NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
令和3年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題









解き方のヒントを見る
検討する対象の範囲をそろえる
この分野の検討では、扱っている対象の範囲をそろえることから始めましょう。与えられた情報の中で、どこまでを一つの対象として扱うのかを確認し、その範囲を途中で広げたり狭めたりせずに考えてください。
この問題で問われていること
着目したいのは、考察の対象に含める範囲が一貫しているかという点です。与えられた条件に沿って対象の境界を意識し、途中の判断で別の範囲に置き換わっていないかを確かめながら整理しましょう。
視点
対象の範囲が変わると、同じ情報でも判断の前提が変わることがあります。まず、与えられた条件から対象に含まれる範囲を整理し、その境界を保ったまま考察を進めましょう。
確認ポイント
- 対象として扱う範囲を確認したか
- 与えられた条件に沿って範囲を定めたか
- 考察の途中で対象の範囲が変わっていないか
正解と解説を見る
解説
専用線の輻輳と機器の老朽化に対応するため、通信量を調査し、BGPとOSPFで接続を冗長化する事例です。カウンタの扱い、NEXT_HOPの到達性、導入手順と経路の優先順位、監視方法ごとの検知範囲を理解することが要点です。
問題の全体像
A社は、インターネット接続機器の老朽化と専用線の輻輳に対応するため、機器交換、回線増速、接続の冗長化を検討しています。さらに、従来の死活監視では捉えられなかった異常を検知するため、しきい値監視と機械学習監視を導入します。出題趣旨では、SNMPによる利用状況の把握、pingと機械学習による監視、BGPとOSPFを用いた設計、プロトコルの特徴を踏まえた導入手順を問うとされています。測定値の意味と限界を理解し、図表から経路制御の動作を組み立てることが中心です。
設問1(1)
表1のカウンタは累積オクテット数なので、直近5分間の通信量はXt-Xt-1です。1オクテットを8ビットに換算し、5分=300秒で割れば、平均通信速度をビット/秒で求められます。公式解答例では「(Xt-Xt-1)×8÷300」です。カウンタラップは発生していないという条件から、ここでは差分の補正は不要です。
設問1(2)
下線①の測定は、5分間の通信量を時間平均しています。そのため、短時間に集中した大量の通信も5分間に均した値となり、その間に発生したバースト通信を把握できなくなります。公式解答例では「取得間隔の間で発生したバースト通信が分からなくなる。」です。35字以内では、取得間隔内の短時間の通信集中が平均値に埋もれる点を押さえます。
設問1(3)
32ビットカウンタは0から2³²-1までを数え、その次に0へ戻ります。取得間隔内で1回ラップした場合、後の値Xtに1周分の2³²を加えることで、増加量をXt+2³²-Xt-1として求められます。公式解答例では「ア」です。最大値の2³²-1ではなく、カウンタが一巡する値の個数である2³²を加える点に注意します。
設問2(1)
図2では、ルータ10はaとc、ルータ11はbとdという二つの物理インタフェースでOSPFを構成します。一方、FW10の対象インタフェースはeだけです。ルータ10・11は一方の経路が使えなくても他方から迂回できるため、特定の物理インタフェースに依存しないループバックアドレスでiBGPを構成します。公式解答例も、OSPFを構成するインタフェースが二つあり、迂回路を構成できることを理由としています。60字以内では「OSPFを構成する物理インタフェースが二つあり、障害時に迂回路を構成できるから。」という粒度で押さえます。
設問2(2)(a)
下線④の書換え設定がない場合、ルータ10Zが広告したデフォルトルートのNEXT_HOPは、hのα.β.γ.1のままルータ10からFW10へ引き継がれます。本文には、BGP経路をルーティングテーブルへ反映するにはNEXT_HOPへの到達経路が必要とあります。このアドレスを含むネットワークはα.β.γ.0/30なので、公式解答例ではaに「α.β.γ.0/30」を入れます。表7のaは空欄名であり、図2の物理インタフェースaを指しません。図2のa・bはルータ間のα.β.γ.12/30上にあります。
設問2(2)(b)
ルータ11Zから受信するデフォルトルートも、書換え設定がなければNEXT_HOPはiのα.β.γ.5のままFW10へ引き継がれます。FW10には、このeBGP側のNEXT_HOPへ到達するため、そのアドレスを含むα.β.γ.4/30への経路が必要です。公式解答例ではbに「α.β.γ.4/30」を入れます。aとbは順不同なので、必要な二つのネットワークを正しく求めることが要点です。
設問2(3)
下線⑤では、受信した経路情報のAS_PATHに自身のAS番号が含まれていると、その経路情報を破棄します。これは、その経路情報が既に自身のASを経由しており、再び採用すると経路のループにつながるためです。公式解答例では「経路のループを回避するため」です。20字以内では、ループ回避という目的を端的に述べます。
設問2(4)(ア)
表3の評価順2はAS_PATHの長さを比較する項目です。公式解答例では「短い」です。LOCAL_PREFが同じ場合、経由するASの数が少ない経路を優先します。AS_PATHの比較を、表3の評価順1であるLOCAL_PREFの比較より先に行わないことも大切です。
設問2(4)(イ)
表3の評価順4はMEDの値を比較する項目です。公式解答例では「小さい」です。表3ではLOCAL_PREFは大きい値、MEDは小さい値を優先するため、二つの属性で優先される値の大小が異なる点を整理します。
設問2(4)(ウ)
表4のウは、LOCAL_PREFが200のデフォルトルートのNEXT_HOPです。平常時はルータ10側を使うという条件と、下線④でNEXT_HOPを自身のIPアドレスへ書き換える設定に着目します。ルータ10のiBGP用アドレスはループバックのα.β.γ.8なので、公式解答例では「α.β.γ.8」です。
設問2(4)(エ)
表4のエは、LOCAL_PREFが100の予備側デフォルトルートのNEXT_HOPです。ルータ11も下線④の設定でNEXT_HOPを書き換え、ループバックアドレスを使ってiBGPの広告を行います。図2のアドレス一覧から、公式解答例では「α.β.γ.9」です。
設問2(4)(オ)
表5のオは、ルータ10のループバックα.β.γ.8/32へ到達するための、FW10から見たネクストホップです。FW10のeと同じネットワーク上にあるルータ10の物理インタフェースcはα.β.γ.17なので、公式解答例では「α.β.γ.17」です。BGPで通知されるNEXT_HOPのループバックアドレスと、そこへ実際に転送するための隣接ルータのアドレスを区別します。
設問2(4)(カ)
表5のカは、ルータ11のループバックα.β.γ.9/32へ到達するためのネクストホップです。図2では、FW10と同じネットワーク上にあるルータ11の物理インタフェースdがα.β.γ.18です。したがって、公式解答例では「α.β.γ.18」です。
設問2(4)(キ)
本文では、リンクダウンしなくても通信不能となる障害を、BGPの定期的なメッセージの受信状況から検知すると説明しています。公式解答例では「キープアライブ」です。定期メッセージを受信できなくなることでピアリングの切断と経路更新につながります。採点講評でも、キープアライブなどBGPの基本用語を理解しておくことが求められています。
設問2(5)
下線⑥の前にある、BGPテーブルから同じ宛先への最適経路を一つだけ選択するという説明に着目します。複数の経路を保持していても、ルーティングテーブルに反映する経路が一つなので、標準仕様ではそれらを使ったトラフィック分散ができません。公式解答例では「BGPテーブルから最適経路を一つだけ選択し、ルータのルーティングテーブルに反映する。」です。50字以内では、選択元、一つだけという制約、反映先を押さえます。
設問3(1)(ク)
表6の手順4の対象はルータ10とルータ11です。両ルータはループバックアドレスをiBGPに利用し、そのループバックもOSPFの対象とするため、まずループバックを作成してIPアドレスを設定します。公式解答例ではク=「エ」で、作業内容は「ループバックインタフェースの作成とIPアドレスの設定」です。手順3の物理インタフェース設定に続き、後のプロトコル設定に必要なアドレスを準備する段階です。
設問3(1)(ケ)
表6の手順5の対象はルータ10、ルータ11、FW10です。手順4で用意したループバックアドレスなどへの到達性を確保してから、それらを使うiBGPを導入します。このため、公式解答例ではケ=「ウ」で、作業内容は「OSPFの導入」です。ループバックの作成とアドレス設定の後に、内部の経路制御を整える順序となります。
設問3(1)(コ)
表6の手順6も、対象はルータ10、ルータ11、FW10です。手順5のOSPFでループバックを含む内部の到達性が確保されたので、ルータ10・11のループバックアドレスとFW10のeのアドレスを使い、互いにiBGPを構成できます。公式解答例ではコ=「イ」で、作業内容は「iBGPの導入」です。
設問3(1)(サ)
表6の手順7では、対象にZ社側のルータ10Zとルータ11Zが加わります。A社内の経路共有を準備した後、異なるASに属するルータ10と10Z、ルータ11と11Zの間でeBGPを導入します。公式解答例ではサ=「ア」で、作業内容は「eBGPの導入」です。全体の順序は、ク=エ、ケ=ウ、コ=イ、サ=アとなります。
設問3(2)
表6の手順8は、既存のインターネット接続に用いていた静的経路を削除する作業です。本文には、ルータ10ZがA社のグローバルIPアドレスへの静的経路を持ち、A社側ではルータ10とFW10が静的経路制御を利用しているとあります。公式解答例では「ルータ10Z、ルータ10、FW10」です。L3SW40も静的経路を使いますが、図2の今回の冗長化対象に含まれないため、回答には入れません。
設問3(3)
下線⑦では、BGPなどの設定完了時ではなく、静的経路の削除時に動的経路へ切り替わるとされています。これは、本事例ではBGPの経路より静的経路が優先され、設定を残している間は既存経路が使われるためです。公式解答例もこの優先関係を理由としています。40字以内では「BGPの経路情報より静的経路設定の経路情報が優先されるから。」とまとめられます。採点講評では、異なるプロトコルを組み合わせる際の優先順位の理解が求められています。
設問3(4)
下線⑧では、交換前に通信をルータ10から迂回させる操作を問うています。ルータ10とルータ10ZのeBGPピアを無効にすると、その接続で交換していた経路情報が撤回され、ルータ11側へ経路を切り替えられます。公式解答例では「eBGPピアを無効にする。」です。20字以内では、この具体的な操作を答えます。採点講評でも、利用者への影響を最小限にする通信迂回操作の理解が求められています。
設問4(1)(①)
本文の死活監視は、エコー応答が一つも届かない状態が連続した場合にアラートを出します。輻輳していてもエコー応答が届くことはあるため、輻輳を確実に検知できません。公式解答例では、この見逃しを一つ目の問題点としています。30字以内では「輻輳時にもエコー応答を受信し、検知できないことがある。」とまとめられます。
設問4(1)(②)
エコー応答が届かない原因は専用線の輻輳だけではありません。監視対象のルータ10Zやルータ11Zが故障しても応答がなくなるので、それを専用線の輻輳として誤って検知するおそれがあります。公式解答例では、この誤検知が二つ目の問題点です。30字以内では「ルータ10Zとルータ11Zの障害時に誤って検知する。」とまとめられます。採点講評では、機器の所有者よりもICMP監視の技術的な限界に着目することが求められています。
設問4(2)
本文では、二つの専用線の帯域幅は同じで、通信を均等に分散できると仮定しています。各回線の帯域幅をBとすると、平常時に各回線でBの50%ずつを使っていれば、片方の障害時に全通信が残る回線へ移っても合計はBに収まります。したがって、公式解答例ではス=「50」です。二回線分の帯域を、障害時には一回線で引き受ける関係から求めます。
設問4(3)(a)
本文の管理サーバの説明には、SNMPで取得した統計データに加え、FWとプロキシサーバの通信ログデータが保存されるとあります。下線⑩の「統計データとは別のデータ」はこれを指します。公式解答例では「FWとプロキシサーバの通信ログデータ」です。この表現で25字以内に収まり、保存されているデータの種類と生成元を示せます。
設問4(3)(b)
機械学習監視は、過去の時系列から予測した値と新たな実測値を比較して異常を検知します。通信ログデータにも同じ考え方を適用すれば、通信量そのものではなく、単位時間当たりに発生するログデータ量の突発的な増減を検知できます。公式解答例では、このログデータ量の増減が検知内容です。40字以内では「単位時間当たりの通信ログデータ量が突発的に増減したこと」とまとめられます。特定の攻撃や故障原因を断定する答案にはしません。
学習のポイント
BGPの経路属性と実際の転送経路を区別し、ループバック、OSPF、iBGP、eBGPの依存関係を図から説明できるようにします。併せて、時間平均と死活監視の限界を押さえます。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和3年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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