NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
平成27年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題


![図3 通常時のサーバへのアクセスに関するデータの流れ。FW正、LB正、Webサーバ1,2、空欄[い]、業務サーバ1,2が横に並ぶ。リクエストは①~④、レスポンスは⑤~⑧の番号付き矢印で機器間の流れを示す。注記で右向き矢印がリクエスト、左向き矢印がレスポンスと説明。](/figures/c45466766acb3d32120df4296a97d6b4c1be9eac12cb9cdb38be49516d158d47.webp)







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検討の前提と適用範囲をそろえる
技術的な仕組みを検討するときは、与えられた条件がどの範囲に適用されるかに注目しましょう。判断の対象と前提の範囲をそろえ、明示された条件と自分が補った想定を区別すると、考えを整理しやすくなります。
この問題で問われていること
この問題に取り組む際も、条件の適用範囲を一つの確認軸にしてください。ある対象についての前提を、別の対象にも無意識に広げていないかを確かめ、判断の根拠が与えられた範囲に収まるかを意識しましょう。
視点
前提の適用範囲とは、その条件を判断の根拠として使える対象や場面の範囲です。検討中に置いた想定についても、与えられた条件から言えることなのか、便宜的に補ったことなのかを分けて整理しましょう。
確認ポイント
- 判断の対象に適用される条件を確認したか
- 条件を明示された範囲より広げていないか
- 自分で補った想定を、与えられた前提と区別したか
正解と解説を見る
解説
空調設備のリモート保守を実現するため、LBのアドレス変換、HTTPプロキシとキャッシュ、CoAPへの変換、VLANと冗長接続を検討する問題です。通信量だけでなく、接続の保持時間がFWの同時コネクション数に与える影響を読み解くことが要点です。
問題の全体像
K社は、訪問による空調設備の保守に加え、設備の稼働情報を継続収集し、遠隔から参照・操作できるサービスを計画しています。既存ネットワークに通信アダプタ、中継装置、新業務サーバを追加する際の通信経路、キャッシュの動作、次世代設備への対応、LAN構成と負荷を検討します。公式の出題趣旨では、利用形態から必要な通信を導き、その実現方法と現行ネットワークへの影響をTCP/IPとHTTPの基本知識から考察する応用能力を問うとしています。
設問1(1)
公式解答例では「あ」は「送信元IP」です。着目点は、Webサーバと業務サーバが同一セグメントにあることです。LBが宛先だけを業務サーバの実IPアドレスへ変換すると、業務サーバはWebサーバへ直接応答でき、戻りの通信がLBを通らなくなります。送信元IPアドレスもLB側のアドレスへ変換することで、応答をLBへ戻し、往復のアドレス変換を成立させます。空欄の後に「アドレス」があるので、答案は「送信元IP」とします。
設問1(2)
公式解答例では「い」は「LB正」です。本文には、業務サーバへのアクセスもLBによって負荷分散されるとあります。そのため、図3のWebサーバから業務サーバへのリクエストは、途中でLBを通ります。FWとLBはActive-Standby方式であり、図3は通常時の通信を示しているので、稼働中の「LB正」が入ります。
設問1(3)
公式解答例では「①」です。②は、保守センタのPCなどから来たリクエストをLBがWebサーバへ転送したパケットです。この通信では宛先の仮想IPアドレスを実IPアドレスへ変換するので、送信元は①と②で同じです。一方、③はWebサーバが業務サーバへの処理依頼として送る別のリクエストであり、④ではさらに送信元IPアドレスも変換されます。応答側もサーバ又はLB側のアドレスが送信元になるため、該当する番号は①だけです。
設問1(4)
公式解答例では「⑥」です。②の宛先は、LBが振り分けたWebサーバの実IPアドレスです。Webサーバから業務サーバへの処理依頼に対する応答は、⑤でLBへ戻り、アドレス変換を経て⑥でWebサーバへ届きます。この⑥の宛先が②と同じになります。①の宛先はWebサーバ用の仮想IPアドレスなので、②の実IPアドレスとは異なります。
設問2(1)(う)
公式解答例では「う」は「中継装置」です。図5と図6で、中継装置はPCや新業務サーバからのリクエストを受け、対象設備へ向けて中継しています。設備へアクセスするクライアント側の代理として動作するので、フォワードプロキシとみなせます。通信経路のどちら側を代理する装置なのかに着目します。
設問2(1)(え)
公式解答例では「え」は「通信アダプタ」です。通信アダプタは顧客側に設置され、設備へ向かうリクエストを受けて、その配下の設備へ中継します。また、設備の稼働情報をキャッシュし、必要に応じてその情報を応答に利用します。設備というサーバ側の代理として動作する機器が通信アダプタです。
設問2(1)(お)
公式解答例では「お」は「リバース」です。通信アダプタは、設備へアクセスするクライアントから見て、設備側の窓口としてリクエストを受け付けます。このようにサーバ側を代理するものをリバースプロキシと呼びます。空欄の後に「プロキシ」が続くので、答案には「リバース」と記入します。
設問2(2)
公式解答例では、稼働情報の収集周期を容易に変更できる点を挙げています。本文では、収集周期をサービス開始時の1時間から、段階的に5分程度へ短縮する計画が示されています。取得のトリガがデータセンタ側にあれば、各設備の設定を変更せず、新業務サーバ側で周期を調整できます。25字以内の答案では「稼働情報の収集周期の変更が容易です。」と、変更対象と容易さを押さえます。
設問2(3)
公式解答例では「Tc」です。図6の例Ⅱでは、通信アダプタが「If-Modified-Since:Tb'」を付けて設備へ問い合わせ、設備から「Last-Modified:Tc」を含むレスポンスを受け取ります。本文の関係式はTb≦Tb'<Tcなので、取得した情報は通信アダプタの既存キャッシュより新しい情報です。更新後のタイムスタンプは、要求開始時刻Taではなく、取得した情報の更新時刻Tcになります。
設問2(4)
公式解答例では、通信アダプタの方が中継装置よりキャッシュの更新頻度が高く、情報が新しいことを理由としています。通信アダプタは例Ⅰの通信を1分間隔で独自に実行します。一方、中継装置のキャッシュは、新業務サーバなどからの取得要求を中継した際に更新されます。この違いから、両者の最新情報の時刻TbとTb'は一致しない場合が多くなります。35字以内では「通信アダプタの方がキャッシュ更新頻度が高く、新しいから。」とまとめられます。
設問2(5)①
公式解答例の一つ目は、設備とTCPコネクションを確立できない場合です。図6の例Ⅲでは、設備から新しい情報を取得できず、通信アダプタが保持する情報Tfを中継装置へ返しています。本文には設備が常時通電されているとは限らないとあり、電源断などによって接続できない状況が考えられます。30字以内では「設備とTCPコネクションが確立できない場合」と、通信アダプタと設備の間で接続が成立しないことを示します。
設問2(5)②
公式解答例の二つ目は、設備がNot Modifiedを応答した場合です。通信アダプタが条件付きGETを送っても、自身のキャッシュより新しい情報が設備になければ、設備は更新されていないことを応答します。その場合、通信アダプタはキャッシュ済みの情報Tfを利用します。Tfは中継装置の情報Teより新しいので、設備から新たな情報を得られなくても中継装置には新しい情報を返せます。30字以内では「設備がNot Modifiedを応答した場合」とします。
設問2(6)
公式解答例では、電源断などで設備との通信ができない場合に、受け取る稼働情報が古くなるとしています。例Ⅰの周期を長くすると、通信アダプタが事前にキャッシュを更新する機会が減ります。その後に設備と通信できなくなると、HTTPクライアントへの応答には以前のキャッシュが使われるため、情報の鮮度が下がります。40字以内では「電源断などで設備との通信ができない場合の稼働情報が古くなる。」と、影響が現れる条件も含めます。
設問3(1)
公式解答例では「か」は「通信アダプタ」です。着目点は、HTTPとCoAPを変換してもFWの設定を変更しないという条件です。図5では、通信アダプタは顧客側にあり、設備との間の通信を担当しています。ここで変換すれば、FWを通る区間は既存のHTTPのまま維持でき、通信アダプタと次世代設備の間をCoAPに変更できます。
設問3(2)
公式解答例では「IPヘッダとUDPヘッダ」です。本文はCoAPがUDP上で動作すると説明しています。図7はアプリケーション層のCoAPメッセージを示す図であり、そのメッセージをネットワークで運ぶためのUDPヘッダとIPヘッダも、IEEE 802.15.4フレームのデータ部に含まれます。20字以内では、その二つのヘッダ名を答えます。採点講評でも、この設問はTCP/IPの基本に関する設問として挙げられています。
設問3(3)①
公式解答例の一つ目は、TCPコネクションの確立と終了の手順が不要になることです。TCP上のHTTPでは、データの送受信に加えて接続の確立・終了に伴う通信が必要です。UDP上のCoAPへ変更すると、このTCP接続の手順に要する時間を省けるため、TATの向上に寄与します。30字以内では「TCPコネクションの確立と終了の手順が不要。」とまとめます。
設問3(3)②
公式解答例の二つ目は、CoAPの短いヘッダなどによってデータの格納効率が良いことです。本文には、CoAPの基本ヘッダが4バイトであることと、IEEE 802.15.4フレームのデータ部が短いことが示されています。限られたデータ部を効率良く利用でき、通信の負担を抑えることがTATの向上につながります。30字以内では「CoAPはヘッダが短く、データの格納効率が良い。」とします。
設問4(1)
公式解答例では「き」は「LB」です。本文の方針では、新業務サーバへの②の通信をLB経由で負荷分散するとしています。新業務サーバからの戻りの通信もLBを通るよう、デフォルトゲートウェイをLBにします。中継装置は負荷分散の対象ではなく、FWをデフォルトゲートウェイとするため、両者を別のVLANに収容する方針とも対応します。
設問4(2)
公式解答例の図では、内部L2SW-0をL2SW-20及びL2SW-30へ、内部L2SW-1をL2SW-21及びL2SW-31へ接続しています。追加する線はこの4本です。L2SW-20・21の組はFWとLBの間にあり、FWをゲートウェイとする中継装置のVLANを収容します。L2SW-30・31の組はLBのサーバ側にあり、LBをゲートウェイとする新業務サーバのVLANを収容します。二つの内部L2SWから必要な二つのセグメントへ接続することで、図8のNIC冗長化を生かした構成になります。
設問4(3)(ア)
公式解答例では「30」です。表1の収集対象設備数108、000台と収集周期3、600秒を使います。通信の起動タイミングが平準化されるので、毎秒のトランザクション数は108、000÷3、600=30です。ここでは試行される通信の発生数を求めるため、成功率80%は掛けません。また、本文の見積りと公式解答例では、この30を2台の新業務サーバ全体の発生率として扱っています。
設問4(3)(イ)
公式解答例では「72」です。成功する80%の通信は3秒、失敗する20%の通信はTout秒保持されるので、平均保持時間は0.8×3+0.2×Tout=2.4+0.2×Tout秒です。同時コネクション数は、毎秒の発生数に平均保持時間を掛け、30×(2.4+0.2×Tout)=72+6×Toutとなります。「イ」はこの定数項72です。
設問4(3)(ウ)
公式解答例では「6」です。同時コネクション数の式30×(2.4+0.2×Tout)を展開すると、Toutの係数は30×0.2=6です。通信できない場合でも、タイムアウトまでFWの接続管理情報が保持される点が負荷につながります。収集周期が3、600秒から300秒になると発生率が12倍になるので、平均同時コネクション数も12倍になります。
設問4(4)
公式解答例では、正常な通信に支障がない範囲でToutをなるべく小さくするとしています。通信できない設備への接続はタイムアウトまで保持されるため、Toutを短くすればFWが管理する同時コネクション数を減らせます。ただし、短すぎると正常な応答を待ち切れなくなるので、通信に必要な時間を確保する条件が欠かせません。30字以内では「正常な通信に支障がない範囲でなるべく小さくする。」とします。
設問4(5)
公式解答例では、後続がないリクエストにクローズ接続オプションを付与し、コネクションを切断するとしています。HTTP/1.1で接続を維持していても、その接続で送る次の要求がなければ、FWの管理情報を保持し続ける必要はありません。最後のリクエストにConnection: closeを指定し、応答後に切断します。30字以内では「後続がないリクエストに付与し、コネクションを切断する。」とまとめます。採点講評では、FWの論理資源節約という目的を理解することが求められています。
設問4(6)
公式解答例では、通信アダプタにFQDNを付与し、同一コネクションを使って複数設備の稼働情報を取得する方針を示しています。表1では、一つの通信アダプタに複数設備が接続されるとあります。URLの接続先を通信アダプタのFQDNにそろえ、設備とリソースをパス側で識別できる設計にすれば、配下の複数設備への要求を同じ接続でパイプライン化できます。50字以内では「通信アダプタにFQDNを付与し、同一接続で複数設備の稼働情報を取得する。」と、接続先の共通化と接続の共有を押さえます。
学習のポイント
図に沿ったIPアドレスの追跡、キャッシュの鮮度、プロトコルの階層、接続数の計算を重点的に学習します。採点講評で指摘された、TCP接続の解放によるFWの論理資源節約という目的も押さえます。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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