NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ
令和3年度春期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問3
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題


解き方のヒントを見る
品質を考える前提条件に注目する
音声通信に関する検討では、まず何を前提として品質を考えるのかに注目しましょう。構成の名称から結論を急がず、与えられた条件がどの範囲に当てはまるのかを整理することが、考えを進める手掛かりになります。
この問題で問われていること
注目するのは、品質についての判断がどの条件を前提としているかという点です。明示された条件と自分で補った想定を分け、途中で前提を置き換えていないかを確かめながら、問われている範囲で考えましょう。
視点
品質の良し悪しを考えるときは、その判断が成り立つ前提を意識します。与えられた情報の範囲を保ち、記憶している知識を使う場合も、同じ前提で考えられるかを確認しましょう。
確認ポイント
- 判断の前提になる条件を押さえているか
- 明示されていない条件を付け加えていないか
- 考える途中で前提条件が変わっていないか
正解と解説を見る
解説
既存の電話設備を音声クラウドへ移行する事例から、VoIPの帯域計算、ジッタ吸収と遅延の関係、PoEの動作を確認する問題です。さらに、CoSとDSCPによるマーキング、VLANインタフェース、PQとWRRによる優先制御を構成図と対応させて考えます。
問題の全体像
Y社は、本社と5営業所の電話設備を廃止し、既存のLANを利用する音声クラウドへ移行します。導入後、大量の学習動画の通信によって音声パケットに遅延や廃棄が発生し、通話が途切れました。その対策として、レイヤ2ではCoSに基づくPQ、レイヤ3ではDSCPに基づくPQとWRRを設定します。出題趣旨では、こうした通話の不具合を優先制御で改善する事例を通じ、ネットワークの設計・構築・運用の知識を実務に適用できるかを問うとしています。構成図の経路、マーキングの位置、出力キューの動作を結び付けて読むことが中心です。
設問1
公式解答例では、aは「8」、bは「UDP」、cは「廃棄 又は ドロップ 又は 損失」、dは「ToS」です。aは、本文にあるG.729のCS-ACELPのビットレートで、8kビット/秒です。これは符号化された音声自体の値であり、ヘッダを含む1回線当たり34.4kビット/秒とは区別します。bは音声を運ぶRTPに対応するトランスポート層のプロトコルです。cは、大量の動画パケットによる混雑で音声パケットが失われ、通話が途切れる状況を指します。dはIPv4ヘッダのToSフィールドで、そのうち6ビットをDSCPとして用います。採点講評では、aの正答率が低かったことを挙げ、CS-ACELPの理解を求めています。
設問2(1)
図1では、PBXとIP-GWの接続が拠点間の内線通話に使われています。本文にも「拠点間の内線通話は、IP-GWを介して広域イーサ網経由で行っている」とあります。IP-GWが音声信号とIPパケットを変換するので、公式解答例は「拠点間の内線通話」です。設問は導入前の図1について尋ねているため、導入後に音声を全てIPパケット化する記述と区別して答えます。
設問2(2)
着目するのは、IP-GWのバッファが音声パケットの到着時間のばらつきであるジッタを吸収する点です。バッファでパケットを待たせることで再生間隔を整えられますが、大きくし過ぎると、受信してから音声として再生するまでの待ち時間が増えます。会話の応答が遅れるため、公式解答例は「パケットの音声化遅延が大きくなるから」です。答案では「パケット」と「音声化の遅延が増える」という因果を20字以内にまとめます。
設問3(1)
図2のポートaはIPsecルータへの接続で、電話サービスへ向かう外線通話の音声パケットが出力されます。図1の注記1から、維持する外線数は本社80回線と5営業所各10回線なので、80+10×5=130回線です。本文の1回線当たり34.4kビット/秒を掛けると、130×34.4=4、472kビット/秒となり、公式解答例と一致します。注記2の100回線や各20回線は拠点間の内線用なので、この計算には加えません。また、問われているのはポートaから出力される通信量なので、送受信の合計として2倍にはしません。採点講評でも、ポートaから出力されるのが外線通話パケットであることを読み取るよう求めています。
設問3(2)
下線①では、L2SWをPoEの給電機能をもつ製品に交換しています。PoEによる給電は、接続先が対応する受電機器であることを確認して行われるため、PoE未対応の機器を接続しても給電されません。公式解答例は「L2SWからの給電は行われない。」です。20字以内の答案では、PoEの機能に着目して「給電されない」という状態を明確に示します。
設問4(1)
本文の「CoS値を、フレーム内のTCIの上位3ビットにマーキングして出力する」という記述が根拠です。CoS値を格納する優先ビットはVLANタグ内にあるため、その値を使ったレイヤ2の優先制御にはタグ付きフレームが必要です。公式解答例は「フレーム中のタグ情報内の優先ビットを使用するから」です。30字以内では、タグ情報内の優先ビットを使うことを押さえます。採点講評でも、CoS値がVLANタグ内のTCIに設定される点の理解を求めています。
設問4(2)
問われているのは、L3SW0の内部ルータに「新たに」作成されるVLANインタフェースの数です。本社側では、ポートfに既存のVLAN100に加えてVLAN105、ポートgに既存のVLAN150に加えてVLAN155が必要になります。したがって追加はVLAN105とVLAN155の二つで、公式解答例は「2」です。営業所側で追加されるVLAN215はL3SW1側の設定なので、L3SW0の追加数には含めません。採点講評では、内部ルータのVLANインタフェースが、物理ポートに設定されたVLANと論理的に接続される構成を理解するよう求めています。
設問4(3)
PQは、次に出力するフレームを選ぶ際に音声用のキュー1を優先します。しかし、データフレームの出力が既に始まっている場合、そのフレームの途中で音声フレームへ切り替えることはできません。そのため、キュー1が空だったとしても、データフレームの出力中に到着した音声フレームは送信完了まで待ちます。公式解答例は「データフレームが出力中の場合」です。20字以内では、この出力中という条件を示します。
設問4(4)
アは「CoS値がマーキングされているフレーム」を受信するポートです。図2では、CoSを設定するITELにつながるL2SWから、L3SWへ入力される箇所に当たります。本社のL2SW01とL2SW02につながるf、g、営業所のL2SW1につながるjなので、公式解答例は「f、g、j」です。イは、受信したパケットを音声・eLN・その他のデータに分類してDSCPを設定するポートです。IPsecルータにつながるa、FWにつながるb、各サーバにつながるc、d、eが該当し、公式解答例は「a、b、c、d、e」です。広域イーサ網につながるh、iは、相手拠点のL3SWでDSCPを設定されたパケットが通る経路なので、この二つのマーキング対象には含めません。
設問4(5)
本文では、音声を最優先のキュー1に入れ、eLNパケットとDパケットには別々のキューを用意し、WRRの重みをそれぞれ75%と25%に設定しています。eLNとDを分けることで、Dパケットの通信量が増えても、eLNパケットの転送機会を確保しやすくなります。したがって公式解答例は「DパケットによるeLNパケット転送への影響を少なくするため」です。35字以内の答案では、影響を与える側がDパケット、影響を抑える対象がeLNパケットの転送であることを明確にします。音声の優先転送はキュー1の役割であり、この設問ではキュー2とキュー3を分ける目的に着目します。
学習のポイント
通信経路に応じて回線数と帯域を計算し、CoS・DSCPの格納場所と適用範囲、PQの送信待ち、WRRによる通信間の影響の抑制を理解しましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和3年度春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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