向けドメインy-sha.example.lanのゾーンで、eはDNSサーバnsのAレコードです。運用PCは広域イーサ網経由でDMZへアクセスするため、内部のアドレスを使用します。表1のDNS用通信の変換後アドレスから、公式解答例では「192.168.1.1」としています。
設問1(f)
fは社内向けゾーンにあるメールサーバmailのAレコードです。表1では、メールサーバの内部アドレスを192.168.1.3と読み取れます。社内向けの名前解決ではこの内部アドレスを返すので、公式解答例では「192.168.1.3」としています。同じサーバでも、外部向けと社内向けのゾーンでは登録するアドレスが異なります。
設問2(1)
購買担当者はecsv.example.jpでアクセスしますが、運用PCのURLはecsv.y-sha.example.lanです。本文には、サーバ証明書が一つで、マルチドメインに対応していないとあります。設問の指定どおりコモン名に着目すると、アクセスしたURLのドメインと証明書のコモン名が一致しないことが理由です。公式解答例もこの不一致を挙げています。25字以内では「コモン名とURLのドメインが異なるから」とまとめられます。
設問2(2)
下線①はsshによる社内向け名ecsv.y-sha.example.lanへのアクセスです。図1では、運用PCからL3SWへ進み、広域イーサ網を経由してFWzに入り、L2SWからECサーバへ届きます。L3SWにはDMZへの経路が設定されているので、この通信は広域イーサ網側へ転送されます。公式解答例では、経由する機器を「L3SW、FWz、L2SW」としています。
設問3(1)(g)
サーバ増強の比較対象は、1台のサーバの処理能力を高める方式と、サーバの台数を増やす方式です。前者がスケールアップに当たるため、公式解答例ではgを「アップ」としています。後続のLBによる複数台への振分けと対比して、1台当たりの能力を高める方式だと読み取ります。
設問3(1)(h)
本文では、ECサイトを停止せずに増強できる方式を採用し、実際にECサーバを増設してLBで処理を振り分けています。このように台数を増やして全体の処理能力を高める方式がスケールアウトです。公式解答例ではhを「アウト」としています。
設問3(2)
本文には、2台で十分な処理能力をもつとあり、設問では将来のアクセス増加を考慮しないよう指定されています。3台にする意味は、1台が故障しても必要な2台を稼働させられることです。公式解答例では、1台故障時にもECサイトの応答速度を低下させないためとしています。35字以内の答案では「1台故障時にもECサイトの応答速度を低下させないため」と、故障時の性能確保まで示します。
設問3(3)(i)
図5の(i)は、PCからFWzへ到達する前の通信です。購買担当者のURLは変わらず、表1のHTTPS用の静的NATも変更されないため、宛先は従来の公開アドレス100.α.β.2です。返信の(vi)では、FWzが送信元を同じ公開アドレスへ戻します。公式解答例ではiを「100.α.β.2」としています。
設問3(3)(j)
図5の(ii)はFWzで宛先NATを受けた後の通信です。表1のHTTPS用設定は100.α.β.2から192.168.1.2への変換なので、jはLBの仮想IPアドレスとなる192.168.1.2です。返信の(v)でも、LBからPCへ返す通信の送信元にこのアドレスを使用します。公式解答例では「192.168.1.2」としています。採点講評では、この空欄の正答率が低く、FWのNAT設定が変更されないことから表1を基に導くよう指摘しています。
設問3(3)(k)
表2のソースNATを行う場合では、(iii)の送信元がPCのアドレスからLBのアドレスへ変換され、(iv)の返信もそのLB宛てになります。図4でLBの物理IPアドレスは192.168.1.4と示されています。したがって、公式解答例ではkを「192.168.1.4」としています。負荷分散の受付に用いる仮想IPアドレス192.168.1.2と区別します。
設問4(1)(どの機器)
図2の項番5と11は、利用者がアクセスするecsvという名前のAレコードです。増強後は、この名前で到達した要求を各ECサーバへ振り分ける必要があります。そのため、従来のECサーバに代わって負荷分散の受付を行う機器を示します。公式解答例では「LB」としています。
設問4(1)(IPアドレスの呼称)
本文では、LBが負荷分散用のIPアドレスで受信したパケットをECサーバへ振り分けると説明し、そのアドレスを「仮想IPアドレス」と呼んでいます。公式解答例もこの呼称です。図4のlbsに登録する物理IPアドレスとは役割が異なり、仮想IPアドレスが利用者からのサービスアクセスの受付先になります。
設問4(2)
図4では、既設ECサーバのホスト名をecsv1、IPアドレスを192.168.1.5としています。従来の192.168.1.2はLBの仮想IPアドレスとして使われるため、既設ECサーバ自身の設定も新しいアドレスに合わせる必要があります。公式解答例では、ホスト名のほかに変更する情報を「自身のIPアドレス」としています。
設問4(3)
下線⑤は、LBでソースNATを行わないという当初の設計について問うものです。この場合、ECサーバが受け取る要求の送信元はPCのままなので、返信を図5どおりLBへ戻すためには、デフォルトゲートウェイをLBに向ける必要があります。公式解答例では「FWzからLBに変更」としています。その後の会話で採用する、ソースNATを行ってゲートウェイを元に戻す対策とは区別します。
設問4(4)
本文には、ECサーバがアクセス元のIPアドレスをログとして管理するとあります。しかし、LBでソースNATを行うと、ECサーバから見たIPヘッダーの送信元はLBになります。元のアクセス元を伝えるため、HTTPヘッダーにX-Forwarded-Forを追加します。公式解答例では、アクセス元PCのIPアドレスをECサーバに通知するためとしています。35字以内では「ECサーバにアクセス元PCのIPアドレスを通知するため」と要点を示します。
設問4(5)
増設ECサーバに証明書を入れずに対応するには、LBで利用者とのTLS通信を受け持たせます。そのため、既設ECサーバのサーバ証明書に加えて、対応する秘密鍵もLBへ移す必要があります。公式解答例では、このペアの移設を挙げています。採点講評でも、証明書と秘密鍵を一緒に管理することの理解を求めています。50字以内では「既設ECサーバのサーバ証明書と秘密鍵のペアをLBに移す」と、両方の移設を明記します。
設問5(1)
下線⑧の方式では、送信元IPアドレスとポート番号の組合せを識別情報にします。TCPコネクションを切断して再接続すると、同じ利用者でも送信元ポート番号が変わる可能性があり、以前と同じ識別情報になりません。公式解答例では、再設定のたびにポート番号が変わる可能性を理由としています。50字以内では「TCPコネクションの再接続時にポート番号が変わる可能性があるから」とまとめます。
設問5(2)
本文では、ECサーバが最初のアクセス時にセッションIDを生成し、応答のCookieへ書き込むとあります。LBはその応答を確認し、Cookie中のセッションIDが管理テーブルに未登録なら、応答元のサーバとの対応を新規登録します。公式解答例も、サーバ応答のCookie中のIDがテーブルに存在しない場合としています。採点講評では、ID生成、Cookieへの書込み、テーブル作成の条件を結び付けるよう求めています。60字以内では「サーバ応答のCookie中のセッションIDが管理テーブルに存在しない場合」と示します。
設問5(3)
レイヤー3や4で通信できても、ECサイトのサービスが正常に稼働しているとは限りません。ECサイトへの振分け可否を判断するには、サービスの応答を確認するレイヤー7での監視が必要です。公式解答例では、サービスが稼働しているかどうか検査しないことを理由としています。25字以内では「サービスが稼働しているか検査しないから」とまとめます。
設問6(1)
図7では、ECサーバがログイン要求を受けると、購買担当者の所属企業のIdPへリダイレクトします。会員企業ごとにIdPが異なるため、どの企業のIdPへ認証を依頼するかを選ぶ必要があります。公式解答例では、アクセス元の購買担当者が所属している会員企業の情報を挙げています。30字以内では「購買担当者が所属する会員企業の情報」と、IdP選択に必要な情報を示します。
設問6(2)
下線⑫は、IdPが作成するデジタル署名の検証に必要な情報を問うものです。SPであるECサーバは、信頼するIdPの公開鍵を使って署名を検証します。その公開鍵を含む証明書を登録するので、公式解答例では「IdPの公開鍵証明書」としています。この表現で15字以内に収まります。TLS用のECサーバ自身の証明書と、署名検証用のIdPの証明書を区別します。
設問6(3)
図7の(vi)では、STそのものをIdPの鍵で暗号化し、さらにSTなどを含む全体をPCの鍵で暗号化しています。PCは自分の鍵で外側を復号してSTを取り出せますが、STを保護するIdPの鍵は持っていません。このため、有効なSTの内容を改ざんできません。公式解答例では「IdPの鍵を所有していないから」としています。この表現で20字以内に収まります。
設問6(4)①
ECサーバには、信頼関係を構築したIdPの公開鍵証明書が登録されています。その公開鍵で署名を検証することで、アサーションが対応する署名鍵をもつIdPによって生成されたものかを確認できます。公式解答例の一つ目は、信頼関係のあるIdPが生成したものであることです。25字以内では「信頼関係のあるIdPが生成したものであること」と、生成元についての検証を示します。
設問6(4)②
図7では、SAML ResponseがPCを介してIdPからSPへ転送されます。SPはデジタル署名を検証し、署名されたアサーションの内容が変更されていないかを確認します。公式解答例の二つ目は、SAMLアサーションが改ざんされていないことです。25字以内では「SAMLアサーションが改ざんされていないこと」と示します。生成元の確認と内容の完全性の確認を、別々の検証内容として書き分けます。
学習のポイント
仮想IPアドレスと物理IPアドレスの区別、NAT前後の通信経路、Cookieによるセッション維持、証明書と秘密鍵の対応、SAML署名の検証を重点的に学習します。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和5年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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