NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ

平成26年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 ネットワークのセキュリティ対策に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 X銀行は、Q県を本拠地とする中堅の地域金融機関である。X銀行は、基幹システムである勘定系システムの運用を他行との共同センタに委託しているが、自行にもコンピュータセンタをもっており、インターネットバンキングはX銀行独自のシステム(以下、IBシステムという)で運用している。IBシステムの構成を、図1に示す。 図1 IBシステムの構成(抜粋) IBシステムは、Webを使ったインターネット経由の顧客向けサービスである。IBシステムは、勘定系システムで管理している口座残高などの情報を除き、独自のユーザID、パスワードなどの重要情報をデータベースに保有している。IBシステムのWebサーバは、業務セグメントのPCからもアクセスできる。 最近、IBシステムへのサイバー攻撃が増加している。金銭的な被害は発生していないが、セキュリティインシデントは頻繁に発見されている。 〔サイバー攻撃対策〕 X銀行では、サイバー攻撃対策のためのセキュリティ担当者として、システム企画部の主任のF氏が任命されている。次は、新たにシステム企画部に着任したG君と、F氏の会話である。 G君:最近のサイバー攻撃にはどのようなものがあるのですか。 F氏:最近、標的システムへの通信量を増大させて、ネットワークやサーバの処理能力を占有することによって、正常な取引の処理を妨害し、場合によってはサーバをダウンさせるDoS攻撃が、頻繁に発生している。特に、多数のコンピュータが標的サーバを集中的に攻撃する【ア】型DoS攻撃は、発信元のコンピュータの特定が難しいので、被害が大きくなるといわれている。DoS攻撃には、TCPのパケットを大量に送信し、応答待ちにして新たな接続を妨害するSYN【イ】攻撃や、コネクションレスのUDPパケットを使ったUDP【イ】攻撃などがある。 G君:DoS攻撃といえば、DNSの機能を悪用したものがあるそうですね。 F氏:例えば、PCなどから問合せを受けたDNSサーバが、他のDNSサーバにも問合せを行い、最終的な結果を返信する【ウ】的な問合せにおいて、発信元のIPアドレスを詐称して、その問合せの結果を標的サーバ宛てに送信させるDNS【エ】攻撃と呼ばれるものがある。このような、オープンリゾルバを用いた攻撃に関しては、自らも攻撃の踏み台とならないようにすることが重要だ。サイバー攻撃に対応するためには、常に最新のセキュリティ対策を施しておく必要がある。 X銀行では、DNSへのサイバー攻撃に対応するために、IBシステムに様々な対策を施している。そのうちの一つが、DNSのセキュリティ対策である。 〔DNSのセキュリティ対策〕 IBシステムのDNS概念図を、図2に示す。 図2 IBシステムのDNS概念図 図2のDNSは、次のセキュリティ対策方針に基づいて構築されている。 ・DNSサーバが管理するドメインを、DMZ(外部向けゾーン)と内部セグメント(内部向けゾーン)に分け、それぞれゾーン転送を行う。 ・①DMZのDNSサーバは、キャッシュ機能を無効にしたセカンダリの冗長構成として、DMZに設置されグローバルIPアドレスを割り当てられたWebサーバの名前解決に使用する。 ・内部セグメントのDNSサーバは、プライマリ、セカンダリ、キャッシュをそれぞれ別のサーバ機器で稼働させる。 ・内部セグメントのプライマリDNSサーバには、DNSの問合せが来ないようにし、ゾーン転送の宛先は自行内のセカンダリサーバに限定する。 ・内部セグメントのセカンダリDNSサーバは、内部セグメントに設置されたデータベースサーバの名前解決に使用する。 ・FWにおいて、内部セグメントのDNSサーバからDMZのDNSサーバへの通信は、TCP/UDPともポート番号53番だけを許可する。 DNSの対応を含めた上記のセキュリティ対策を正しく実装し、実効性を確保することが必要である。 次は、侵入検査とインシデント管理に関する、F氏とG君の会話である。 G君:被害が発生してからでは遅いのではないでしょうか。被害を未然に防ぐ対策はないのですか。 F氏:そうだね。当行では、実際に脆弱性があるかどうか調査するための侵入検査、いわゆる【オ】テストを定期的に実施して、セキュリティ対策の状況を評価している。しかし、それだけでなく、平常時の状態をよく監視しておき、被害が発生する前の兆候をつかむことが大切だ。そのためにはインシデント管理が重要だと考えている。また、②外部からの不正アクセスだけでなく、内部から外部への通信にも十分に注意しなければならないね。 G君:少しでも不審な動きがあったら、事前に定めておいた対応手順に従って、迅速に対応する必要があるということですね。 〔インシデント管理〕 IBシステムにおいて、不正侵入などのサイバー攻撃に関わる重大なインシデントが発生した場合、社内のインシデント発見者又は社外からのインシデント連絡を受け付ける担当者が、定められた手順に従ってセキュリティ担当者への連絡を行う。インシデントの連絡を受け付けたセキュリティ担当者は、発生したインシデントの状況を把握し記録した後、必要な対処を実施することが定められている。 IBシステムにおいて、サイバー攻撃に関わる重大なインシデントが発生したときのために、X銀行が定めた対応手順を、図3に示す。 図3 IBシステムのサイバー攻撃に関わる重大なインシデント発生時の対応手順 X銀行では現在、適切なセキュリティ対策を実施し、インシデント発生時に迅速に対応することによって、IBシステムを順調に稼働させている。 設問1 本文中の【ア】~【オ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 〔サイバー攻撃対策〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 本文中の【a】に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 大量のパケットを送信する攻撃として、大きなサイズのICMPエコー応答を使ったものがある。この攻撃を防御するために、図1中のFWがもつべき機能は何か。30字以内で具体的に述べよ。 設問3 〔DNSのセキュリティ対策〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線①の対策をとらなかった場合、どのようなセキュリティ上の脆弱性が考えられるか。20字以内で述べよ。 (2) 本文中のセキュリティ対策を実施した場合の、図2中の空欄のDNSサーバと、DNS問合せ及びゾーン転送について、凡例に従って図2を完成させよ。 (3) 本文中の下線②で、内部から外部への不正な通信を発見又は防止するために必要な、FWでの対策を二つ挙げ、それぞれ30字以内で述べよ。 設問4 〔インシデント管理〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 図3中の【b】は、セキュリティ担当者の対応として必要な、ネットワークに係る作業である。その作業の内容を15字以内で答えよ。 (2) 対処結果の報告後、将来発生するインシデントへの対応として、セキュリティ担当者が実施すべき事項がある。その内容を30字以内で述べよ。
図1 IBシステムの構成(抜粋)。インターネット、FW、DMZ、Webサーバ、DNSサーバ、内部セグメント、データベースサーバ、業務セグメントなどの接続構成を示す図。
図1 IBシステムの構成(抜粋)。インターネット、FW、DMZ、Webサーバ、DNSサーバ、内部セグメント、データベースサーバ、業務セグメントなどの接続構成を示す図。
図2 IBシステムのDNS概念図。インターネット、DMZ、業務セグメント、内部セグメント間におけるDNSサーバの配置、DNS問合せ、ゾーン転送を示す概念図。
図2 IBシステムのDNS概念図。インターネット、DMZ、業務セグメント、内部セグメント間におけるDNSサーバの配置、DNS問合せ、ゾーン転送を示す概念図。
図3 IBシステムのサイバー攻撃に関わる重大なインシデント発生時の対応手順。発見者又は受付担当者とセキュリティ担当者に分け、状況把握、対処、連絡、復旧、報告までの対応手順を示す図。
図3 IBシステムのサイバー攻撃に関わる重大なインシデント発生時の対応手順。発見者又は受付担当者とセキュリティ担当者に分け、状況把握、対処、連絡、復旧、報告までの対応手順を示す図。
解き方のヒントを見る

検討する対象と範囲をそろえる

ネットワークに関する事項を検討するときは、まず何を対象にしているのか、その範囲を整理しましょう。記載された条件を手掛かりに、検討の途中で対象の範囲が変わっていないかを確かめることが大切です。

この問題で問われていること

着目するのは、検討の対象となる範囲です。与えられた条件のうち、その範囲を定める記述を確認し、自分が考えている範囲とそろっているかを見直しましょう。明示されていない範囲まで広げて考えていないかも確認します。

視点

対象の範囲を整理すると、条件がどこまで当てはまるかを考えやすくなります。検討中も同じ範囲を保ち、記載のない部分を自分の想定で補っていないかを見直しましょう。

確認ポイント

  • 検討する対象の範囲を整理したか
  • 記載された条件と対象の範囲がそろっているか
  • 検討の途中で対象の範囲を広げていないか
正解と解説を見る

解説

X銀行のIBシステムについて、DoS攻撃の特徴、DNSキャッシュの保護とサーバの役割分担、FWによる通信遮断と監視、重大インシデント発生時の切断及び対応後の改善を考える問題です。

問題の全体像

X銀行は独自のIBシステムを運用し、DMZにWebサーバとDNSサーバ、内部セグメントにDNSサーバとデータベースサーバを配置しています。サイバー攻撃が増加する中で、DNSの構成やFWの設定を整え、重大なインシデントには定めた手順で対応する事例です。出題趣旨では、DNSのセキュリティ対策とインシデント管理の基本的な知識・理解力を問うとしています。用語を答えるだけでなく、本文の構成条件を図に反映し、被害拡大の防止から対応後の改善まで説明することが求められます。

設問1(ア)

「多数のコンピュータが標的サーバを集中的に攻撃する」という説明に着目します。攻撃元が多数に分かれていることから、公式解答例では「分散」です。空欄に入れると「分散型DoS攻撃」となり、DDoS攻撃を指します。標的への攻撃は集中していますが、分散しているのは攻撃元です。

設問1(イ)

TCPのパケットを大量に送って接続を妨害する説明と、UDPパケットを大量に使う説明に共通する語を考えます。公式解答例では「フラッド」です。SYNフラッド攻撃では接続確立途中の応答待ちを大量に生じさせ、UDPフラッド攻撃では大量のUDPパケットによって通信や処理の資源を消費させます。

設問1(ウ)

「問合せを受けたDNSサーバが、他のDNSサーバにも問合せを行い、最終的な結果を返信する」という説明が根拠です。公式解答例では「再帰」であり、本文では「再帰的な問合せ」となります。問合せを受けたサーバが、依頼元に代わって最終的な名前解決の結果を求める点を押さえます。

設問1(エ)

発信元IPアドレスを詐称し、DNSサーバからの応答を標的サーバへ送らせる説明に着目します。公式解答例では「リフレクタ」です。DNSサーバが応答の送信先として扱うのは詐称された発信元なので、攻撃者の問合せに対する応答が標的へ向かいます。この応答を利用する仕組みが、本文のDNSリフレクタ攻撃です。

設問1(オ)

「実際に脆弱性があるかどうか調査するための侵入検査」という説明が根拠です。公式解答例では「ペネトレーション」であり、「ペネトレーションテスト」となります。侵入を試みる検査を通じて、実装されたセキュリティ対策の状況を評価するものとして理解します。

設問2(1)

問題冊子の画像では、オープンリゾルバを用いた攻撃について「自らも攻撃の【a】とならないようにする」とあります。公式解答例では「踏み台」です。外部からの問合せに無制限に応じると、詐称されたIPアドレスへ応答を送信し、第三者への攻撃に利用されるおそれがあります。自組織を守るだけでなく、攻撃に加担するサーバを作らないという視点です。

設問2(2)

設問の「大きなサイズのICMPエコー応答」と、FWがもつべき具体的な機能に着目します。大きなIPパケットは断片化されるため、公式解答例では「断片化されたエコーパケットを許可しない機能」としています。30字以内の答案では、この表現のように、対象を「断片化されたエコーパケット」、動作を「許可しない」と明確にします。「攻撃を防ぐ機能」だけでは、何を遮断するのかが示されません。

設問3(1)

下線①のうち「キャッシュ機能を無効にした」という条件に着目します。キャッシュを保持していれば、その内容が改ざんされる危険があるため、公式解答例では「DNSキャッシュが改ざんされる。」です。20字以内では、改ざんされる対象がDNSキャッシュであることを端的に示します。直前の踏み台の話題だけから答えず、この設問が指定した対策と脆弱性を対応させることが大切です。

設問3(2)

公式解答例の図では、DMZ左側の空欄は「DNS-S」、PCから問合せを受ける内部セグメント左側の空欄は「DNS-C」、内部セグメント下側の空欄は「DNS-S」です。DMZはセカンダリの冗長構成、内部ではプライマリ・セカンダリ・キャッシュを別機器で稼働させるという条件から決まります。実線の問合せは、PC→DNS-C、DNS-C→インターネット・DMZのDNS-S二台・内部のDNS-S、インターネット→DMZのDNS-S二台となります。破線のゾーン転送は、内部のDNS-PからDMZのDNS-S二台及び内部のDNS-Sへ向けます。図にある内部DNS-Sへの破線に加え、DMZの二台への破線矢印を追加します。外部向けと内部向けでは転送するゾーンが異なり、DNS-Pへ問合せを向ける矢印は描きません。採点講評では、経験や一般知識だけで解答せず、本文の条件に従って配置と通信を図示すること、問合せとゾーン転送の仕組みを理解することを求めています。

設問3(3)

下線②は、内部から外部への不正な通信にも注意するという指摘です。「防止」と「発見」を分けて考えると、公式解答例の二つの対策につながります。一つは内部から外部への通信に遮断ルールを設定すること、もう一つはFWで遮断した通信の結果ログを監視することです。それぞれ30字以内では「内部から外部への通信に対する遮断ルールを設定する。」「FWで遮断した通信の結果ログを監視する。」と表せます。設定によって通信を止め、ログの監視によって不審な通信の試みを把握するという役割の違いを押さえます。

設問4(1)

図3では、空欄bが「対処方法の確認」の後、「原因の特定と対処」の前にあります。重大なインシデントが発生しているため、原因調査に先立って攻撃や被害の拡大を抑えるネットワーク上の作業が必要です。公式解答例では「ネットワークの切断」です。この表現で15字以内に収まり、対応手順のこの段階で行う作業を具体的に示せます。

設問4(2)

設問は復旧や報告の後に、将来のインシデントへの対応として行う事項を問うています。公式解答例では、対処結果を評価し、インシデントの対処方法を見直すことを挙げています。30字以内では「対処結果を評価し、インシデントの対処方法を見直す。」と表せます。「評価」と「見直し」の両方を含め、今回の対応から得た知見を次回の手順改善につなげます。採点講評でも、PDCAサイクルに従った改善手法を実務に応用できることを重視しています。

学習のポイント

DNS問合せとゾーン転送の違いを理解し、本文の条件から構成を導く力と、インシデント対応を評価・改善する視点を身に付けましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針