NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

令和3年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 インターネット接続環境の更改に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 物品販売を主な事業とするA社は、近年、ネット通販に力を入れている。A社は、K社が提供するSaaSを利用して、顧客との電子メールやビジネスチャット、ファイル共有などを行っている。A社のシステム部では、老朽化に伴うA社インターネット接続環境の新しい機器への交換とインターネット接続の冗長化の検討を進めている。システム部門のB課長は、Cさんをインターネット接続環境の更改の担当者として任命した。 A社は、専用線を利用して、インターネットサービスプロバイダであるZ社を経由して、インターネットに接続している。現在のA社ネットワーク環境を図1に示す。 図1 現在のA社ネットワーク環境(抜粋) 現在のA社ネットワーク環境の概要は次のとおりである。 ・FWは、ステートフルパケットインスペクション機能をもつ。FWは、A社で必要な通信を許可し、必要のない通信を拒否している。 ・FWは、許可又は拒否した情報を含む通信ログデータを管理サーバにSYSLOGで送信している。 ・プロキシサーバは、従業員が利用するPCからインターネット向けのHTTP通信及びHTTPS通信をそれぞれ中継し、通信ログデータを管理サーバにSYSLOGで送信している。 ・K社が提供するSaaSとの通信は全てHTTPS通信である。 ・管理サーバには、A社のルータ、FW、L2SW及びL3SW(以下、A社NW機器という)からSNMPを用いて収集した通信量などの統計データ、FWとプロキシサーバの通信ログデータが保存されている。 ・管理サーバは、通信ログデータを基にFWとプロキシサーバの通信ログ分析レポートを作成している。 ・監視サーバは、A社NW機器及びサーバを死活監視している。 ・キャッシュDNSサーバは、PCやサーバセグメントのサーバからの名前解決の問合せ要求に対して、他のDNSサーバへ問い合わせた結果、得られた情報を応答する。 ・権威DNSサーバ1は、A社内のPCやサーバセグメントのサーバのホスト名などを管理し、名前解決の問合せ要求に対してPCやサーバセグメントのサーバなどに関する情報を応答する。 ・サーバセグメントには、プライベートIPアドレスを付与している。 ・サーバセグメントからインターネットに接続する際に、FWでNAPTによるIPアドレスとポート番号の変換が行われる。 ・内部セグメントには、プライベートIPアドレスを付与している。 ・権威DNSサーバ2は、A社内の公開Webサーバのホスト名などを管理し、名前解決の問合せ要求に対して公開Webサーバなどに関する情報を応答する。 ・DMZには、グローバルIPアドレスを付与している。 ・ルータ10Zには、A社が割当てを受けているグローバルIPアドレスの静的経路設定がされており、これを基にZ社内部のルータに経路情報の広告を行っている。 ・ルータ10、FW10及びL3SW40の経路制御は静的経路制御を利用している。 Cさんは、インターネット接続環境の更改の検討を進めるに当たり、まず、インターネット接続環境の利用状況を調査することにした。 〔インターネット接続環境の利用状況の調査〕 管理サーバは、SNMPを用いて、5分ごとにA社NW機器の情報を収集している。A社NW機器のインタフェースの情報は、インタフェースに関するMIBによって取得できる。そのうち、インタフェースの通信量に関するMIBの説明を表1に示す。 表1 インタフェースの通信量に関するMIBの説明(抜粋) 例えば、ifInOctetsはカウンタ値で、電源投入によって機器が起動すると初期値の0から加算が開始され、インタフェースでパケットを受信した際にそのパケットのオクテット数が加算される。機器は、管理サーバからSNMPで問合せを受けると、その時点のカウンタ値を応答する。①管理サーバは、5分ごとにSNMPでカウンタ値を取得し、単位時間当たりの通信量を計算し、統計データとして保存している。単位時間当たりの通信量の単位はビット/秒である。②カウンタ値が上限値を超える場合、初期値に戻って(以下、カウンタラップという)再びカウンタ値が加算される。通信量が多いとカウンタラップが頻繁に起きることから、インタフェースの通信量の情報を取得する場合には、32ビットカウンタではなく、64ビットカウンタを利用することが推奨されている。管理サーバに保存された統計データは、単位時間当たりの通信量の推移を示すトラフィックグラフとして参照できる。 統計データから、過去に何度か利用が増え、インターネットに接続する専用線に輻輳が起きていたことが判明したので、専用線を増速する必要があるとCさんは考えた。また、統計データと通信ログ分析レポートから交換対象機器の通信量や負荷の状態を確認した結果、ルータ10及びL2SW10は同等性能の後継機種に交換し、FW10は性能が向上した上位機種に交換すればよいとCさんは考えた。 〔インターネット接続の冗長化検討〕 Cさんは、インターネット接続の冗長化方法についてZ社に提案を求めた。Z社の提案は、動的経路制御の一つであるBGPを用いた構成であった。Z社の提案した構成を図2に示す。 図2 Z社の提案した構成(抜粋) Z社の提案した構成の概要は次のとおりである。 ・ルータ10側の専用線を増速する。また、新たに専用線を敷設してZ社に接続する。新たに敷設する専用線を終端する機器として、ルータ11とルータ11Zを設置する。ルータ11側の専用線の契約帯域幅は、ルータ10側の専用線と同じにする。 ・平常時はルータ10側の専用線を利用し、障害などでルータ10側が利用できない場合は、ルータ11側を利用するように経路制御を行う。 ・ルータ10とルータ11にはループバックインタフェースを作成し、これらにIPアドレスを設定する。 ・a~eの各物理インタフェース及びループバックインタフェースでは、OSPFエリアを構成する。 ・③ルータ10とルータ11はループバックインタフェースに設定したIPアドレスを利用し、FW10はeに設定したIPアドレスを利用して、互いにiBGPのピアリングを行う。④iBGPのピアリングでは、経路情報を広告する際に、BGPパスアトリビュートの一つであるNEXT_HOPのIPアドレスを、自身のIPアドレスに書き換える設定を行う。 ・ルータ10とルータ10Zの間、及びルータ11とルータ11Zの間では、eBGPのピアリングを行う。ピアリングには、fとh、及びgとiに設定したIPアドレスを利用する。 ・eBGPのピアリングでは、A社側はプライベートAS番号である64512を、Z社側はグローバルAS番号である64496を利用する。 Cさんは、Z社の提案を受け、BGPの標準仕様について調査を行った。 BGPでは、それぞれの経路情報に、パスアトリビュートの情報が付加される。BGPパスアトリビュートの一覧を表2に示す。 表2 BGPパスアトリビュートの一覧(抜粋) AS_PATHは、経路情報がどのASを経由してきたのかを示すAS番号の並びである。eBGPピアにおいて、隣接するASに経路情報を広告する際に、AS_PATHに自身のAS番号を追加する。また、⑤隣接するASから経路情報を受信する際に、自身のAS番号が含まれている場合はその経路情報を破棄する。 NEXT_HOPは、宛先ネットワークアドレスへのネクストホップのIPアドレスを示す。ネクストホップのIPアドレスは、ルータがパケットを転送する宛先を示す。eBGPピアに経路情報を広告する際には、NEXT_HOPを自身のIPアドレスに書き換えて送信する。iBGPピアに経路情報を広告する際には、NEXT_HOPを書き換えず、そのまま送信する。 MULTI_EXIT_DISC(以下、MEDという)は、eBGPピアに対して通知する、自身のAS内に存在する宛先ネットワークアドレスの優先度である。MEDはメトリックとも呼ばれる。 LOCAL_PREFは、iBGPピアに対して通知する、外部のASに存在する宛先ネットワークアドレスの優先度である。 BGPでは、ピアリングで受信した経路情報をBGPテーブルとして構成する。このBGPテーブルに存在する、同じ宛先ネットワークアドレスの経路情報の中から、最適経路を一つだけ選択し、ルータのルーティングテーブルに反映する。A社で利用している機器の最適経路選択アルゴリズムの仕様を表3に示す。 表3 最適経路選択アルゴリズムの仕様 最適経路の選択は、表3中の評価順に行われる。例えば、同じ宛先ネットワークアドレスの経路情報が二つあった場合には、最初に、LOCAL_PREFの値を評価し、値に違いがあれば最も大きい値をもつ経路情報を選択し、評価を終了する。値に違いがなければ、次のAS_PATHの長さの評価に進む。 なお、ルータのルーティングテーブルに最適経路を反映するためには、NEXT_HOPのIPアドレスに対応する経路情報が、ルータのルーティングテーブルに存在し、ルータがパケット転送できる状態にある必要がある。 Cさんは、以上の調査結果を基にZ社の提案した構成を確認した。CさんとZ社の担当者との会話は、次のとおりである。 Cさん:専用線の経路制御はどのように行いますか。 担当者:今回は、LOCAL_PREFを利用して、図2中の各ルータ及びFWのパケット送信を制御します。ルータ10Zとルータ11Zが経路情報を受信した際に、LOCAL_PREFの値をそれぞれ設定し、Z社内部の機器に経路情報の広告を行います。ルータ10とルータ11が経路情報を受信した際も同様に、LOCAL_PREFの値をそれぞれ設定し、A社内部の機器に経路情報の広告を行ってください。 Cさん:BGPで広告する経路情報はどのようなものですか。 担当者:ルータ10Zとルータ11Zはデフォルトルートの経路情報の広告を行います。ルータ10とルータ11はA社が割当てを受けているグローバルIPアドレスの経路情報の広告を行ってください。平常時のFW10のBGPテーブルは表4のように、ルーティングテーブルは表5のようになるはずです。 表4 FW10のBGPテーブル(抜粋) 表5 FW10のルーティングテーブル(抜粋) Cさん:分かりました。リンクダウンしないにもかかわらず、通信ができなくなるような専用線の障害時は、どのような動作になりますか。 担当者:BGPでは、【キ】メッセージを定期的に送信します。専用線の障害時には、ルータが【キ】メッセージを受信しなくなることによって、ピアリングが切断され、AS内の各機器の経路情報が更新されます。 Cさん:分かりました。 担当者:ところで、⑥BGPの標準仕様ではトラフィックを分散する経路制御はできません。BGPマルチパスと呼ばれる技術を使うことで、平常時からルータ10側、ルータ11側両方の専用線を使って、トラフィックを分散する経路制御ができますがいかがですか。教えていただいた、今回利用を検討されている機器はどれもBGPマルチパスをサポートしています。BGPマルチパスを有効にすると、BGPテーブル内のLOCAL_PREFやAS_PATH、MEDの値は同じで、NEXT_HOPだけが異なる複数の経路情報を、同時にルーティングテーブルに反映します。その結果、ECMP(Equal-Cost Multi-Path)によってトラフィックを分散することができます。 Cさん:いいですね。では、BGPマルチパスを利用したいと思います。 担当者:承知しました。各機器の設定例を後ほどお渡ししますので参考にしてください。 Cさん:ありがとうございます。 〔インターネット接続の冗長化手順〕 Cさんは、冗長化作業中にインターネット利用に対する影響が最小限となる、インターネット接続の冗長化手順の検討を行った。Cさんが検討した冗長化手順を表6に示す。 表6 Cさんが検討した冗長化手順 手順1、2では、新たに導入する機器の設置及びケーブルの接続を行い、物理構成を完成する。手順3では、作業対象機器の物理インタフェースの設定及びIPアドレスの設定を行い、機器間で疎通の確認を行う。疎通の確認では、pingを用いて、パケットロスが観測されないことを確認する。手順4~7で、BGPやOSPFを順次設定する。続いて、手順8を実施する。⑦A社からインターネットへ向かう通信については、手順8の静的経路の削除が行われた時点で、動的経路による制御に切替えが行われ、冗長化が完成する。最後に、手順9では、インターネット利用に対する影響が最小限になるように機器を操作しながら、作業対象機器をあらかじめ設定を投入しておいた後継機種又は上位機種に交換する。例えば、ルータ10の交換に当たっては、⑧通信がルータ10を経由しないようにルータ10に対して操作を行った後に交換作業を実施する。 Cさんは、これまでの検討結果をインターネット接続環境の更改案としてまとめ、B課長に報告した。B課長は、専用線に輻輳が発生していたこと、及び監視サーバで検知できなかったことを問題視した。想定外のネットワーク利用などによって突発的に発生した通信や輻輳を迅速に検知できるように、単位時間当たりの通信量の監視(以下、トラフィック監視という)について、Cさんに検討するよう指示した。 〔トラフィック監視の導入〕 監視サーバの死活監視は、監視対象に対して、1回につきICMPのエコー要求を3パケット送信し、エコー応答を受信するかどうかを確認する。1分おきに連続して5回、一つもエコー応答を受信しなかった場合に、アラートとして検知する。エコー要求のタイムアウト値は1秒である。Cさんは、⑨専用線の輻輳を検知するために、監視サーバの監視対象として、ルータ10Zとルータ11Zを追加することを考えたが、問題があるため見送った。 そこで、Cさんは、通信量のしきい値を定義し、上限値を上回ったり、下限値を下回ったりするとアラートとして検知する監視(以下、しきい値監視という)の利用を検討した。通信を均等に分散できると仮定すると、インターネット接続の冗長化導入によって利用できる帯域幅は専用線2回線分になる。どちらかの専用線に障害が発生すると、利用できる帯域幅は専用線1回線分になる。Cさんは、どちらかの専用線に障害が発生した状況において、専用線に流れるトラフィックの輻輳の発生を避けるためには、平常時から、それぞれの専用線で利用できる帯域幅の【ス】%を単位時間当たりの通信量の上限値としてしきい値監視すればよいと考えた。このしきい値監視でアラートを検知すると、トラフィック増の原因を調査して、必要であれば専用線の契約帯域幅の増速を検討する。 次に、Cさんは、想定外のネットワーク利用などによって単位時間当たりの通信量が突発的に増えたり、A社NW機器の故障などによって単位時間当たりの通信量が突発的に減ったりすること(以下、トラフィック異常という)を検知する監視の利用を検討した。Cさんは機械学習を利用した監視(以下、機械学習監視という)の製品を調査した。 Cさんが調査した製品は、過去に収集した時系列の実測値を用いて、傾向変動や周期性から近い将来の値を予測し、異常を検知することができる。例えば、単位時間当たりの通信量について、その予測値と新たに収集した実測値を基に、トラフィック異常を検知することができる。 Cさんは、管理サーバに保存されている単位時間当たりの通信量の統計データを用いて、機械学習監視製品の試験導入を行った。Cさんは、これまで検知できなかったトラフィック異常が検知できることを確認した。さらに、⑩管理サーバに保存されている、統計データとは別のデータについても、機械学習監視製品を用いて監視することで、トラフィック異常とは別の異常が検知できることを確認した。複数のデータを組み合わせて、機械学習監視製品を用いて監視することで、ネットワーク環境の状況を素早く、かつ、詳細に把握できることが分かった。 Cさんは、機械学習監視製品の試験結果についてまとめ、B課長に報告を行い、インターネット接続環境の更改に併せて、管理サーバにしきい値監視と機械学習監視製品を導入することが決まった。 その後、A社では、Cさんがまとめたインターネット接続環境の更改案を基に設備更改が実施され、また、しきい値監視と機械学習監視製品が導入された。 設問1 〔インターネット接続環境の利用状況の調査〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1)本文中の下線①について、取得時刻tにおけるカウンタ値をXt、取得時刻tの5分前の時刻t-1におけるカウンタ値をXt-1としたとき、t-1とtの間における単位時間当たりの通信量(ビット/秒)を算出する計算式を答えよ。 ここで、1オクテットは8ビットとし、t-1とtの間でカウンタラップは発生していないものとする。 (2)本文中の下線①について、利用状況の調査を目的として、単位時間当たりの通信量(ビット/秒)を求める際に時間平均することによる問題点を35字以内で述べよ。 (3)本文中の下線②について、32ビットカウンタでカウンタラップが発生した際に、通信量を正しく計算するためには、カウンタ値をどのように補正すればよいか。解答群の中から選び、記号で答えよ。ここで、取得時刻tにおけるカウンタ値をXt、取得時刻tの5分前の時刻t-1におけるカウンタ値をXt-1、t-1とtの間でカウンタラップが1回発生したとする。 解答群 ア XtをXt+2³²に補正する。 イ XtをXt+2³²-1に補正する。 ウ Xt-1をXt-1+2³²に補正する。 エ Xt-1をXt-1+2³²-1に補正する。 設問2 〔インターネット接続の冗長化検討〕について、(1)~(5)に答えよ。 (1)本文中の下線③について、図2中のルータ10やルータ11にはループバックインタフェースを作成し、iBGPのピアリングにループバックインタフェースに設定したIPアドレスを利用するのはなぜか。FW10とのインタフェースの数の違いに着目し、60字以内で述べよ。 (2)FW10のルーティングテーブルを表7に示す。本文中の下線④について、書き換える設定を行わない場合に、FW10のルーティングテーブルに追加で必要になる情報はどのような内容か。表5を参考に、表7中の【a】、【b】に入れる適切な字句を答えよ。 表7 FW10のルーティングテーブル(抜粋) (3)本文中の下線⑤について、経路情報を破棄する目的を20字以内で述べよ。 (4)本文及び表3~5中の【ア】~【キ】に入れる適切な字句を答えよ。 (5)本文中の下線⑥について、BGPの標準仕様とはどのような内容か。本文中の字句を用いて50字以内で述べよ。 設問3 〔インターネット接続の冗長化手順〕について、(1)~(4)に答えよ。 (1)表6中の【ク】~【サ】に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。 解答群 ア eBGPの導入 イ iBGPの導入 ウ OSPFの導入 エ ループバックインタフェースの作成とIPアドレスの設定 (2)表6中の【シ】に入れる適切な機器名を、図2中の機器名で全て答えよ。 (3)本文中の下線⑦について、静的経路の削除が行われた時点で、動的経路による制御に切替えが行われる理由を40字以内で述べよ。 (4)本文中の下線⑧について、ルータ10に対して行う操作はどのような内容か。操作の内容を20字以内で述べよ。 設問4 〔トラフィック監視の導入〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1)本文中の下線⑨について、問題点を二つ挙げ、それぞれ30字以内で述べよ。 (2)本文中の【ス】に入れる適切な数値を答えよ。 (3)本文中の下線⑩について、統計データとは別のデータにはどのようなデータがあるか。本文中の字句を用いて25字以内で答えよ。また、そのデータを、機械学習監視製品を用いて監視することによって、どのようなトラフィック異常とは別の異常を検知できるようになるか。検知内容を40字以内で述べよ。
図1 現在のA社ネットワーク環境(抜粋)。インターネット、Z社ネットワーク、A社内のルータ、FW、DMZ、内部セグメント、サーバセグメントなどの接続構成を示すネットワーク図。
図1 現在のA社ネットワーク環境(抜粋)。インターネット、Z社ネットワーク、A社内のルータ、FW、DMZ、内部セグメント、サーバセグメントなどの接続構成を示すネットワーク図。
表1 インタフェースの通信量に関するMIBの説明(抜粋)。ifInOctets、ifOutOctets、ifHCInOctets、ifHCOutOctetsについて、受信・送信オクテット数と32ビット・64ビットカウンタの違いを示す表。
表1 インタフェースの通信量に関するMIBの説明(抜粋)。ifInOctets、ifOutOctets、ifHCInOctets、ifHCOutOctetsについて、受信・送信オクテット数と32ビット・64ビットカウンタの違いを示す表。
図2 Z社の提案した構成(抜粋)。ルータ10、ルータ11、FW10、L2SW10とZ社のルータ10Z、11ZをBGP及びOSPFで接続し、各インタフェースのIPアドレスを示した冗長構成図。
図2 Z社の提案した構成(抜粋)。ルータ10、ルータ11、FW10、L2SW10とZ社のルータ10Z、11ZをBGP及びOSPFで接続し、各インタフェースのIPアドレスを示した冗長構成図。
表2 BGPパスアトリビュートの一覧(抜粋)。BGPパスアトリビュートとして、タイプコード2のAS_PATH、3のNEXT_HOP、4のMULTI_EXIT_DISC、5のLOCAL_PREFを示す表。
表2 BGPパスアトリビュートの一覧(抜粋)。BGPパスアトリビュートとして、タイプコード2のAS_PATH、3のNEXT_HOP、4のMULTI_EXIT_DISC、5のLOCAL_PREFを示す表。
表3 最適経路選択アルゴリズムの仕様。LOCAL_PREF、AS_PATH長、ORIGIN、MED、ピア種別、NEXT_HOP、ルータID、ピアリングIPアドレスの評価順を示す表。
表3 最適経路選択アルゴリズムの仕様。LOCAL_PREF、AS_PATH長、ORIGIN、MED、ピア種別、NEXT_HOP、ルータID、ピアリングIPアドレスの評価順を示す表。
表4 FW10のBGPテーブル(抜粋)。FW10が受信した二つのデフォルトルートについて、AS_PATH、MED、LOCAL_PREF、NEXT_HOPを示すBGPテーブル。
表4 FW10のBGPテーブル(抜粋)。FW10が受信した二つのデフォルトルートについて、AS_PATH、MED、LOCAL_PREF、NEXT_HOPを示すBGPテーブル。
表5 FW10のルーティングテーブル(抜粋)。FW10のデフォルトルートとルータ10・ルータ11のループバックアドレスへの経路について、ネクストホップとインタフェースを示す表。
表5 FW10のルーティングテーブル(抜粋)。FW10のデフォルトルートとルータ10・ルータ11のループバックアドレスへの経路について、ネクストホップとインタフェースを示す表。
表6 Cさんが検討した冗長化手順。新機器の設置、ケーブル接続、インタフェース設定、BGP・OSPF設定、静的経路削除、旧機器交換の手順表。
表6 Cさんが検討した冗長化手順。新機器の設置、ケーブル接続、インタフェース設定、BGP・OSPF設定、静的経路削除、旧機器交換の手順表。
表7 FW10のルーティングテーブル(抜粋)。書き換え設定を行わない場合に追加が必要となる二つの宛先ネットワークアドレスを空欄で示したFW10の経路表。
表7 FW10のルーティングテーブル(抜粋)。書き換え設定を行わない場合に追加が必要となる二つの宛先ネットワークアドレスを空欄で示したFW10の経路表。
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検討する対象の範囲をそろえる

この分野の検討では、扱っている対象の範囲をそろえることから始めましょう。与えられた情報の中で、どこまでを一つの対象として扱うのかを確認し、その範囲を途中で広げたり狭めたりせずに考えてください。

この問題で問われていること

着目したいのは、考察の対象に含める範囲が一貫しているかという点です。与えられた条件に沿って対象の境界を意識し、途中の判断で別の範囲に置き換わっていないかを確かめながら整理しましょう。

視点

対象の範囲が変わると、同じ情報でも判断の前提が変わることがあります。まず、与えられた条件から対象に含まれる範囲を整理し、その境界を保ったまま考察を進めましょう。

確認ポイント

  • 対象として扱う範囲を確認したか
  • 与えられた条件に沿って範囲を定めたか
  • 考察の途中で対象の範囲が変わっていないか
正解と解説を見る

解説

専用線の輻輳と機器の老朽化に対応するため、通信量を調査し、BGPとOSPFで接続を冗長化する事例です。カウンタの扱い、NEXT_HOPの到達性、導入手順と経路の優先順位、監視方法ごとの検知範囲を理解することが要点です。

問題の全体像

A社は、インターネット接続機器の老朽化と専用線の輻輳に対応するため、機器交換、回線増速、接続の冗長化を検討しています。さらに、従来の死活監視では捉えられなかった異常を検知するため、しきい値監視と機械学習監視を導入します。出題趣旨では、SNMPによる利用状況の把握、pingと機械学習による監視、BGPとOSPFを用いた設計、プロトコルの特徴を踏まえた導入手順を問うとされています。測定値の意味と限界を理解し、図表から経路制御の動作を組み立てることが中心です。

設問1(1)

表1のカウンタは累積オクテット数なので、直近5分間の通信量はXt-Xt-1です。1オクテットを8ビットに換算し、5分=300秒で割れば、平均通信速度をビット/秒で求められます。公式解答例では「(Xt-Xt-1)×8÷300」です。カウンタラップは発生していないという条件から、ここでは差分の補正は不要です。

設問1(2)

下線①の測定は、5分間の通信量を時間平均しています。そのため、短時間に集中した大量の通信も5分間に均した値となり、その間に発生したバースト通信を把握できなくなります。公式解答例では「取得間隔の間で発生したバースト通信が分からなくなる。」です。35字以内では、取得間隔内の短時間の通信集中が平均値に埋もれる点を押さえます。

設問1(3)

32ビットカウンタは0から2³²-1までを数え、その次に0へ戻ります。取得間隔内で1回ラップした場合、後の値Xtに1周分の2³²を加えることで、増加量をXt+2³²-Xt-1として求められます。公式解答例では「ア」です。最大値の2³²-1ではなく、カウンタが一巡する値の個数である2³²を加える点に注意します。

設問2(1)

図2では、ルータ10はaとc、ルータ11はbとdという二つの物理インタフェースでOSPFを構成します。一方、FW10の対象インタフェースはeだけです。ルータ10・11は一方の経路が使えなくても他方から迂回できるため、特定の物理インタフェースに依存しないループバックアドレスでiBGPを構成します。公式解答例も、OSPFを構成するインタフェースが二つあり、迂回路を構成できることを理由としています。60字以内では「OSPFを構成する物理インタフェースが二つあり、障害時に迂回路を構成できるから。」という粒度で押さえます。

設問2(2)(a)

下線④の書換え設定がない場合、ルータ10Zが広告したデフォルトルートのNEXT_HOPは、hのα.β.γ.1のままルータ10からFW10へ引き継がれます。本文には、BGP経路をルーティングテーブルへ反映するにはNEXT_HOPへの到達経路が必要とあります。このアドレスを含むネットワークはα.β.γ.0/30なので、公式解答例ではaに「α.β.γ.0/30」を入れます。表7のaは空欄名であり、図2の物理インタフェースaを指しません。図2のa・bはルータ間のα.β.γ.12/30上にあります。

設問2(2)(b)

ルータ11Zから受信するデフォルトルートも、書換え設定がなければNEXT_HOPはiのα.β.γ.5のままFW10へ引き継がれます。FW10には、このeBGP側のNEXT_HOPへ到達するため、そのアドレスを含むα.β.γ.4/30への経路が必要です。公式解答例ではbに「α.β.γ.4/30」を入れます。aとbは順不同なので、必要な二つのネットワークを正しく求めることが要点です。

設問2(3)

下線⑤では、受信した経路情報のAS_PATHに自身のAS番号が含まれていると、その経路情報を破棄します。これは、その経路情報が既に自身のASを経由しており、再び採用すると経路のループにつながるためです。公式解答例では「経路のループを回避するため」です。20字以内では、ループ回避という目的を端的に述べます。

設問2(4)(ア)

表3の評価順2はAS_PATHの長さを比較する項目です。公式解答例では「短い」です。LOCAL_PREFが同じ場合、経由するASの数が少ない経路を優先します。AS_PATHの比較を、表3の評価順1であるLOCAL_PREFの比較より先に行わないことも大切です。

設問2(4)(イ)

表3の評価順4はMEDの値を比較する項目です。公式解答例では「小さい」です。表3ではLOCAL_PREFは大きい値、MEDは小さい値を優先するため、二つの属性で優先される値の大小が異なる点を整理します。

設問2(4)(ウ)

表4のウは、LOCAL_PREFが200のデフォルトルートのNEXT_HOPです。平常時はルータ10側を使うという条件と、下線④でNEXT_HOPを自身のIPアドレスへ書き換える設定に着目します。ルータ10のiBGP用アドレスはループバックのα.β.γ.8なので、公式解答例では「α.β.γ.8」です。

設問2(4)(エ)

表4のエは、LOCAL_PREFが100の予備側デフォルトルートのNEXT_HOPです。ルータ11も下線④の設定でNEXT_HOPを書き換え、ループバックアドレスを使ってiBGPの広告を行います。図2のアドレス一覧から、公式解答例では「α.β.γ.9」です。

設問2(4)(オ)

表5のオは、ルータ10のループバックα.β.γ.8/32へ到達するための、FW10から見たネクストホップです。FW10のeと同じネットワーク上にあるルータ10の物理インタフェースcはα.β.γ.17なので、公式解答例では「α.β.γ.17」です。BGPで通知されるNEXT_HOPのループバックアドレスと、そこへ実際に転送するための隣接ルータのアドレスを区別します。

設問2(4)(カ)

表5のカは、ルータ11のループバックα.β.γ.9/32へ到達するためのネクストホップです。図2では、FW10と同じネットワーク上にあるルータ11の物理インタフェースdがα.β.γ.18です。したがって、公式解答例では「α.β.γ.18」です。

設問2(4)(キ)

本文では、リンクダウンしなくても通信不能となる障害を、BGPの定期的なメッセージの受信状況から検知すると説明しています。公式解答例では「キープアライブ」です。定期メッセージを受信できなくなることでピアリングの切断と経路更新につながります。採点講評でも、キープアライブなどBGPの基本用語を理解しておくことが求められています。

設問2(5)

下線⑥の前にある、BGPテーブルから同じ宛先への最適経路を一つだけ選択するという説明に着目します。複数の経路を保持していても、ルーティングテーブルに反映する経路が一つなので、標準仕様ではそれらを使ったトラフィック分散ができません。公式解答例では「BGPテーブルから最適経路を一つだけ選択し、ルータのルーティングテーブルに反映する。」です。50字以内では、選択元、一つだけという制約、反映先を押さえます。

設問3(1)(ク)

表6の手順4の対象はルータ10とルータ11です。両ルータはループバックアドレスをiBGPに利用し、そのループバックもOSPFの対象とするため、まずループバックを作成してIPアドレスを設定します。公式解答例ではク=「エ」で、作業内容は「ループバックインタフェースの作成とIPアドレスの設定」です。手順3の物理インタフェース設定に続き、後のプロトコル設定に必要なアドレスを準備する段階です。

設問3(1)(ケ)

表6の手順5の対象はルータ10、ルータ11、FW10です。手順4で用意したループバックアドレスなどへの到達性を確保してから、それらを使うiBGPを導入します。このため、公式解答例ではケ=「ウ」で、作業内容は「OSPFの導入」です。ループバックの作成とアドレス設定の後に、内部の経路制御を整える順序となります。

設問3(1)(コ)

表6の手順6も、対象はルータ10、ルータ11、FW10です。手順5のOSPFでループバックを含む内部の到達性が確保されたので、ルータ10・11のループバックアドレスとFW10のeのアドレスを使い、互いにiBGPを構成できます。公式解答例ではコ=「イ」で、作業内容は「iBGPの導入」です。

設問3(1)(サ)

表6の手順7では、対象にZ社側のルータ10Zとルータ11Zが加わります。A社内の経路共有を準備した後、異なるASに属するルータ10と10Z、ルータ11と11Zの間でeBGPを導入します。公式解答例ではサ=「ア」で、作業内容は「eBGPの導入」です。全体の順序は、ク=エ、ケ=ウ、コ=イ、サ=アとなります。

設問3(2)

表6の手順8は、既存のインターネット接続に用いていた静的経路を削除する作業です。本文には、ルータ10ZがA社のグローバルIPアドレスへの静的経路を持ち、A社側ではルータ10とFW10が静的経路制御を利用しているとあります。公式解答例では「ルータ10Z、ルータ10、FW10」です。L3SW40も静的経路を使いますが、図2の今回の冗長化対象に含まれないため、回答には入れません。

設問3(3)

下線⑦では、BGPなどの設定完了時ではなく、静的経路の削除時に動的経路へ切り替わるとされています。これは、本事例ではBGPの経路より静的経路が優先され、設定を残している間は既存経路が使われるためです。公式解答例もこの優先関係を理由としています。40字以内では「BGPの経路情報より静的経路設定の経路情報が優先されるから。」とまとめられます。採点講評では、異なるプロトコルを組み合わせる際の優先順位の理解が求められています。

設問3(4)

下線⑧では、交換前に通信をルータ10から迂回させる操作を問うています。ルータ10とルータ10ZのeBGPピアを無効にすると、その接続で交換していた経路情報が撤回され、ルータ11側へ経路を切り替えられます。公式解答例では「eBGPピアを無効にする。」です。20字以内では、この具体的な操作を答えます。採点講評でも、利用者への影響を最小限にする通信迂回操作の理解が求められています。

設問4(1)(①)

本文の死活監視は、エコー応答が一つも届かない状態が連続した場合にアラートを出します。輻輳していてもエコー応答が届くことはあるため、輻輳を確実に検知できません。公式解答例では、この見逃しを一つ目の問題点としています。30字以内では「輻輳時にもエコー応答を受信し、検知できないことがある。」とまとめられます。

設問4(1)(②)

エコー応答が届かない原因は専用線の輻輳だけではありません。監視対象のルータ10Zやルータ11Zが故障しても応答がなくなるので、それを専用線の輻輳として誤って検知するおそれがあります。公式解答例では、この誤検知が二つ目の問題点です。30字以内では「ルータ10Zとルータ11Zの障害時に誤って検知する。」とまとめられます。採点講評では、機器の所有者よりもICMP監視の技術的な限界に着目することが求められています。

設問4(2)

本文では、二つの専用線の帯域幅は同じで、通信を均等に分散できると仮定しています。各回線の帯域幅をBとすると、平常時に各回線でBの50%ずつを使っていれば、片方の障害時に全通信が残る回線へ移っても合計はBに収まります。したがって、公式解答例ではス=「50」です。二回線分の帯域を、障害時には一回線で引き受ける関係から求めます。

設問4(3)(a)

本文の管理サーバの説明には、SNMPで取得した統計データに加え、FWとプロキシサーバの通信ログデータが保存されるとあります。下線⑩の「統計データとは別のデータ」はこれを指します。公式解答例では「FWとプロキシサーバの通信ログデータ」です。この表現で25字以内に収まり、保存されているデータの種類と生成元を示せます。

設問4(3)(b)

機械学習監視は、過去の時系列から予測した値と新たな実測値を比較して異常を検知します。通信ログデータにも同じ考え方を適用すれば、通信量そのものではなく、単位時間当たりに発生するログデータ量の突発的な増減を検知できます。公式解答例では、このログデータ量の増減が検知内容です。40字以内では「単位時間当たりの通信ログデータ量が突発的に増減したこと」とまとめられます。特定の攻撃や故障原因を断定する答案にはしません。

学習のポイント

BGPの経路属性と実際の転送経路を区別し、ループバック、OSPF、iBGP、eBGPの依存関係を図から説明できるようにします。併せて、時間平均と死活監視の限界を押さえます。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和3年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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