NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成27年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 ネットワーク基盤の拡張に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 K社は,様々な用途の空調設備(以下,設備という)を製造し,保守サービスにも力を入れている。全国の保守センタに配備された保守員が,顧客のオフィスや工場などを訪問して,設備の点検や修理を行っている。今後は,リモート保守などの新サービスを提供する予定である。 〔現在の保守システム〕 現在の保守システムの構成を図1に示す。 図1 現在の保守システムの構成 ・保守員は,保守端末を携帯して顧客へ出向き,設備の点検,修理を行う。 ・保守員は,無線LANを介して保守端末から設備に,HTTPを使ったアクセスを行うことができ,設備の稼働情報を参照したり,設備を操作したりする。 ・K社データセンタには,2台のWebサーバと2台の業務サーバが設置され,両サーバによって保守情報が管理されている。 ・必要に応じて,保守員は保守センタのPC又は保守端末からWebサーバへアクセスし,保守情報を参照,更新する。アクセスを受けたWebサーバは,一部の処理を業務サーバに依頼する。 K社データセンタ内のネットワーク構成を,図2に示す。 図2 K社データセンタ内のネットワーク構成(抜粋) ・リンクアグリゲーションで接続された3組のL2SWは,それぞれ単一の異なるセグメントを構成している。 ・FW及びLBは,Active-Standby方式で冗長化されている。 ・L2SWとサーバの接続は,サーバのチーミング機能によって冗長化されている。 ・Webサーバと業務サーバのデフォルトゲートウェイは,LBである。 ・Webサーバと業務サーバへのアクセスは,LBによって負荷分散されている。 ・Webサーバと業務サーバへアクセスするための仮想IPアドレスが,それぞれに定義されている。LBは,宛先の仮想IPアドレスを実IPアドレスに変換し,サーバへのアクセスを振り分ける。Webサーバから業務サーバへのアクセスについては,両サーバが同一セグメント内にあるので,[あ]アドレスも変換する。 通常時のサーバへのアクセスに関するデータの流れを,図3に示す。 図3 通常時のサーバへのアクセスに関するデータの流れ 〔保守システムの機能強化〕 情報システム部では,新サービスの提供に当たり,保守システムの機能強化プロジェクトを予定している。機能強化では,新業務サーバをK社データセンタに設置して,全設備の稼働情報を継続的に収集し,それを保守員が参照する。また,保守センタから設備の操作(設定変更,ファームウェア更新)を行ったり,設備の稼働情報(運転実績,維持温度)を参照したりする。ところが,図1に示すように,現在の保守システムでは,ネットワークを介して設備へアクセスすることができない。そこで,情報システム部では,2種類のネットワーク機器(通信アダプタと中継装置)を導入し,設備へのネットワークアクセスを実現しようとしている。 機能強化に伴う導入機器の設置場所を図4に,機能強化後の通信の概要を図5に,それぞれ示す。 図4 機能強化に伴う導入機器の設置場所 図5 機能強化後の通信の概要 図5中の通信の概要は,次のとおりである。 ・①は,現在の通信であり,通信プロトコルにはHTTPを用いている。同様に,新たに追加される②~④,④',④"もHTTPを用いる。 ・②は,保守員が新業務サーバにある,設備の稼働情報を参照するときの通信である。 ・③は,保守員が設備を操作するときの通信である。その際,保守員は最新の稼働情報を参照するので,④"の通信も発生する。 ・④は,新業務サーバが設備の稼働情報を自動的に取得するときの通信である。収集周期は,サービス開始時は1時間とし,段階的に5分間程度に短縮しサービス品質を向上させる。また,設備はいつも通電されているとは限らないので,それを考慮した仕組み(以下,稼働情報取得案という)を用意する。 ・②の通信では,アクセスの際,新業務サーバ上の稼働情報を次の形式で指定する。 http://(新業務サーバのFQDN)/(稼働情報ファイル名) ・③,④,④',④"の通信では,アクセスの際,設備の中の稼働情報又は操作対象の機能(以下,リソースという)を,次の形式で指定する。 http://(設備を指定するためのFQDN)/(リソース名) 情報システム部では,図5中の④,④',④"の通信に関して,通信アダプタと中継装置のHTTPキャッシュ機能を使った次のような稼働情報取得案を構想している。 ・中継装置と通信アダプタは,HTTPレスポンスに含まれる設備の稼働情報を,自装置にキャッシュする。 ・中継装置と通信アダプタは,稼働情報に関するGETリクエストを中継する際に,自装置がキャッシュしている最新の稼働情報よりも新しい稼働情報を取得するように,HTTPヘッダ[If-Modified-Since:x]を付加する(xは時刻)。そして,新しい稼働情報が得られない場合には,自装置がキャッシュしている最新の稼働情報を利用する。 ・④の通信では,2台の新業務サーバに実装されたHTTPクライアントが,定期的に配下の設備にGETリクエストをそれぞれ送信し,稼働情報を取得する。(a)稼働情報取得のトリガは,設備ではなくK社データセンタ側にあるが,それは運用上の利点となっている。各新業務サーバが取得した稼働情報は,データベースの機能を用いて新業務サーバ間で同期する。 ・④'の通信では,通信アダプタは単独で,HTTPヘッダ[If-Modified-Since:x]を付加したGETリクエストを設備へ1分間隔で送信し,取得した稼働情報を自装置にキャッシュする。 この稼働情報取得案に従うと,[う]はフォワードプロキシ,[え]は[お]プロキシとして動作しているとみなすことができる。 稼働情報取得案の通信シーケンス例を,図6に示す。 図6 稼働情報取得案の通信シーケンス例 図6中の時刻(T,Ta~Tf,T',Tb')のうち,Ta,Tdはリクエストの開始時刻,Tb,Tb',Te,Tfはキャッシュされている最新稼働情報のタイムスタンプの時刻である。また,時刻の前後関係は次のとおりである。 Tb ≦ Tb' < Tc Te < Tf ここで,x < yは,xがyに先行することを示す。 K社情報システム部のM君は,保守システムのネットワーク基盤を担当している。上司のN氏から指示を受けたM君は,保守システムの機能強化プロジェクトに先立ち,そこで必要となるネットワーク基盤の拡張について調査を進めてきた。 M君は,図4~6を使って,その調査結果をN氏に説明した。次はそのときの会話である。 N氏:図4~6の内容は分かった。保守システムの機能強化プロジェクトで具体的な検討を行うことにしよう。ただ,その前に二つ確認したいことがある。 M君:どのようなことでしょうか。 N氏:今,保守システムの機能強化と並行して,次世代設備の企画も進められている。次世代設備では,通信インタフェースとして,低電力でも稼働できるZigBeeを採用する。さらに,HTTP以外の通信プロトコルも実装できる。一方,サービスの拡充に伴い,通信トラフィックは増加していくだろう。そこで,次世代設備向けにもっと効率が良い通信方式がないか調査して報告してほしい。図4~6の案が,その新しい通信方式にも拡張可能かどうかも,事前に確認しておきたい。 M君:分かりました。調べてみます。 N氏:もう一つは,LAN構成とネットワーク負荷に関する確認だ。今回,初めてブレードサーバを導入する予定だが,LAN構成をどのように変えるのかを確認してほしい。それから,稼働情報収集では大量の通信が発生するはずだ。現行のネットワーク機器への影響が懸念される。その調査もお願いする。 M君:分かりました。それらについても確認します。 〔次世代設備に関する通信方式〕 M君は早速,新しい通信方式について調査し,RFC 7252によって標準化が進められている通信プロトコルであるCoAP(Constrained Application Protocol)がHTTPの代わりに利用できそうだと考えた。M君がCoAPについて調査した結果を次に示す。 ・CoAPは,UDP上で動作可能な,HTTPに似た通信プロトコルである。 ・HTTPリクエストをCoAPリクエストに変換したり,CoAPレスポンスをHTTPレスポンスに変換したりすることもできる。 ・CoAPのメッセージ形式を図7に示す。 図7 CoAPのメッセージ形式 ・CoAPのメッセージは,4バイトのヘッダと可変長のToken,Options,Payloadから構成されている。1バイトのCodeを使い,リクエストの種別やレスポンスの状態コードを指定する。ZigBeeに用いられるIEEE 802.15.4フレームのデータ部は,IEEE 802.3(Ethernet)フレームのデータ部よりもかなり短く,CoAPのメッセージ形式は,それに適したものになっている。 以上の調査から,M君は,(b)TCP上のHTTPをUDP上のCoAPに置き換えることによって,通信アダプタと中継装置を用いた通信のTAT(Turn Around Time)を向上させることができると判断した。また,その際FWの設定を変更しなくてもよいように,HTTPとCoAPの変換機能は,図5中の[か]に実装することにした。 M君は,調査結果を基に,現在の設備に関する通信方式が次世代設備に関しても拡張可能であることをN氏に説明した。 〔LANの構成とネットワーク負荷〕 情報システム部は,新機能の開発に先立ち,次のような方針を立てている。 ・2台のブレードを内蔵したブレードサーバをK社データセンタに導入する。 ・2台の新業務サーバと2台の中継装置を,ブレード上の仮想サーバに実装する。 ・中継装置はActive-Standby方式で冗長化させる。 ・図5中の②の通信はLBを経由させ,2台の新業務サーバに負荷分散させる。 M君は,新機能開発の方針を基に,NIC(Network Interface Card)を含む,ブレードサーバに関するLAN構成について,次のような確認・検討を行った。 ・ブレードサーバ内のLAN構成を,図8に示す。 図8 ブレードサーバ内のLAN構成 ・仮想サーバの二つの仮想NICは,ブレードの二つの物理NICにそれぞれ接続され,仮想サーバのチーミング機能によって冗長化されている。 ・ブレードの二つの物理NICは,ブレードサーバの二つの内部L2SWにそれぞれ接続され,ブレードのチーミング機能によって冗長化されている。 ・LB利用の有無を考慮し,新業務サーバと中継装置は別のVLANに収容する。 ・新業務サーバのデフォルトゲートウェイには[き]を,中継装置のデフォルトゲートウェイにはFWを,それぞれ定義する。 ・(c)図8中の二つの内部L2SWに,図2中の2組のL2SWを接続する。 図5中の④の通信では,大量のHTTPリクエストとHTTPレスポンスの対(以下,トランザクションという)が発生し,現行ネットワークの通信帯域に影響を与える可能性がある。また,FWは,TCPコネクションの確立開始から切断完了までの状態(以下,コネクションという)を管理するので,④の通信の同時コネクション数はFWの性能に影響を与える可能性がある。そこで,M君は,これらの通信負荷を見積もることにした。図5中の④の通信に関する見積りの前提を,表1に示す。 表1 図5中の④の通信に関する見積りの前提 表1を前提にした見積り結果は次のとおりである。 ・④の通信の起動タイミングは平準化されていると仮定すると,新サービス開始時には,表1中の項番1,6から,毎秒[ア]トランザクションが発生する。 ・1トランザクションは1コネクションで処理されると仮定すると,各コネクションの保持時間は,項番3~5から,平均(2.4+0.2×Tout)秒と推定できる。 ・したがって,2台の新業務サーバの④の通信に関する同時コネクション数の合計は,平均([イ]+[ウ]×Tout)コネクションと推定できる。この値は,将来,収集周期が5分間になると,12倍に増加する。 ・各コネクションにおける通信データ量は,稼働情報が数バイトに過ぎない(図5)ことから,オーバヘッドを考慮しても,図2中の現行ネットワーク機器や閉域網サービスに与える影響は限定的である。 このような検討の結果から,M君は,通信帯域については当面懸念しなくてもよいと判断した。しかし,同時コネクション数は,FWの性能に大きく影響すると考え,負荷の予測とFWの増強について提言をまとめた。提言には,同時コネクション数を軽減するために,HTTP/1.1の実装に関する次の三つの提案を含めた。 ・TCPコネクション保持時間の短縮案1:(d)中継装置のToutの設定方針 ・TCPコネクション保持時間の短縮案2:(e)新業務サーバからのリクエストにおけるクローズ接続オプションの使い方 ・同時コネクション数の削減案:トランザクションをパイプライン化する工夫と,その前提となる,(f)設備のリソースを指定する際のURLに関する設計方針 M君は,以上の検討結果をまとめ,N氏に報告した。 その後,保守システムの機能強化プロジェクトが開始されることになり,M君はネットワークグループのリーダに任命された。 設問1 〔現在の保守システム〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 本文中の[あ]に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 図3中の[い]に入れる適切な機器名を答えよ。 (3) 図3中の①~⑧のIPパケットのうち,送信元IPアドレスが②と同じになるIPパケットの番号を全て答えよ。 (4) 図3中の①~⑧のIPパケットのうち,宛先IPアドレスが②と同じになるIPパケットの番号を全て答えよ。 設問2 〔保守システムの機能強化〕について,(1)~(6)に答えよ。 (1) 本文中の[う]~[お]に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 本文中の下線(a)の利点を,25字以内で述べよ。 (3) 図6中の例Ⅱのシーケンスによって,通信アダプタのキャッシュが更新される。更新後の最新稼働情報のタイムスタンプの時刻を答えよ。 (4) 図6中の例ⅡのGETリクエストの中継において,TbとTb'は異なる場合が多いが,それはなぜか。キャッシュに着目して,35字以内で述べよ。 (5) 図6中の例Ⅲの通信シーケンスになるのは,どのような場合が考えられるか。通信アダプタと設備の間の通信に着目して二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。 (6) 図6中の例Ⅰの周期を長くした場合(例えば1分間隔から2分間隔へ変更),HTTPクライアントが受け取る応答への影響を40字以内で述べよ。 設問3 〔次世代設備に関する通信方式〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の[か]に入れる適切な機器名を答えよ。 (2) 図7のCoAPメッセージ以外に,IEEE 802.15.4フレームのデータ部に含まれるデータを,20字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線(b)について,TATの向上に寄与する,CoAPとUDPの特長を二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。 設問4 〔LANの構成とネットワーク負荷〕について,(1)~(6)に答えよ。 (1) 本文中の[き]に入れる適切な機器名を答えよ。 (2) 本文中の下線(c)について,内部L2SWとL2SWとの接続を,図9に示す。内部L2SWとL2SWとの接続を追記し,図9を完成させよ。 図9 内部L2SWとL2SWとの接続 (3) 本文中の[ア]~[ウ]に入れる適切な数値を答えよ。 (4) 本文中の下線(d)の設定方針を,30字以内で述べよ。 (5) 本文中の下線(e)の使い方を,30字以内で述べよ。 (6) 本文中の下線(f)の設計方針を,50字以内で述べよ。
図1 現在の保守システムの構成。複数の保守センタ(保守員とPC)、外出先の保守員(保守端末)、顧客(保守端末と無線接続された複数の設備)が閉域網サービスを介してK社データセンタ(FW、LB、Webサーバ、業務サーバ)に接続する構成図。凡例:FWはファイアウォール、LBは負荷分散装置。
図1 現在の保守システムの構成。複数の保守センタ(保守員とPC)、外出先の保守員(保守端末)、顧客(保守端末と無線接続された複数の設備)が閉域網サービスを介してK社データセンタ(FW、LB、Webサーバ、業務サーバ)に接続する構成図。凡例:FWはファイアウォール、LBは負荷分散装置。
図2 K社データセンタ内のネットワーク構成(抜粋)。閉域網サービスの下に、リンクアグリゲーションで接続されたL2SW-10/11、FW正/副、L2SW-20/21、LB正/副、L2SW-30/31が縦に並ぶ。L2SW-30/31からWebサーバ1・2と業務サーバ1・2へそれぞれたすき掛けで接続した冗長構成。
図2 K社データセンタ内のネットワーク構成(抜粋)。閉域網サービスの下に、リンクアグリゲーションで接続されたL2SW-10/11、FW正/副、L2SW-20/21、LB正/副、L2SW-30/31が縦に並ぶ。L2SW-30/31からWebサーバ1・2と業務サーバ1・2へそれぞれたすき掛けで接続した冗長構成。
図3 通常時のサーバへのアクセスに関するデータの流れ。FW正、LB正、Webサーバ1,2、空欄[い]、業務サーバ1,2が横に並ぶ。リクエストは①~④、レスポンスは⑤~⑧の番号付き矢印で機器間の流れを示す。注記で右向き矢印がリクエスト、左向き矢印がレスポンスと説明。
図3 通常時のサーバへのアクセスに関するデータの流れ。FW正、LB正、Webサーバ1,2、空欄[い]、業務サーバ1,2が横に並ぶ。リクエストは①~④、レスポンスは⑤~⑧の番号付き矢印で機器間の流れを示す。注記で右向き矢印がリクエスト、左向き矢印がレスポンスと説明。
図4 機能強化に伴う導入機器の設置場所。保守センタ(保守員とPC)と顧客(通信アダプタと無線接続された複数の設備)が閉域網サービスを介してK社データセンタに接続する。データセンタにはFW、LB、Webサーバ、業務サーバがあり、導入機器として中継装置と新業務サーバが網掛けで示される。
図4 機能強化に伴う導入機器の設置場所。保守センタ(保守員とPC)と顧客(通信アダプタと無線接続された複数の設備)が閉域網サービスを介してK社データセンタに接続する。データセンタにはFW、LB、Webサーバ、業務サーバがあり、導入機器として中継装置と新業務サーバが網掛けで示される。
図5 機能強化後の通信の概要。保守センタのPC、顧客の設備と通信アダプタ、K社データセンタのFW、LB、中継装置、業務サーバ、Webサーバ、新業務サーバの間の通信①~④、④'、④"の経路図。表で各通信の用途(保守情報の参照、稼働情報の参照、設備の操作、稼働情報の取得)、データ量、頻度を示す。
図5 機能強化後の通信の概要。保守センタのPC、顧客の設備と通信アダプタ、K社データセンタのFW、LB、中継装置、業務サーバ、Webサーバ、新業務サーバの間の通信①~④、④'、④"の経路図。表で各通信の用途(保守情報の参照、稼働情報の参照、設備の操作、稼働情報の取得)、データ量、頻度を示す。
図6 稼働情報取得案の通信シーケンス例。例Ⅰ:通信アダプタと設備の間のIf-Modified-Since付きGETを1分間隔で繰り返すシーケンス。例Ⅱ:PC・新業務サーバから中継装置、通信アダプタ、設備へGETを中継し、Last-Modified: Tcで応答が戻る。例Ⅲ:更新情報を取得できず、一部が設問のため省略されている。
図6 稼働情報取得案の通信シーケンス例。例Ⅰ:通信アダプタと設備の間のIf-Modified-Since付きGETを1分間隔で繰り返すシーケンス。例Ⅱ:PC・新業務サーバから中継装置、通信アダプタ、設備へGETを中継し、Last-Modified: Tcで応答が戻る。例Ⅲ:更新情報を取得できず、一部が設問のため省略されている。
図7 CoAPのメッセージ形式。0~31ビットの32ビット幅で、1行目にVer、T、TKL、Code、Message IDの4バイトヘッダ、その下に可変長のToken、Options、Payloadを示すメッセージ形式図。凡例:Ver=Version、T=Type、TKL=Token Length。
図7 CoAPのメッセージ形式。0~31ビットの32ビット幅で、1行目にVer、T、TKL、Code、Message IDの4バイトヘッダ、その下に可変長のToken、Options、Payloadを示すメッセージ形式図。凡例:Ver=Version、T=Type、TKL=Token Length。
図8 ブレードサーバ内のLAN構成。外部のL2SWに接続された内部L2SW-0と内部L2SW-1が、ブレード1(新業務サーバ1・2)とブレード2(中継装置正・副)の物理NICにたすき掛けで接続される。各仮想サーバは二つの仮想NICで両方の物理NICへつながる。
図8 ブレードサーバ内のLAN構成。外部のL2SWに接続された内部L2SW-0と内部L2SW-1が、ブレード1(新業務サーバ1・2)とブレード2(中継装置正・副)の物理NICにたすき掛けで接続される。各仮想サーバは二つの仮想NICで両方の物理NICへつながる。
表1 図5中の④の通信に関する見積りの前提。項番1~6の前提値を示す表。収集対象の設備数108,000台、通信アダプタ1台当たりの設備数1~100台、収集成功率80%、トランザクションの通信時間3秒、TCPの無通信タイムアウト時間Tout秒、新サービス開始時の収集周期3,600秒(将来5分間)。
表1 図5中の④の通信に関する見積りの前提。項番1~6の前提値を示す表。収集対象の設備数108,000台、通信アダプタ1台当たりの設備数1~100台、収集成功率80%、トランザクションの通信時間3秒、TCPの無通信タイムアウト時間Tout秒、新サービス開始時の収集周期3,600秒(将来5分間)。
図9 内部L2SWとL2SWとの接続。L2SW-10/11、FW正/副、L2SW-20/21、LB正/副、L2SW-30/31の構成と、未接続のポートを持つブレードサーバ内の内部L2SW-0・内部L2SW-1を示す。内部L2SWとL2SWの接続を解答で追記させるための図。
図9 内部L2SWとL2SWとの接続。L2SW-10/11、FW正/副、L2SW-20/21、LB正/副、L2SW-30/31の構成と、未接続のポートを持つブレードサーバ内の内部L2SW-0・内部L2SW-1を示す。内部L2SWとL2SWの接続を解答で追記させるための図。
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検討の前提と適用範囲をそろえる

技術的な仕組みを検討するときは、与えられた条件がどの範囲に適用されるかに注目しましょう。判断の対象と前提の範囲をそろえ、明示された条件と自分が補った想定を区別すると、考えを整理しやすくなります。

この問題で問われていること

この問題に取り組む際も、条件の適用範囲を一つの確認軸にしてください。ある対象についての前提を、別の対象にも無意識に広げていないかを確かめ、判断の根拠が与えられた範囲に収まるかを意識しましょう。

視点

前提の適用範囲とは、その条件を判断の根拠として使える対象や場面の範囲です。検討中に置いた想定についても、与えられた条件から言えることなのか、便宜的に補ったことなのかを分けて整理しましょう。

確認ポイント

  • 判断の対象に適用される条件を確認したか
  • 条件を明示された範囲より広げていないか
  • 自分で補った想定を、与えられた前提と区別したか
正解と解説を見る

解説

空調設備のリモート保守を実現するため、LBのアドレス変換、HTTPプロキシとキャッシュ、CoAPへの変換、VLANと冗長接続を検討する問題です。通信量だけでなく、接続の保持時間がFWの同時コネクション数に与える影響を読み解くことが要点です。

問題の全体像

K社は、訪問による空調設備の保守に加え、設備の稼働情報を継続収集し、遠隔から参照・操作できるサービスを計画しています。既存ネットワークに通信アダプタ、中継装置、新業務サーバを追加する際の通信経路、キャッシュの動作、次世代設備への対応、LAN構成と負荷を検討します。公式の出題趣旨では、利用形態から必要な通信を導き、その実現方法と現行ネットワークへの影響をTCP/IPとHTTPの基本知識から考察する応用能力を問うとしています。

設問1(1)

公式解答例では「あ」は「送信元IP」です。着目点は、Webサーバと業務サーバが同一セグメントにあることです。LBが宛先だけを業務サーバの実IPアドレスへ変換すると、業務サーバはWebサーバへ直接応答でき、戻りの通信がLBを通らなくなります。送信元IPアドレスもLB側のアドレスへ変換することで、応答をLBへ戻し、往復のアドレス変換を成立させます。空欄の後に「アドレス」があるので、答案は「送信元IP」とします。

設問1(2)

公式解答例では「い」は「LB正」です。本文には、業務サーバへのアクセスもLBによって負荷分散されるとあります。そのため、図3のWebサーバから業務サーバへのリクエストは、途中でLBを通ります。FWとLBはActive-Standby方式であり、図3は通常時の通信を示しているので、稼働中の「LB正」が入ります。

設問1(3)

公式解答例では「①」です。②は、保守センタのPCなどから来たリクエストをLBがWebサーバへ転送したパケットです。この通信では宛先の仮想IPアドレスを実IPアドレスへ変換するので、送信元は①と②で同じです。一方、③はWebサーバが業務サーバへの処理依頼として送る別のリクエストであり、④ではさらに送信元IPアドレスも変換されます。応答側もサーバ又はLB側のアドレスが送信元になるため、該当する番号は①だけです。

設問1(4)

公式解答例では「⑥」です。②の宛先は、LBが振り分けたWebサーバの実IPアドレスです。Webサーバから業務サーバへの処理依頼に対する応答は、⑤でLBへ戻り、アドレス変換を経て⑥でWebサーバへ届きます。この⑥の宛先が②と同じになります。①の宛先はWebサーバ用の仮想IPアドレスなので、②の実IPアドレスとは異なります。

設問2(1)(う)

公式解答例では「う」は「中継装置」です。図5と図6で、中継装置はPCや新業務サーバからのリクエストを受け、対象設備へ向けて中継しています。設備へアクセスするクライアント側の代理として動作するので、フォワードプロキシとみなせます。通信経路のどちら側を代理する装置なのかに着目します。

設問2(1)(え)

公式解答例では「え」は「通信アダプタ」です。通信アダプタは顧客側に設置され、設備へ向かうリクエストを受けて、その配下の設備へ中継します。また、設備の稼働情報をキャッシュし、必要に応じてその情報を応答に利用します。設備というサーバ側の代理として動作する機器が通信アダプタです。

設問2(1)(お)

公式解答例では「お」は「リバース」です。通信アダプタは、設備へアクセスするクライアントから見て、設備側の窓口としてリクエストを受け付けます。このようにサーバ側を代理するものをリバースプロキシと呼びます。空欄の後に「プロキシ」が続くので、答案には「リバース」と記入します。

設問2(2)

公式解答例では、稼働情報の収集周期を容易に変更できる点を挙げています。本文では、収集周期をサービス開始時の1時間から、段階的に5分程度へ短縮する計画が示されています。取得のトリガがデータセンタ側にあれば、各設備の設定を変更せず、新業務サーバ側で周期を調整できます。25字以内の答案では「稼働情報の収集周期の変更が容易です。」と、変更対象と容易さを押さえます。

設問2(3)

公式解答例では「Tc」です。図6の例Ⅱでは、通信アダプタが「If-Modified-Since:Tb'」を付けて設備へ問い合わせ、設備から「Last-Modified:Tc」を含むレスポンスを受け取ります。本文の関係式はTb≦Tb'<Tcなので、取得した情報は通信アダプタの既存キャッシュより新しい情報です。更新後のタイムスタンプは、要求開始時刻Taではなく、取得した情報の更新時刻Tcになります。

設問2(4)

公式解答例では、通信アダプタの方が中継装置よりキャッシュの更新頻度が高く、情報が新しいことを理由としています。通信アダプタは例Ⅰの通信を1分間隔で独自に実行します。一方、中継装置のキャッシュは、新業務サーバなどからの取得要求を中継した際に更新されます。この違いから、両者の最新情報の時刻TbとTb'は一致しない場合が多くなります。35字以内では「通信アダプタの方がキャッシュ更新頻度が高く、新しいから。」とまとめられます。

設問2(5)①

公式解答例の一つ目は、設備とTCPコネクションを確立できない場合です。図6の例Ⅲでは、設備から新しい情報を取得できず、通信アダプタが保持する情報Tfを中継装置へ返しています。本文には設備が常時通電されているとは限らないとあり、電源断などによって接続できない状況が考えられます。30字以内では「設備とTCPコネクションが確立できない場合」と、通信アダプタと設備の間で接続が成立しないことを示します。

設問2(5)②

公式解答例の二つ目は、設備がNot Modifiedを応答した場合です。通信アダプタが条件付きGETを送っても、自身のキャッシュより新しい情報が設備になければ、設備は更新されていないことを応答します。その場合、通信アダプタはキャッシュ済みの情報Tfを利用します。Tfは中継装置の情報Teより新しいので、設備から新たな情報を得られなくても中継装置には新しい情報を返せます。30字以内では「設備がNot Modifiedを応答した場合」とします。

設問2(6)

公式解答例では、電源断などで設備との通信ができない場合に、受け取る稼働情報が古くなるとしています。例Ⅰの周期を長くすると、通信アダプタが事前にキャッシュを更新する機会が減ります。その後に設備と通信できなくなると、HTTPクライアントへの応答には以前のキャッシュが使われるため、情報の鮮度が下がります。40字以内では「電源断などで設備との通信ができない場合の稼働情報が古くなる。」と、影響が現れる条件も含めます。

設問3(1)

公式解答例では「か」は「通信アダプタ」です。着目点は、HTTPとCoAPを変換してもFWの設定を変更しないという条件です。図5では、通信アダプタは顧客側にあり、設備との間の通信を担当しています。ここで変換すれば、FWを通る区間は既存のHTTPのまま維持でき、通信アダプタと次世代設備の間をCoAPに変更できます。

設問3(2)

公式解答例では「IPヘッダとUDPヘッダ」です。本文はCoAPがUDP上で動作すると説明しています。図7はアプリケーション層のCoAPメッセージを示す図であり、そのメッセージをネットワークで運ぶためのUDPヘッダとIPヘッダも、IEEE 802.15.4フレームのデータ部に含まれます。20字以内では、その二つのヘッダ名を答えます。採点講評でも、この設問はTCP/IPの基本に関する設問として挙げられています。

設問3(3)①

公式解答例の一つ目は、TCPコネクションの確立と終了の手順が不要になることです。TCP上のHTTPでは、データの送受信に加えて接続の確立・終了に伴う通信が必要です。UDP上のCoAPへ変更すると、このTCP接続の手順に要する時間を省けるため、TATの向上に寄与します。30字以内では「TCPコネクションの確立と終了の手順が不要。」とまとめます。

設問3(3)②

公式解答例の二つ目は、CoAPの短いヘッダなどによってデータの格納効率が良いことです。本文には、CoAPの基本ヘッダが4バイトであることと、IEEE 802.15.4フレームのデータ部が短いことが示されています。限られたデータ部を効率良く利用でき、通信の負担を抑えることがTATの向上につながります。30字以内では「CoAPはヘッダが短く、データの格納効率が良い。」とします。

設問4(1)

公式解答例では「き」は「LB」です。本文の方針では、新業務サーバへの②の通信をLB経由で負荷分散するとしています。新業務サーバからの戻りの通信もLBを通るよう、デフォルトゲートウェイをLBにします。中継装置は負荷分散の対象ではなく、FWをデフォルトゲートウェイとするため、両者を別のVLANに収容する方針とも対応します。

設問4(2)

公式解答例の図では、内部L2SW-0をL2SW-20及びL2SW-30へ、内部L2SW-1をL2SW-21及びL2SW-31へ接続しています。追加する線はこの4本です。L2SW-20・21の組はFWとLBの間にあり、FWをゲートウェイとする中継装置のVLANを収容します。L2SW-30・31の組はLBのサーバ側にあり、LBをゲートウェイとする新業務サーバのVLANを収容します。二つの内部L2SWから必要な二つのセグメントへ接続することで、図8のNIC冗長化を生かした構成になります。

設問4(3)(ア)

公式解答例では「30」です。表1の収集対象設備数108、000台と収集周期3、600秒を使います。通信の起動タイミングが平準化されるので、毎秒のトランザクション数は108、000÷3、600=30です。ここでは試行される通信の発生数を求めるため、成功率80%は掛けません。また、本文の見積りと公式解答例では、この30を2台の新業務サーバ全体の発生率として扱っています。

設問4(3)(イ)

公式解答例では「72」です。成功する80%の通信は3秒、失敗する20%の通信はTout秒保持されるので、平均保持時間は0.8×3+0.2×Tout=2.4+0.2×Tout秒です。同時コネクション数は、毎秒の発生数に平均保持時間を掛け、30×(2.4+0.2×Tout)=72+6×Toutとなります。「イ」はこの定数項72です。

設問4(3)(ウ)

公式解答例では「6」です。同時コネクション数の式30×(2.4+0.2×Tout)を展開すると、Toutの係数は30×0.2=6です。通信できない場合でも、タイムアウトまでFWの接続管理情報が保持される点が負荷につながります。収集周期が3、600秒から300秒になると発生率が12倍になるので、平均同時コネクション数も12倍になります。

設問4(4)

公式解答例では、正常な通信に支障がない範囲でToutをなるべく小さくするとしています。通信できない設備への接続はタイムアウトまで保持されるため、Toutを短くすればFWが管理する同時コネクション数を減らせます。ただし、短すぎると正常な応答を待ち切れなくなるので、通信に必要な時間を確保する条件が欠かせません。30字以内では「正常な通信に支障がない範囲でなるべく小さくする。」とします。

設問4(5)

公式解答例では、後続がないリクエストにクローズ接続オプションを付与し、コネクションを切断するとしています。HTTP/1.1で接続を維持していても、その接続で送る次の要求がなければ、FWの管理情報を保持し続ける必要はありません。最後のリクエストにConnection: closeを指定し、応答後に切断します。30字以内では「後続がないリクエストに付与し、コネクションを切断する。」とまとめます。採点講評では、FWの論理資源節約という目的を理解することが求められています。

設問4(6)

公式解答例では、通信アダプタにFQDNを付与し、同一コネクションを使って複数設備の稼働情報を取得する方針を示しています。表1では、一つの通信アダプタに複数設備が接続されるとあります。URLの接続先を通信アダプタのFQDNにそろえ、設備とリソースをパス側で識別できる設計にすれば、配下の複数設備への要求を同じ接続でパイプライン化できます。50字以内では「通信アダプタにFQDNを付与し、同一接続で複数設備の稼働情報を取得する。」と、接続先の共通化と接続の共有を押さえます。

学習のポイント

図に沿ったIPアドレスの追跡、キャッシュの鮮度、プロトコルの階層、接続数の計算を重点的に学習します。採点講評で指摘された、TCP接続の解放によるFWの論理資源節約という目的も押さえます。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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