NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
平成25年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題








解き方のヒントを見る
要件と判断対象の対応を確認する
無線LANの導入を検討するときは、与えられた要件と判断対象の対応に着目しましょう。用語から結論を急がず、何を満たすための検討なのかを整理し、その要件に沿って考えることが大切です。
この問題で問われていること
この問題では、検討の対象がどの要件と結び付いているかを意識してください。判断に使おうとしている情報が、その要件を確かめるためのものかを振り返り、別の目的に関する情報と混同していないかを確認しましょう。
視点
要件と判断対象の対応とは、何のために検討するのかと、何について判断するのかを結び付けて考える視点です。扱う情報の多さよりも、同じ目的に沿って検討しているかに注意しましょう。
確認ポイント
- 確認したい要件を明確にできているか
- 判断対象をその要件に結び付けているか
- 判断に使う情報は同じ要件に関係しているか
正解と解説を見る
解説
既設LANのSTP、VRRP、リンクアグリゲーションを組み合わせて転送経路を読み取り、無線LANの認証と暗号化、固定IPアドレスを維持したローミング、サイトサーベイの役割を理解する問題です。
問題の全体像
E社は、固定IPアドレスと部署別のアクセス制御を用いる本社LANに無線LANを追加し、モバイル端末を移動しながら利用できる環境を構築しようとしています。出題趣旨では、既設LANの構成・動作の分析、本文に基づくモバイルIPの理解、無線LAN関連技術の理解を問うとしています。既設LANの冗長化を整理し、認証と暗号化、サブネット間のローミング、電波調査と導入後の検証へと読み進めます。設問5では、調査対象、設計項目、テスト内容を区別し、(1)はそれぞれ25字以内、(2)はそれぞれ15字以内、(3)はそれぞれ25字以内で答えます。
設問1(ア)
〔現状調査〕の「接続を許可するPCとサーバのIPアドレスの組合せ」に着目します。図1でPC側とサーバ側の異なるVLAN間を中継する機器はL3SW1とL3SW2です。IPアドレスに基づくパケットフィルタリングを設定する機器の種類として、公式解答例では「L3SW」又は「レイヤ3スイッチ」を示しています。
設問1(イ)
本文は、L3SW1をSTPのルートブリッジにするためのブリッジIDの条件を問うています。STPではブリッジIDが最小のスイッチがルートブリッジに選ばれるので、他のスイッチより小さい値にする必要があります。公式解答例では「最小」です。
設問1(ウ)
「無線LANの最初の標準規格」と、オープンシステム認証・共有鍵認証・WEPが規定されている点に着目します。公式解答例では「802.11」です。後段の802.11iは、元の規格におけるセキュリティ上の問題を改善する規格として記述されているので、両者を区別します。採点講評でも、この基本規格の理解を求めています。
設問1(エ)
共有鍵認証では、MNがAPから受信した乱数を、共有するWEPキーで処理して返送します。APがその応答を確認することで、同じ鍵を持つことを確かめる仕組みです。公式解答例では「暗号化」です。乱数をそのまま返すのではなく、共有鍵を使って暗号化する処理に着目します。
設問1(オ)
本文は、WEPが基にしている暗号アルゴリズムの名称を問うています。公式解答例では「RC4」です。WEPは無線LANで用いる暗号化方式の名称であり、その基になる暗号アルゴリズムとは区別します。採点講評では、この設問も無線LANの基本技術として理解しておくべき事項に挙げています。
設問1(カ)
「ネットワークの識別子」と、ローミング対象の全APで同じ値が必要という記述に着目します。公式解答例では「ESSID」又は「SSID」です。移動前後のAPを同じ無線LANの接続先として扱うために、ネットワークを識別する値をそろえると考えます。
設問2(1)(①)
図1のL2SW3とL2SW4はスタック接続され、物理サーバの接続ポートにはアクティブ/アクティブのチーミングが設定されています。物理サーバ1に接続する両スイッチのP21を組にすると、同じサーバへの複数リンクをまとめられます。公式解答例の一つ目は「L2SW3のP21とL2SW4のP21の組」です。
設問2(1)(②)
図1で物理サーバ2に接続するポートをたどると、L2SW3のP22とL2SW4のP22です。L2SW3とL2SW4がスタック接続されているため、この二つのポートを組にしたリンクアグリゲーションを構成できます。公式解答例の二つ目は「L2SW3のP22とL2SW4のP22の組」です。
設問2(2)
表1のVR1のPriority値を比較します。L3SW1は200、L3SW2は100であり、VRRPでは優先度の高い側がマスタルータとなります。したがって、公式解答例では「L3SW1」です。STPのルート選出に用いるブリッジIDと、VRRPのマスタ選出に用いるPriority値を混同しないことが重要です。
設問2(3)
ルートブリッジはL3SW1です。図1でL2SW2のP11からL3SW1へ直接向かう経路のコストは1、000ですが、P12からL3SW2を経由する経路は100+10=110です。STPはルートまでのコストが小さい経路を選ぶので、P11側がブロッキングになります。公式解答例の要点はP11側のパスコストが最も大きいことです。40字以内では「P11側のルートへのパスコストが最も大きいから」とまとめられます。
設問2(4)(機器名)
図1のL2SW3とL2SW4はスタック接続されています。L3SW1へはL2SW3側からコスト100で到達でき、L2SW4側からL3SW2を経由するとコスト100+10=110になります。ルートまでのコストが大きい上りリンク側をブロックするため、公式解答例の機器名は「L2SW4」です。
設問2(4)(ポートID)
ブロッキング対象となるのは、L2SW4からL3SW2へ接続するリンクです。図1のそのリンクに付いたポートIDを確認するとP23なので、公式解答例では「P23」です。サーバ接続用のP21・P22や、L3SW側のP4と区別して、ブロックされる側のポートを答えます。
設問2(5)(A)
PC1はL2SW1に接続され、デフォルトゲートウェイはVIP1です。表1からVIP1のマスタはL3SW1であり、STPでもL2SW1からL3SW1への直接経路が選ばれます。PC1からのフレームはL2SW1、L3SW1の順に進み、その後サーバ側へ転送されます。公式解答例では「L2SW1 → L3SW1」です。
設問2(5)(B)
仮想サーバ3のデフォルトゲートウェイはVIP4で、表1からそのマスタはL3SW2です。一方、サーバ側のSTP経路はL3SW1側を通るため、返送フレームはまずL3SW1を通り、VLAN110上でL3SW2へ届きます。L3SW2でPC1側のVLAN10へ中継された後、再びL3SW1を通ってL2SW1へ進みます。公式解答例では「L3SW1 → L3SW2 → L3SW1 → L2SW1」です。同じ機器が二度現れるのは、異なるVLANのフレームとして通過するためです。
設問3(1)
下線(あ)は、WEPキーを見破られた場合の「不正アクセス以外」のリスクを問うています。本文では同じWEPキーを通信データの暗号化にも使うので、鍵が知られると傍受した暗号化データも解読されます。公式解答例では「暗号化されたデータが盗聴されてしまうこと」です。25字以内の答案では、暗号化された通信内容が盗聴されるという要素を押さえます。
設問3(2)
図2の接続手順のうち、IEEE 802.1X認証に着目します。事前認証やPMKキャッシュによって、APを切り替える時点で認証をやり直す必要がなくなり、その分だけローミング時間を短縮できます。公式解答例では「IEEE 802.1Xの認証が不要になるから」又は「再認証が不要になるから」です。25字以内では「再認証が不要になるから」とまとめられます。
設問3(3)
図3でAP1からAPiへの移動は同じサブネット内ですが、APjへの移動は別のサブネットへの移動です。MN1の固定IPアドレスとデフォルトゲートウェイが変わらないため、移動先から元のゲートウェイへ接続できません。公式解答例では、このゲートウェイへの接続不能、又は通信相手とのコネクション確立不能を示しています。35字以内では「移動後も設定が変わらず元のゲートウェイに接続できないから」と書けます。採点講評も、設定情報が変更されない条件への着目を求めています。
設問4(1)
図4の①では、FAがAdvertisementメッセージを送出し、MNがそれを受信して移動先を判別します。特定のMNだけに送る通信ではなく、ネットワーク内の端末に知らせる通信として宛先の種類を考えます。公式解答例では「マルチキャストアドレス」又は「限定的ブロードキャストアドレス」です。ここでは種類を答える設問なので、具体的なアドレス値は必要ありません。
設問4(2)(名称)
図4の②でHAが移動情報を登録した後は、ホームネットワーク内のホストがMN宛てのフレームをHAへ届けられるようにする必要があります。そのため、各ホストが保持するARPキャッシュを更新する通信を行います。公式解答例の名称は「GARP(Gratuitous ARP)」です。位置登録の転送先テーブルと、ホスト側のARPキャッシュを区別します。
設問4(2)(目的)
HAがMN宛てのパケットを代理受信するには、同一サブネット内のホストが保持するIPアドレスとMACアドレスの対応を更新する必要があります。公式解答例では「同一サブネット内のIPノードがもつARPキャッシュを更新させるため」です。40字以内では「同一サブネット内のホストのARPキャッシュを更新させるため」とまとめられます。採点講評では、この通信の目的の正答率が低く、ARPテーブルの更新の理解が重要だったとしています。
設問4(3)
下線(え)の代理受信を実現するには、MNのIPアドレスに対するARP要求へHAが代わりに応答します。これにより、MN宛てのフレームをHAが受け取れるようになります。公式解答例では「プロキシARPで代理応答する。」です。20字以内の答案では、プロキシARPによる代理応答という処理を明示します。
設問4(4)(a)
図6の(ii)は、MN1の位置情報を更新し、その内容をホームネットワークのAP1のHAへ送る処理です。表2で、認証時に移動情報テーブルへ登録し、該当APのHAに情報を送る機能はHAプロキシです。公式解答例では「HAプロキシ」です。位置情報の管理を担う機能として対応付けます。
設問4(4)(b)
図6の(iv)は、移動先APjがMN1から受信した社外宛てパケットをL3SWへ中継する処理です。表2のAPのFAには、無線LAN側で受信したパケットの送信元がAP自身と異なるサブネットの場合に、経路情報に基づいて中継する機能が記載されています。公式解答例では「FA」です。
設問4(4)(c)
図6の(vi)は、ホームネットワークのAP1がMN1宛てのパケットを受信し、移動中であることを確認してWLCへカプセル化転送する処理です。表2でこの役割を担うのはAPのHAです。公式解答例では「HA」です。ホーム側で受信したパケットを移動先へ届けるための入口として捉えます。
設問4(4)(d)
図6の(vii)は、WLCがカプセル化を解除し、移動情報テーブルから移動先APjを判別した後、再度カプセル化して転送する処理です。表2のFAプロキシの機能概要が、この処理に一致します。公式解答例では「FAプロキシ」です。位置情報を登録するHAプロキシとの役割の違いを確認します。
設問4(4)(e)
図6の(viii)は、移動先APjがWLCから受信したパケットのカプセル化を解除し、MN1へ送る処理です。表2のAPのFAの②に、そのまま対応する機能が記載されています。公式解答例では「FA」です。同じFAが、MNからのパケットの中継と、MNへ届けるパケットのカプセル化解除を担います。
設問5(1)(①)
下線(お)の「他社の無線LANの影響を受ける」と、本社がテナントビルに入居している条件に着目します。干渉源を把握するため、社外から届く無線LANの電波状態を調べます。公式解答例では「社外から送信される無線LANの電波状態」です。25字以内では「社外からの無線LANの電波状態」とまとめられます。採点講評では、測定対象が分かる具体的な記述を求めています。
設問5(1)(②)
下線(お)の「通信できないエリアが発生する」と、壁やパーティションでオフィスが分割されている条件に着目します。APの電波がどこまで届くかを調べ、遮蔽物による伝搬への影響を把握します。公式解答例では「APからの電波到達範囲」又は「壁やパーティションの電波の透過状態」です。25字以内では、到達範囲や透過状態のどちらを調べるかを具体的に示します。
設問5(2)(①)
本文は、電波の伝搬状態を把握しないと「APの最適な場所への設置」ができないとしています。調査した到達範囲や遮蔽物の影響を基に、通信できないエリアを避ける配置を決めます。公式解答例では「APの設置場所の設計」です。15字以内の答案として、この表現で設計対象を明示できます。
設問5(2)(②)
複数のAPを設置し、他社の無線LANの影響も考慮するため、電波調査の結果から使用するチャンネルを決めます。公式解答例では「使用するチャンネルの設計」のほか、「APの設置方法の設計」「APの出力電波強度の設計」も示しています。15字以内では「使用するチャンネルの設計」と答えられます。調査する電波の状態と、その結果から決める設計項目を区別します。
設問5(3)(①)
pingによる接続確認だけでは、下線(お)の「期待どおりの通信速度が得られない」という問題を十分に確認できません。MNで実際にデータを転送し、実効通信速度を測定します。公式解答例では「FTPなどによる実効通信速度のテスト」です。設問の条件はそれぞれ25字以内なので、転送手段と確認する性能をこの粒度で示します。
設問5(3)(②)
導入の目的は、MNが移動しながら利用でき、サブネットをまたいでも通信を継続できる環境を作ることです。そのため、MNを実際に移動させ、APの切替え時に通信を継続できるかを確認します。公式解答例では「MNを移動させてのローミング可否のテスト」です。25字以内の答案では、端末を移動させることと、ローミングの可否を確認することを押さえます。
学習のポイント
レイヤ2の転送とレイヤ3の経路選択を区別し、移動時のゲートウェイ到達性、ARPキャッシュ更新、電波調査から設計・検証へのつながりを重点的に学習しましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成25年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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