NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ

令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 Webシステムの構成変更に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 A社は、中堅の菓子メーカであり、自社で製造する商品を、店舗とオンラインショップで販売している。オンラインショップの利用者は、Webブラウザを使ってWebシステムにアクセスする。A社のオンラインショップを構成する、現行のWebシステムを図1に示す。 図1 現行のWebシステム(抜粋) 注記1 199.α.β.1及び199.α.β.2は、グローバルIPアドレスを示す。 注記2 インターネットからWebシステムへの通信について、DNSとHTTPSだけを許可するアクセス制御を、FWに設定している。 A社では、Webシステムのアクセス数の増加に対応するために、Webサーバの増設と負荷分散装置(以下、LBという)の導入を決めた。また、昨今、Webアプリケーションプログラム(以下、WebAPという)の脆弱性を悪用したサイバー攻撃が報告されていることから、WAF(Web Application Firewall)サービスの導入を検討することになった。そのための事前調査から設計までを情報システム部のUさんが担当することになった。 〔WAFサービス導入の検討〕 Uさんは、SaaS事業者のT社が提供するWAFサービスを調査した。T社によるWAFサービスの説明は、次のとおりである。 ・WAFサービスは、利用者のWebブラウザとWebシステム間のHTTPS通信を中継する。利用者のWebブラウザは、WAFサービスにアクセスするためのIPアドレス(以下、IP-w1という)宛てにHTTPリクエストを送信する。 ・WAFサービスは、HTTPS通信を復号してHTTPリクエストを検査する。そのために、A社は、現行と同じコモンネームのサーバ証明書と秘密鍵を、WAFサービスに提供する必要がある。 ・WAFサービスは、WebAPへのサイバー攻撃が疑われる通信を検知し、Webシステムへのアクセスを制御する。 ・WAFサービスは、アクセスを許可したHTTPリクエストの送信元IPアドレスを、HTTPヘッダのX-Forwarded-Forヘッダフィールド(以下、XFFヘッダという)に追加する。XFFヘッダへの追加後に、HTTPリクエストの送信元IPアドレスを、HTTPレスポンスがWAFサービスに送られるようにするためのIPアドレス(以下、IP-w2という)に変更する。 ・WAFサービスは、HTTPリクエストを再度HTTPSで暗号化して、WebシステムにアクセスするためのIPアドレスである199.α.β.2宛てに転送する。 ・WAFサービスは、HTTPレスポンスを検査する。HTTPレスポンスに対する処理の説明は省略する。 Uさんは、Webブラウザから送信されるHTTPリクエストを、WAFサービス宛てに変える方法について、T社に確認した。T社からの回答は、次のとおりである。 ・A社DNSサーバに、RDATAにIP-w1を設定したAレコードを登録する方式と、RDATAにT社WAFサービスのFQDNを設定したCNAMEレコードを登録する方式がある。 ・T社は、IP-w1を変更する場合があるので、①CNAMEレコードを登録する方式を推奨している。 T社からの説明を踏まえて、Uさんが検討したA社DNSサーバのゾーンファイルを、図2に示す。 図2 A社DNSサーバのゾーンファイル(抜粋) 注記 「waf-asha.tsha.net.」は、A社WebシステムでWAFサービスを利用するために、T社から割り当てられたFQDNである。 現行のWebAPでは、Webシステムへのアクセス時の送信元IPアドレスをアクセスログに記録している。Uさんは、送信元IPアドレスの代わりにXFFヘッダの情報を記録するように、WebAPの設定を変更することにした。 Uさんは、FWに設定しているWebシステムへのアクセス制御について、IP-w2を送信元とする通信だけを許可するように、設定を変更することにした。 〔LBに関する検討〕 A社が導入するLBは、HTTPリクエストの振分け機能、死活監視機能、セッション維持機能、TLSアクセラレーション機能、HTTPヘッダの編集(追加、変更、削除)機能をもっている。 HTTPリクエストの振分け機能について、Uさんは、HTTPリクエストをWebサーバに【ア】に振り分けるラウンドロビン方式を採用することにした。 死活監視機能について、Uさんは、WebAPの稼働状況を監視するために、レイヤ7方式を利用することにした。死活監視に用いるメッセージの設定を表1に示す。 表1 メッセージの設定(抜粋) セッション維持機能には、HTTPリクエストの送信元IPアドレスに基づいて行う方式と、LBによって生成されるセッションIDに基づいて行う方式がある。セッションIDに基づいて行う方式では、WebサーバとWebブラウザ間で状態を管理するために用いられるCookieを利用する。LBは、HTTPレスポンスの【エ】ヘッダフィールドにセッションIDを追加する。HTTPレスポンスを受け取った利用者のWebブラウザは、【エ】ヘッダフィールドにあるセッションIDを、次に送信するHTTPリクエストの【オ】ヘッダフィールドに追加する。HTTPリクエストを受け取ったLBは、【オ】ヘッダフィールドのセッションIDに基づいて、セッション維持を行う。Uさんは、②WAFサービスの利用を考慮し、セッションIDに基づいて行う方式を採用した。 TLSアクセラレーション機能は、TLSの暗号化・復号処理を専用ハードウェアで高速に処理する機能である。Uさんは、TLSの暗号化・復号処理の性能向上の目的と、③LBが行うある処理のために、TLSアクセラレーション機能を利用することにした。Uさんは、LBとWebサーバ間の通信にHTTPを用い、ポート番号にHTTPのウェルノウンポート番号を用いることにした。 構成変更後のWebシステムを図3に示す。 図3 構成変更後のWebシステム(抜粋) 〔WAFサービス停止時の対応検討〕 Uさんは、障害などでWAFサービスを1日以上利用できなくなった場合に備え、対応を検討した。WAFサービス停止期間中も、オンラインショップでの商品販売を継続させたい。Uさんは、WAFサービスを経由せずに、利用者のWebブラウザとWebシステム間で直接通信させるために、WAFサービス導入時に設定変更を予定している【カ】の④設定を変更することと、図2中の⑤資源レコードの1行を書き換えることで対応できると考えた。 Uさんは、WebAPのアクセスログについて、WAFサービスの有無にかかわらず、XFFヘッダの情報からWebシステムへのアクセス時の送信元IPアドレスを記録することとし、⑥LBに設定を追加した。 その後、Webシステムの構成変更に関するUさんの報告書は経営会議で承認され、導入の準備を開始した。 設問1 本文中の下線①について、A社にとっての利点を45字以内で述べよ。 設問2 〔LBに関する検討〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1)本文及び表1中の【ア】~【オ】に入れる適切な字句又は数値を答えよ。 (2)本文中の下線②について、送信元IPアドレスに基づいて行う方式を採用した場合に発生するおそれがある問題を、10字以内で述べよ。 (3)本文中の下線③の処理の内容を、20字以内で答えよ。 設問3 〔WAFサービス停止時の対応検討〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1)本文中の【カ】に入れる機器を、図3中のDNSサーバ以外の機器名で答えよ。また、本文中の下線④の変更内容を35字以内で述べよ。 (2)本文中の下線⑤について、書換え後の資源レコードを答えよ。 (3)本文中の下線⑥の設定内容を、30字以内で答えよ。
図1 現行のWebシステム(抜粋)。利用者のWebブラウザからインターネット、FW、L2SWを経由してDNSサーバとWebサーバへ接続する現行構成を示す図。
図1 現行のWebシステム(抜粋)。利用者のWebブラウザからインターネット、FW、L2SWを経由してDNSサーバとWebサーバへ接続する現行構成を示す図。
図2 A社DNSサーバのゾーンファイル(抜粋)。A社DNSサーバのゾーンファイルを示し、nsのAレコードとshopのCNAMEレコードを掲載した図。
図2 A社DNSサーバのゾーンファイル(抜粋)。A社DNSサーバのゾーンファイルを示し、nsのAレコードとshopのCNAMEレコードを掲載した図。
表1 メッセージの設定(抜粋)。LBの死活監視に用いるHTTPリクエストと、成功時HTTPレスポンスの設定項目を示す表。
表1 メッセージの設定(抜粋)。LBの死活監視に用いるHTTPリクエストと、成功時HTTPレスポンスの設定項目を示す表。
図3 構成変更後のWebシステム(抜粋)。WAFサービス、FW、DNSサーバ、LB、L2SW、8台のWebサーバからなる構成変更後のWebシステムを示す図。
図3 構成変更後のWebシステム(抜粋)。WAFサービス、FW、DNSサーバ、LB、L2SW、8台のWebサーバからなる構成変更後のWebシステムを示す図。
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構成要素の役割を切り分ける視点

各選択肢を読むときは、名称や配置の印象で判断せず、利用者から要求が届いて結果が返るまでのどの責任範囲を説明しているかに注目し、役割の境界を整理しましょう。通信そのものと処理の担当を混同しないことが重要です。

この問題で問われていること

確認する観点を「要求の受け渡しに関わる責任の境界」に絞り、各記述が示す対象・担当する仕事・次に連携する相手を同じ基準で見比べて、説明の対応関係を整理してください。

視点

システムを読む際は、構成要素を単独の用語として覚えるのではなく、全体の流れの中でどの責任を受け持つ単位として置かれているかを捉えます。通信に関する記述も、処理内容との境界を分けて整理すると、説明同士の対応を比較しやすくなります。

確認ポイント

  • 要求から結果までを、担当の切り替わりごとに区切って読む
  • 各記述の主語と責任範囲が一致しているか確認する
  • 通信の経路と処理の担当を同じ意味として扱っていないか見直す
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解説

本問は、既存WebシステムへSaaS型WAFとLBを導入する際の通信経路を題材に、DNS、FW、HTTPヘッダ、負荷分散、障害時切替を問う問題です。

問題の全体像

A社は、アクセス増加への対応としてWebサーバを増設し、LBで負荷分散する。また、WebAP攻撃対策として、利用者とWebシステムの間にT社のWAFサービスを配置する。WAFはHTTPSを復号して検査し、許可した要求をXFFヘッダ付きでWebシステムへ転送するため、DNS、FW、WebAP、LBの設定を通信経路に合わせて変更する必要がある。さらに、WAF停止時には直接接続へ切り替えられる設計も求められている。

設問1

CNAME方式では、A社DNSサーバのshopレコードがT社WAFサービスのFQDNを参照する。したがって、T社がWAFの接続先IPアドレスであるIP-w1を変更しても、A社はDNSレコードのRDATAを変更する必要がない。公式解答例も、このDNS管理作業が不要になる点を利点としている。45字以内なので、IP-w1の変更とA社DNSサーバの変更不要という二つの要素に絞る。

設問2(1)(ア)

ラウンドロビン方式は、複数のWebサーバへ要求を順番に割り当てる方式です。したがって、空欄は「順番」となる。

設問2(1)(イ)

LBとWebサーバ間ではHTTPを使用するため、表1のHTTPリクエストの宛先ポートはHTTPのウェルノウンポート番号である80となる。

設問2(1)(ウ)

レイヤ7方式の死活監視では、指定したパスへのHTTP要求に対する成功応答を確認する。HTTPの成功を示すステータスコードとして、公式解答例は200としている。

設問2(1)(エ)

LBがHTTPレスポンスにセッションIDを設定し、ブラウザへCookieとして保存させるため、使用するレスポンスヘッダはSet-Cookieです。

設問2(1)(オ)

ブラウザが次回のHTTPリクエストで保存済みのセッションIDを送る際に用いるリクエストヘッダはCookieです。

設問2(2)

WAFを経由すると、LBが受け取るHTTPリクエストの送信元IPアドレスは利用者のIPアドレスではなく、WAFのIP-w2になる。送信元IPアドレス方式でセッション維持を行うと、同じWAF経由の要求が特定のWebサーバに偏るため、公式解答例は「負荷が偏る」としている。

設問2(3)

TLSアクセラレーションによってLBでHTTPSを終端し、LBとWebサーバ間をHTTPにする。これにより、LBは暗号化されたままでは扱いにくいHTTPヘッダを編集できる。したがって、③の処理は「HTTPヘッダを編集する処理」です。

設問3(1)(カ)

WAF停止時には、利用者からWebシステムへ直接HTTPS通信させる必要がある。その通信の入口で許可・遮断を行う機器はFWであり、図3のDNSサーバ以外という条件にも合う。

設問3(1)(変更内容)

通常時はFWがWAFからの通信だけを許可するが、WAF停止時には利用者からの直接通信を許可する必要がある。公式解答例は、送信元を限定せず、任意のIPアドレスからWebシステムへのHTTPS通信を許可する内容としている。

設問3(2)

WAFを経由しない場合、shop名をWAFのFQDNへ向けるCNAMEから、Webシステム側のグローバルIPアドレスへ向けるAレコードに変更する。したがって、公式解答例の資源レコードは「shop IN A 199.α.β.2」です。

設問3(3)

WAF経由時はWAFがXFFヘッダへ利用者の送信元IPアドレスを追加するが、直接接続時はその処理がない。WAFの有無にかかわらず同じ形式でログを記録するため、LBにXFFヘッダへ送信元IPアドレスを追加する設定を行う。

学習のポイント

通信経路を図と本文から復元し、各機器の設定変更理由まで説明する力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和元年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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