NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成26年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 標的型メール攻撃の対策に関する次の記述を読んで,設問1~5に答えよ。 Y社は,産業機械の製造会社であり,本社の他に,工場と3か所の営業所がある。Y社の先進的な技術によって製造された製品は,顧客から高い評価を受けている。この優位性を維持するために,Y社ではこれまで,知財情報,個人情報などの安全な管理に注力してきた。 Y社では,製品の設計,開発及び外注先・顧客との情報交換に,電子メール(以下,メールという)を活用している。Y社のネットワークシステム構成を,図1に示す。 図1 Y社のネットワークシステム構成 全社(本社,工場及び営業所)のネットワーク,サーバ及びPCのメンテナンスは,管理セグメントの管理PCを使用して行われている。各営業所には,当該営業所の営業所員が使用するPCとファイルサーバが設置されている。管理PCを含む全社で使用されているPC(以下,全社のPCという)からインターネット上のWebサーバ,FTPサーバへのアクセスは,プロキシサーバを介してだけ可能である。本社と工場にはメールサーバが設置され,本社社員と営業所員は本社メールサーバで,工場社員は工場メールサーバで,メールの送受信を行っている。 メールの転送経路を,表1に示す。 表1 メールの転送経路 最近,特定の企業,官公庁などを標的にして,その組織が保有する知財情報,個人情報などの重要な情報を窃取又は破壊する,標的型メール攻撃が増加してきた。この状況に対応するために,Y社では,標的型メール攻撃の対策を行うことにした。そこで,情報システム部のM部長は,セキュリティ担当のS主任とネットワーク担当のN主任に,対策案の検討を指示した。 S主任とN主任は,対策案の検討に先立ち,今後の進め方について打合せを行った。そのときの会話の一部を,次に示す。 S主任:標的型メール攻撃に対しては,マルウェアの侵入を防ぐ入口対策だけではなく,社内のLANに侵入したマルウェアの活動を抑えたり,活動を発見しやすくしたりする対策(以下,出口対策という)も必要になっているようだ。N主任には,ネットワークでの入口対策と出口対策を検討してもらって,私は,サーバとPCに必要なマルウェア対策と運用規程を見直すことにする。 N主任:了解した。検討後に対策案を持ち寄って,実施する対策について話し合おう。 N主任は,S主任との打合せの後,部下のJ君に,標的型メール攻撃の手法の調査と対策案の検討を指示した。 〔標的型メール攻撃の手法と対策案〕 J君は,標的型メール攻撃の手法の調査と対策案の検討を行った。 標的型メール攻撃の多くは,ソーシャルエンジニアリング手法で収集した攻撃対象者の情報を基に,(ア)攻撃対象者と関係がありそうな組織,機関及び実在の人物を装ったメールを送り付けてくる手法をとる。送り付けられたメールには,悪意のあるコード,マルウェアが埋め込まれたファイルが添付されていたり,マルウェアが仕込まれたWebサイトへのリンク先を示す[a]が本文に記載されていたりする。 社内に侵入したマルウェアは,インターネット上の攻撃者のサーバとの通信路となるバックドアを開設して,攻撃基盤を構築することが多い。HTMLで作成されたコンテンツの送受信用プロトコルである[b]によってバックドアの通信が行われた場合,業務での通信との区別が困難である。マルウェアは,攻撃基盤を構築した後,システム内部への侵入を行い,拡散,重要情報の窃取,破壊などを行う。 SMTPでは,送信者が,自分自身のメールアドレスを容易に詐称することができる。しかし,送信元のMTA又はMUAが稼働するサーバ又はPCに設定されている[c]を書き換えることは困難である。そこで,(イ)ドメインを比較するだけでも,送信者のメールアドレスが詐称されているかどうかが,ある程度判別できる。 標的型メール攻撃の入口対策の一つとして,送信者のなりすましを検知する目的で開発された,送信ドメイン認証がある。送信ドメイン認証には,幾つかの手法があり,その中で,SPF(Sender Policy Framework)は,既存のネットワークシステムにも導入しやすい点が評価され,普及が進んでいる。 SPFでは,受信者が送信者のなりすましを検証するために,送信者のDNSの資源レコードにSPFレコードが追加されている必要がある。Y社でSPFを導入するときは,DMZの社外向けDNSサーバに,(ウ)メール中継サーバのIPアドレスを記述したSPFレコードを追加することになる。 SPFによる認証処理の概要を,図2に示す。 〔SPFによる送信者のドメイン認証手順〕 ① メールが,メールサーバ2からメールサーバ1に転送される。 ② メールサーバ1は,エンベロープ中のメールアドレスを基に,DNSサーバにSPFレコードを問い合わせる。 ③ DNSサーバから,SPFレコードが回答される。 ④ メールサーバ1は,SPFレコードに登録されたメールサーバのIPアドレスを基に,受信したメールの正当性を検査する。不正なメールと判断したときには,受信したメールを廃棄又は隔離することができる。 図2 SPFによる認証処理の概要 J君は,標的型メール攻撃の入口対策として,SPFを導入することを考えた。 SPFを導入しても,マルウェアの社内への侵入を完全に阻止することはできない。そこで,攻撃基盤の構築を困難にしたり,バックドアの通信を発見しやすくしたりする出口対策が重要になる。 J君は,ネットワークにおける出口対策には,プロキシサーバでの対策と社内のLANでの対策が有効と考えた。プロキシサーバでの対策として,既設のプロキシサーバを,認証機能と,HTTPSで暗号化されたデータを復号する機能とをもつ機種に交換する。認証機能によって,マルウェアによるプロキシサーバ経由の通信を困難にさせるだけでなく,取得できるログの情報が増える。復号機能によって,SSL/TLS(以下,SSLという)通信でも,受信したデータ中に不適切な言葉や文字列などが含まれていたとき,その通信を遮断する[d]や,Webサーバからダウンロードされるファイルに対するウイルスチェックなどの,セキュリティ対策が行えるようになる。 社内のLANでの対策としては,図1中のL3SW1にパケットフィルタリングを設定して,業務に不要な通信を遮断する。 J君は,これらの検討結果をN主任に報告した。そのときのN主任とJ君の会話の一部を,次に示す。 N主任:SPFは入口対策として,容易に導入できそうだな。 J君:はい。機器の交換とか,新たな機器の導入は必要ありません。 N主任:出口対策も効果がありそうだ。しかし,プロキシサーバがSSLを終端できると中間者攻撃が可能になってしまうので,復号機能の実現方法を調べてくれないか。パケットフィルタリングについては,具体的に検討してみなさい。 J君:分かりました。早速,調査・検討してみます。 〔プロキシサーバの復号機能の実現方法〕 まず,J君は,プロキシサーバの復号機能の実現方法について調査した。 PCは,Webサーバとの間でSSL通信を行うときには,プロキシサーバ宛てにconnect要求を送信する。復号機能をもたない既設のプロキシサーバの場合,受信したconnect要求に含まれる接続先サーバとの間で,指定された宛先ポート番号に対してTCPコネクションを確立する。その後,プロキシサーバはPCにconnect応答を送信して,それ以降に受信したTCPデータをそのまま接続先に転送する,[e]処理の準備が整ったことを知らせる。 復号機能をもつプロキシサーバの場合,PCからのconnect要求を受信した後の動作は,次のようになる。 復号機能をもつプロキシサーバの動作手順の概要を,図3に示す。 図3 復号機能をもつプロキシサーバの動作手順の概要 図3に示したように,PCからのconnect要求を受信したプロキシサーバは,まず,①~③の手順でWebサーバとの間でSSLセッションを開設し,更にPCとの間でも,④~⑥の手順でSSLセッションを開設する。このとき,⑤で,プロキシサーバは,サブジェクト(Subject)に含まれるコモン名(CN:Common Name)に,サーバ証明書1と同じ情報をもたせたサーバ証明書2を生成して,PC宛てに送信する。PCはサーバ証明書2を検証し,認証できたときに⑥が行われ,SSLセッションが開設される。ここで,PCがサーバ証明書2を正当なものと判断してプロキシサーバを認証するためには,PCに,(エ)サーバ証明書2を検証するのに必要な情報を保有させる必要がある。 なお,仮に,図3中の⑤で,プロキシサーバがWebサーバから取得したサーバ証明書1をPCに送信した場合,PCによるプロキシサーバの認証は成功する。しかし,(オ)⑥において,プリマスタシークレット(Premaster Secret)の共有に失敗するので,このような方法でSSLセッションを開設することはできない。 調査の結果,J君は,プロキシサーバの復号機能の実現方法を確認できたので,次のステップとして,社内のLANにおけるセグメント間のパケットフィルタリングについて検討した。 〔パケットフィルタリングの検討〕 パケットフィルタリングの検討に当たって,J君は,業務における各サーバの利用状況を調査し,用途とアクセス元を表2,3にまとめた。表2は,DMZで稼働しているサーバの用途とアクセス元を,表3は,DMZ以外で稼働しているサーバの用途とアクセス元をまとめたものである。 表2 DMZで稼働しているサーバの用途とアクセス元 表3 DMZ以外で稼働しているサーバの用途とアクセス元 次に,表2,3の情報を基に,マルウェアの拡散を阻止するためのパケットフィルタリングポリシを,図4にまとめた。 ① PCからサーバへの業務用通信及びサーバ間の業務用通信を,表2,3どおり許可する。 ② 上記①に加え,業務用通信区間における疎通テストのための通信を許可する。 ③ 管理PCについては,上記①,②の他に,他のセグメントのPC及びサーバへのリモート接続と疎通テストのための通信を許可する。 ④ 上記①~③以外の通信を禁止する。 図4 パケットフィルタリングポリシ その後,図4を基に,パケットフィルタリングルールを検討した。 J君が検討してまとめた,ポートA,Bに設定するパケットフィルタリングルールを,表4,5に示す。ここで,ポートA,Bは,L3SW1のP1~P6のいずれかのポートであるが,設問の関係でどのポートかは明記しない。 表4 ポートAに設定するパケットフィルタリングルール 表5 ポートBに設定するパケットフィルタリングルール J君は,全ての調査・検討が終了した後,プロキシサーバの復号機能の実現方法と,パケットフィルタリングルールの内容をN主任に説明した。説明を聞いたN主任は,プロキシサーバの復号機能については中間者攻撃に対して安全であることを了解した。しかし,パケットフィルタリングルールの内容については,(カ)表4にルールの漏れが一つあるので,項番1,2の間に追加するよう指示した。 〔入口対策と出口対策の実施項目〕 N主任は,J君の報告を基に対策案をまとめ,実施に移す対策(以下,実施策という)についてS主任と打合せを行った。そのときのN主任とS主任の会話を,次に示す。 N主任:ネットワークでの入口対策と出口対策の案をまとめた。入口対策としては,SPFを導入する。出口対策としては,既設のプロキシサーバを認証機能と復号機能をもつ機種に交換し,L3SW1にパケットフィルタリングを設定する。 S主任:分かった。私の方では,サーバ,PC及びFWでのマルウェア対策の実施状況について調査したところ,ウイルス対策ソフトの運用とセキュリティパッチの適用は,運用規程どおり実施されていた。また,FWでは,社内のLANからインターネットへの不必要な通信の遮断設定が適切に行われていた。しかし,不審なメールへの対応と,社内に侵入したマルウェアの活動を発見するためのログの検査が,適切には行われていなかった。今後,不審なメールへの対応に関する規程を定め,ログの検査方法・検査内容を見直すことにする。 N主任:プロキシサーバの交換で,マルウェアの活動を発見しやすくなるな。 S主任:そうだな。プロキシサーバで利用者認証を行えば,マルウェアによるバックドアの通信路の開設を困難にできるだけでなく,バックドアの通信が発見しやすくなる。セキュリティチームで,認証効果を高めるための全社のPCへの対策と,プロキシサーバのログの定期的な検査を行うことにする。 N主任:それでは,2人の検討結果をまとめて,M部長に提案しよう。 N主任とS主任は,検討結果を基に,次の6項目から成る標的型メール攻撃に対する実施策をまとめ,M部長に提出した。 ・図1のネットワークシステムにSPFを導入する。 ・プロキシサーバを交換し,プロキシサーバで利用者認証を行うとともに,復号機能を利用してSSL通信に対してもセキュリティ対策を行う。 ・L3SW1で,セグメント間のパケットフィルタリングを行う。 ・プロキシサーバの認証効果を高めるために,PCのWebブラウザの設定を変更する。 ・(キ)利用者が不審メールを発見したときの対応に関する規程を定め,運用規程に組み入れる。 ・プロキシサーバのログの検査方法・検査内容を見直し,(ク)ログの検査間隔を可能な限り短縮して,定期的に検査を行う。 実施策が承認され,N主任とS主任は,ネットワークシステムの変更及び運用の見直しを進めることにした。 設問1 本文中の[a]~[e]に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 〔標的型メール攻撃の手法と対策案〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1)本文中の下線(ア)のメールによって,メール送信者が誘導しようとする受信者の行動を,40字以内で述べよ。 (2)本文中の下線(イ)で,比較する二つのドメインを,50字以内で述べよ。 (3)本文中の下線(ウ)について,Y社には3台のメールサーバがあるが,その中でメール中継サーバのIPアドレスを記述する理由を,30字以内で述べよ。 (4)Y社でSPFを導入するとき,社外向けDNSサーバへのSPFレコードの追加とともに,SPFによる認証処理を実施することになる。その認証処理を実施させるサーバ名を,図1中の名称で答えよ。また,認証処理を正しく行うには,そのサーバでなければならない理由を,30字以内で述べよ。 設問3 〔プロキシサーバの復号機能の実現方法〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1)既設のプロキシサーバの場合,SSLセッションはどの機器間で開設されるかを,図3中の名称で答えよ。 (2)本文中の下線(エ)の情報を,20字以内で答えよ。 (3)本文中の下線(オ)について,失敗する理由を,40字以内で述べよ。 設問4 〔パケットフィルタリングの検討〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1)表4,5のパケットフィルタリングルールを適用するポートA,Bを,図1中のポートIDで答えよ。また,通信の方向を,IN又はOUTで答えよ。 (2)表4中の項番2のパケットフィルタリングルールの目的を,25字以内で述べよ。 (3)本文中の下線(カ)で,N主任が表4への追加を指示したパケットフィルタリングルールを,表4の記述方法で答えよ。 (4)表4中の項番3,4の二つのパケットフィルタリングルールによって制御される通信の内容を,70字以内で述べよ。 設問5 〔入口対策と出口対策の実施項目〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1)プロキシサーバの交換によって,新たにログとして取得できる情報について,60字以内で述べよ。 (2)本文中の下線(キ)で定めるべき規程の内容を三つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。 (3)本文中の下線(ク)によって期待される効果を,30字以内で述べよ。
図1 Y社のネットワークシステム構成。本社,工場,営業所1~3を広域イーサ網で接続した構成。DMZ,サーバ・管理・部署セグメント,L3SW1のポートP1~P6,各ネットワークアドレス,メールサーバのIPアドレス及び注記を示す。
図1 Y社のネットワークシステム構成。本社,工場,営業所1~3を広域イーサ網で接続した構成。DMZ,サーバ・管理・部署セグメント,L3SW1のポートP1~P6,各ネットワークアドレス,メールサーバのIPアドレス及び注記を示す。
表1 メールの転送経路。本社・営業所,工場,社外を送信元とするメールの転送経路を宛先別に示す。本社メールサーバ,工場メールサーバ及びメール中継サーバを経由する順序をまとめた表。
表1 メールの転送経路。本社・営業所,工場,社外を送信元とするメールの転送経路を宛先別に示す。本社メールサーバ,工場メールサーバ及びメール中継サーバを経由する順序をまとめた表。
図2 SPFによる認証処理の概要。二つのドメイン間のメール転送とSPF認証を示す。エンベロープ情報,SMTP転送,DNSサーバへのSPFレコードの問合せと回答,受信メールの正当性検査の四手順を含む。
図2 SPFによる認証処理の概要。二つのドメイン間のメール転送とSPF認証を示す。エンベロープ情報,SMTP転送,DNSサーバへのSPFレコードの問合せと回答,受信メールの正当性検査の四手順を含む。
図3 復号機能をもつプロキシサーバの動作手順の概要。PC,プロキシサーバ,Webサーバ間の通信手順。connect要求・応答に続き,プロキシサーバが双方と別々にSSLセッションを開設し,証明書送付,共通鍵生成,暗号化データ通信を行う。
図3 復号機能をもつプロキシサーバの動作手順の概要。PC,プロキシサーバ,Webサーバ間の通信手順。connect要求・応答に続き,プロキシサーバが双方と別々にSSLセッションを開設し,証明書送付,共通鍵生成,暗号化データ通信を行う。
表2 DMZで稼働しているサーバの用途とアクセス元。DMZの社外向けDNSサーバ,メール中継サーバ,プロキシサーバについて,ゾーン情報管理,メール中継,Webアクセス代理処理という用途と,各サーバへのアクセス元を示す。
表2 DMZで稼働しているサーバの用途とアクセス元。DMZの社外向けDNSサーバ,メール中継サーバ,プロキシサーバについて,ゾーン情報管理,メール中継,Webアクセス代理処理という用途と,各サーバへのアクセス元を示す。
表3 DMZ以外で稼働しているサーバの用途とアクセス元。本社サーバセグメント,工場サーバセグメント,各営業所に設置するメール,業務,ファイル,社内向けDNSの各サーバの用途とアクセス元を示す。管理PCに関する注を含む。
表3 DMZ以外で稼働しているサーバの用途とアクセス元。本社サーバセグメント,工場サーバセグメント,各営業所に設置するメール,業務,ファイル,社内向けDNSの各サーバの用途とアクセス元を示す。管理PCに関する注を含む。
図4 パケットフィルタリングポリシ。業務用通信,業務用通信区間の疎通テスト,管理PCから他セグメントへのリモート接続と疎通テストを許可し,これら以外の通信を禁止する四項目の方針を示す。
図4 パケットフィルタリングポリシ。業務用通信,業務用通信区間の疎通テスト,管理PCから他セグメントへのリモート接続と疎通テストを許可し,これら以外の通信を禁止する四項目の方針を示す。
表4 ポートAに設定するパケットフィルタリングルール。ポートAの八つのルールを,動作,送信元・宛先IPアドレス,プロトコル,ポート番号,TCP制御ビットで示す。管理セグメントへの接続制御,既定の禁止,anyと適用順の注記を含む。
表4 ポートAに設定するパケットフィルタリングルール。ポートAの八つのルールを,動作,送信元・宛先IPアドレス,プロトコル,ポート番号,TCP制御ビットで示す。管理セグメントへの接続制御,既定の禁止,anyと適用順の注記を含む。
表5 ポートBに設定するパケットフィルタリングルール。ポートBの項番1~4,省略部分,項番10~14のルールを示す。管理・本社サーバ・DMZから工場や営業所への通信を制御し,IPアドレス,プロトコル,ポート番号,TCP制御ビット及び注記を含む。
表5 ポートBに設定するパケットフィルタリングルール。ポートBの項番1~4,省略部分,項番10~14のルールを示す。管理・本社サーバ・DMZから工場や営業所への通信を制御し,IPアドレス,プロトコル,ポート番号,TCP制御ビット及び注記を含む。
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対策を検討する前提条件の確認

対策を検討するときは、その判断がどのような前提条件に基づくかに注目しましょう。与えられた情報と自分が補った想定を分け、書かれていない条件を知らずに追加していないかを確かめることが大切です。

この問題で問われていること

判断の前提として使う条件が、与えられた情報から確認できるかを意識してください。明示された条件と、一般的な知識から補いたくなる想定を区別し、結論を急ぐ前に、その想定を置いてよい根拠があるかを振り返りましょう。

視点

前提条件とは、検討の出発点として置く条件です。与えられた情報に含まれる条件と、自分の経験から補った想定は区別して扱います。

確認ポイント

  • 判断の前提にしている条件を意識できているか
  • 明示された条件と自分が補った想定を区別しているか
  • 補った想定を置いてよい根拠を確認しているか
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解説

Y社の通信経路を基に、SPFによるなりすまし検知、認証・復号機能を備えたプロキシによる通信検査、セグメント間の通信制限を組み合わせます。さらに、不審メールへの対応規程とログ検査によって、侵入防止と侵入後の活動発見を補います。

問題の全体像

Y社は、本社・工場・営業所を広域イーサ網で接続し、メールやWebアクセスを業務に利用しています。標的型メール攻撃への対策として、SPFによる入口対策と、プロキシの認証・復号、L3SW1のパケットフィルタリングによる出口対策を検討する事例です。公式の出題趣旨では、セキュリティ担当者とネットワーク担当者が協力して実施策を立案する過程を通じ、ネットワーク設計・構築とセキュリティ対策の理解を問うとされています。機能名を覚えるだけでなく、どの通信をどこで検査・制御するのかを図表から説明することが中心です。

設問1(a)

着目するのは「Webサイトへのリンク先を示す」という記述です。リンク先の場所を表す字句なので、公式解答例では「URL」又は「統一資源位置指定子」とされています。メール本文に書かれたURLが、受信者をマルウェアの仕込まれたWebサイトへ誘導します。

設問1(b)

「HTMLで作成されたコンテンツの送受信用プロトコル」という説明から、公式解答例では「HTTP」とされています。本文では、バックドアも業務のWebアクセスと同じプロトコルを利用すると、通信の区別が難しくなることを説明しています。HTMLはコンテンツの記述言語であり、送受信のプロトコルであるHTTPと区別します。

設問1(c)

送信者がメールアドレスを詐称できる一方、送信元のサーバやPCに設定された通信上の情報は容易に変更できない、という対比に着目します。公式解答例では「IPアドレス」です。メールに記載する送信者情報と、実際の送信元を示すネットワーク上の情報を区別することが要点です。採点講評でも、この空欄はTCP/IP通信の基本動作に関する問いとされています。

設問1(d)

「受信したデータ中に不適切な言葉や文字列などが含まれていたとき、その通信を遮断する」という処理内容に着目します。公式解答例では「コンテンツフィルタリング」です。SSL通信を復号すると内容を検査できるため、本文にある文字列による遮断や、ダウンロードファイルのウイルスチェックが可能になります。

設問1(e)

既設のプロキシは、CONNECT要求に応じて接続先とのTCPコネクションを確立し、その後のTCPデータをそのまま転送します。この処理について、公式解答例では「トンネリング」とされています。プロキシが暗号化されたデータを中継する仕組みであり、この場合はプロキシ自身がSSL通信の内容を復号しません。

設問2(1)

下線(ア)の直後に、悪意のあるファイルの添付と、マルウェアを仕込んだWebサイトへのリンクが示されています。関係者を装う目的は、受信者にこれらを利用させることです。公式解答例では、添付ファイルを開くことと、記載されたリンク先にアクセスすることを挙げています。40字以内なら「添付ファイルを開いたり、本文のリンク先にアクセスしたりする。」のように、誘導される行動を具体的に示します。

設問2(2)

下線(イ)の前にある、メールアドレスは詐称しやすいが送信元IPアドレスの変更は困難という説明を受けて考えます。公式解答例では、メール送信元のMTAのIPアドレスが所属するドメインと、送信者のメールアドレスのドメインを比較します。50字以内では「送信元MTAのIPアドレスが所属するドメインと、送信者メールアドレスのドメイン」と整理できます。採点講評でも、SMTPで詐称可能な情報と詐称困難な情報の理解が課題として挙げられています。

設問2(3)

表1で、社外宛てメールの転送経路を確認します。本社・営業所からのメールも、工場からのメールも、最後にメール中継サーバを経由して社外へ送られます。そのため、社外の受信サーバが確認する送信元IPアドレスはメール中継サーバのものになります。公式解答例もこの点を理由としており、30字以内なら「社外宛てメールの送信元IPアドレスになるから」とまとめます。

設問2(4)(a)

図2では、送信元サーバからメールを受け取ったサーバが、DNSへのSPFレコードの問合せと正当性の検査を行います。表1を見ると、社外からY社宛てのメールを最初に受信するのはメール中継サーバです。したがって、公式解答例のサーバ名は、図1中の名称である「メール中継サーバ」です。SPFレコードを公開するDNSサーバと、受信メールを認証するメールサーバを区別します。

設問2(4)(b)

SPFでは、受信時に確認できる接続元IPアドレスと、送信ドメインのSPFレコードを照合します。本社メールサーバで検査すると、直前の接続元は社内のメール中継サーバとなり、社外の送信元を直接確認できません。公式解答例では「社外からY社宛てに送信されたメールを直接受信するから」とされています。30字以内の答案では、社外からのメールを直接受信するという実施位置の理由を押さえます。

設問3(1)

既設のプロキシは復号機能をもたず、CONNECT応答後はTCPデータをそのまま転送すると説明されています。このため、SSLの暗号化・復号を行う両端はプロキシではなく、公式解答例の「PCとWebサーバの間」です。図3の交換後の構成ではSSLセッションが二つに分かれますが、この設問が尋ねているのは既設のプロキシの場合です。

設問3(2)

PCが受け取るサーバ証明書2は、プロキシが生成した証明書です。CNにWebサーバと同じ情報があっても、それだけでは証明書の正当性を検証できません。公式解答例では、PCに保有させる情報を「プロキシサーバのルート証明書」としています。この語句は20字以内で収まります。PCがプロキシによる証明書の発行を信頼できるよう、検証の基点となる証明書を用意することが要点です。

設問3(3)

本問で説明されている鍵共有の手順では、PCはサーバ証明書1の公開鍵を用いてプリマスタシークレットを暗号化します。これを復号するには対応する秘密鍵が必要ですが、プロキシはWebサーバの秘密鍵をもっていません。そのため、証明書1を転送するだけでは鍵共有に失敗します。公式解答例に沿う40字以内の表現は「プロキシが暗号化されたプリマスタシークレットを復号できないから」です。採点講評でも、設問の趣旨に沿った説明の必要性が指摘されています。

設問4(1)(a)

表4では、許可・禁止する通信の送信元IPアドレスが192.168.1.0/24となっています。図1でこのネットワークは本社部署1セグメントであり、L3SW1への接続ポートはP3です。したがって、公式解答例ではポートAのポートIDを「P3」としています。まずアドレスからセグメントを特定し、接続線をたどってポートを決めます。

設問4(1)(b)

表4のパケットは、本社部署1セグメントを送信元として他のセグメントへ向かいます。P3では、部署1からL3SW1へ入ってくる段階で適用するので、公式解答例では「IN」です。IN・OUTはL3SW1のポートを基準に判断し、PCにとっての送信・受信と混同しないようにします。

設問4(1)(c)

表5の宛先には、工場サーバセグメントの192.168.51.128/25や、工場・営業所のアドレスを含む192.168.48.0/21が並んでいます。図1で工場・営業所方面へ向かう接続は、広域イーサ網につながるL3SWへのポートP5です。したがって、公式解答例ではポートBのポートIDを「P5」としています。

設問4(1)(d)

表5は、管理セグメント、本社サーバセグメント、DMZなどから、工場・営業所方面へ向かうパケットを制御しています。これらはL3SW1からP5を通って外へ出るため、公式解答例では「OUT」です。宛先ネットワークの位置と、L3SW1からの出口を対応付けて判断します。

設問4(2)

表4の項番2は、本社部署1の192.168.1.0/24から本社サーバセグメントの192.168.11.0/24へのICMP通信を許可します。図4のポリシ②は、業務用通信区間の疎通テストを許可すると定めているので、このルールはその実現です。公式解答例では「部署1と本社サーバセグメント間の疎通テスト」とされています。25字以内では、疎通テストの対象となる両セグメントを明示します。

設問4(3)

表3では、全社のPCが本社サーバセグメントの社内向けDNSサーバへ名前解決を要求するとされています。しかし、表4はTCPとICMPを許可する一方、UDPのDNS問合せを許可していません。公式解答例の追加ルールは「動作:許可、送信元IPアドレス:192.168.1.0/24、宛先IPアドレス:192.168.11.0/24、プロトコル:UDP、送信元ポート番号:any、宛先ポート番号:53、TCP制御ビット:any」です。問合せなので53は宛先ポートです。表5の項番4はDNS応答側の通信で送信元ポートが53となっており、両者を区別します。

設問4(4)

表4は項番の小さい順に適用されます。項番3は、部署1から管理セグメントへのTCP接続開始パケットであるSYN=1・ACK=0を禁止し、項番4はそれ以外のTCPパケットを許可します。これにより、部署1から接続を開始することは禁止し、管理PCが開始した接続への応答は通せます。公式解答例に沿う70字以内の表現は「部署1のPCから管理PCへのTCPコネクション確立は禁止し、管理PCから部署1のPCへの確立は許可する。」です。採点講評でも、制御内容を適切に説明できていない答案が指摘されています。

設問5(1)

交換で追加される認証機能と復号機能を、それぞれログの情報に対応付けます。公式解答例では、SSL通信でも認証された利用者と通信内容を取得できること、認証の連続失敗の記録からマルウェアの活動と推測できる情報を得られることが示されています。60字以内の答案としては「SSL通信でも認証された利用者と通信内容を取得できる。」とまとめられます。単にログが増えると書くのではなく、新たに記録できる情報を具体化することが要点です。

設問5(2)(a)

本文では、マルウェアを埋め込んだファイルを添付する攻撃が説明されています。不審メールを発見した際は、そのファイルを開かせない規程が必要です。公式解答例に沿い、30字以内で「不審なメールに添付されたファイルを開かない。」と示します。利用者が実行する行動として具体的に定めます。

設問5(2)(b)

もう一つの侵入経路は、メール本文に記載されたURLから、マルウェアが仕込まれたWebサイトへアクセスすることです。公式解答例では、本文のリンク先へアクセスしないことが挙げられています。30字以内なら「不審なメール本文のリンク先にアクセスしない。」とします。添付ファイルへの対応とは別の行動として示すことができます。

設問5(2)(c)

不審メールを利用者だけで処理すると、組織として状況を把握しにくくなります。公式解答例には、正しい送信者か確認すること、セキュリティ担当者への報告、全社での情報共有が挙げられています。ここでは三つ目として、30字以内の「不審なメールの内容をセキュリティ担当者に報告する。」を選びます。前二つの危険な操作を避ける規程に、組織へ知らせる行動を組み合わせます。

設問5(3)

下線(ク)は、ログの検査間隔を可能な限り短くする対策です。通信や認証失敗の記録を早く確認できれば、侵入したマルウェアの活動に早い段階で気付けます。公式解答例では、マルウェアの社内での活動を早期に発見できることが示されています。30字以内の答案は「マルウェアの社内での活動を早期に発見できる。」です。検査間隔の短縮と発見の早期化を結び付けて説明します。

学習のポイント

SPFを実施する位置、SSLの証明書と鍵の役割、フィルタリングの方向・適用順序を、図表の具体的な通信と結び付けて説明する力を養います。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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