NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ

平成25年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 リモート接続ネットワークの検討に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 A社は、従業員数100人のソフトウェア開発会社であり、開発の一部を関連会社であるB社に委託している。従来、B社の開発者は、仕様書を自社に持ち帰って作業を行っていたが、このたび、情報保護、品質管理及び進捗管理の強化のために、A社の開発システムを、インターネット経由でB社にも利用してもらうことにした。 A社の情報システム部のM課長は、ネットワーク担当のN君に対し、ネットワーク構成とその運用を検討するように指示した。B社からの接続を可能にするためにN君が考えた、新ネットワークの構成を、図1に示す。 図1 新ネットワークの構成(抜粋) 開発システムは、設計書やソフトウェアモジュールなどを管理する資産管理サーバ、及びテストを行うためのテスト環境サーバから構成されている。A社の情報システム部がまとめた、ネットワーク要件を次に示す。 ・B社の開発者は、B社の自席PCのブラウザからインターネット経由でA社の開発システムを利用する。 ・B社のネットワークの変更は、最小限に抑える。 ・A社のFWで、DMZと内部LANへは必要なパケットだけを通すようにする。 ・A社とB社間の通信は暗号化する。 ・サーバとPCは、ともに電子証明書を使った認証を行う。 ・サーバの電子証明書は、信頼できる機関から発行されたものを利用する。 ・B社のPCからのウイルスによる感染や情報漏えいを防止する。 〔リモート接続ネットワーク構成の検討〕 N君はまず、現状のB社のネットワークを変更せず、既存のPCのブラウザから開発システムを利用するために、SSL-VPNを採用した。さらに、N君は、B社の開発者に、クライアント証明書を格納したUSBデバイス(以下、トークンという)を貸与することによって不正アクセス防止を図ることにした。 SSLには、PCとSSL-VPN装置間において、SSLセッションを確立させるためのハンドシェイクプロトコルが規定されている。ハンドシェイクプロトコルでは、【ア】メッセージによって暗号化アルゴリズムを決定し、公開鍵による電子証明書の確認後、共通鍵での暗号化と、メッセージ認証コードのチェックを行い、SSLセッションを確立する。 次に、N君は、PCとSSL-VPN装置の通信にSSLトンネルを利用するポートフォワード方式を採用した。 ポートフォワード方式の場合、PCからSSL-VPN装置に接続したときに認証が行われ、SSL-VPN装置からPCにJavaアプレットがダウンロードされ、SSLトンネルが確立される。また、Javaアプレットによって、PCのhostsファイルに、ループバックアドレスと開発システムの各サーバの宛先を対応させた定義が追加される。①ループバックアドレスの利用は、社内で使用中のプライベートアドレスを利用するよりも利点があり、127.0.0.1~【イ】の範囲内で利用可能である。 N君は、ループバックアドレス127.0.1.10を資産管理サーバの【ウ】に対応付けるように設計したので、Javaアプレットは、“127.0.1.10 shisankanri.example.com”という定義をhostsファイルに追加し、事前に指定したポート番号で待ち受ける。 N君が設計した、B社のPCから開発システムへの接続概念図を、図2に示す。 図2 B社のPCから開発システムへの接続概念図(抜粋) B社のPCでは、図2中で示した(a)において、Javaアプレットが事前に指定したポート番号で待ち受け、B社の開発者がPCのブラウザに表示されたメニューの中からアプリケーション名を選択することで、SSLトンネルを経由してSSL-VPN装置へアクセスしデータを送る。SSL-VPN装置では、図2中で示した(b)において、ソフトウェアモジュールがポートマッピングテーブルを参照して、待受けポートとプライベートアドレスに対応する転送先ポートへデータを送る。②この方式では、使用できないアプリケーションが発生するが、今回の開発システムでは問題がないことをN君は確認した。また、SSL-VPN装置のログアウト時に、Javaアプレットがhostsファイルを編集前の設定に戻すことも確認した。さらに、N君は、開発作業のピーク時に開発システムの利用頻度が増大することを考慮し、③SSL-VPN装置において、SSLセッションのキャッシュ時間を延ばす設定を行うことにした。 N君は、図1と図2を基に、FWの通信を許可する追加設定を、表1にまとめた。 表1 FWの通信を許可する追加設定(抜粋) 〔リモート接続ネットワークの運用の検討〕 N君は、リモート接続ネットワークの運用の検討を行った。サーバ証明書の正当性は、証明書が、信頼できる認証機関である【エ】から発行されていることを、PC側で検証することで確認される。また、B社のPC側の利用者の正当性は、トークンに格納されたクライアント証明書で確認される。今回、A社では、独自にクライアント証明書を発行するとともに、クライアント証明書を管理する運用担当者を選定することにした。N君は、④クライアント証明書の管理に必要な情報を、運用担当者に自動的に通知する仕組みを作ることにした。さらに、N君は、B社内のPCからA社の開発システムを利用するときの、ウイルスによる感染や情報漏えいを防止する要件を満たすために、⑤SSL-VPN装置へのログイン時とログアウト時に、Javaアプレットがもつべき機能を調査し、問題がないことを確認した。 リモート接続ネットワークの基本構成が了承され、構築作業が開始された。 設問1 本文中の【ア】~【エ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 〔リモート接続ネットワーク構成の検討〕について、(1)~(4)に答えよ。 (1)本文中の下線①について、ループバックアドレスを用いる利点を、セキュリティ面に着目して、20字以内で述べよ。 (2)本文中の下線②について、使用できないアプリケーションの通信の特徴を、図2に着目して、20字以内で述べよ。 (3)本文と図2の内容を基に、PCのブラウザから資産管理サーバのAP1への接続に際し、Javaアプレットが受け付けるIPアドレスとポート番号を答えよ。また、そのときのJavaアプレットと資産管理サーバとの間で確立されるTCPコネクションを、図2中の名称を用いて二つ答えよ。 (4)本文中の下線③について、設定の目的を、“SSLセッション”という字句を用いて、30字以内で述べよ。 設問3 表1中の【オ】~【ケ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問4 〔リモート接続ネットワークの運用の検討〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)本文中の下線④の情報を、20字以内で述べよ。 (2)本文中の下線⑤の機能を、ログイン時とログアウト時のそれぞれについて、35字以内で具体的に述べよ。
図1 新ネットワークの構成(抜粋)。B社の既存LANからインターネット、A社の外部LANとFWを経由し、内部LANおよびDMZ上の開発サーバへ接続する新ネットワーク構成を示す。
図1 新ネットワークの構成(抜粋)。B社の既存LANからインターネット、A社の外部LANとFWを経由し、内部LANおよびDMZ上の開発サーバへ接続する新ネットワーク構成を示す。
図2 B社のPCから開発システムへの接続概念図(抜粋)。B社PCのJavaアプレットがSSLトンネルを介してSSL-VPN装置に接続し、ポートフォワードで資産管理サーバとテスト環境サーバの各アプリケーションへ転送する構成図。
図2 B社のPCから開発システムへの接続概念図(抜粋)。B社PCのJavaアプレットがSSLトンネルを介してSSL-VPN装置に接続し、ポートフォワードで資産管理サーバとテスト環境サーバの各アプリケーションへ転送する構成図。
表1 FWの通信を許可する追加設定(抜粋)。外部LANからDMZへのDNS・SSL-VPN通信と、DMZから内部LAN上のAP1~AP3への転送通信を許可するFW設定の抜粋。
表1 FWの通信を許可する追加設定(抜粋)。外部LANからDMZへのDNS・SSL-VPN通信と、DMZから内部LAN上のAP1~AP3への転送通信を許可するFW設定の抜粋。
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接続構成を整理する基本の視点

SSL-VPNを使うリモート接続を考えるときは、利用者側から接続先までの経路と、各地点で担う役割が一貫しているかを順に確認しましょう。構成と運用を分けて見ることも大切です。

この問題で問われていること

一つの観点として、接続開始から社内資源へ到達するまでの経路に注目し、認証・通信保護・アクセス先の関係が問題文の条件と矛盾しないかを整理してください。利用場面との対応も確認します。

視点

構成要素を個別に暗記するのではなく、利用者、接続を受ける境界、内部の資源という流れに沿って、どこで確認や制御が行われるかを対応づけて考えます。

確認ポイント

  • 通信の出発点から目的の資源まで、経路上の役割を順番に追えているか
  • 利用者の確認と、接続後に到達できる範囲を混同していないか
  • 問題文が示す運用上の制約と、想定した構成の関係を確認できるか
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解説

B社の既存ネットワークを変更せず、SSL-VPNのポートフォワード方式でA社の開発システムへ安全に接続する事例です。SSLの認証・暗号化、TCP接続、FW設定、証明書管理、端末対策を総合的に問う。

問題の全体像

A社は、B社の開発者が既存PCのブラウザからインターネット経由で開発システムを利用できるようにする。B社側の変更を最小限にするためSSL-VPNを採用し、トークン内のクライアント証明書で利用者を認証する。本文と図2では、SSLハンドシェイク、ループバックアドレス、ポートフォワード、TCPコネクションを確認し、表1ではFWが許可すべき通信を特定する。後半では、証明書管理やウイルス感染・情報漏えいを防ぐ運用が問われている。

設問1(ア)

SSLのハンドシェイクで暗号化アルゴリズムを決めるメッセージを問うている。本文は、メッセージによるアルゴリズム決定、証明書確認、共通鍵暗号、メッセージ認証コード確認という手順を示しているため、公式解答例では「HELLO」としている。

設問1(イ)

本文の127.0.0.1から始まるループバックアドレスの範囲を問うている。公式解答例では、IPv4のループバックアドレス範囲の末尾として「127.255.255.254」を挙げている。

設問1(ウ)

hostsファイルで127.0.1.10に対応付ける対象を問うている。図2では資産管理サーバをドメイン名で指定しており、サーバの名前解決に使う完全修飾ドメイン名を表すため、公式解答例は「FQDN」です。

設問1(エ)

サーバ証明書を発行する、PC側が信頼する認証機関を問うている。本文の「信頼できる機関から発行」と、サーバ証明書の正当性をPCで検証する記述から、公式解答例は「第三者認証局」としている。

設問2(1)

ループバックアドレスを使うセキュリティ上の利点を、20字以内でまとめる。社内で使うプライベートアドレスではなく、そのPC自身を示すアドレスを利用するため、外部からその待受けへ直接到達しにくい点に着目する。公式解答例は「外部からの不正利用が発生しない。」です。

設問2(2)

図2の方式では、JavaアプレットがPC側で待ち受け、VPN装置が別の転送先ポートへ中継する。したがって、利用できないアプリケーションは、サーバ側のポート番号が変わると通信できないタイプです。公式解答例は「サーバ側のポート番号が変化する。」です。

設問2(3)

AP1への接続では、hostsファイルの定義によりブラウザ側は資産管理サーバを127.0.1.10として参照し、図2のJavaアプレットの待受けポート6310へ接続する。TCP接続は、まず「JavaアプレットとSSL-VPN装置間」、次に「SSL-VPN装置と資産管理サーバ間」です。公式解答例もIPアドレス127.0.1.10、ポート番号6310、この二つの接続を示している。

設問2(4)

SSLセッションのキャッシュ時間を延ばす目的は、利用頻度が増えるときに毎回ハンドシェイクを行う負荷を抑えることです。30字以内では、公式解答例の「SSLセッション確立による負荷を,軽減させるため」のように、セッション確立と負荷軽減を押さえる。

設問3(オ)

外部LANからDMZのDNSサーバへ宛先ポート53で接続する行なので、宛先IPアドレスは図1のDNSサーバのアドレスです。公式解答例では「202.y.63.10」としている。

設問3(カ)

外部LANからSSL-VPN装置へ接続する行であり、SSL通信の宛先ポートを指定する。図1のSSL-VPN装置へ外部から接続するためのHTTPSポートとして、公式解答例は「443」です。

設問3(キ)

DMZから内部LANの資産管理サーバへ、AP1用の宛先ポート11000に転送する行です。送信元はDMZ上のSSL-VPN装置なので、公式解答例では「202.y.63.11」としている。

設問3(ク)

AP2用に、DMZのSSL-VPN装置から内部LANのテスト環境サーバへポート23で転送する行です。送信元IPアドレスはSSL-VPN装置の「202.y.63.11」です。

設問3(ケ)

AP3用に、同じSSL-VPN装置からテスト環境サーバのポート13000へ転送する行です。したがって送信元IPアドレスも公式解答例の「202.y.63.11」となる。

設問4(1)

クライアント証明書の管理に必要で、運用担当者へ自動通知すべき情報を問うている。証明書をいつまで有効として管理するかが必要なので、20字以内では「クライアント証明書の有効期限」とする。

設問4(2)(ログイン時)

B社PCからのウイルス感染をA社側へ持ち込まないため、ログイン時に端末のウイルス対策状況を確認する。公式解答例では「ウイルス対策ソフトの定義ファイルの適用状態を確認する機能」としており、定義ファイルが最新・適用済みかを確認する点が評価の中心です。

設問4(2)(ログアウト時)

情報漏えいを防ぐため、利用終了時にPCへ残るリモート接続関連の情報を消去する。公式解答例では「PCからリモート接続時のキャッシュ情報や履歴情報を削除する機能」としており、キャッシュと履歴の削除を具体的に示す。

学習のポイント

図と本文から通信経路を復元し、セキュリティ上の目的まで説明する力を身に付ける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成25年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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