NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成26年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 サービス用システムの構築に関する次の記述を読んで,設問1~5に答えよ。 A社では,VoIP対応電話システム(以下,IPTシステムという)を販売しているが,今後,A社で設備を保有し,サービスとして提供したいと考えている。サービス提供時には,IPTシステム用電話機(以下,IPTELという)を利用企業に設置し,それ以外のIPTシステム用機器をA社センタに設置する形態を想定している。IPTシステム担当部門のK君は,最近のネットワーク技術に詳しいT君の支援を受けながら,IPTシステムのサービス化に向けて,実現性の検討を開始した。 〔サービス用IPTシステムの構成〕 図1は,K君がT君に示したサービス用IPTシステムの全体構成案である。 図1 サービス用IPTシステムの全体構成案 図1は,ある企業グループに属する利用企業1と利用企業2が,サービス用IPTシステムを利用する場合の構成を示している。利用企業1と利用企業2の内部ネットワークは,グループ内で重複しないプライベートIPアドレスを使用している。利用企業内の拠点間通話は内線通話として処理される。 ロガーは,通話を録音するサーバである。ロガー1及びロガー2は,それぞれ利用企業1用及び利用企業2用である。IP-PBXは,その機能を利用企業ごとに独立して利用できるマルチテナント機能をもち,利用企業1と利用企業2で共用する。ロガー及びIP-PBXは,それぞれの仮想サーバで動作させる。利用企業の拠点とA社間は,VPNで接続する。 利用企業の社員が,出張などで拠点外のモバイル環境にいても,サービス用IPTシステムが使えるようにする。このために,モバイル環境のソフトフォン(PC上で動作するソフトウェアで実現する電話機能)を,内線電話機として利用できるようにする。モバイル環境のPCからA社への接続に当たっては,セキュリティ確保のために接続PCごとに認証を行う。 A社のIPTシステムは,RFC 3261で規定されたSIP(Session Initiation Protocol)に準拠している。K君は,IPTシステムについては経験が浅いT君に,概要を説明することにした。次は,K君がT君に説明した内容についてまとめたものである。 SIPは,ユーザエージェントと呼ばれる端末(以下,UAという)間で,セッションの生成,変更,切断を行うプロトコルである。SIPでは,セッション上でやり取りされるデータそのものについては規定していない。生成したセッション上で,どのような通信を行うかは,SIPを使う上位のアプリケーションが,通信相手とのネゴシエーションによって決定する。このとき,セッション生成の過程でのやり取りには,RFC 4566で規定されたSDP(Session Description Protocol)が用いられる。したがって,アプリケーションが,SIPによって制御されたセッションでデータをやり取りする場合,音声データだけなら電話,テキストだけなら[a],音声と動画を組み合わせることでビデオ会議,というように,幅広い応用の可能性がある。音声データを転送する場合の一般的なプロトコルは,RFC 3550で規定された[b]であり,そのトランスポート層のプロトコルには,リアルタイム性を重視し,再送制御を行わない[c]が使われる。 UAの識別には,sip:xxx@example.ne.jp(xxxは利用者識別子)のようなURI(Uniform Resource Identifier)形式が使われる。SDPのセッション生成情報には,接続相手のURI,自分のURIとIPアドレス,使用するコーデックなどの通信に必要な情報が用いられる。 セッションは,通信を行うUA間で直接やり取りして生成することもできるが,規模の大きな組織の場合は利用者が多く,URIの登録に手間が掛かるので,①セッションの生成を仲介するサーバを設置する。このサーバはSIPサーバと呼ばれ,図1のサービス用IPTシステムでは,IP-PBXがその役割を果たしている。 SIPで使われるメッセージは,[d]形式で記述されるので,判読しやすい。 〔IPTシステムの概要〕 IP-PBXは,VoIP-GWを経由して通信事業者の公衆IP電話網と接続する。VoIP-GWは,両側のSIP制御の実装上の差異を吸収して整合性をとる。 IPTシステムでは,UAは起動後,自分の利用者識別子,自分のIPアドレスを含む登録メッセージをSIPサーバに送信し,初期登録をする。VoIP対応電話機から発呼してIPTELに着呼する場合について,SIPによる電話接続シーケンス例を,図2に示す。 図2 SIPによる電話接続シーケンス例 IP-PBX配下のIPTELを識別するための050電話番号は,公衆IP電話網の通信事業者から割り当てられる。通信事業者の公衆IP電話網の中にもSIPサーバが存在するので,VoIP-GWは,②両方のSIPネットワークに対してUAとして振る舞う特殊なUAであるB2BUA(Back-to-Back User Agent)になる。また,VoIP-GWは,SIPネットワークの境界に存在してセッション生成を仲介するとともにRTPパケットの中継も行うSession Border Controller(以下,SBCという)と呼ばれる機能をもつ。 SIPメッセージの例として,セッション生成開始時に使われるINVITEリクエストの内容例を,図3に示す。 図3 INVITEリクエストの内容例(抜粋) インターネット網を経由して,SIPを使った通話を行う場合,企業内のプライベートIPアドレスのUAと外部とを接続するために,アドレス変換を行う必要がある。このときに,③標準的なNAT装置では,通話セッションが生成できないという問題が発生する。K君によれば,④この問題への対応機能をもつSBCがあるということであった。 〔パッシブ方式による音声パケットの収集〕 最近,コンプライアンスの観点から“通話を録音して保存したい”という要望が増えている。そこで,この要望に対応するために,仮想サーバを使って,どのようなシステムを構築できるかを検討することになった。 従来,A社では,IP-PBXシステムに影響を与えない録音の方法を採用していた。この方法は,音声の通信経路にあるスイッチに,音声パケットが通過するポートのフレームをミラーポートに出力するように設定し,ミラーポート出力フレームを,ロガーのNICで直接受ける方式である。この方式を,パッシブ方式と呼ぶ。 ミラーポート出力フレームを,仮想サーバで動作するロガーに取り込む場合には,単純にミラーポートを物理サーバのNICに接続する方式だと,ミラーポートごとにNICが必要となり,NIC搭載数が限られる環境では使いにくい。 そこで,この問題を解決するために,K君は,図1に対応して,図4に示す仮想サーバでロガーを動作させるためのテスト用ネットワークを作成した。 図4 仮想サーバでロガーを動作させるためのテスト用ネットワーク ロガーは,音声パケットを収集するための専用の仮想NICと,運用・保守に使用する仮想NICの二つの仮想NICをもち,それぞれが異なる仮想スイッチに接続する。 K君が考えた方法は,ミラーポート出力フレームを仮想サーバで動作するロガーに転送するためのVLANを定義し,物理サーバのNICとL2SWはトランク接続にする方法である。具体的には,L2SWの別々のVLANに属するポート3とポート6に,それぞれ異なるミラーポート出力フレームを入力して仮想スイッチに転送した後,宛先となるロガーに振り分ける。今回使用した仮想スイッチでは,接続する仮想サーバのMACアドレスは仮想化のための仕組みで把握しているので,通過するフレームによるMACアドレスの学習は行わない。ミラーポート出力フレームを取り込むために,仮想スイッチに接続する⑤ロガーの仮想NICと仮想スイッチの接続ポート間で,適切な動作をさせる。 なお,図4の構成で使用しているL2SWは,VLAN単位に独立したMACアドレステーブルをもつ仕様になっている。したがって,VLANが異なれば同じMACアドレスが学習されても問題がない。 K君がこの構成で実験したところ,期待するフレームがロガーに転送されていないことが分かった。そこで,原因を調べるために,T君とともに次のような点について検討した。 スイッチの設定の不具合の可能性もあり得るので,サーバとL2SW間のフレームをモニタして調べることにした。K君は,図4の(A)と(B)の位置で通過するフレームをモニタしてみた。すると,VoIP-GWが送受信したフレームを,(A)では確認できたが,(B)ではミラーリングしたそれらのフレームの通過が確認できなかった。相談を受けたT君は,L2SWのMACアドレステーブルがどのような状態であるかを調べるよう指示した。その結果を見たT君は,⑥L2SWのポート3に流入するフレームの送信元MACアドレスと宛先MACアドレスの組合せに着目して原因を説明し,対応策を示した。 苦労して音声パケットの収集ができるようにはなったものの,音声パケットを収集するためのネットワークを構成する作業が大変だったので,T君は,別の手段を調査するよう,K君にアドバイスした。 〔アクティブ方式による音声パケットの収集〕 K君は,ミラーポート出力を使わない音声パケットの収集方式について調査した。その結果,アクティブ方式と呼ぶ収集方式があることが分かった。 アクティブ方式では,音声パケットを中継する機器上に,録音したい音声パケットをコピーして転送する機能を実装し,録音クライアント(以下,SRCという)とする。SRCは,音声パケットを受け取って録音する役割の録音サーバ(以下,SRSという)との間にSIPを用いて録音用セッションを生成し,コピーした音声パケットを,そのセッションを用いて転送する。また,音声パケット以外に,音声パケットに関係した通話の属性情報も,通知できる。 通話の収集対象となる二つのUAをUA-AとUA-Bとしたとき,アクティブ方式による動作シーケンスの概要を,図5に示す。 図5 アクティブ方式による動作シーケンスの概要 ここでは,アクティブ方式の概念を示すために,必要な機器だけを示している。図5(a)では,SRCが,UA-AとUA-B間の通話の音声パケットを中継するとともに,コピーした音声パケットをSRSに送る場合を,例示している。図5(a)中のSRCは,音声パケットの中継だけでなく,UA-AとUA-B間の通話用セッションの生成にも関与している。 K君は,図5(a)に示すシーケンスを参考に,⑦図1においてSRCを実装する機器を選択し,図5(a)に対応した図1におけるシーケンスとして図5(b)を作成した。 〔外部接続用機器群の検討〕 K君は,外部接続用機器の接続構成について検討した。図6は,図1に示した構成を実現するためにK君が作成した,外部接続用機器の構成図である。モバイル環境のPCは,A社センタへ接続するためにHTTPSを使用する。ここで,外部接続用機器は,利用企業ごとに用意するものとする。 図6 外部接続用機器の構成図 A社では,インターネット接続に関し,セキュリティ強化のために,接続元からのアクセスの違いによって,FWのポート1とポート2のアウトバウンドでは,表1に示すフィルタリングルール(許可条件)を適用する予定である。 表1 フィルタリングルール(許可条件) SSL-VPN装置では,モバイル環境のPCからのアクセスに対し,トークンを利用した利用者認証を行っている。認証されたPCは,⑧新たな仮想NICを生成し,レイヤ2のトンネルを通して,サービス提供用内部LANとの通信が可能になる。 K君は,最近,長期間使用していたSSL-VPN装置が故障した際,保守期間を過ぎていて,大至急別の機器を導入してネットワークを再設計しなければならないという経験をした。そこで,このような事態に対処しやすい方法について,T君に質問した。T君は,これまでの経験と知識を基に,次のように説明した。 ネットワーク機器の機能が,仮想サーバで動作するソフトウェアとして提供される(これを,ネットワーク機器の仮想化という)ようになると,K君が経験した販売・保守の終了という問題への対応ができ,更にそれ以外にもいろいろな利点がある。 例えば,新たな利用者への機能提供の迅速化,構成変更への柔軟性が実現できる。また,保守・運用管理上,FWやVPN装置などの⑨ネットワーク機器が仮想化されている場合,ハードウェア障害に備えた冗長化を実現する上で,コスト面での利点もある。 K君は,T君のアドバイスを参考に,ロガーだけでなく外部接続用機器群も,仮想サーバで動作するソフトウェアとして実現するよう提案することにした。 このようにして,K君とT君は,サービス用IPTシステムを仮想環境上に構築することについて,実現性と将来への考慮点に関する検討結果をまとめた。この検討結果は,プロジェクトの責任者である上長に報告され,了承された。 設問1 〔サービス用IPTシステムの構成〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の[a]~[d]に入れる適切な字句を答えよ。 (2)本文中の下線①の動作を,40字以内で具体的に述べよ。 設問2 〔IPTシステムの概要〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1)本文中の下線②のB2BUAがその役割を果たすために,UAとして初期登録する必要がある登録先を,本文中の名称を用いて全て答えよ。 (2)本文中の下線③に示す問題の原因を,図3を参考にして,50字以内で述べよ。 (3)本文中の下線④について,図2の電話接続シーケンス例の場合に,SBCが行うアドレス変換の内容を,60字以内で具体的に述べよ。 設問3 〔パッシブ方式による音声パケットの収集〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の下線⑤について,適切な動作の内容を,60字以内で述べよ。 (2)本文中の下線⑥について,MACアドレステーブルがどのような状態になっていたことが原因だったと考えられるか。50字以内で述べよ。また,T君の示した対応策を,50字以内で述べよ。 設問4 〔アクティブ方式による音声パケットの収集〕について,(1)~(5)に答えよ。 (1)本文中の下線⑦について,IP-PBXは選択できない。その理由を,20字以内で具体的に述べよ。 (2)図5中の[e],[f]に入れる適切な機器名を,図1中の機器名で答えよ。 (3)図5中の(C)に処理シーケンスを追加して,図5(b)のシーケンスを完成させよ。 (4)図1の構成で,図5(b)の方式を使用した場合,呼情報も録音用セッションを介して取得できる。その理由を40字以内で述べよ。 (5)パッシブ方式に比べてアクティブ方式の方が有利な点を,30字以内で述べよ。 設問5 〔外部接続用機器群の検討〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1)表1中の[ア]~[エ]に入れる適切な字句を答えよ。 (2)本文中の下線⑧において,生成された仮想NICに対してどのようなIPアドレスが付与される必要があるかを,35字以内で述べよ。 (3)本文中の下線⑨において,T君がコスト面での利点が得られるとした理由を,40字以内で述べよ。
図1 サービス用IPTシステムの全体構成案。利用企業の拠点やモバイルPCをインターネット経由でA社センタに接続する構成。外部接続用機器群,仮想サーバ上のIP-PBXとロガー,内部LANの接続関係を示す。
図1 サービス用IPTシステムの全体構成案。利用企業の拠点やモバイルPCをインターネット経由でA社センタに接続する構成。外部接続用機器群,仮想サーバ上のIP-PBXとロガー,内部LANの接続関係を示す。
図2 SIPによる電話接続シーケンス例。VoIP対応電話機から公衆IP電話網のSIPサーバ,VoIP-GW,IP-PBXを経てIPTELに着呼するシーケンス。接続要求,応答,確認,通話セッション,切断の順序を示す。
図2 SIPによる電話接続シーケンス例。VoIP対応電話機から公衆IP電話網のSIPサーバ,VoIP-GW,IP-PBXを経てIPTELに着呼するシーケンス。接続要求,応答,確認,通話セッション,切断の順序を示す。
図3 INVITEリクエストの内容例(抜粋)。INVITEリクエストを先頭行,SIPヘッダ,空白行,SDPボディに分けて示す。発信元のIPアドレスを含む各フィールドと,音声のポート番号やコーデック情報を例示する。
図3 INVITEリクエストの内容例(抜粋)。INVITEリクエストを先頭行,SIPヘッダ,空白行,SDPボディに分けて示す。発信元のIPアドレスを含む各フィールドと,音声のポート番号やコーデック情報を例示する。
図4 仮想サーバでロガーを動作させるためのテスト用ネットワーク。IP-PBXと二つのロガーを仮想スイッチ,物理NIC,L3SW,L2SWで接続するテスト構成。VLAN番号,物理ポート番号,ミラーフレームの転送経路,モニタ位置(A)(B)を示す。
図4 仮想サーバでロガーを動作させるためのテスト用ネットワーク。IP-PBXと二つのロガーを仮想スイッチ,物理NIC,L3SW,L2SWで接続するテスト構成。VLAN番号,物理ポート番号,ミラーフレームの転送経路,モニタ位置(A)(B)を示す。
図5 アクティブ方式による動作シーケンスの概要。UA-A,SRC,UA-B,SRSによる概念シーケンスと,図1の機器に対応するシーケンスを並べる。通話用・録音用セッションの生成と切断を示し,機器名[e][f]と処理(C)を空欄とする。
図5 アクティブ方式による動作シーケンスの概要。UA-A,SRC,UA-B,SRSによる概念シーケンスと,図1の機器に対応するシーケンスを並べる。通話用・録音用セッションの生成と切断を示し,機器名[e][f]と処理(C)を空欄とする。
図6 外部接続用機器の構成図。利用企業拠点とモバイルPCをインターネット経由で外部接続用FWに接続し,IPsec-VPNとSSL-VPNを介して内部LANのL2SWにつなぐ構成。物理ポート番号と固定グローバルIPアドレスを示す。
図6 外部接続用機器の構成図。利用企業拠点とモバイルPCをインターネット経由で外部接続用FWに接続し,IPsec-VPNとSSL-VPNを介して内部LANのL2SWにつなぐ構成。物理ポート番号と固定グローバルIPアドレスを示す。
表1 フィルタリングルール(許可条件)。FWの物理ポート1と2に適用する許可条件を,送信元・宛先IPアドレス,ポート番号,プロトコル番号で示す。UDP,ESPの条件と空欄[ア]~[エ],anyの注記を含む。
表1 フィルタリングルール(許可条件)。FWの物理ポート1と2に適用する許可条件を,送信元・宛先IPアドレス,ポート番号,プロトコル番号で示す。UDP,ESPの条件と空欄[ア]~[エ],anyの注記を含む。
解き方のヒントを見る

記述が成り立つ範囲を確かめる

この分野を学ぶ際は、記述がどの範囲を前提としているかに注目しましょう。用語の印象だけで判断せず、扱っている対象や条件を整理し、同じ範囲の話として捉えられるかを確かめることが大切です。

この問題で問われていること

考える焦点は、扱う対象や条件の範囲が途中で変わっていないか、という点です。判断の根拠となる情報を追う際には、ある範囲での記述を別の範囲へそのまま広げて受け取っていないかを意識してください。

視点

同じ用語が使われていても、扱う範囲まで同じとは限りません。理解した内容を当てはめる前に、その記述が対象とする範囲を短い言葉で整理してみましょう。

確認ポイント

  • 記述が対象としている範囲を捉えたか
  • 前提となる条件を範囲と併せて整理したか
  • 整理した範囲を越えて内容を広げていないか
正解と解説を見る

解説

本問は、SIPを利用する電話サービスを仮想環境に構築する際の課題を扱います。SIPメッセージ内のアドレス変換、ミラーフレームとMACアドレス学習の関係、録音用セッションの構成、VPNの許可条件、仮想化による冗長化コストの低減を、本文と図の具体的な動作から説明することが要点です。

問題の全体像

A社は、販売していたIPTシステムを自社センタに集約し、利用企業へ電話サービスとして提供しようとしています。IP-PBXと企業別のロガーを仮想サーバで動作させ、拠点やモバイルPCをVPNで接続する構成です。公式の出題趣旨では、仮想環境で発生する課題に対して、基礎的な動作原理を理解し、状況を把握して既存技術を応用する力を問うとされています。呼制御、音声転送、フレーム収集、外部接続をそれぞれ具体的な経路に沿って読み解くことが重要です。

設問1(1)(a)

空欄直前の「テキストだけなら」に着目します。SIPはセッションで扱うデータそのものを限定しないため、音声以外の通信にも利用できます。公式解答例では「インスタントメッセージ」又は「チャット」です。ここでは、テキストをやり取りするアプリケーションの例を答えます。

設問1(1)(b)

「音声データを転送する」「RFC 3550」という記述が手掛かりです。公式解答例では「RTP」又は「RTPとRTCP」です。図5でも音声の送受信がRTPとして描かれています。セッションの生成や切断を行うSIPと、音声データを運ぶRTPの役割を区別して押さえます。

設問1(1)(c)

「トランスポート層」「リアルタイム性を重視」「再送制御を行わない」という条件に着目します。公式解答例は「UDP」です。図3のVia行にもSIP/2.0/UDPという表記がありますが、この空欄では音声転送に使うRTPの下位プロトコルを問われています。

設問1(1)(d)

「判読しやすい」という説明と、図3に文字で示されたINVITEリクエストを対応させます。先頭行、SIPヘッダ、SDPのボディが文字列として記述されているので、公式解答例は「テキスト」です。SIPメッセージの記述形式を答える空欄です。

設問1(2)

下線①の「セッションの生成を仲介する」を、相手の特定と接続要求の送信に分けて具体化します。本文にはUAをURIで識別することが書かれ、図2では接続開始にINVITEが使われています。公式解答例では、URIから相手のIPアドレスを求め、相手へINVITEを送る動作です。40字以内なら「URIから相手のIPアドレスを求め、INVITEを送る。」と、二つの動作を押さえます。

設問2(1)

本文の「両方のSIPネットワークに対してUAとして振る舞う」と、UAは起動後にSIPサーバへ初期登録するという説明を結び付けます。図2でVoIP-GWの両側に位置するSIPサーバは、公衆IP電話網のSIPサーバと、社内側でSIPサーバの役割を担うIP-PBXです。公式解答例も「公衆IP電話網のSIPサーバ、IP-PBX」であり、登録先を両方答える必要があります。

設問2(2)

図3では、Via、Contact、SDPのo行やc行など、SIPメッセージの内容に発信元のIPアドレスが含まれています。標準的なNATの変換対象外であるこの情報にプライベートIPアドレスが残ることが、公式解答例の示す原因です。50字以内なら「NATの変換対象外のSIPメッセージ内に送信者のプライベートIPアドレスが残るため。」とまとめられます。採点講評では、メッセージ内の情報がセッション生成にどう使われるかの理解が求められています。

設問2(3)

設問2(2)で問題となった、SIPメッセージ内のIPアドレス情報を書き換えることが対応の中心です。図2では、両側のSIPネットワークを接続するVoIP-GWがSBCとして動作します。公式解答例では、メッセージ内のIPアドレス情報を、送信元となるVoIP-GWのグローバルアドレスに変更します。60字以内の答案では「SIPメッセージ内のIPアドレス情報を、送信元のVoIP-GWのグローバルアドレスに書き換える。」と、変換対象と変換後のアドレスを示します。

設問3(1)

ミラーフレームは通話中の端末間のフレームを複製したもので、宛先MACアドレスがロガーのものとは限りません。また、本文の仮想スイッチは仮想サーバのMACアドレスを把握しています。したがって、通常の宛先による選別では録音対象を取り込めません。公式解答例では、該当VLANの全フレームを仮想スイッチのポートから出力し、仮想NICでも全て取り込みます。60字以内なら「仮想スイッチは該当VLANの全フレームを出力し、仮想NICは全て取り込む。」と、両側の動作を記述します。

設問3(2)(a)

図4では、ポート1を通過した双方向のフレームがポート2から出力され、ポート3へ流入します。ある方向のフレームで送信元として学習したMACアドレスは、逆方向のフレームでは宛先になります。そのため、宛先が入力ポート3側にあると判断され、転送されない状態が生じます。公式解答例の要点は「流入フレームの宛先MACアドレスがポート3側として登録されている。」です。採点講評では、ミラーフレームの送信元をミラーポート自身のMACアドレスと誤解しないよう指摘されています。

設問3(2)(b)

原因は、録音用VLANへ流入するミラーフレームからポート3でMACアドレスを学習してしまうことです。本文ではMACアドレステーブルがVLANごとに独立しているため、元の通信用VLANと同じアドレスが存在すること自体は問題ではありません。公式解答例では、学習を抑止できるスイッチを使い、ポート3で学習を抑止します。50字以内なら「MACアドレス学習を抑止できるSWを用い、ポート3で学習を抑止する。」と、必要な機能と適用箇所を示します。

設問4(1)

SRCの条件は、音声パケットを中継し、そのパケットをコピーしてSRSへ転送できることです。IP-PBXはSIPによる呼制御を担いますが、この構成では音声パケットを中継しません。公式解答例の「音声パケットを中継しないから」が20字以内の答案になります。呼制御に関与することだけでは、SRCの条件を満たしません。

設問4(2)(e)

図5(b)のeは、VoIP対応電話機からINVITEを受け、ロガーとの録音用セッションも生成する機器です。本文でSBCとしてセッション生成の仲介とRTPパケットの中継を行うのはVoIP-GWです。公式解答例も「VoIP-GW」であり、図5(a)のSRCに対応します。

設問4(2)(f)

図5(b)のfは、eからのINVITEをIPTELへ送り、IPTELからの応答をeへ返す呼制御側の機器です。本文ではIP-PBXがSIPサーバの役割を担うため、公式解答例は「IP-PBX」です。eのVoIP-GWが音声を中継する役割と、fのIP-PBXが接続を制御する役割を区別して読みます。

設問4(3)

図5(a)では、SRCとUA-Bの間でRTPを双方向に送受信し、SRCからSRSへコピーしたRTPを送っています。これを図5(b)に対応させます。公式解答例の図では、(C)内に「e(VoIP-GW)↔IPTEL」の双方向RTP矢印と、その下に「e(VoIP-GW)→ロガー」の一方向RTP矢印を追加しています。f(IP-PBX)は音声を中継しないため、RTP矢印の端点にはなりません。

設問4(4)

本文には、図5(a)のSRCが音声中継だけでなく通話用セッションの生成にも関与するとあります。SRCとなるVoIP-GWには、音声とともに呼制御に関するSIPセッション情報も届くため、呼情報を録音用セッションで通知できます。公式解答例の要点は「VoIP-GWには呼制御に関するSIPセッション情報も送られてくるから」で、40字以内に収まります。採点講評では、通話用と録音用のSIPメッセージを同一と考える誤りが指摘されており、SRCが把握した情報を別のセッションで通知する点を押さえます。

設問4(5)

パッシブ方式では、ミラーフレームをロガーへ届けるためのVLAN、トランク接続、学習抑止などの設定が必要でした。アクティブ方式では、SRCが録音用セッションを生成してコピーした音声を送るので、この転送用設定が不要になります。公式解答例に沿う30字以内の答案は「ミラーポート出力フレームの転送用設定が不要だから」です。本文で問題となったネットワーク構成作業の負担に対応させて答えます。

設問5(1)(ア)

表1のFWポート1は、図6の拠点側IPsec-VPN装置からA社側IPsec-VPN装置へ向かう通信を許可する箇所です。送信元となる拠点側IPsec-VPN装置のアドレスはIP01、宛先は表に記載されたIP03です。公式解答例は「IP01」です。図中のIP02は拠点側FWのアドレスなので、通信の発信元となる装置を確認します。

設問5(1)(イ)

FWポート2の先にはSSL-VPN装置があり、モバイル環境のPCがHTTPSでアクセスします。拠点外のPCは接続元IPアドレスが一定ではないため、送信元を特定の固定アドレスに限定しません。公式解答例は「Any」です。表の注記に従い、送信元IPアドレスをフィルタリング条件としてチェックしないことを表します。

設問5(1)(ウ)

空欄ウの行は、プロトコル番号50のESPを許可する条件です。直上のUDPの行ではIKE用にポート番号500を指定していますが、ESPにはTCPやUDPのようなポート番号がありません。したがって、ポート番号をチェックしない「Any」が公式解答例です。プロトコル番号50とポート番号を混同しないことが要点です。

設問5(1)(エ)

本文には、モバイル環境のPCがA社センタへの接続にHTTPSを使用すると明記されています。その接続先であるSSL-VPN装置への許可条件なので、HTTPSのポート番号を入れます。公式解答例は「443」です。図6の装置やFWの物理ポート番号と、表1で問われる通信のポート番号を区別します。

設問5(2)

下線⑧では、認証後に仮想NICを作り、レイヤ2のトンネルを通してサービス提供用内部LANと通信するとあります。この仮想NICは内部LANへ接続するインタフェースなので、そのネットワークに属するアドレスが必要です。公式解答例に沿う35字以内の答案は「サービス提供用内部LANのネットワークに属するIPアドレス」です。モバイルPCが外部接続に使うアドレスと、トンネル内で使う仮想NICのアドレスを区別します。

設問5(3)

下線⑨は、ハードウェア障害に備えた冗長化のコストを問うています。FWやVPNの機能を仮想サーバ上のソフトウェアとして実現すれば、機器ごとに異なるハードウェアをそろえる必要がなくなります。公式解答例もこの点を理由としています。40字以内なら「機器ごとに異なる冗長化用ハードウェアを用意せずに済むから。」と記述できます。採点講評では、一般的な仮想化の利点ではなく、冗長化構成のコストに結び付けた説明が求められています。

学習のポイント

SIPとRTPの役割分担、NATが変換する範囲、スイッチの送信元MACアドレス学習と転送判断を重点的に学び、図から通信経路と必要な設定を説明できるようにします。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針