NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
令和3年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題












解き方のヒントを見る
検討の前提をそろえて考える
社内ネットワークに関する検討では、判断の途中で前提条件が変わっていないかに注目しましょう。与えられた条件と、自分が補って考えた条件を分け、同じ前提の下で考えられているかを確かめることが出発点になります。
この問題で問われていること
この問題では、結論を急ぐ前に、考える際に置いている前提が与えられた条件に沿っているかを確認しましょう。知っている事例の条件をそのまま持ち込まず、判断の根拠として使える範囲を意識して整理してください。
視点
前提条件とは、判断の土台として置く条件です。明示された条件と自分の仮定を混ぜると、考えの筋道を確かめにくくなります。いま使っている前提がどこから来たものかを意識しましょう。
確認ポイント
- 与えられた条件と自分の仮定を区別しているか
- 知っている事例の前提を持ち込んでいないか
- 考える途中で前提を無意識に変えていないか
正解と解説を見る
解説
本問は、STPからRSTP又はスタック構成への変更による可用性向上と、現行・新システムを共存させた段階的移行を扱います。VLANの通過範囲、経路選択、MACアドレスの変化、NAT、DHCPを構成図と設定表に対応付けて判断することが要点です。
問題の全体像
G社はリース満了に伴い、サーバ、ネットワーク機器及びPCを更改します。課題は、障害時の業務への影響を減らすことと、業務への影響を抑えて移行することです。前半では現行STP構成を調べ、RSTPとスタック構成の復旧時間、運用負荷、帯域利用を比較します。後半では新旧システムの共存、切替、切戻しについて、図と設定表から通信経路や必要な変更を判断します。公式解答例の出題趣旨では、技術と経験をネットワークの設計・構築・移行の実務に活用できるかを問うとされています。採点講評では、STPとVRRPの構成や、移行期間中の構成・経路情報・作業手順を正しく把握することが重視されています。
設問1(1)(a)
「社外のドメインに関する名前解決要求を、ISPが提供するフルサービスリゾルバに転送する」という説明に着目します。受信した名前解決要求を別のDNSサーバへ転送する機能を表しているので、公式解答例では「フォワーダ」です。内部DNSサーバは、社内ドメインの権威サーバとしての役割に加え、社外ドメインの問い合わせを転送する役割も担っています。
設問1(1)(b)
VRRPでL3SW1をマスタルータにするため、「大きく設定する」値を問うています。公式解答例では「プライオリティ値」です。VRRPでは優先度の高いルータをマスタとして選ぶため、L3SW1の値を大きくします。後に登場するSTPのルートブリッジ選出では小さいブリッジプライオリティ値が優先されるので、両者の選出規則を区別して理解します。
設問1(2)
本文では、内部DNSサーバがPC及びサーバからの名前解決要求に応答し、社外ドメインの要求はISPのフルサービスリゾルバへ転送すると説明されています。したがって、DHCPでPCに通知する名前解決要求先は、公式解答例では「内部DNSサーバ」です。PCが最初に問い合わせる相手と、内部DNSサーバが転送する先を分けて考えることがポイントです。
設問2(1)(a)
STPのルートブリッジは、ブリッジIDを比較して決定します。設問では全スイッチのブリッジプライオリティ値を同じにするため、その値だけでは選出できません。残る比較対象は、公式解答例では「MACアドレス」です。同じプライオリティ値の条件では、MACアドレスの小さいスイッチがルートブリッジになります。
設問2(1)(b)
L2SW3がルートになると、L3SW1とL3SW2はそれぞれL2SW3への直接接続をルートポートとして使います。両者のルートまでのパスコストは等しいため、L3SW間の接続ではブリッジIDの比較により一方のポートが非指定ポートとなり、転送が遮断されます。ここで、L2SW3とL3SW間のトランクが通すのはVLAN101~VLAN103だけです。VLAN10とVLAN11はL2SW3経由で迂回できないため、公式解答例では「FW-L3SW間サブネット、内部サーバ収容サブネット」です。採点講評でも、STPとVRRPの構成を正しく把握して設計上の問題を見つけることが重視されています。
設問2(2)(c)
L3SW1がルートブリッジであり、ルートまでのパスコストが0であることに着目します。各接続先に対して、ルートへ向かう経路を提供する側になるので、公式解答例では「指定」です。本文の空欄には「指定」を入れ、「指定ポート」とします。ルートポートは非ルートブリッジがルートへ向かうために選ぶポートです。
設問2(2)(d)
L2SW3は、ルートであるL3SW1への直接接続をルートポートにします。L3SW2とL2SW3はルートまでのパスコストが等しく、両者の接続ではブリッジプライオリティ値を比較します。本文ではL3SW2の値を2番目に小さくしているので、L3SW2側が指定ポートとなり、L2SW3側は転送を遮断する非指定ポートになります。公式解答例では「非指定」です。
設問2(2)(e)
トポロジが変わると、以前の経路で学習したMACアドレスと出力ポートの対応が、新しい経路では適切でなくなる場合があります。その対応を更新するためにクリアする表は、公式解答例では「MACアドレス」テーブルです。スイッチが学習するL2の転送情報に着目し、IP経路を管理するルーティングテーブルと区別します。
設問3(1)
図2ではスイッチRがルートであり、AとR間の接続が切れても、BとR間の接続は残っています。AはBからのプロポーザルを比較し、B経由でルートへ到達できると判断します。このためAはBへのポートをルートポートに変更し、BがAよりルートに近い側になります。公式解答例では「上位のスイッチ」です。B自身がルートブリッジになるという意味ではありません。
設問3(2)(a)
一つ目の理由は、表3で示された代替ポートの役割から考えます。RSTPでは、ルートポートがダウンしたときに使う代替ポートをあらかじめ決めているため、障害後の切替を速く行えます。公式解答例では、この事前決定を理由として挙げています。30字以内の答案では「ポート故障時の代替ポートを事前に決定しているから」とまとめます。
設問3(2)(b)
二つ目の理由は、STPの状態遷移とRSTPのプロポーザル・アグリーメントによる状態遷移を比較します。STPではリスニングとラーニングの各段階で転送遅延の待ち時間が必要ですが、本文のRSTPの手順では合意後に速やかにフォワーディングへ遷移します。公式解答例では、転送遅延なしで状態遷移することを挙げています。30字以内では「転送遅延がなく、ポートの状態遷移を行うから」とまとめます。採点講評でも、追加されたポートの役割と状態遷移の違いを読み取ることが求められています。
設問4(1)
本文の「新L3SW1と新L3SW2を、1台の論理スイッチとして動作させる」という説明に着目します。情報収集や構成管理を、個々のスイッチごとに行う負担が減ることが理由です。公式解答例では、2台のL3SWを1台のスイッチとして管理できることを挙げています。30字以内の答案では「2台のL3SWを1台のスイッチとして管理できるから」とまとめます。
設問4(2)
設問で除外されたスタックL3SWと新L2SW間以外では、内部サーバへの接続に着目します。現行サーバのNICはアクティブ/スタンバイですが、新ディレクトリサーバと新内部DNSサーバはアクティブ/アクティブになります。図3では両方の回線を利用できる構成なので、公式解答例では「スタックL3SW~新ディレクトリサーバ」又は「スタックL3SW~新内部DNSサーバ」です。答案では、このうち一つの区間を図3の名称で示します。
設問5(技術①)
公式解答例の一つ目の技術は「スタック」です。図3では、新L3SW1と新L3SW2、新L2SW1と新L2SW2を、それぞれ1台の論理スイッチとして扱います。複数の物理スイッチを一つの論理的な接続先にまとめることが、リンクアグリゲーションを用いてループのない構成にするための前提になります。
設問5(技術②)
公式解答例の二つ目の技術は「リンクアグリゲーション」です。複数の物理回線を1本の論理回線として扱うため、図3の並列接続を、独立した複数のL2経路として扱わずに済みます。スタックによって接続先を1台の論理スイッチにまとめ、リンクアグリゲーションによって回線も論理的にまとめるという組合せがポイントです。
設問5(理由)
STP及びRSTPは、L2のループを防ぐために転送経路を制御します。図3では、スタックとリンクアグリゲーションによって論理的なループがない構成になるので、その制御が不要です。公式解答例では「ループがない構成だから」です。この表現は15字以内に収まり、不要になる理由を直接示しています。
設問6(1)(a)
図4と本文から、現行・新ディレクトリサーバはともに172.17.11.0/24に属し、VLAN11のアクセスポートで新旧のネットワークが接続されています。同一サブネット内の通信なので、この区間ではルーティングによるフレームの作り直しがありません。したがって送信元MACアドレスをもつ機器は、公式解答例では「現行のディレクトリサーバ」です。途中にL3SWがあっても、この通信ではL2転送を行う点を押さえます。
設問6(1)(b)
現行・新ディレクトリサーバは同一サブネットにあり、現行サーバは新サーバ自身のMACアドレスを宛先として通信します。L3SW1とスタックL3SWを通過しても、同じVLAN内の転送では宛先MACアドレスは維持されます。公式解答例では「新ディレクトリサーバ」です。デフォルトゲートウェイを経由する通信かどうかを、サーバのIPアドレスとサブネットから判断します。
設問6(2)(a)
現行PCはVLAN101~VLAN103に属し、新公開Webサーバは172.16.254.0/24に属するため、サブネットをまたぐ通信です。表7では、現行L3SWから172.16.254.128/25へのネクストホップをスタックL3SWの172.17.11.101としています。L3SW1はPCから受けたパケットをルーティングし、この区間用のフレームを作るので、送信元MACアドレスをもつ機器は、公式解答例では「現行のL3SW1」です。
設問6(2)(b)
表7の経路設定により、現行L3SW1から見た次の転送先はスタックL3SWです。したがって、L3SW1とスタックL3SW間のフレームの宛先MACアドレスは、最終宛先のWebサーバではなく、このネクストホップのMACアドレスになります。公式解答例では「スタックL3SW」です。IPパケットの宛先と、観測区間のイーサネットフレームの宛先を分けて考えます。
設問6(3)
表6と表7では、新DMZ向けの経路として172.16.254.128/25を設定しているため、新公開Webサーバはこの経路に一致する範囲に置く必要があります。表1の現行サーバの割当範囲は172.16.254.10~172.16.254.100であり、この範囲とは重なりません。一方、サーバが属するサブネット自体は172.16.254.0/24なので、172.16.254.128はホストに使用できます。/25はここでは経路を分けるためのプレフィックスです。/24のブロードキャストアドレスである172.16.254.255を除き、公式解答例では「172.16.254.128~172.16.254.254」です。実際の割当てでは未使用のアドレスを選びます。
設問6(4)
表1と表5では、現行FWと新FWがDMZ側で共有する仮想IPアドレスを、どちらも172.16.254.1としています。下線⑩で現行L2SW1と新L2SW1を接続する際、下線⑨の切離しをしていなければ、両方のFWが同じL2ネットワークに残ります。その結果、仮想IPアドレスが重複します。公式解答例に沿った30字以内の答案は「現行のFWと新FWの仮想IPアドレスが重複する。」です。
設問6(5)(a)
下線⑩によって新旧のDMZが接続されるため、新FWから現行の公開Webサーバへ到達できます。インターネット側の公開IPアドレスを維持しながら接続先だけを現行サーバへ戻すには、受信パケットの宛先を変換する静的NATの設定を変更します。公式解答例では、変換後のIPアドレスを現行の公開WebサーバのIPアドレスに変更します。70字以内では「静的NATの変換後のIPアドレスを、新公開Webサーバから現行の公開WebサーバのIPアドレスに変更する。」とまとめます。
設問6(5)(b)
インターネット接続回線は新ルータ1へ切替済みなので、通信は新ルータ1、新L2SW0、新FWを通ります。新FWで宛先を現行の公開Webサーバへ変換した後、新L2SW1から下線⑩で接続した現行L2SW1へ転送します。公式解答例の経路は「インターネット→新ルータ1→新L2SW0→新FW1→新L2SW1→L2SW1→公開Webサーバ」です。切離した現行FWを経由せず、新旧DMZ間の接続を利用することを図と作業手順から確認します。
設問6(6)(a)
下線⑪は、インターネットから新公開Webサーバへ接続できることを確認する作業です。この接続では、新FWの静的NATを通って新公開WebサーバへWeb通信が転送されます。公式解答例の一つ目は「新公開Webサーバ宛てのWeb通信」です。確認作業の目的に対応する通信として、通信先と通信の種類を示します。
設問6(6)(b)
設問には、接続先IPアドレスがフルサービスリゾルバのキャッシュにないという条件があります。そのためWeb接続の前に名前解決が必要となり、DMZのドメインの権威サーバである新外部DNSサーバへのDNS通信が発生します。この通信も新FWを通るので、公式解答例の二つ目は「新外部DNSサーバ宛てのDNS通信」です。Web接続元からの通信だけでなく、名前解決に伴うリゾルバからの通信も確認対象になります。
設問6(7)
共存中のスタックL3SWのVLAN11インタフェースには、一時的に172.17.11.101を設定しています。一方、表1と表5では内部サーバのデフォルトゲートウェイを172.17.11.1としています。表8で現行L3SWのIPアドレスを削除した後、スタックL3SWが従来のゲートウェイアドレスを引き継げば、サーバ側の設定を変えずに通信を継続できます。公式解答例では「172.17.11.1」です。
設問6(8)
PCは複数のサブネットに分かれ、新内部DNSサーバのDHCPサーバ機能を利用します。リレーエージェントがgiaddrに設定する受信インタフェースのIPアドレスから、DHCPサーバはPCがどのサブネットに属するかを判断できます。そのサブネットに対応するスコープを選び、適切なIPアドレスを割り当てるために使用します。公式解答例でも、サブネットの識別と対応するスコープからの割当てを要点としています。60字以内では「PCが収容されているサブネットを識別し、対応するDHCPのスコープからIPアドレスを割り当てるため」とまとめます。
学習のポイント
STPとVRRPの関係、RSTPの復旧を速める仕組み、スタックとリンクアグリゲーションの効果を理解し、移行段階ごとにL2転送とL3転送を区別して経路を追う練習を重点にします。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和3年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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