NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ
令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題


解き方のヒントを見る
目的と評価条件をそろえる
この分野を検討するときは、何を達成したいのかと、その達成を判断する条件との対応に注目しましょう。用語の印象だけで結論を急がず、同じ目的を同じ条件で評価しているかを確かめることが出発点です。
この問題で問われていること
ここで意識したいのは、評価の前提が途中で変わっていないかという一点です。示された情報の中で、目的と判断条件のつながりをたどり、異なる条件で得た見方を混ぜて結論を出していないか確認しましょう。
視点
評価は、前提となる条件によって見方が変わります。目的と判断条件の対応を短く整理し、考えを進める間もその対応が保たれているか意識しましょう。
確認ポイント
- 達成したい目的に対応する判断条件を意識できているか
- 考えを進める途中で判断条件を置き換えていないか
- 結論にも最初と同じ判断条件を適用しているか
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解説
本問は、データセンタのネットワーク増強を題材に、VRRPとVLANの通信経路、LACPによる故障検出、故障時の帯域確保、LAGの負荷分散、サービス経路の監視を関連付けて考える問題です。
問題の全体像
Z社は、データセンタの4階に新規顧客を収容し、最大2Gビット/秒のトラフィックを扱えるようにネットワークを増強します。回線が1か所切れても輻輳させないという条件があるため、LAGで回線を束ねるだけでなく、故障検出と切替後の帯域確保まで考える必要があります。また、独立した管理ネットワークによる装置監視に、顧客データが流れる経路の疎通監視を追加します。出題趣旨では、LAGを用いた広帯域化と冗長化の設計・運用に関する技術と経験を問うとされています。
設問1(1)(a)
着目するのは、接続先ISPとデータセンタが「異なるAS番号」で接続し、使用するプロトコルが「パスベクトル型」とされている点です。AS間の経路交換に用いるこのプロトコルはBGPであり、公式解答例では「BGP」又は「BGP4」です。本文で内部の経路制御に用いられているOSPFとは、利用する範囲と方式を区別します。
設問1(1)(b)
本文には、OSPFエリアは一つだけとあります。この構成で使用するエリアは、エリア0に当たるバックボーンエリアです。したがって、公式解答例では「バックボーン」です。空欄の直後に「エリア」があるため、答案には「バックボーン」と記入します。
設問1(1)(c)
着目するのは、VRRPのマスタ故障後、新しいマスタがパケットをブロードキャストしてL2SWのMACアドレステーブルを更新するという動作です。公式解答例では「GARP」です。新しいマスタから仮想MACアドレスを送信元とするGARPが送られることで、L2SWはそのMACアドレスを新しいマスタにつながるポートで学習し、切替後の転送先を更新できます。ARP情報の通知だけでなく、スイッチのMACアドレス学習にも着目します。
設問1(2)
公式解答例では「キ、ク、ケ」です。VRRPのアドバタイズメントは、仮想ルータを構成する2台が共有する顧客VLAN上でやり取りします。図1でこの経路を追うと、L3SW1からキを通ってL2SW1へ進み、ケでL2SW2を経由し、クでL3SW2に到達します。L3SW1とL3SW2を直接結ぶカは、本文で独立したIPセグメントとされており、顧客VLAN上のアドバタイズメントが通る経路にはなりません。採点講評では、この設問の正答率が低く、VRRPを構成する装置間の確認がどの回線を経由するかを理解してほしいとされています。
設問1(3)
公式解答例では「キ、ク、ケ」です。本文には、顧客ごとに一つのVLANを割り当て、L3SWのL2SWへの接続ポートにタグVLANを設定するとあります。キとクは、複数顧客のVLANを運ぶL3SWとL2SWの接続回線です。また、ケもL2SW間で複数顧客のVLANを引き継ぐため、タグによる識別が必要です。一方、各CRへの回線は一つの顧客VLANに所属させられるため、タグ付与が必須となる回線には含めません。設問1(2)と答えは同じですが、ここでは複数VLANを識別して運ぶ必要性が根拠です。
設問1(4)
着目するのは、M/Cの光側IFがリンクダウンしても、装置に接続する電気側IFは自動でリンクダウンしないという条件です。この場合、装置の物理的なリンク状態だけでは通信経路の故障を検出できません。LACPを使えば、制御パケットの交換が途絶えることで、リンクダウンを伴わない故障でも該当回線をLAGのメンバから自動で除外できます。公式解答例でも、この故障回線の自動除外が要点です。50字以内の答案では「リンクダウンしない故障でも、故障回線をLAGから自動除外できる。」と要素をまとめられます。採点講評では、LACPを利用する理由の理解が求められています。
設問1(5)
図1のL3SW3とL2SW3の間は、1Gビット/秒の回線2本を束ねたLAGです。1本が切れても残りのIFを閉塞しなければ、そのLAGは帯域が1Gビット/秒に減った状態で通信を続けます。4階の最大トラフィックは2Gビット/秒なので、残存回線の容量を超えて輻輳し、パケット廃棄が発生します。全IFを閉塞する設定は、帯域不足の経路を使い続けず、冗長経路へ切り替えるためです。公式解答例では「1Gビット/秒を超えたパケットが廃棄される。」であり、「パケット」を含む25字以内の答案として要点を満たします。
設問1(6)
着目するのは、負荷分散のハッシュを送信元・宛先MACアドレスだけから計算する方式です。図1ではルータやL3SWを経由するため、多数の顧客通信であっても、LAGを通るフレームのMACアドレスは隣接するルータなどの少数の組合せに集約されます。同じ組合せは同じハッシュ値となり、特定の回線に通信が偏りやすくなります。公式解答例でも、MACアドレスの組合せが少なくハッシュ関数の計算値が分散しない点を挙げています。50字以内では「送信元と宛先MACアドレスの組合せが少なく、ハッシュ値が分散しないから。」とまとめられます。
設問2(1)(d)
本文の「pingによって」「IPアドレスに対して死活監視」という記述に着目します。pingは、ICMPのエコー要求とエコー応答を用いて疎通を確認するため、公式解答例では「ICMP」です。この監視で確認する宛先は管理IFなので、応答があっても顧客データが流れる経路全体の正常性を確認したことにはなりません。
設問2(1)(e)
着目するのは「各監視対象装置からの状態変更通知」を監視装置が受信するという記述です。装置側から監視装置に送られるSNMPの通知はSNMPトラップであり、公式解答例では「SNMPトラップ」又は「SNMP trap」です。監視装置が定期的に情報を取得する方式との違いは、状態変化を契機に監視対象装置から通知する点です。
設問2(1)(f)
本文に「管理情報ベース」と明記されていることが手掛かりです。その略称はMIBであり、公式解答例も「MIB」です。MIBには、装置やIFの状態、送受信したデータ量などの管理情報が定義されます。本文の監視方法では、SNMPを使って5分ごとにこれらの情報を取得します。
設問2(2)
公式解答例では「(iii)」です。各回線のトラフィック量を把握するには、LAG全体だけでなく、構成する各物理IFの送受信カウンタをSNMPで定期取得します。取得間隔内のカウンタ増分から、各回線を流れたデータ量や平均通信速度を求められます。(i)のpingは疎通確認、(ii)のトラップは状態変更通知であり、継続的なトラフィック量の把握には(iii)のMIB情報取得が必要です。
設問2(3)
公式解答例では「コアルータからL3SWまでの区間」です。追加する監視では、監視装置をL2SWz2経由で各コアルータに接続し、顧客データが流れるネットワークを通してL3SWのVRRP仮想IPアドレスにpingを送ります。応答によって、コアルータからL3SWまでの通信経路と、仮想IPアドレスを引き受けているマスタの応答を確認できます。従来の管理IFへのpingは独立した管理ネットワークを通るため、このサービス経路の確認にはなりません。追加するpingの宛先はL3SWなので、その先のL2SWやCR、顧客セグメントまでの正常性は確認範囲に含まれません。
学習のポイント
論理的な通信経路を図から追い、リンク状態と通信の正常性、冗長化と帯域確保、装置監視と経路監視を区別して理解しましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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