NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ

平成25年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 端末の管理強化に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 Z社は,生活雑貨の企画,製造及び販売を行う企業である。本社は東京にあり,商品の製造と配送を行う商品本部が山梨にある。ネットワーク管理は,本社の情報管理課が行っている。Z社の現在のネットワーク構成を,図1に示す。 図1 Z社の現在のネットワーク構成(抜粋) 〔IPアドレス割当ての仕組みと経緯〕 Z社では,全ての機器のIPアドレスを固定で割り当てていた。しかし,近年はPCの増設,入替えが頻繁になり,IPアドレス管理業務が煩雑になってきた。また,①情報管理課の許可を得ずにPCのIPアドレスを割り当て,他のPCの通信に障害が発生したことがあった。そこで,DHCPを用いたIPアドレス自動割当てに切り替えた。現在,全社のPCのIPアドレスは,本社にあるDHCPサーバで一元管理し,ルータ2でDHCP[ア]を動作させて商品本部での割当てに対応させている。 IPアドレス自動割当ては,PC使用者の利便性が高まる反面,ネットワーク障害の調査では支障を来すことがあった。例えば,ウイルスに感染し,不正なパケットを送信しているPCを特定するには,ルータ又はWebサーバの[イ]テーブルからIPアドレスとMACアドレスの対応を調べ,MACアドレスからSWのポートを特定し,更に配線図面を見てケーブルをたどる必要があった。また,商品本部で行った,[a]GHz帯の電波を使用するIEEE 802.11a規格の商品管理端末の導入試験では,不正なDHCPサーバの接続によって,PCに不正なIPアドレスが割り当てられる問題が発生した。この障害は,商品管理端末の接続用に準備した,②家庭用の無線LANアクセスポイント機能付きブロードバンドルータ(以下,BBルータという)の誤ったポートをSWに接続したことによって,BBルータ内蔵のDHCPサーバから商品本部のPCにIPアドレスが割り当てられたことが原因であった。これらの点から,情報管理課のO主任とU君は,端末の管理強化策を検討することになった。 〔端末の管理強化策の立案と確認〕 U君がまとめた端末の管理強化策の案は,次のとおりである。 ・L2SW及びSWがもつDHCPスヌーピング機能を使用する。この機能によって,L2SW及びSWは,正規のDHCPサーバと端末間で通信されるDHCPメッセージを,通過するポートの場所を含めて監視する。さらに,正規のDHCPサーバからIPアドレスを割り当てられた端末だけが通信できるように,ポートのフィルタを自動制御する。 ・端末登録システムを開発し,Webサーバ上で動作させる。DHCPサーバは,端末登録システムにMACアドレスが登録された端末からのIPアドレス割当要求だけに応答するように,ソフトウェアを改修する。 ・端末の使用者は,接続済みのPCからブラウザを使って,事前に氏名及び端末のMACアドレスを登録する。 U君は,O主任に端末の管理強化策の案を説明した。O主任は,U君の案に対して次の3点を指示した。 ・端末登録システムの登録情報に,端末の機種名を加えること。MACアドレスの上位[b]ビットには,OUI([ウ]に固有の値)があるが,端末の機種名を付け加えることによって,端末の特定がより容易になる。 ・特別に固定IPアドレスの割当てが必要な端末に対して,DHCPサーバから常に決まったIPアドレスが割り当てられるように機能を追加すること。 ・導入後,端末登録システムに端末の登録を完了するまでの暫定運用では,使用者の利便性を考慮したDHCPサーバの運用ができること。 U君は,O主任の指示に従って案を見直し,本社に先行導入する計画を立て,SW5の増設も併せて休日に作業を行った。U君が行った作業は,次のとおりである。 作業1:端末登録システム及び改修後のDHCPサーバのソフトウェアを起動する。次に,動作確認用の2台のPC(PC1及びPC2)の情報を,端末登録システムに登録する。 作業2:L2SW1,SW1及びSW2にDHCPスヌーピング機能を設定する。PC1及びPC2をSW1に接続してWebサーバにアクセスし,動作確認を行う。次に,PC1及びPC2をSW2に接続してWebサーバにアクセスし,動作確認を行う。 作業3:SW5にDHCPスヌーピング機能を設定して,L2SW1に接続する。PC1及びPC2をSW5に接続して,作業2と同様の動作確認を行う。 作業1及び作業2は,問題なく終了した。しかし,作業3では,PC1だけを接続したときにはWebサーバにアクセスできたが,PC2も接続したときにはPC1,PC2ともにWebサーバにアクセスできなくなった。このとき,L2SW1,SW1,SW2及びSW5では,ポートでのフレーム送受信を表すLEDが,全て同時にかつ高速に点滅していた。 U君はまず,SW5からPC2を切り離した後にL2SW1を再起動して,正常状態に回復させた。次に,L2SW1に[エ]ポートを設定してトラフィックモニタを接続し,PC2を再接続してフレームのキャプチャリングを行った。キャプチャリングの結果から,障害には,次の三つが関係していることが分かった。 ・PC2のOSでは,DHCPサーバを見つけるためのメッセージである[オ],及びDHCPREQUESTにフラグビットを立てて,DHCPサーバからDHCPOFFER及びDHCPACKをブロードキャストで送信するよう要求していた。 ・SW1及びSW2では,PC2向けのDHCPOFFER及びDHCPACKを受信ポートから折り返し転送していた。SWには,自SWに接続していない端末向けのDHCPメッセージのブロードキャストフレームを受信すると,折り返し転送する不具合があった。 ・L2SW1に設定の誤りがあり,DHCPスヌーピング機能が動作していなかった。 また,SW5を切り離し,かつ,L2SW1の設定を誤ったままにして,作業2の構成を再現したときのDHCPメッセージのキャプチャリングを行った。そのときに,PC2では,DHCPによるIPアドレス自動割当てにおける正規のメッセージ数である4メッセージよりも多い,[c]メッセージを送受信していることが分かった。作業3で起きた障害は,SW5の増設によってSWの不具合が表面化したものであった。 U君は,L2SW1の設定の誤りを修正して,DHCPスヌーピング機能の動作を検証した。L2SW1は,DHCPサーバの接続ポート以外から受信したDHCPOFFER及びDHCPACKを破棄するので,SW5を接続しても障害が発生しないことが分かった。 U君から検証結果の報告を受けたO主任は,SWの不具合があっても運用に影響しないと判断し,端末の管理強化策を導入することにした。 翌営業日,本社では,PC使用者からの苦情もなく1日の業務は無事終了した。ただし,O主任は,U君が休日の作業を行ったときに発生した障害から,現在のネットワーク構成の弱点を特定し,③本社及び商品本部のL2SWの代わりにレイヤ3スイッチを使用する構成を検討するよう,U君に指示した。 情報管理課は,端末の管理強化策の暫定運用中に各部門の協力を得て準備を完了し,本社での本運用を開始した。続いて,商品本部にも導入・運用を拡大し,PC使用者に大きな負担を掛けることもなく,端末の管理強化を達成することができた。 設問1 本文中の[ア]~[オ]に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 〔IPアドレス割当ての仕組みと経緯〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の[a]に入れる適切な数値を答えよ。 (2) 本文中の下線①では,何が起きたことで通信に障害が発生したのか。15字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線②では,BBルータのポートのうち,SWに接続したポートは何を接続すべきポートであったのか。15字以内で答えよ。 設問3 〔端末の管理強化策の立案と確認〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 本文中の[b],[c]に入れる適切な数値を答えよ。 (2) O主任がU君に指示した,固定IPアドレスの割当て及び暫定運用中の対処に必要なDHCPサーバの機能を,それぞれ30字以内で述べよ。 (3) 作業3の動作確認中に起きた障害の原因となった機器の動作を,図1中の機器名を用いて,35字以内で述べよ。 (4) O主任が本文中の下線③で実現しようとしているネットワーク構成を,“VLAN”という字句を用いて,40字以内で述べよ。
図1 Z社の現在のネットワーク構成(抜粋)。商品本部(L2SW2,ルータ2,SW3,SW4,プリンタ,PC)と本社(ルータ1,L2SW1,Webサーバ,DHCPサーバ,SW1,SW2,増設予定のSW5,プリンタ,PC)がIP-VPNで接続された構成図。L2SWとSWの凡例とSW5に関する注記がある。
図1 Z社の現在のネットワーク構成(抜粋)。商品本部(L2SW2,ルータ2,SW3,SW4,プリンタ,PC)と本社(ルータ1,L2SW1,Webサーバ,DHCPサーバ,SW1,SW2,増設予定のSW5,プリンタ,PC)がIP-VPNで接続された構成図。L2SWとSWの凡例とSW5に関する注記がある。
解き方のヒントを見る

与えられた条件と推測を分ける

端末管理やネットワークの状況を考える際は、与えられた条件と自分が補った推測を区別しましょう。なじみのある構成を思い浮かべても、その前提が今回の情報に含まれているかを確かめることが大切です。

この問題で問われていること

考えを進めるときは、判断のよりどころが、与えられた情報なのか、自分の想定なのかに注目してください。経験や知識から補った条件を事実として扱っていないか、根拠をたどって点検してみましょう。

視点

知識は理解を助けますが、一般にあり得る状況が、そのまま今回の条件になるわけではありません。考えに使った前提を振り返り、与えられた情報から確認できることと、まだ想定にとどまることを分けて整理しましょう。

確認ポイント

  • 判断の前提は、与えられた情報に基づいているか
  • いつもの構成を、今回も同じだと想定していないか
  • 確認できる事実と、自分が補った条件を分けているか
正解と解説を見る

解説

DHCPによる端末管理を題材に、リレーやMACアドレスの基礎、固定割当てと暫定運用の機能、SWの不具合によるブロードキャストの循環を読み解く問題です。最後はSW単位のVLAN分割と、VLAN間経路制御・DHCPリレーを組み合わせた構成を具体的に説明します。

問題の全体像

Z社は、手作業によるIPアドレス管理の負担と重複割当てを避けるため、DHCPによる自動割当てへ移行しました。しかし、端末の特定に手間が掛かり、BBルータ内蔵のDHCPサーバによる誤った割当ても発生しました。そこで端末登録システムとDHCPスヌーピングを導入しますが、SW増設時に機器の不具合と設定誤りが重なって通信障害が起きます。出題趣旨では、DHCPメッセージの交換、レイヤ2・レイヤ3スイッチの機能、障害の調査と分析を問うとしています。基礎用語を押さえた上で、図1の接続関係と本文に示された不具合から障害の仕組みを説明することが中心です。

設問1(ア)

着目するのは、DHCPサーバが本社にある一方、商品本部の割当てにはルータ2で動作する機能を使うという記述です。端末が送るDHCPのブロードキャストは、そのままではルータを越えません。商品本部の要求を本社のDHCPサーバへ中継する役割が必要なので、公式解答例では「リレーエージェント」としています。採点講評でも、この用語は基本として把握しておくべきものとされています。

設問1(イ)

本文では、ルータ又はWebサーバのテーブルから「IPアドレスとMACアドレスの対応」を調べるとあります。この対応を保持するのがARPテーブルなので、公式解答例では「ARP」としています。その後、MACアドレスからSWの接続ポートを調べる段階とは区別して読みます。IPアドレスからMACアドレス、MACアドレスからポートという二段階で端末の位置を絞り込んでいます。

設問1(ウ)

着目するのは、MACアドレスの上位部分にあるOUIが誰に固有の値かという点です。公式解答例では「製造者」としています。本文では、OUIだけでなく端末の機種名も登録して特定を容易にするよう指示しています。製造者を識別する情報と機種名を区別すれば、空欄には機種や使用者ではなく製造者が入ると判断できます。

設問1(エ)

U君は、L2SW1にトラフィックモニタを接続し、障害時のフレームをキャプチャしています。監視対象の通信を複製してモニタへ送るために設定するのがミラーポートなので、公式解答例では「ミラー」としています。通常の宛先への転送だけではモニタに届かない通信も観測するための機能と捉えます。

設問1(オ)

空欄の直前に「DHCPサーバを見つけるためのメッセージ」と明記されています。公式解答例では「DHCPDISCOVER」としています。基本の交換順序は、DHCPDISCOVER、DHCPOFFER、DHCPREQUEST、DHCPACKです。本文のPC2はDHCPDISCOVERとDHCPREQUESTでフラグビットを立て、サーバの応答をブロードキャストにするよう要求しています。この条件が、後のSWの折り返し動作につながります。

設問2(1)(a)

本文で指定されている無線LAN規格はIEEE 802.11aです。この規格が使用するのは5GHz帯なので、公式解答例では「5」としています。空欄の後ろにGHzという単位が既にあるため、答案には数値だけを入れます。

設問2(2)

下線①は、固定割当てを行っていた時期に、情報管理課の許可なくPCのIPアドレスを設定し、他のPCに通信障害を起こした場面です。管理外の設定によって既存のPCと同じIPアドレスが割り当てられたことが原因と読み取れます。公式解答例では「IPアドレスの重複割当て」としています。15字以内の答案では、無許可という手続上の問題よりも、通信障害を生んだ重複割当てを明示します。

設問2(3)

原因として、BBルータ内蔵のDHCPサーバから商品本部のPCへIPアドレスが割り当てられたことが示されています。これは、内蔵DHCPサーバが端末にアドレスを配るLAN側のポートをSWに接続したためです。設問はポートの名称ではなく、本来何を接続するポートかを尋ねています。公式解答例では「PCを接続すべきポート」とし、15字以内でその用途を答えています。採点講評では、一般的なBBルータの構成の知識から導ける設問とされています。

設問3(1)(b)

本文は、MACアドレスの上位何ビットにOUIがあるかを問うています。上位24ビットがOUIに当たるので、公式解答例では「24」としています。設問1(ウ)の製造者という答えと関連付けて、識別情報の意味とビット数をセットで理解します。採点講評でも、MACアドレスの構成の基本とされています。

設問3(1)(c)

ここではSW5を切り離し、PC1とPC2を同じSWに接続する作業2の構成を再現しています。例えば両PCがSW1に接続されている場合、PC2向けのDHCPOFFERとDHCPACKはブロードキャストなのでSW2にも届きます。SW2にはPC2が接続されていないため、不具合によって各応答をL2SW1へ折り返します。そのフレームがSW1へ転送され、PC2はDHCPOFFERとDHCPACKをそれぞれ二度受信します。一方、PC2が接続されているSW1では、この不具合による折り返しは起きません。DHCPDISCOVERとDHCPREQUESTの送信が各1回、DHCPOFFERとDHCPACKの受信が各2回で、合計は6メッセージです。公式解答例でも「6」としています。

設問3(2)(固定IPアドレスの割当て)

O主任の指示は、特定の端末に「DHCPサーバから常に決まったIPアドレス」を割り当てることです。端末側で手動設定するのではなく、サーバが端末を識別して同じアドレスを返す機能を説明します。公式解答例では「MACアドレスに対応付けたIPアドレスを割り当てる。」としています。30字以内の答案では、識別に使うMACアドレスと、対応するIPアドレスを割り当てる動作を押さえます。

設問3(2)(暫定運用中の対処)

当初の案では、MACアドレスを登録済みの端末からの要求にだけ応答します。しかし、導入後に全端末の登録が完了するまでこの制限を適用すると、未登録の端末が利用できず、使用者の利便性を損ないます。暫定運用では未登録端末にも割当てを行う必要があるため、公式解答例では「MACアドレスが未登録でもIPアドレスを割り当てる。」としています。30字以内で、未登録でも割り当てるという条件と動作を明示します。

設問3(3)

作業3ではPC2をSW5に接続するため、SW1とSW2のどちらにもPC2は接続されていません。両SWは、PC2向けのブロードキャストのDHCPOFFERとDHCPACKを受けると、不具合によって受信ポートから折り返します。L2SW1のDHCPスヌーピングが動作していないため、そのフレームはもう一方のSWへ転送され、そこで再び折り返されて循環します。これが大量のフレームを生み、通信障害につながりました。公式解答例では「SW1とSW2の間でのブロードキャストフレームの折り返し」としています。35字以内の答案には、図1の機器名であるSW1・SW2と、障害を生んだ折り返し動作を含めます。

設問3(4)

下線③の目的は、今回のようなブロードキャストによる障害の影響を、他のSWに広げない構成にすることです。公式解答例では「SW単位にVLANを設定し、VLAN間経路制御とDHCPリレーを行う構成」としています。各SWを別のVLANに分け、VLAN間の通信はレイヤ3スイッチの経路制御で行います。分割後もDHCPサーバによる一元管理を続けるため、DHCPリレーも必要です。40字以内の答案では、SW単位のVLAN設定、VLAN間経路制御、DHCPリレーの三つを具体的に書きます。採点講評では、目的だけの説明や曖昧な構成記述が多かったとされています。また、各SWに複数のVLANを設定して上位とのリンクをタグVLANで共有する構成では、一つのVLANの大量のブロードキャストが共有リンクを飽和させ、他のVLANにも影響するため、適切な構成とはいえないと指摘しています。

学習のポイント

DHCPの4メッセージを機器間の転送経路に沿って追い、折り返しによる重複受信と循環を区別することが重点です。VLAN分割では、ブロードキャストの範囲だけでなく、SWとレイヤ3スイッチの間のリンクを共有することによる影響にも着目します。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成25年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針