NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
平成28年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題












解き方のヒントを見る
検討の前提条件をそろえる
通信の設計を検討するときは、まず判断の前提となる条件をそろえましょう。与えられた情報に書かれた条件と、自分が補って考えた条件を区別し、同じ前提で考えているかを確かめることが出発点になります。
この問題で問われていること
検討する内容が、どの前提条件の下で成り立つものとして示されているかに注目しましょう。普段の知識から条件を付け足さず、与えられた範囲に立ち戻ることで、判断の土台を整理しやすくなります。
視点
前提条件は、検討を進める際の土台です。明示された条件と自分の想定を分けて整理し、考えている途中で前提が変わっていないかを振り返りましょう。
確認ポイント
- 与えられた前提条件を整理できているか
- 明示されていない条件を補っていないか
- 検討の途中で前提条件を変えていないか
正解と解説を見る
解説
広域イーサ網とインターネットVPNを併用し、サーバのIPアドレスを維持しながらWANを冗長化する設計問題です。GREとIPsecの役割、ヘッダの構成、サブネット分割、VRRPとOSPFによる正常時・障害時の転送経路を結び付けて理解します。
問題の全体像
Y社は、本社と営業所を接続する広域イーサ網にインターネットVPNを追加し、可用性向上とアクセス先に応じた回線の使い分けを目指しています。同時に、DMサーバ以外をデータセンタへ移設し、サーバのIPアドレスを維持する必要があります。公式の出題趣旨では、IPsec、トンネリング、OSPFの知識を実務の設計・構築・運用に適用できるかを問うとしています。設問は、VPNの基礎からパケット構造、サブネット設計、障害時の経路判断へと進みます。
設問1
公式解答例では、アは「32」、イは「セレクタ」、ウは「アグレッシブ」、エは「経路」、オは「断片化」です。アはSAの識別に使うSPIのビット数、イはIPアドレスやプロトコルなどからセキュリティポリシを選択するキーの名称です。ウはIKEフェーズ1で1往復半の通信を行うモードを指します。エは、GREの外側のIPヘッダで転送するため、インターネットが元の宛先への経路を知らなくてもよいという説明に対応します。オは、追加ヘッダによってMTUを超えるパケットが生じることと結び付けます。採点講評では、特にアとイの正答率が低かったとしています。
設問2(1)
表2のライフタイムは「IPsec SAの生存期間」です。その終了に伴って鍵を更新し、通信を保護するSAを更新する処理に着目します。公式解答例では「リキー(ReKey)」です。表1のISAKMP SAのライフタイムと混同せず、設問が表2のIPsec SAについて尋ねていることを確認します。
設問2(2)
表1の認証方式は通信相手機器の認証ですが、表2はIPsec通信で使う認証アルゴリズムです。本文の「転送データの完全性の認証」と対応させると、対象は送受信されるメッセージ、確認する内容は通信中に改ざんされていないことになります。公式解答例もこの二点を示しています。40字以内では「IPsec通信で送受信されるメッセージが改ざんされていないこと。」とまとめられます。採点講評では、フェーズ1とフェーズ2の認証の違いを、表と本文から導くことを求めています。
設問2(3)
本文には、検討中のIPsecルータがユニキャストのIPパケットをカプセル化するとあります。一方、通常のOSPFではリンクステート情報の交換にIPマルチキャスト通信を使います。この通信形態の違いが、下線(a)の理由です。公式解答例では、OSPFのリンクステート情報交換がIPマルチキャスト通信で行われることを挙げています。指定語句を含めた40字以内の表現は「OSPFのリンクステート情報交換がIPマルチキャスト通信だから。」です。
設問3(1)
ジャンボフレームを使用しないので、イーサネットのMTUである1500バイトから、図中の全ヘッダ長を差し引きます。図3では、あ=1500-(20+4+20+20)=1436バイトです。図5では、い=1500-(20+8+16+2+20+20)=1414バイトです。公式解答例も、あを1436、いを1414としています。求めるのはデータ欄の最大長なので、追加された外側のヘッダだけでなく、内側のIPヘッダとTCP/UDPヘッダも差し引きます。
設問3(2)
図3のIPヘッダ1はGREトンネルの外側、IPヘッダ2は元のIPパケットのヘッダです。図4でトンネルの両端はルータ1とルータ2なので、公式解答例ではIPヘッダ1の送信元が「α.0.0.1」、宛先が「β.0.0.1」です。元の通信の両端はPCとサーバなので、IPヘッダ2の送信元は「192.168.0.100」、宛先は「192.168.10.1」です。外側はトンネルを運ぶためのアドレス、内側は元の通信相手を示すアドレスと整理します。
設問3(3)
図6の①はPCとアクセス回線網のPPPoEサーバとの通信、②はPCとLNSであるVPN装置とのPPPセッションです。①で取得するアドレスは、インターネット経由でL2TPパケットを送るための外側のアドレスです。②で取得するアドレスは、トンネル内でイントラネットのサーバと通信するための内側のアドレスです。公式解答例では、①が「IPヘッダ1」、②が「IPヘッダ2」です。採点講評では、この設問の正答率が低く、通信手順とパケット形式を対応させて考えることを求めています。
設問3(4)
目的は、OSPFの通信をカプセル化してIPsecで運べるようにすることです。GREとL2TPのどちらでも目的を達成できるので、図3と図5の追加ヘッダを比較します。GREの追加分は24バイト、L2TPはPPPヘッダも含めると46バイトで、同じMTUならGREの方がデータを多く収容できます。公式解答例も、オーバヘッドが小さく一つのパケットで転送できるデータ量が多いことを利点としています。60字以内では「GREはL2TPよりカプセル化のオーバヘッドが小さく、1パケットで転送できるデータ量が多い。」とまとめられます。
設問4(1)
図8では、IPsecルータ間にGREトンネルが構成されています。元のパケットを包んで両端間で運ぶ役割は既にGREが担うので、IPsecではそのGREパケットを保護すればよく、トンネルモードを使う必要がありません。公式解答例では「GREでトンネリングが行われるから」です。この表現で20字以内の条件を満たします。
設問4(2)
表2の「認証方式」は、IPsec通信で使う認証アルゴリズムを選択するパラメータです。図7のESP認証データは、そのアルゴリズムに応じた長さになるため、選択する方式によって変化します。公式解答例も、使用する認証アルゴリズムによる違いを理由としています。40字以内では「使用する認証アルゴリズムによってESP認証データ長が異なるから。」とまとめられます。
設問4(3)
図7はESPのトランスポートモードなので、外側のIPヘッダ1を残し、その内側のGREパケットを暗号化します。公式解答例で列挙されている項目は「GREヘッダ、IPヘッダ2、TCP/UDPヘッダ、データ、ESPトレーラ」です。ESPヘッダとESP認証データは暗号化する項目に含まれません。元のデータだけでなく、内側の各ヘッダとESPトレーラまでが対象であることを確認します。
設問5(1)
図1のサーバIPアドレスと、DMサーバだけを本社に残す要件に着目します。Web・中継メール・プロキシサーバは172.16.128.0/20に収まるので、このサブネットを移動します。一方、DMサーバの172.16.16.1と社内メールサーバの172.16.17.1は、もともと同じ172.16.16.0/20に属します。このサブネットを分割し、社内メールサーバを含む172.16.17.0/24を移動すれば、サーバIPアドレスを維持してDMサーバを本社に残せます。公式解答例では「172.16.128.0/20、172.16.17.0/24」です。
設問5(2)
図9では、L2SWaとL2SWbの双方がIPsecルータとL3SWに接続されています。二つのL2SW側を同一のレイヤ2ネットワークとしてつなぐ構成を避け、それぞれを別のサブネットとして収容する設計に着目します。公式解答例では「L2SWaとL2SWbを異なるサブネットにする。」です。指定された二つの機器名を含み、30字以内で必要な設計方針を示しています。
設問5(3)
VRRPの仮想IPアドレスは、冗長化するデフォルトゲートウェイをサブネットごとに用意するものとして数えます。本社はDMサーバ側のL2SWaとPC側のL2SWbで二つ、各営業所はPCを収容するL2SW側で一つ、データセンタはL2SWa側と社内メールサーバを収容するL2SWb側で二つです。公式解答例では「本社2、営業所1、データセンタ2」です。機器の台数やWAN回線の本数ではなく、VRRPで冗長化するサブネットの数を確認します。
設問5(4)
切断されるのは、名古屋営業所のIPsecルータとL3SWを直接接続する経路です。PCを収容するL2SW側の接続と各機器のWAN回線は残りますが、直接接続を経由して相手機器のWANへ転送する経路は使えなくなります。したがって、PCの転送先となるVRRPのマスタルータ側のWANを使用します。公式解答例に沿った60字以内の表現は「各サーバへは、VRRPのマスタルータが稼働する機器に接続されたWAN回線を経由する。」です。採点講評では、VRRPの状態と障害後の経路テーブルを基に考えることを求めています。
設問5(5)
本社PCのVRRPのマスタルータがL3SWなので、経路比較の起点は本社L3SWです。図9で専用線へ出るコストは200です。自拠点のIPsecルータを通ってVPNへ出る場合は、直接接続の10とトンネルの220を足して230となります。公式解答例では、VPN経由の最小コスト230より専用線経由の200が小さいため、専用線を選ぶとしています。60字以内では「専用線経由のコスト200が、インターネットVPN経由の最小230より小さいため。」とまとめられます。
設問5(6)
うは名古屋営業所のVPN接続に障害がある場合です。広域イーサ網で本社へ行き、本社から専用線でデータセンタへ向かうので、公式解答例では「広域イーサ網→本社→専用線」です。えは名古屋営業所の広域イーサ網接続に障害がある場合です。VPNでデータセンタへ行き、専用線で本社へ向かうので「インターネットVPN→データセンタ→専用線」です。本文でVPNはデータセンタと各拠点の間に設定すると指定されています。採点講評では、うの誤答から、この接続条件を見落とした受験者が多かったとしています。
学習のポイント
IKEの機器認証とデータの完全性認証を区別し、カプセル化の計算、サブネット単位のVRRP、OSPFのコスト比較と障害後の経路変化を重点的に学習します。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成28年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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