NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成27年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 サービス基盤の改善に関する次の記述を読んで、設問1~5に答えよ。 中規模のISPであるY社は、IPv4アドレス(以下、IPアドレスという)を使用したインターネット接続サービスとIaaS(Infrastructure as a Service)を提供している。現在のY社のネットワーク構成を図1に示す。 図1 現在のY社のネットワーク構成 Y社では、顧客の増加に伴い、二つの課題への対応が急務になっている。一つは、保有するグローバルIPアドレスが不足する事態が近づいていることから、対応策を確立することである。もう一つは、IaaS基盤のネットワーク(以下、基盤ネットワークという)を、顧客の増加に柔軟に対応できる構成に変更することである。 二つの課題への対応策は、ネットワーク技術部で立案することになり、ネットワーク技術部のT部長は、基盤構築グループのI主任とJ君に対応策の検討を指示した。そこで、I主任とJ君は、まず、グローバルIPアドレス不足への対応策を検討し、その後に、基盤ネットワークの改善策を検討することにした。検討作業はJ君が行い、検討結果をI主任が評価することにした。 〔グローバルIPアドレス不足への対応策の検討〕 グローバルIPアドレスの枯渇対策の中に、大規模NAT又はキャリアグレードNAT(以下、CGNという)と呼ばれる、ISP向けのソリューションがある。CGNを導入することによって、インターネット接続サービスで使用しているグローバルIPアドレスを削減でき、それをIaaSに振り向けることができる。CGNでは、アクセスネットワークにプライベートIPアドレスを割り当て、ISP網内でグローバルIPアドレスに変換する。CGNを実現する技術の中に、NAT444がある。NAT444には、顧客の宅内に設置された機器(以下、CPEという)に変更を加えずにCGNに移行できる利点がある。そこで、J君はNAT444について調査した。 〔NAT444の調査〕 現在、Y社の個人顧客向けのインターネット接続サービスでは、顧客に一つずつグローバルIPアドレスを割り当てている。これをISP Shared Address(以下、シェアードアドレスという)と呼ばれるIPアドレスに置き換え、複数の顧客間でグローバルIPアドレスを共用するのがNAT444である。NAT444では、IPアドレスとポート番号を対にした変換が2回行われる。NAT444の構成を図2に示す。 図2 NAT444の構成 図2に示したように、NAT444では、インターネットと顧客宅のLANとの間に、(あ)シェアードアドレスとして定義された、100.64.0.0/10のネットワークプレフィックスのネットワークを設ける。NAT444の“444”は、図2に示したように【a】種類のネットワークアドレスで運用されるネットワークを指し、各ネットワークの境界でNATを実行することで、グローバルIPアドレスを節約する。 NAT444を導入すると、一部のアプリケーションの動作に不具合が発生する危険性がある。その主因として想定されるのは、次に示す2点である。 (1) 1顧客が開設できるセッション数の制限 (2) 通信経路中のNAT介在 (1)は、一つのグローバルIPアドレスを複数の顧客で共用することによって発生する。CGNでは、【b】ビットで構成されているTCP/UDPポート番号を複数の顧客に分配するので、1顧客が使用できるポート数が少ない。例えば、CGN装置に設定する1顧客に割り当てるポート数が、実際に使うポート数よりも少ない場合、Webページの閲覧などで不具合が発生してしまう。そこで、仮に、1顧客に割り当てるポート数を10、000に設定したとすると、インターネット接続サービスで使用するグローバルIPアドレスを約1/6に削減できる。 (2)は、NAT444を導入することで発生する。NATが介在すると、例えば、次のようなアプリケーションで不具合が発生する。 ・FTPの【c】モードのように、インターネット上のサーバからクライアントが指定したポートに対してTCPコネクションの確立を試みるアプリケーション ・SIPのように、送信先となる機器のIPアドレスをパケットのデータ部に埋め込んで指定するアプリケーション ただし、NATが介在しても、CGN装置、利用するアプリケーションの実装などで、不具合は回避できる可能性がある。今後、その可能性について、より詳細な調査を行うとともに、評価試験も併せて行うことにする。 その他にも、NATが介在すると、顧客がIPsecを利用している場合に問題が発生する危険性がある。J君は、IPsecを利用する顧客への対応策について検討した。 〔IPsecを利用する顧客への対応策〕 NAT機器を経由した通常のIPsecの通信は、AH、ESP及びIKEプロトコルで問題が発生する。NAT機器を経由したIPsec通信で発生する問題を、表1に示す。 表1 NAT機器を経由したIPsec通信で発生する問題 表1の問題を解決する手段として、ESPプロトコルに対してIPsec NATトラバーサルが規格化された。IPsec NATトラバーサルは、ESPパケットをUDPでカプセル化することによって、NAT機器によるIPアドレスとポート番号の変換を可能にしている。IPsec NATトラバーサルのパケット構成を、図3に示す。 図3 IPsec NATトラバーサルのパケット構成 UDPによるカプセル化は、IKEで次のように自動的に決定される。 ・IKEは、IPsecを使用する機器間でISAKMPメッセージを送受する際に、経路上にNAT機器が存在するかどうか検査する。 ・NAT機器を検出した場合、ISAKMPメッセージの送信元ポート番号及び宛先ポート番号を500から4500に変更して、NATトラバーサルを使用することを通知する。このとき、NATが行われると送信元ポート番号が変換されるので、(え)IPsecを使用する機器の、受信パケットに対するフィルタリング設定を変更する必要がある。 J君は、これまでの調査で、CGNの導入には今後解決すべき問題が残されているが、CGNの導入によって、グローバルIPアドレスを節約できることが分かったので、調査結果をI主任に説明した。I主任は、J君の考えが適切であると判断し、調査結果を基にCGNの導入案をまとめて、T部長に報告することを提案した。 次に、J君は、基盤ネットワークの改善策の検討に取り掛かった。 〔基盤ネットワークの課題とその対応〕 基盤ネットワークでは、通信路を顧客ごとに論理的に分離するために、顧客が利用する仮想サーバ(以下、VMという)にVLANを設定している。IEEE 802.1Qで規定されたVLAN数の制限は、4、094である。各顧客に異なる複数のVLAN IDを割り当てるので、顧客の増加に伴ってVLAN数が不足する可能性があった。そこで、基盤ネットワークでは、レイヤ3ネットワークによって物理サーバが属するサブネットを分けている。課題は、このような構成でVMが他の物理サーバに移動した後も、移動後のVMとの通信を可能にしたいというものである。 対応策として、J君は、レイヤ3のネットワーク上にレイヤ2のネットワークを構成できる、オーバレイネットワークが有効ではないかと考えた。VMで、マルチキャスト通信を利用してオーバレイネットワークを実現する技術として、RFC 7348で提案されたVXLAN(Virtual eXtensible Local Area Network)がある。VXLANは、サーバ仮想化機構に実装されているので導入しやすい。そこで、J君はまず、マルチキャスト通信について調査した。 〔マルチキャスト通信の調査〕 マルチキャスト通信は、特定の複数ノードに対して、一つのデータを同時に送信する通信方式である。マルチキャスト通信例を図4に示す。 図4 マルチキャスト通信例 図4の例では、PCbをビデオサーバから送信される画像データの受信者とする。 マルチキャスト通信では、データを受け取りたいPCを、マルチキャストIPアドレスでグループ化する。マルチキャストIPアドレスは、クラス【d】のIPアドレスである。(お)通常、L2SWは、受信したマルチキャストフレームを、受信ポート以外の全てのポートにフラッディングするので、PCaとPCbにマルチキャストフレームが届く。ただし、PCaは、当該マルチキャストグループに参加していないので、受信しない。 マルチキャストIPアドレスが設定されたPCでは、当該マルチキャストIPアドレスを基に生成される【e】宛てのフレームを受信するように、NIC(Network Interface Card)が動作する。 マルチキャストグループが存在するサブネットの情報は、ルータ間で行われるIPマルチキャストルーティングプロトコルによって伝達され、各ルータでマルチキャスト経路表が生成される。PCが、あるマルチキャストグループに所属したり、離脱したりするのに、IGMP(Internet Group Management Protocol)が使用される。 ビデオサーバからマルチキャストグループ224.1.1.1宛ての画像データが配信されているときの、IGMPの通信例を図5に示す。 図5 IGMPの通信例 図5の例では、IGMPが使用されるのは、PCとルータ1間である。(か)ビデオサーバとルータ2間では、IGMPは使用されない。PCが、あるマルチキャストグループに参加するときは、IGMP joinメッセージによって、所属するサブネットのルータに対し、参加するマルチキャストグループを知らせる。逆に、PCが、参加しているマルチキャストグループから離脱するときは、所属するサブネットの全てのルータ宛てに、IGMP leaveメッセージを送信する。 ルータ1は、IGMP joinメッセージを受信することによって、配下のサブネットにマルチキャストグループ224.1.1.1が存在するのを知り、ビデオサーバから受信した224.1.1.1宛てのパケットをL2SWに送信する。L2SWは、図4に示したように、受信したフレームを、受信ポート以外の全てのポートにフラッディングするので、どのPCにも224.1.1.1宛てのパケットが届く。しかし、L2SWが、図5中の①と②のフレームを受信した段階では、PC2は224.1.1.1に所属していないので、L2SWのp2からのマルチキャストフレームの転送は不要である。L2SWに実装されるIGMPスヌーピングによって、マルチキャストフレームを必要なポートだけに転送させることができる。IGMPスヌーピングとは、IGMPメッセージの中身をのぞき見することをいい、IGMPスヌーピング機能をもったL2SWは、IGMPメッセージの情報を基にMACアドレステーブルを更新する。J君が調査したL2SWでは、IGMP joinやIGMP leaveメッセージなどから、指定されたマルチキャストグループが存在するポートを知り、自分のMACアドレステーブルにマルチキャストエントリを作成する。通常、MACアドレステーブルには、複数のポートに同じMACアドレスが存在することはないが、マルチキャストMACアドレスは例外である。 図5中のL2SWでIGMPスヌーピング機能を働かせたとき、L2SWに作成されるMACアドレステーブルを、表2に示す。 表2 L2SWに作成されるMACアドレステーブル J君は、マルチキャスト通信の調査を終え、次にVXLANの導入について検討した。 〔VXLANの導入検討〕 VXLANは、カプセル化によってオーバレイネットワークを実現する技術である。VXLANのフレーム構成を図6に示す。 図6 VXLANのフレーム構成 VXLANでは、図6に示した4種類のヘッダを付加して元のイーサネットフレームをカプセル化し、IPネットワーク上で転送する。VXLANヘッダには、VXLANネットワーク識別子である24ビットのVNI(VXLAN Network Identifier)があり、VNIごとにVXLANセグメントが構成される。VXLANセグメントによって通信路が論理的に分離されるので、(き)VXLANを導入すれば、VLAN数の制限を緩和できる。 VXLANは、トンネルの終端ポイントであるVTEP(VXLAN Tunnel End Point)で元のイーサネットフレームにカプセル化を実施又は解除して、VTEP間でトンネルを構成する。レイヤ3のネットワーク上に構成されるオーバレイネットワークでは、UDPを使ったマルチキャスト通信に対する応答によって通信先のVTEPが特定され、VM間でのデータリンク層の通信を可能にする。VNIはVMのMACアドレスとひも付けされ、同じ値のVNIのVXLANセグメントに属するVM同士は、VMが同一サブネットの他の物理サーバや、異なるサブネットの物理サーバに移動しても、移動前と同じ通信手順でVM間の通信を継続できる。VTEPは、サーバ仮想化機構の仮想スイッチやVXLANゲートウェイに実装されている。 J君は、VXLANをY社の基盤ネットワークに導入したときの動作について検討した。Y社の基盤ネットワークへのVXLAN導入構成案を、図7に示す。図7では、物理サーバ1に存在していたVM3が、物理サーバ2に移動した状態を示している。 図7 基盤ネットワークへのVXLAN導入構成案(抜粋) J君は、図7の構成でVXLANを導入したときのVM2とVM3間の通信方法について考え、VM3が物理サーバ2に移動したときの、VM2とVM3間の通信手順を、図8にまとめた。 (i)VM2は、VM3のMACアドレスを取得するために、ARP要求を送信する。 (ii)ARP要求を受信したVTEP1は、図6のカプセル化を行い、VXLANフレームを送信する。 (iii)VTEP1が送信したフレームは、L3SWで経路制御され、VTEP2に届く。 (iv)VTEP2は、VM3が物理サーバ2に移動してきていることを認めると、カプセル化を解除してARP要求をVM3宛てに転送する。 (v)VM3は、受信したARP要求に対して、ARP応答を送信する。 (vi)ARP応答を受信したVTEP2は、図6のカプセル化を行い、VXLANフレームを送信する。 (vii)VTEP2が送信したフレームは、L3SWで経路制御され、VTEP1に届く。 (viii)VTEP1は、VM2が物理サーバ1に存在することを認めると、カプセル化を解除してARP応答をVM2宛てに転送する。 (ix)VM2は、VM3のMACアドレスを取得したので、VM3宛ての通信を行う。 (以下、省略) 図8 VM2とVM3間の通信手順 J君は、広域イーサ網を介した顧客のPCとVM3間でも、移動後のVM3との通信は正常に行えることを確認した。基盤ネットワークにVXLANを導入することによって、顧客の増加に対応できる見通しが立ったので、検討結果をI主任に説明した。I主任は、VXLANの導入が効果的な改善策であると判断した。 I主任とJ君は検討結果を基に、グローバルIPアドレスの不足への対応策と基盤ネットワークの改善策及び今後の進め方をまとめ、T部長に報告した。 設問1 本文中の【a】~【e】に入れる適切な字句又は数値を答えよ。 設問2 〔NAT444の調査〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線(あ)について、シェアードアドレスではなく、プライベートIPアドレスを用いたときに、インターネットアクセスができなくなる不具合が発生する可能性がある。どのような場合に発生するかを、図2中の機器名称を用いて、50字以内で述べよ。 (2) 顧客宅のPCがインターネット上のWebサーバにアクセスしたとき、PCを特定するのにWebサーバがログとして記録する必要がある情報を三つ挙げ、それぞれ10字以内で答えよ。 設問3 〔IPsecを利用する顧客への対応策〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 表1中の下線(い)の認証エラーが発生する理由を、認証対象に着目して、60字以内で述べよ。 (2) 表1中の下線(う)のESPにおいてポート変換が行えない理由を、50字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線(え)で必要とする変更を、50字以内で具体的に述べよ。 設問4 〔マルチキャスト通信の調査〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線(お)について、フラッディングされるのはマルチキャストMACアドレスが学習されないからである。その理由を、40字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(か)について、IGMPが使用されない理由を、図5の通信内容に着目して、35字以内で述べよ。 (3) 表2中の【ア】に入れる適切なマルチキャストMACアドレスを答えよ。また、【イ】は、図5中の①~③のフレームを受信した順に遷移する。①を受信したとき、②を受信したとき、及び③を受信したときのポートIDを、それぞれ答えよ。ここで、表2は、PC1、PC2、PC3がマルチキャストグループに参加していない状態から、図5中の①~③のフレームを受信して作成されるものとする。 設問5 〔VXLANの導入検討〕について、(1)~(4)に答えよ。 (1) 本文中の下線(き)について、VLAN数の制限が緩和される理由を、25字以内で述べよ。 (2) 図8中の(ii)におけるVXLANの通信は、マルチキャストで行われる。ユニキャストで行われない理由を、20字以内で述べよ。また、(ii)のVXLANフレームの宛先IPアドレスと送信元IPアドレスをそれぞれ答えよ。 (3) 図8中の(iii)で送信されるマルチキャストパケットがVTEP2に届くのは、VM3が移動してきたことをVTEP2が知ったとき、VTEP2によって行われる通信の結果である。その通信について、宛先と送信されるパケットの内容を、60字以内で述べよ。 (4) 図8中の(vi)におけるVXLANの通信は、ユニキャストで行われる。仮に、VTEP間の通信が全てマルチキャストで行われる場合を想定したとき、物理サーバ、VM及びL3SWの数が多いネットワークの場合に顕在化する問題について、60字以内で述べよ。また、(vi)のVXLANフレームの宛先IPアドレスと送信元IPアドレスをそれぞれ答えよ。
図1 現在のY社のネットワーク構成。インターネット、Y社ネットワーク、データセンタ、IaaS基盤、顧客及び広域イーサ網の接続構成を示す図。
図1 現在のY社のネットワーク構成。インターネット、Y社ネットワーク、データセンタ、IaaS基盤、顧客及び広域イーサ網の接続構成を示す図。
図2 NAT444の構成。インターネット、ISP網内のCGN装置、顧客宅のCPE及びPC間で二段階のNATを行う構成図。
図2 NAT444の構成。インターネット、ISP網内のCGN装置、顧客宅のCPE及びPC間で二段階のNATを行う構成図。
表1 NAT機器を経由したIPsec通信で発生する問題。AH、ESP、IKEの各プロトコルについて、NAT機器経由時に発生する問題を整理した表。
表1 NAT機器を経由したIPsec通信で発生する問題。AH、ESP、IKEの各プロトコルについて、NAT機器経由時に発生する問題を整理した表。
図3 IPsec NATトラバーサルのパケット構成。ESPのトランスポートモード及びトンネルモードで、IPヘッダやUDPヘッダを追加する構成図。
図3 IPsec NATトラバーサルのパケット構成。ESPのトランスポートモード及びトンネルモードで、IPヘッダやUDPヘッダを追加する構成図。
図4 マルチキャスト通信例。ビデオサーバからルータ、L2スイッチを経て、マルチキャストグループの受信者PCへ配信する例。
図4 マルチキャスト通信例。ビデオサーバからルータ、L2スイッチを経て、マルチキャストグループの受信者PCへ配信する例。
図5 IGMPの通信例。PC1~PC3、L2SW、ルータ及びビデオサーバ間でIGMP join・leaveとマルチキャスト通信を行う例。
図5 IGMPの通信例。PC1~PC3、L2SW、ルータ及びビデオサーバ間でIGMP join・leaveとマルチキャスト通信を行う例。
表2 L2SWに作成されるMACアドレステーブル。IGMPスヌーピングによって学習されるマルチキャストMACアドレスとポートIDの表。
表2 L2SWに作成されるMACアドレステーブル。IGMPスヌーピングによって学習されるマルチキャストMACアドレスとポートIDの表。
図6 VXLANのフレーム構成。外部イーサネット、IP、UDP、VXLANの各ヘッダで元のイーサネットフレームをカプセル化する構成図。
図6 VXLANのフレーム構成。外部イーサネット、IP、UDP、VXLANの各ヘッダで元のイーサネットフレームをカプセル化する構成図。
図7 基盤ネットワークへのVXLAN導入構成案(抜粋)。物理サーバ1・2、仮想スイッチ、VTEP、L3SW及びVXLANゲートウェイの接続とVM移動を示す構成図。
図7 基盤ネットワークへのVXLAN導入構成案(抜粋)。物理サーバ1・2、仮想スイッチ、VTEP、L3SW及びVXLANゲートウェイの接続とVM移動を示す構成図。
図8 VM2とVM3間の通信手順。VM3の移動後に、VM2がARP要求を送り、VTEP間のVXLAN通信でARP応答を受ける手順。
図8 VM2とVM3間の通信手順。VM3の移動後に、VM2がARP要求を送り、VTEP間のVXLAN通信でARP応答を受ける手順。
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条件の適用範囲をそろえて考える

この分野を考えるときは、記述された条件がどの範囲に当てはまるのかを意識しましょう。ある条件の下で述べられた内容を、別の範囲にもそのまま当てはめていないか確認すると、考える土台を整理できます。

この問題で問われていること

検討の中心を、条件とその適用範囲の対応に置いてみてください。用語から内容を補う前に、与えられた情報のどこまでが明示されているかを押さえ、書かれている範囲と自分が広げた解釈を分けて考えましょう。

視点

検討中の内容と、それを支える条件を結び付けて整理します。条件の適用範囲が明示されている部分と、まだ判断を保留する部分を区別しておくと、解釈を必要以上に広げずに考えられます。

確認ポイント

  • 条件が当てはまる範囲を把握しているか
  • 明示された範囲と自分の推測を分けているか
  • その範囲を越えて内容を一般化していないか
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解説

本問は、ISPのIPv4アドレス不足とIaaS基盤の拡張に対し、NAT444とVXLANを適用する問題です。NATによる通信への影響、マルチキャストの参加管理、VTEP間の通信を、問題文と図表から説明することが要点です。

問題の全体像

Y社は、顧客増加に伴うグローバルIPv4アドレスの不足と、IaaS基盤のVLAN数の制限及びVM移動への対応という課題を抱えています。前半ではNAT444によるアドレス節約とアプリケーション・IPsecへの影響を、後半ではマルチキャスト通信を踏まえたVXLANの導入を検討します。公式の出題趣旨では、本文で説明された技術の仕組みや動作を理解し、実務に適用できるかを問うとされています。基本的な通信原理を図表の具体的な構成に当てはめることが重要です。

設問1(a)

図2にある、顧客宅のプライベートIPアドレス、CPEとCGN装置間のシェアードアドレス、インターネット側のグローバルIPアドレスに着目します。三つのアドレス領域の境界で、CPEとCGN装置がそれぞれNATを実行します。公式解答例では「3」です。NATの実行回数である2と、アドレス領域の数である3を区別します。

設問1(b)

本文では、TCP/UDPポート番号を複数の顧客に分配することで、1顧客が使用できるポート数が制限されると説明しています。公式解答例では、ポート番号のビット数は「16」です。16ビットで表現できる値は65、536通りなので、1顧客に10、000ポートを割り当てるという本文の条件では、一つのグローバルIPアドレスを約6顧客で共有する説明につながります。

設問1(c)

「サーバからクライアントが指定したポートに対してTCPコネクションの確立を試みる」という通信方向に着目します。公式解答例では「アクティブ」です。FTPのアクティブモードでは、データ転送用の接続をサーバ側から開始するため、NATが介在する環境で問題になり得ます。採点講評でも、この空欄は正答率が低く、FTPのモードを理解してほしいとされています。

設問1(d)

空欄はIPv4のマルチキャストIPアドレスのクラスを問うものです。図4及び図5では、マルチキャストグループとして224.1.1.1を使用しています。公式解答例では「D」です。本文の「クラス」に続けて答えるため、答案にはDを記入します。

設問1(e)

本文は、マルチキャストIPアドレスから生成される宛先アドレスを使って、NICがフレームを受信する動作を説明しています。図4では、宛先IPアドレス224.1.1.1に対応する宛先MACアドレスが01-00-5e-01-01-01となっています。公式解答例では「マルチキャストMACアドレス」です。IPパケットの宛先と、イーサネットフレームの宛先を区別して読み取ります。

設問2(1)

図2のCPEを挟む二つのネットワークに着目します。CPEとCGN装置間にもプライベートIPアドレスを使うと、顧客宅のPCが属するネットワークとアドレス範囲が重複する可能性があります。公式解答例では、このネットワークアドレスの重複を挙げています。50字以内の答案例は「PCのネットワークアドレスと、CPEとCGN装置間のネットワークアドレスが重なった場合。」です。指定された機器名称を使い、どの二つの領域が重なるかを明確にします。

設問2(2)

複数の顧客がグローバルIPアドレスを共有し、IPアドレスとポート番号の対が変換されるという本文に着目します。公式解答例では「送信元IPアドレス」「送信元ポート番号」「アクセス時刻」の三つです。Webサーバが記録する送信元IPアドレスとポート番号は、NAT変換後にサーバ側で観測される値です。顧客宅のNAT変換前の値を記録するという意味ではありません。共有IPアドレスだけでは通信元を区別できず、ポート番号と、その値が使われた時刻も必要になります。三つの語句はそれぞれ10字以内です。

設問3(1)

表1のAHの認証エラーについて、NATによって変更されるIPアドレスが認証対象に含まれる点に着目します。公式解答例では、IPヘッダが認証対象なので、IPアドレスの書換えによって認証データと計算値が一致しなくなると説明しています。60字以内の答案例は「IPヘッダが認証対象であり、NATによるIPアドレス変更で認証データが計算値と一致しなくなるから。」です。認証対象、変更される情報、不一致という因果関係を示します。

設問3(2)

図3のESPの暗号化範囲に着目すると、トランスポートモードとトンネルモードのどちらでもTCP/UDPヘッダが暗号化されています。公式解答例では、ポート番号が暗号化されて分からないこと、又はESPヘッダ自体にポート番号が存在しないことを理由として示しています。50字以内の答案例は「TCP又はUDPヘッダが暗号化され、ポート番号が分からないから。」です。UDPでカプセル化するNATトラバーサルでは、外側に変換可能なポート番号を持つUDPヘッダを付加します。

設問3(3)

本文の、ISAKMPのポート番号を500から4500に変更し、その後NATによって送信元ポート番号が変換されるという記述に着目します。受信側が送信元ポート番号を500又は4500に限定すると、変換されたメッセージを受信できません。公式解答例では、それ以外の送信元ポート番号も受信できる設定にするとしています。50字以内の答案例は「送信元ポート番号が500、4500以外のISAKMPメッセージも受信できるようにする。」です。変更対象は送信元ポート番号に対する受信条件です。

設問4(1)

図4では、宛先MACアドレスはマルチキャストですが、送信元MACアドレスはVSMAC又はRT1MACです。L2SWの通常のMACアドレス学習は、受信フレームの送信元MACアドレスを基に行われます。公式解答例では、マルチキャストMACアドレスは送信元アドレスにならないためとしています。40字以内の答案例は「マルチキャストMACアドレスが送信元アドレスにならないから。」です。採点講評でも、送信元はユニキャストであり、スイッチは送信元MACアドレスを学習する点が強調されています。

設問4(2)

図5では、ビデオサーバは画像データをマルチキャストで送信する側です。一方、受信するグループへの参加・離脱を通知するのはPCであり、PCがIGMP join又はleaveメッセージを所属サブネットのルータへ送信します。ルータ1はその通知を受信します。公式解答例では、ビデオサーバが送信する側であることを理由としています。35字以内の答案例は「ビデオサーバはマルチキャストパケットを送信する側だから。」です。図5の役割に即して説明します。

設問4(3)(ア)

表2の空欄は、IGMPスヌーピングによって作成するグループ224.1.1.1のマルチキャストエントリです。図5の①と②では、このグループへのjoinメッセージの宛先MACアドレスが01-00-5e-01-01-01と示されています。公式解答例も「01-00-5e-01-01-01」です。③のleaveメッセージの宛先01-00-5e-00-00-02はルータへの通知に使うアドレスなので、対象グループのエントリと区別します。

設問4(3)(イ)

初期状態では、どのPCも対象グループに参加していません。図5の①はp1に接続されたPC1のjoinなので、登録されるポートはp1です。②はp3に接続されたPC3のjoinなので、p1とp3になります。③はPC1のleaveなのでp1が除かれ、p3だけが残ります。公式解答例では、①受信後「p1」、②受信後「p1、p3」、③受信後「p3」です。送信元MACアドレスの通常の学習と、IGMPの内容に基づくグループ参加ポートの更新を区別します。

設問5(1)

本文の「24ビットのVNI」と「VNIごとにVXLANセグメントが構成される」という記述に着目します。公式解答例では、2^24のVXLANセグメントを構成できること、又は膨大な数の論理セグメントを構成できることを理由としています。25字以内の答案例は「膨大な数の論理セグメントを構成できるから。」です。顧客の通信路を分離する識別子として、VLAN IDより多数の値を表現できる点が要点です。

設問5(2)

図8の(ii)は、VM3のMACアドレスを取得するARP要求を転送する段階です。通信先VMが存在する場所がまだ不明なので、送り先のVTEPをユニキャストで指定できません。公式解答例に沿う20字以内の理由は「宛先VMの存在場所が不明だから。」です。図7ではVM2とVM3はVNI5002に属し、対応するグループは224.1.1.2です。外側の宛先IPアドレスは「224.1.1.2」、送信元IPアドレスは送信するVTEP1の「10.0.0.254」です。

設問5(3)

VM3が移動すると、VTEP2はVM3が属するVNI5002に対応したマルチキャストグループ224.1.1.2のパケットを受け取る必要があります。図7でVTEP2の接続先はL3SW2です。公式解答例では、L3SW2にグループ224.1.1.2のIGMP joinメッセージを送信するとしています。60字以内の答案例は「L3SW2に、グループ224.1.1.2のIGMP joinメッセージを送信する。」です。通知先、参加するグループ、メッセージの種類を明記します。

設問5(4)

全てのVTEP間通信をマルチキャストにすると、通信を必要としない箇所にもパケットが転送され、規模が大きいほど転送負荷が問題になります。公式解答例では、不要なマルチキャストパケットによってL3SWやネットワークの負荷が高まるとしています。60字以内の答案例は「不要なマルチキャストパケットの転送により、L3SWやネットワークの負荷が高まる。」です。(vi)のARP応答はVTEP2からVTEP1へユニキャストで返すため、外側の宛先IPアドレスは「10.0.0.254」、送信元IPアドレスは「10.10.0.254」です。

学習のポイント

NAT後に観測される通信情報、IPsecの認証・暗号化範囲、MACアドレス学習、IGMPの通知方向、VXLANの外側IPアドレスを重点的に学習します。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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