NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
平成28年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題









解き方のヒントを見る
判断の前提となる条件を整理する
検討を始める前に、与えられた情報のうち、明示されている条件と、自分で補っている前提を区別しましょう。結論を急がず、判断の根拠に使う条件がどこに示されているかを確認することが大切です。
この問題で問われていること
この課題では、判断に使う前提が与えられた条件に基づいているかに注目してください。普段の知識から当然だと思ったことも、今回の条件として明示されているかを確かめ、無意識の補足を見直しましょう。
視点
明示された条件と、経験や知識から補った前提は区別して扱います。検討中に「当然こうなっている」と感じたら、その前提の根拠が与えられた情報の中にあるかを立ち止まって確認しましょう。
確認ポイント
- 判断に使っている条件の出所を確認したか
- 明示された条件と自分の推測を区別したか
- 当然だと考えて補った前提がないか
正解と解説を見る
解説
本問は、二つのISPを利用した負荷分散と、WebRTCによるビデオ・音声通信を既存システムへ追加する事例です。アドレス変換と名前解決を通信経路に沿って読み解き、段階的な移行に必要な設定と動作確認まで導くことが要点です。
問題の全体像
A社は、施工情報管理、コールセンタ、社内からのインターネットアクセスを運用しています。これに、ISP接続の二重化と、ブラウザを使ったビデオ・音声電話を追加します。公式の出題趣旨では、従来のネットワーク技術の知識を基にWebRTCを理解し、実システムの拡張計画へ応用する力を問うとされています。各通信の経路、NAT前後のアドレス、DNSの役割を整理し、最後に移行時の設定と確認内容へ結び付ける問題です。
設問1(1)(ア)
着目するのは、社外のブラウザ1からWebサーバへのアクセスで、宛先NATを行う前のアドレス空間です。変換前はインターネットから到達できるグローバルIPアドレスを使います。表1では、ISP1接続用のvlan1に対応する空間がip1/29なので、公式解答例では「ip1/29」です。
設問1(1)(イ)
宛先NAT後の宛先は、実際のWebサーバのIPアドレスです。図2ではWebサーバ1、2がL2SW9の先にあり、表1ではそのDMZ用アドレス空間が10.0.9.0/24と示されています。したがって、公式解答例では「10.0.9.0/24」です。公開用アドレスとサーバ自身のアドレスを区別します。
設問1(1)(ウ)
本文では、社内からインターネットへの通信に送信元NAPTを使い、送信元IPアドレスともう一つの情報を動的に変換するとあります。複数の通信を変換後のアドレスで識別するため、送信元ポート番号も変換します。公式解答例では「送信元ポート番号」です。
設問1(2)
下線(a)では、NAPTの変換後に使うグローバルIPアドレスが二つあるとされています。ポート番号は16ビットなので、本問の上限計算では一つのIPアドレスにつき2¹⁶=65、536通りを使います。二つのアドレス分を合計すると2×65、536=131、072となり、公式解答例も「131、072」です。
設問1(3)
新しいWebサーバを追加すると、DNSへの登録だけでなく、社外からそのサーバへ届くための設定も必要です。本文には、FWが通信を限定して許可し、公開用アドレスとサーバのアドレスを1対1の宛先NATで対応付けるとあります。公式解答例の要点は、通信許可と宛先NATの追加です。各20字以内では「許可する通信を追加する」「宛先NATの定義を追加する」と整理できます。
設問2(1)
本文では、送信先のISPから貸与されたグローバルIPアドレスを使うとされています。現行の公開用アドレスはISP1側のもので、追加するアドレスはISP2側のものです。比較するのはサーバや用途ではなく、アドレスの払い出し元です。公式解答例では「異なるISPから払い出されている」となっており、この要点を20字以内で述べます。
設問2(2)
例えばISP1側の公開用IPアドレスへ届いた要求に対し、応答をISP2経由にすると、本文の変換規則では送信元がISP2側のIPアドレスになります。公式解答例が示す問題は、要求先と応答元のIPアドレスが一致しないことです。40字以内では「応答の送信元IPアドレスが行きの宛先IPアドレスと異なる」と整理できます。採点講評では、IP層とTCP層の動作を混同せず、正確に記述することが求められています。
設問3(1)
STUNサーバは、受信したパケットの送信元IPアドレスをBindingレスポンスのデータに入れて返します。クライアントは、その値と自分自身のIPアドレスを比較すれば、アドレスが変換されたか判断できます。公式解答例もこの比較を挙げています。50字以内では「Bindingレスポンス内のIPアドレスと自身のIPアドレスを比較する」とまとめられます。
設問3(2)
本文のホールパンチ手順②では、STUNで取得した変換後のIPアドレスと、ブラウザ自身のIPアドレスをSDPオブジェクトで通知するとあります。図4のブラウザ2では、自身のアドレスが〈p〉、NAT後のアドレスが〈g2〉です。公式解答例では「〈p〉」「〈g2〉」の二つです。候補を通知した後、相互に通信できる組合せを選びます。
設問3(3)(A)
STUNサーバは、LBのNATを通過した通信の送信元アドレスを観測できる位置に置きます。また、片方のISPが故障しても利用できるよう、二つのサーバを別々のISP接続用LANへ配置します。表2ではISP1接続がvlan1なので、公式解答例ではAを「vlan1」としています。A、Bの割当ては順不同ですが、両方のVLANを使う必要があります。
設問3(3)(B)
AとBを同じISP接続用LANに置くと、そのISPが故障したときに両方のSTUNサーバへのアクセスが影響を受けます。表2ではISP2接続用のLANがvlan2なので、公式解答例ではBを「vlan2」としています。Aをvlan1、Bをvlan2とすることで、二つのISP側へ配置を分けます。公式解答例では、この組合せは順不同です。
設問3(4)(エ)
図5では、社内のブラウザ2が①′でSTUNサーバへアクセスし、そのときのNAT後のアドレスを相手へ通知します。このアドレスが③の経路確認と④のデータ交換に使われるため、最初のLBの振分けが後続の通信経路に結び付きます。公式解答例では、アクセスする主体であるエは「ブラウザ2のAP」です。
設問3(4)(オ)
経路を決める契機は、図5の①′に当たるSTUNサーバへのアクセスです。ブラウザ2のAPは、この通信でLBが選んだISP側の変換後アドレスを取得し、相手へ通知します。本文ではNATの対応関係が通信中に維持されることも前提とされています。したがって、公式解答例ではオは「STUNサーバ」です。
設問4(1)(カ)
図6の①-1には「HTTP GET Upgrade:websocket」、①-2には「101 Switching Protocols」とあります。最初の要求はHTTPによって送られ、その応答を受けて別のプロトコルへ切り替えます。したがって、公式解答例ではカは「HTTP」です。後続のREGISTERやINVITEがSIPのメッセージであることと、最初に使う通信プロトコルを区別します。
設問4(1)(キ)
図6のUpgrade要求には、切替え先としてwebsocketが明記されています。101応答によって切替えが成立し、その後はWebSocket上でSIPに基づくシグナリングを行います。公式解答例ではキは「WebSocket」です。採点講評でも、図6とHTTPの一般知識から推論できる設問であり、SIPそのものを答えた誤答が多かったとされています。
設問4(2)
インターネット側の二つのUAを同じISPのアドレスだけで公開すると、二つのISPを使う構成になりません。それぞれを別のISP側から到達できるようにします。公式解答例の要点は、ISP1とISP2の払い出しアドレスを一つずつ割り当てることです。40字以内では「ISP1とISP2のグローバルIPアドレスを一つずつ割り当てる」とまとめられます。
設問4(3)(C)
本文では、インターネット側のUAへグローバルIPアドレスを直接割り当て、IP-PBX自身がグローバルとプライベートのアドレスを変換します。追加するインタフェースはISP接続用LANへ接続します。表2ではISP1側がvlan1なので、公式解答例ではCは「vlan1」です。C、Dの割当ては順不同です。
設問4(3)(D)
二つ目の追加インタフェースは、もう一方のISP接続用LANへ接続します。表2ではL2SW2のISP2接続用LANがvlan2なので、公式解答例ではDは「vlan2」です。Cをvlan1、Dをvlan2とすることで、IP-PBXの二つのインターネット側UAを別々のISP側へ接続できます。公式解答例では順不同とされています。
設問4(4)(ク)
図6で、社外のAPが最初にアクセスする相手はIP-PBXです。その接続先をFQDNで名前解決し、二つのISP側のアドレスへ振り分けます。したがって、問い合わせ対象となるクは、公式解答例では「IP-PBX」です。WebサーバはAPの配布などに使われますが、ここで問われているのは音声電話の接続先です。
設問4(4)(ケ)
FQDNから接続先IPアドレスを取得するために発行するのは、DNSのクエリです。本文では、LBのDNSラウンドロビン機能によってISP1側とISP2側への通信を負荷分散します。公式解答例ではケは「DNS」です。音声電話のシグナリングを始める前に行う名前解決を問う空欄です。
設問4(4)(コ)
マルチホーミングの説明では、インターネット向けのDNS機能をFWからLBへ移すとあります。IP-PBXのFQDNについても、このDNS機能が二つのISP側のアドレスを返して負荷分散します。したがって、公式解答例ではコは「LB」です。構成変更後にDNS機能を担当する機器を確認します。
設問5(1)
本文のサービス停止時間は、切替作業と動作確認に加え、問題発生時の作業時間も含めて見積もるとされています。切替え後に問題が見つかった場合、元の構成へ戻してサービスを再開するための時間が必要です。公式解答例ではサは「切り戻し」です。成功した場合の作業時間だけでは、停止時間の見積りとして不十分です。
設問5(2)(FQDN数)
現行のWebサーバ1、2はDNSラウンドロビンで負荷分散しています。同じサービスのFQDNに対して複数のアドレスを返す仕組みなので、サーバごとに別のFQDNを数えるのではありません。新構成では二つのISP側のアドレスを含めて四つのAレコードを設定しますが、公式解答例ではFQDN数は「1」です。
設問5(2)(グローバルIPアドレス数)
Webサーバは二台あり、宛先NATでは公開用アドレスと各サーバのアドレスを1対1で対応付けます。マルチホーミング後は、各サーバについてISP1側とISP2側の公開用アドレスが必要です。二台×二つのISPで四つとなるため、公式解答例ではグローバルIPアドレス数は「4」です。サーバ数と公開用アドレス数を分けて数えます。
設問5(3)
APが接続する相手を、ビデオ電話と音声電話の説明から拾います。ビデオ電話ではSTUNサーバ1、2へアクセスしてNAT後のアドレスを取得し、音声電話ではIP-PBXへアクセスします。WebサーバのAレコードは下線(j)で別に扱われています。公式解答例では「IP-PBX、STUNサーバ1、STUNサーバ2」の三つです。
設問5(4)
切替1では中間構成に必要な通信を許可し、切替2では新構成に必要な通信を許可します。この二段階でフィルタリング定義を変更する機器はFWです。一方、LBは切替1で新構成に必要な定義を全て設定し、その後の変更を不要にすると明記されています。したがって、公式解答例では「FW」です。
設問5(5)(1)
図7の切替1では、LBとISP2を追加して、既存の施工情報管理をマルチホーミング化します。社外からのアクセスでは、公開用アドレスへの到達、宛先NAT、FWの通信許可を確認できます。公式解答例の一つ目は「社外からWebサーバへのアクセス」で、20字以内の答案としてこの通信の方向と相手を示します。
設問5(5)(2)
施工情報管理は、社外だけでなく社内の社員も利用します。図2では、社内のブラウザ2からWebサーバへ向かう通信もFWを経由するため、設定変更後も利用できることを確認します。公式解答例の二つ目は「社内からWebサーバへのアクセス」です。社外からの確認だけで済ませず、社内からの経路も検証します。
設問5(5)(3)
切替1では、社内からインターネットへの通信もマルチホーミング化され、NAT機能がFWからLBへ移ります。そこで、社内のブラウザから外部サイトへアクセスし、変更した経路と送信元NAPTの動作を確認します。公式解答例の三つ目は「社内からインターネットへのアクセス」です。三つの確認対象を、通信元と通信先で整理します。
設問5(6)
ドメイン登録業者への依頼は、ISP2経由でもLBのDNS機能を利用できるようにする定義の追加です。したがって、確認対象はWeb画面の表示ではなく、新しいISP側からのDNS機能です。公式解答例では「ISP2を経由した外向きDNS機能を確認する」とされています。30字以内では、ISP2経由であることとDNS機能の確認であることを押さえます。
設問5(7)
図5の通信を図3の配置に重ね、FWを通過する新規通信を選びます。社内のブラウザ2からSTUNサーバへの①′、社外のブラウザ1との経路確認③、データ交換④はFWを通過するため、追加の許可が必要です。①は社外のブラウザとISP側のSTUNサーバ間の通信で、FWを通過しません。②は既存のWebサーバへのHTTPS通信として許可済みです。公式解答例では「①′、③、④」です。
学習のポイント
NATとNAPTの違い、STUNで取得するアドレス、DNSラウンドロビン、FWを通過する通信の判別を重点的に学習します。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成28年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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