NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成25年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 開発システムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 IT関連会社のF社とG社は、両社の強みを生かして合併することになった。両社とも、複数の開発部門で各種の製品やシステムを開発している。開発のため、各開発部門は、独自に開発・評価用システム(以下、開発システムという)を構築している。その結果、全社的に見て、サーバ、ストレージ及びネットワークを十分に有効活用できていなかった。 そこで、F社とG社では、合併を機に、情報システム部門が開発システムを一括管理し、利用者である開発部門にITプラットフォームを提供するという形態の新システムに移行することになった。新システムへの移行に伴い、情報システム部門のK主任とT君は、新システムを実現する基盤ネットワークの構築担当になった。 〔新システムへの移行方針と移行後の開発システムの構成〕 K主任は、新システムの検討に当たって、次のような移行方針で進めることにした。 (1) サーバを仮想環境に移行することで、新たなサーバ増設要求への対応時間の短縮及び必要に応じた柔軟な構成の変更を実現する。ただし、移行当初は、既設サーバをそのまま活用する。 (2) PCを収容するレイヤ2スイッチは、コスト削減のために、できるだけ既設のものを流用する。 (3) 利便性向上のために、開発部門のPCは、社内のどこからでも所属部門の開発システムに接続できるようにする。 (4) 各開発部門は、これまで独自に開発システムを運用していたので、各開発・評価用ネットワーク(以下、開発ネットワークという)間でIPアドレスの重複があるが、再設定をせずに新システムに移行できるようにする。 K主任から移行後の開発システムについて検討するよう指示されたT君は、図1に示すような移行後の構成(概要)を考えた。図1中の、異なる網掛けのサーバとPCは、それぞれ別の開発部門に属しているが、新規に導入するスイッチによって物理ネットワークの共用化を目指している。 図1 移行後の開発システムの構成(概要) 〔ネットワーク仮想化技術の調査〕 新システムを実現するためには、各開発部門が独自に構築したネットワークを、一つの物理ネットワークに収容する必要がある。そこで、K主任は、物理ネットワークに依存しない、開発部門ごとの論理的なネットワーク(以下、テナントネットワークという)を構築することにし、T君にネットワーク仮想化技術の調査を指示した。 T君が調査したところ、大別して二つの新しい技術があることが分かった。 一つは、オーバレイ方式と呼ばれるネットワーク仮想化方式で、レイヤ3ネットワーク上にレイヤ2をカプセル化して、同一テナントネットワークに属するサーバ間の接続用トンネルを作ることによって、ネットワーク仮想化を実現する。 もう一つは、スイッチを、経路制御などの管理機能を実行するフローコントローラ(以下、OFCという)と、データ転送を行うフロースイッチ(以下、OFSという)に分け、OFSに入るパケットの経路制御をOFCが集中制御する方式(以下、OF方式という)である。OF方式は、カプセル化を使わず、OFSそれぞれの転送によって実現されることから、ホップバイホップ方式と呼ばれることもある。 オーバレイ方式又はOF方式で実現されたネットワークは、どちらもソフトウェアで定義できることから、【a】と呼ばれている。 OF方式では、OFSに入ってきたパケットのMACアドレス、IPアドレス、TCPポート番号などの属性の組合せを“フロー”と呼び、そのパケットをどのように処理するかの判定に使用する。フローを識別し、入力されたパケットに対する処理を、OFS内のフローテーブル(以下、f-TBLという)に設定する。OF方式でのOFCとOFSの構成を、図2に示す。OFCとOFS間の制御情報(以下、メッセージという)の交換のプロトコルを、OF Protocolと呼ぶ。 図2 OF方式でのOFCとOFSの構成 図2中のf-TBLの一つのエントリには、フローの識別情報(以下、Ruleという)を保持するRuleフィールド、Ruleに一致したフローをもつパケットに対する処理内容(以下、Actionという)を記述したActionフィールド、一致したフローのカウント値を保持するStatisticsフィールドなどがある。RuleとActionは、OFCが設定する。Ruleとして利用できる情報、Action及びメッセージの例を、表1に示す。 表1 Ruleとして利用できる情報、Action及びメッセージの例(抜粋) なお、ネットワークに参加するOFSは最初に必ずOFCに接続し、OFSのポート情報などをOFCに通知する。OFCは、OF Protocolを使ってトポロジを把握する。 フローに対し、f-TBL内にRuleが一致するエントリがあった場合、OFSは当該エントリに記述されたActionの動作を行う。一方、なかった場合は、OFSはPacket InメッセージをOFCに送信し、そのパケットの処理方法を問い合わせるモードで動作する。Packet Inを受信したOFCは、Flow Modメッセージを使用してf-TBLに処理のエントリを登録したり、Packet Outメッセージを使用して指定ポートからのパケット送信をOFSに指示したりする。f-TBL内のRule及びAction内容の例を、表2に示す。 表2 f-TBL内のRule及びAction内容の例 表2中に示した機能のうち、転送機能はネットワーク機器の【b】としての機能を実現するために使われる。また、パケット書換え機能は【c】としての機能を実現するために使われる。 K主任から、これまで調べた二つの仮想化方式の違いを説明するように指示されたT君は、ネットワーク仮想化方式の説明図を図3に、オーバレイ方式とOF方式の比較を表3にまとめた。OF方式では、仮想SWもOFSとして動作する。 図3 ネットワーク仮想化方式の説明図 表3 オーバレイ方式とOF方式の比較 次は、表3に関するK主任とT君の会話である。 K主任:技術の動向としては、どういうところがポイントなのかな。 T君:そうですね。集中管理によるネットワークの運用性の改善や帯域の有効利用を目指した技術の開発が進んでいるといったところです。 K主任:オーバレイ方式は既設ネットワークの再利用性が高いが、既設サーバの接続や拠点間接続がある場合には、何か対応が必要ではないのか。 T君:既設サーバの接続では、図3中のサーバ接続用スイッチに【ア】する機能が必要になりますし、拠点間の接続では【イ】への対応が必要となる可能性があります。 K主任:既存システムでは老朽化した機器も多いし、合併を機にシステムも刷新したいから、OF方式を取り入れた新システムを開発できるかどうか検討してくれないか。 T君:分かりました。 〔テナントネットワーク実現性の検討〕 新システムの検討に先立ち、T君は、共用する物理ネットワーク内の、テナントネットワークの実現性について検討することにした。 OF方式では、基本的にレイヤ2でネットワークを構成するので、レイヤ2で接続機器を識別するMACアドレスと、接続機器がどのテナントネットワークに属するかを識別するテナントネットワーク識別情報(以下、テナントIDという)は、全て、OFC側で集中管理される。また、OFSのポートに、どのテナントネットワークに属する機器が接続されるかも、OFC側で集中管理される。この前提を基に、ブロードキャストとユニキャストについて、どのようにフレーム転送を制御すればよいかを検討した。 T君が作成した、テナントネットワーク実現のためのOFCとOFSの動作説明図を図4に示す。 図4 テナントネットワーク実現のためのOFCとOFSの動作説明図 T君は、ARPによるアドレス解決がされていれば、ユニキャストのフレーム転送では、送信端末がどのテナントネットワークに属しているかを判断することなく、宛先MACアドレスをもつ端末に向けてフレームを中継していくという単純な実装ができると考えた。①図4中のPC1からPC7へユニキャストフレームを転送する場合について、f-TBLに一致するRuleがなかった場合の処理を、T君は次のように考えた。“OFCは中継するOFSに対して宛先MACアドレスをもつ機器までのRuleとActionをf-TBLに設定し、転送を指示すればよい。” 一方、ARPやDHCPといったブロードキャストフレームの転送では、送信端末の属するテナントネットワークに限定してフレームを送出する必要がある。例えば、②図4中のPC1が、所属するテナントネットワークのPC7にパケットを送信するために、ARP要求を送信した場合について、T君は次のように考えた。“機器のMACアドレスと所属するテナントネットワークの対応情報は、OFCにあらかじめ登録されている。その情報を使って、OFCから、同一テナントネットワークに属する機器が接続されているポートをもつOFSに対し、直接ブロードキャストフレーム(複製)の送信を指示すればよい。” しかし、OF方式に非対応のL2SWが図4のように接続されている場合には、③T君が考えた単純な方式でPC1からのARP要求を処理しようとすると、問題が発生する可能性がある。このため、OF方式に非対応のL2SWに、異なるテナントネットワークに属するPCを同時に接続することはできない。 〔テナントネットワークへのPC接続方式の検討〕 T君は、OFCとOFSで構成された基盤ネットワーク上のテナントネットワークにPCを接続する方式について、次のように考えた。 ・開発部門のPCは、社内各所に用意された自部門の接続用ポートを利用して、所属部門の開発システムに接続できるようにする。 ・ある部門の接続用ポートに、他部門のPCを接続しようとした場合には、通信できないようにする。 ・これまでと同様に、テナントネットワーク内のIPアドレスの管理は、開発システム側の事情に配慮し、各利用部門に任せる。 ネットワークに接続される機器のMACアドレスは、テナントネットワーク実現のために、OFCで参照できるように登録管理されている。そこで、T君は、④各テナントネットワークとそれに属する機器のMACアドレスの一覧表を使えば、PCのOFSへの接続可否制御が可能になると考えた。 さらに、T君は、今後、無線LAN経由の接続が必要になった場合や、よりセキュリティの高い認証方式の採用が必要になった場合でも、OF方式で対応が可能かどうかを評価することにした。この目的で、IEEE 802.1Xの認証方式を選び、OF方式のネットワークとの組合せについて評価することにした。T君がまとめたIEEE 802.1X認証方式の概要を、表4に示す。表4には、OF方式に非対応のL2SWを使用した中継スイッチ(以下、中継SWという)を経由した複数PCの接続についても示している。 表4 IEEE 802.1X認証方式の概要 中継SWを用いて接続する場合を含め、IEEE 802.1X対応認証SWへのPCの接続形態を、図5のようにまとめた。 図5 IEEE 802.1X対応認証SWへのPCの接続形態 既設スイッチを活用して、PCをOFSに接続したいと考えているT君は、表4に示されたNo.3~6の中継SWを使用した場合について詳細に検討することにした。⑤同一テナントネットワークに属するPCを中継SWを経由して複数台接続する場合、中継SWは、表4中のNo.4の要件を満たす必要がある。既設SWについて、この要件を満たすかどうかを調査したところ、満たさないものがあることが分かった。しかし、それらを入れ替えた場合でも、費用への影響は少ないと考えられた。一方、⑥ポートベース認証を使用した場合は、表4中のNo.5のセキュリティ問題が発生する。しかし、OF方式では、この問題への対処が容易なことが分かった。 IEEE 802.1X認証方式によるPCのテナントネットワークへの接続シーケンス例を、図6に示す。 図6 IEEE 802.1X認証方式によるPCのテナントネットワークへの接続シーケンス例(概要) 図6中の管理用LANは、図3に示したOFCとOFS間のメッセージ交換用及びRADIUSサーバとOFC間の通信に使われる専用のLANである。また、複数のPCを接続するために、PCとOFS1は、中継SWを経由して接続する構成にしている。 図6では、PCがネットワークに接続し、自部門の仮想化された開発用サーバに接続するためのアドレス解決までのシーケンスを表示している。PCのOSによっては、デフォルトではEAPOL-Startを出さない場合もある。その場合、認証SWがPC間のリンクアップを検出して、EAP-Requestを発行する設定で対応する方法があるが、⑦中継SWを経由した図6の構成では、PCがEAPOL-Startを送信することによって認証を始める必要がある。 T君は、これまでの検討から、今後、無線LAN経由の接続が必要になった場合、よりセキュリティの高いポートベースの認証方式の採用が必要になった場合でも、OF方式で対応可能と考え、検討結果をK主任に報告し、了承された。 このようにして、K主任とT君は新しい基盤ネットワークの実現性に目途をつけることができたので、必要機器の選定・調達と詳細な設計を開始した。 設問1〔ネットワーク仮想化技術の調査〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の【a】~【c】に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 本文中の【ア】、【イ】に入れる適切な字句を、それぞれ20字以内で答えよ。 (3) OF方式は、TRILL(Transparent Interconnection of Lots of Links)方式と異なり、経路選択に柔軟性があるので回線を有効利用できる。TRILL方式と比較したときの柔軟性を、20字以内で述べよ。 設問2〔テナントネットワーク実現性の検討〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) テナントネットワーク実現のためのメッセージ使用例を、次の表5のようにまとめたい。本文中の下線①及び下線②の場合に、図4中の(A)、(C)ではどのようなメッセージを使用しているか。表1中の字句を用いて、表5の空欄を埋めて、表を完成させよ。ここで、PC4は接続されておらず、構成上の問題はない環境で動作しているものとする。 なお、各欄には複数のメッセージが入る場合がある。また、該当するメッセージがない場合には、“なし”と記入すること。 表5 テナントネットワーク実現のためのメッセージ使用例 (2) 本文中の下線③について、図4中のPC4とPC7のIPアドレスが重複していた場合に、PC1に発生する可能性のある問題を挙げ、50字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線③について、図4中のPC1とPC2のIPアドレスが重複していた場合に、PC4に発生する可能性のある問題を挙げ、50字以内で述べよ。 設問3〔テナントネットワークへのPC接続方式の検討〕について、(1)~(6)に答えよ。 (1) 本文中の下線④について、OFCはどのような接続制御処理をすればよいか。35字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線⑤について、図5中の中継SWに必要な機能を、特別のMACグループアドレスを使用するEAPフレームの転送の観点から、20字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線⑥について、発生するセキュリティ問題を、35字以内で述べよ。また、この問題に関してOF方式で考えられる対処方法を、40字以内で述べよ。 (4) 図6中で、IEEE 802.1Xのオーセンティケータとして動作している機器を、図6中の機器名で答えよ。 (5) 本文中の下線⑦について、PCがEAPOL-Startを送信することによって認証を始める必要がある。その理由を、50字以内で述べよ。 (6) 図6中の(D)、(E)の処理内容について、どのような種類のフレームを、どのポートに出力するかを含め、それぞれ55字以内で述べよ。
図1 移行後の開発システムの構成(概要)。物理サーバ、仮想サーバ、仮想スイッチ、新設スイッチ、既設レイヤ2スイッチ、PCなどから成る共用基盤ネットワークの構成図。
図1 移行後の開発システムの構成(概要)。物理サーバ、仮想サーバ、仮想スイッチ、新設スイッチ、既設レイヤ2スイッチ、PCなどから成る共用基盤ネットワークの構成図。
図2 OF方式でのOFCとOFSの構成。OFCの制御情報管理テーブルと複数OFSのf-TBL、データ転送機能、サーバ接続及びメッセージ交換の関係を示す構成図。
図2 OF方式でのOFCとOFSの構成。OFCの制御情報管理テーブルと複数OFSのf-TBL、データ転送機能、サーバ接続及びメッセージ交換の関係を示す構成図。
表1 Ruleとして利用できる情報、Action及びメッセージの例(抜粋)。Ruleに利用できるレイヤ1~4の情報、Actionの種類と意味、Packet Inなどのメッセージ用途を整理した表。
表1 Ruleとして利用できる情報、Action及びメッセージの例(抜粋)。Ruleに利用できるレイヤ1~4の情報、Actionの種類と意味、Packet Inなどのメッセージ用途を整理した表。
表2 f-TBL内のRule及びAction内容の例。転送及びパケット書換えについて、Rule内容とAction内容の対応例を示した表。
表2 f-TBL内のRule及びAction内容の例。転送及びパケット書換えについて、Rule内容とAction内容の対応例を示した表。
図3 ネットワーク仮想化方式の説明図。オーバレイ方式とOF方式について、物理サーバ、仮想スイッチ、OFS、OFC、レイヤ3ネットワーク及びトンネルの関係を比較した図。
図3 ネットワーク仮想化方式の説明図。オーバレイ方式とOF方式について、物理サーバ、仮想スイッチ、OFS、OFC、レイヤ3ネットワーク及びトンネルの関係を比較した図。
表3 オーバレイ方式とOF方式の比較。仮想ネットワーク数、転送用ヘッダ、既設ネットワーク再利用性、QoS制御、経路制御を比較した表。
表3 オーバレイ方式とOF方式の比較。仮想ネットワーク数、転送用ヘッダ、既設ネットワーク再利用性、QoS制御、経路制御を比較した表。
図4 テナントネットワーク実現のためのOFCとOFSの動作説明図。OFC、OFSa~OFSc、L2SW、PC1~PC7間で、ユニキャスト及びARP要求のフレーム転送と制御メッセージの関係を示す図。
図4 テナントネットワーク実現のためのOFCとOFSの動作説明図。OFC、OFSa~OFSc、L2SW、PC1~PC7間で、ユニキャスト及びARP要求のフレーム転送と制御メッセージの関係を示す図。
表4 IEEE 802.1X認証方式の概要。ポートベース認証とMACベース認証について、利用者認証、機器認証、中継SW、複数PC接続、EAPOL-Start対応を比較した表。
表4 IEEE 802.1X認証方式の概要。ポートベース認証とMACベース認証について、利用者認証、機器認証、中継SW、複数PC接続、EAPOL-Start対応を比較した表。
図5 IEEE 802.1X対応認証SWへのPCの接続形態。IEEE 802.1X対応認証SW、L2SW中継SW及び複数PCの接続形態と利用者認証情報の入力を示す図。
図5 IEEE 802.1X対応認証SWへのPCの接続形態。IEEE 802.1X対応認証SW、L2SW中継SW及び複数PCの接続形態と利用者認証情報の入力を示す図。
図6 IEEE 802.1X認証方式によるPCのテナントネットワークへの接続シーケンス例(概要)。PC、L2SW、OFS、仮想SW、DHCPサーバ、OFC、RADIUSサーバ間のEAP認証、DHCP、ARP及びOF Protocolメッセージの時系列を示す図。
図6 IEEE 802.1X認証方式によるPCのテナントネットワークへの接続シーケンス例(概要)。PC、L2SW、OFS、仮想SW、DHCPサーバ、OFC、RADIUSサーバ間のEAP認証、DHCP、ARP及びOF Protocolメッセージの時系列を示す図。
表5 テナントネットワーク実現のためのメッセージ使用例。下線①及び下線②の場合について、図4の(A)~(C)で使用するFlow Mod、Packet Outなどのメッセージを記入する解答表。
表5 テナントネットワーク実現のためのメッセージ使用例。下線①及び下線②の場合について、図4の(A)~(C)で使用するFlow Mod、Packet Outなどのメッセージを記入する解答表。
解き方のヒントを見る

通信に関する条件の適用範囲を確認

通信について考えるときは、示された条件がどの範囲に適用されるのかに着目しましょう。ある範囲についての情報を、別の範囲にも当てはめていないか確かめると、前提を保ちながら考えを整理できます。

この問題で問われていること

検討の軸は、条件とその適用範囲の対応です。扱っている対象を一度言葉にし、その対象について与えられた条件を整理してみましょう。考えを進める途中でも同じ範囲を扱っているか、立ち止まって確認してください。

視点

条件を理解する際は、内容だけでなく、その条件が及ぶ範囲も合わせて捉えます。推論の途中で範囲が変わると、前提と結論のつながりを見失いやすくなります。まずは条件と範囲の対応を自分の言葉で整理しましょう。

確認ポイント

  • 条件が適用される範囲を把握できているか
  • 範囲を広げる前提を勝手に加えていないか
  • 考えの途中で対象範囲が変わっていないか
正解と解説を見る

解説

部門ごとの開発ネットワークを、IPアドレスを変更せず共用基盤に移行する問題です。仮想化方式の特徴、OF方式の制御メッセージ、ARPによる誤登録、IEEE 802.1X認証と転送制御の組合せを理解することが要点です。

問題の全体像

F社とG社は合併を機に、開発部門が個別に運用していたシステムを一括管理する社内クラウドへ移行します。既設機器を活用し、部門間で重複するIPアドレスも変更しないため、共用する物理ネットワーク上で部門ごとのテナントネットワークを分離する必要があります。公式の出題趣旨では、ネットワーク仮想化技術の特徴、テナントネットワーク実現上の課題、従来の接続認証技術との融合が問われています。採点講評では、新技術の知識だけでなく、ARPやIEEE 802.1Xの基本動作に基づいて具体的な通信を分析する理解が重視されています。

設問1(1)(a)

空欄直前の「どちらもソフトウェアで定義できる」に着目します。オーバレイ方式とOF方式を共通の考え方で捉えた名称が求められています。公式解答例では「SDN」又は「Software Defined Network(ing)」です。OF方式だけの名称を答えるのではなく、ソフトウェアでネットワークを定義するという本文の説明と対応させます。

設問1(1)(b)

表2の転送機能は、宛先MACアドレスが指定値のとき、指定された物理ポートからパケットを送信するものです。MACアドレスに基づくレイヤ2の転送に相当するので、公式解答例では「ブリッジ」又は「レイヤ2スイッチ」です。着目する識別情報は宛先IPアドレスではなく、宛先MACアドレスです。

設問1(1)(c)

表2のパケット書換え機能では、宛先IPアドレスを条件に、宛先MACアドレスを書き換えて指定ポートから送信します。これはIPアドレスに基づいて転送先を決め、次の転送先に合わせたMACアドレスで送り出す機能に相当します。公式解答例では「ルータ」又は「レイヤ3スイッチ」です。MACアドレスを書き換えるという一部分だけでなく、判断条件がIPアドレスであることと組み合わせて読みます。

設問1(2)(ア)

図3のオーバレイ方式では、レイヤ2フレームをカプセル化した接続用トンネルが使われています。既設サーバを接続する場合、サーバ接続用スイッチが通常のフレームとトンネル内のフレームとの境界を担う必要があります。公式解答例では「接続用トンネルを終端」又は「カプセル化用ヘッダを追加・削除」です。20字以内では、トンネルの終端又はヘッダの追加・削除という具体的な処理を示します。

設問1(2)(イ)

表3の「転送用ヘッダの追加」に着目します。オーバレイ方式ではカプセル化によってパケットが大きくなるため、拠点間の中継路で転送可能な大きさを超える可能性があります。公式解答例では「中継路でのフラグメンテーション発生」です。20字以内では、ヘッダ増加そのものではなく、それによって中継路で発生し得る分割処理を答えます。

設問1(3)

求められているのは、TRILL方式と比較した経路選択の具体的な柔軟性です。本文と表3では、OF方式はOFCによって各OFSの転送を制御でき、柔軟な経路制御が可能とされています。公式解答例では「最短経路以外の経路が利用できること」です。20字以内では「柔軟に制御できる」と繰り返すだけでなく、最短経路以外も利用できる点を明示します。

設問2(1)

表1にあるFlow Modはf-TBLの登録・更新、Packet Outは指定ポートからのパケット送信を指示するメッセージです。下線①のユニキャストでは、経路上のOFSa・OFSb・OFScに転送規則を設定し、問い合わせの対象となった最初のフレームも送信させます。公式解答例では、①の(A)は「Flow Mod、Packet Out」、(C)は「Flow Mod」です。注記では、Packet Outを(A)の代わりに(C)で使用してもよいとされています。下線②では、OFCがARP要求の複製を同一テナントの端末が接続されたOFSへ直接渡し、Packet Outで送信を指示します。送信元PC1以外に同一テナントの端末がないOFSaへの指示は不要なので、②の(A)は「なし」、(C)は「Packet Out」です。

設問2(2)

図4では、PC3とPC4がOF方式に非対応の同じL2SWに接続されています。PC1のARP要求をPC3へ届けるためにこのL2SWへ送ると、別テナントのPC4にも届きます。PC4とPC7のIPアドレスが同じなら、PC4も自分への要求として応答し、その応答がPC1へ転送される可能性があります。公式解答例では、PC1がPC4のMACアドレスをPC7のものとして登録してしまう点を挙げています。50字以内の答案では「PC1が別テナントのPC4のMACアドレスをPC7のものとして登録する」のように、誤登録する端末と取り違えるMACアドレスを明示します。

設問2(3)

ここでは、PC4がARP要求の宛先でなくても、要求に含まれる送信元IPアドレスと送信元MACアドレスを学習し得る点が重要です。PC1のARP要求がL2SWを通じてPC4へ漏れると、PC4はその送信元情報を参照します。PC1と、PC4と同じテナントに属するPC2のIPアドレスが重複しているため、PC1のMACアドレスをPC2のものとして登録する可能性があります。公式解答例もこの誤登録を示しています。50字以内では「PC4が別テナントのPC1のMACアドレスをPC2のものとして登録する」と整理できます。採点講評では、この設問の正答率が低く、ARPテーブルの登録・更新動作の理解が必要とされています。

設問3(1)

本文では、OFCが機器のMACアドレスと所属テナント、接続ポートの所属テナントを管理しています。受信パケットの送信元MACアドレスを、そのポートで接続を許可するテナントの一覧と照合し、登録のないものを通さないようにします。公式解答例では「登録されていない送信元MACアドレスのパケットを破棄させる」です。35字以内では、送信元MACアドレスを判定に使うことと、非許可パケットを破棄させることを示します。

設問3(2)

図5では、PCと認証SWの間に中継SWがあります。認証を成立させるには、特別のMACグループアドレスを使うEAPフレームが中継SWで止められず、PCと認証SWの間を通過できる必要があります。公式解答例では「EAPフレームの透過転送機能」です。20字以内では、この機能名を示せば必要な要素を押さえられます。採点講評でも、EAPフレームの透過転送に関する基本動作の理解が課題として挙げられています。

設問3(3)(セキュリティ問題)

図5の中継SW配下の複数PCは、認証SWの同じポートを共有しています。ポートベース認証では、1台のPCの認証によって共有ポートの通信が許可されると、後から接続した別のPCも認証を受けずに通信できる問題が生じます。公式解答例では、この後続PCの未認証接続を指摘しています。35字以内では「1台が認証されると、後続のPCが認証なしで接続できる」と、認証の契機と問題をまとめます。

設問3(3)(対処方法)

OF方式では、ポート全体の許可に加えて、フレームのMACアドレスを条件にした転送制御を設定できます。認証が成功したPCのMACアドレスをf-TBLに反映し、そのPCの通信だけを許可すれば、同じポートを共有する未認証PCの通信を防げます。公式解答例では、認証されたPCのMACアドレスをf-TBLに反映させ、転送を許可する方法です。40字以内では「認証されたPCのMACアドレスをf-TBLに反映し、転送を許可する」と、認証結果と転送制御の結び付きを示します。

設問3(4)

図6では、OFS1が受けたEAPOL-StartやEAP-ResponseをPacket InでOFCへ送り、OFCがRADIUSサーバとの認証情報の交換を行っています。また、PCへのEAP-RequestやEAP-Successも、OFCからPacket Outで送信を指示しています。この認証のやり取りを担う機器がオーセンティケータなので、公式解答例は「OFC」です。PCに物理的に近いOFS1と、認証処理を担うOFCを区別して図を読みます。

設問3(5)

本文にあるリンクアップ検出による認証開始は、認証SWがPCの接続を検出できることが前提です。図6ではPCが中継SWに接続されるため、PC側ポートがリンクアップしても、その変化を上流の認証SWでは検出できません。そのためPCからEAPOL-Startを送って認証開始を知らせる必要があります。公式解答例もこの検出不能を理由としています。50字以内では「中継SW経由ではPC側ポートのリンクアップを認証SWが検出できないから」とまとめます。

設問3(6)(D)

図6の(D)は、PCのDHCPDISCOVERがPacket InでOFCに届いた後、OFCが仮想SWへPacket Outを送る処理です。DHCPDISCOVERはブロードキャストなので、仮想SWから、受信元へ戻す入力ポートを除いた送出先へ転送させます。公式解答例では「DHCPDISCOVER用ブロードキャストフレームを入力ポート以外のポートへ送出する」です。55字以内では、フレームの種類と入力ポートを除く出力先の両方を示します。テナントネットワーク内のブロードキャストとして読むことも重要です。

設問3(6)(E)

図6の(E)は、PC宛てのDHCPOFFERが仮想SWからPacket InでOFCに通知された後、OFCがOFS1へFlow Modを送る処理です。PCへ向かうユニキャストフレームをOFS1のPC側ポートへ出力するよう、f-TBLのRuleとActionを設定します。公式解答例では、入力されたPC宛てユニキャストフレームをOFS1のPC側ポートから送出する設定です。55字以内では「PC宛てユニキャストフレームをOFS1のPC側ポートへ送出するようf-TBLを設定する」と整理し、Flow Modによる規則設定を示します。

学習のポイント

ARP要求でも送信元情報を学習する点と、認証判断を行うOFC及び転送を実行するOFSの役割分担を重点的に学習します。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成25年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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