NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成23年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 保守サービスシステムの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~5に答えよ。 A社は、OA用品の製造・販売会社である。A社ではこれまで、製品を購入した企業からの機能や修理の問合せへの対応(以下、保守サービスという)を、地域ごとの保守関連会社(以下、地域保守会社という)に委託していた。地域保守会社では、問合せに応じてカスタマエンジニア(以下、CEという)による出張修理の手配も行っている。これらの業務遂行を支援するシステム(以下、保守サービスシステムという)の現状構成を、図1に示す。 図1 保守サービスシステムの現状構成(抜粋) 問合せ電話の受付は、担当の地域保守会社で行っている。保守サービス用PCにはソフトウェアで電話機能を実現するソフトフォンがインストールされている。電話は、IP-PBXが受け、保守サービス用PCに転送される。CEの出動指示は、地域保守会社の受付者が、通話完了直後の後処理で行っている。問合せ電話の応対に必要な顧客情報は、顧客DBから、担当の地域保守会社へ夜間にバッチ転送され、地域保守会社にある保守サービスサーバの管理下にある保守サービスDBに取り込まれる。CEは、CE用PCを持ち、無線アクセスによって接続したインターネットを介して、保守サービスサーバにアクセスし、必要な情報をやり取りしている。 A社は、保守サービスの品質と効率の向上を図るために、業務の見直しと、それに伴うシステムの再構築を検討することになった。再構築に当たって、保守サービスシステムを、A社データセンタ内のシステムに統合することにした。これまで、保守サービス業務を行ってきた地域保守会社は、統合したシステムを共同利用することで、情報資産の一元化を実現できる。 保守サービスシステムの再構築の担当となったN君は、次に示す具体的な検討項目を設定した。 (1)作業効率を高めるためのCE用PCの選定 (2)データ保存機能のないPCであるシンクライアント(以下、TCという)システムの検討 (3)電話の着信場所のA社データセンタへの統合化に伴う電話回線の必要数の算定 (4)地域保守会社及びCE用PCからA社データセンタへの接続ネットワークの検討 (5)拡張性を考慮したA社データセンタ内ネットワーク構成の検討 〔作業効率を高めるためのCE用PCの選定〕 N君はまず、CE用PCについて検討した。保守サービスシステムでは、これまでCE用PCとして、携帯電話用通信カードの入ったノートPCを利用してきた。しかし、最近では情報端末機能を備えた携帯電話やタブレット型のPC(以下、MPCという)などが普及しつつあり、CE用PCとして使える可能性が出てきた。 MPCには、駅などの公共施設にあるアクセスポイントを経由して、インターネットに接続できる【ア】機能をもった機種が多い。携帯電話網に直接接続する機能をもたないMPCでも、携帯電話端末のテザリング機能を使うと、携帯電話網を経由したインターネット接続が可能になる。 MPCの多くは、外出先での使用が前提とされているので、位置情報を取得する【イ】機能、カメラ機能、①インターネットを介してデータセンタにセキュアなVPN接続を実現するための標準的な機能などが、実装されていることも多い。また、MPCはアプリケーションのダウンロード機能をもっているので、プログラムを追加することで各種の機能を追加できる。 N君は、これらの利点からMPCをCE用PCとして活用できると考え、今回の保守サービスシステムの再構築に合わせて導入することを提案し、了承された。 〔TCシステムの検討〕 N君が考えた再構築後の保守サービスシステムの構成概要を図2に示す。 図2 再構築後の保守サービスシステムの構成概要 今回の保守サービスシステム再構築を機に、地域保守会社に分散していた保守サービスサーバと保守サービスDBを統合する。 A社データセンタに保守サービス用PCを新たに設置するが、繁忙期に対応するために、地域保守会社の既存PCを利用し、地域保守会社でも保守サービス業務を行う。また、地域保守会社には、保守サービス業務以外で利用する管理用PCを導入し、A社データセンタ内のサーバにアクセスできるようにする。 ネットワーク経由で画面情報と操作情報の送受信だけを行うTCの実現方式としては、サーバベース方式(以下、SBCという)と仮想PC方式がある。SBCは、サーバで稼働させるPCのアプリケーションプログラムを、複数のTCで共用する方式である。一方、仮想PC方式は、PCの独立したプログラム実行環境(以下、仮想PCという)をTCと1対1でサーバ上に用意する方式である。検討の結果、後者の方式を採用することにした。MPCにも、仮想PC方式に対応する機能をもつ機種を選定した。 IP-PBXで受けた問合せ電話に対して、TCで通話する場合、USBで接続したヘッドセット(以下、USBヘッドセットという)を利用する。このUSBヘッドセットの利用方式については、USBリダイレクト方式とVoIP対応TC(以下、TC-Vという)方式の、二つの方式がある。 USBリダイレクト方式は、TCにUSBデバイスが接続されると、あたかも仮想PCにUSBデバイスが接続されたように動作させる機能を利用する方式である。 一方、仮想PCに実装されたソフトフォンとTCの間で独自の制御を行うファームウェアが組み込まれたTC-Vを利用するのが、TC-V方式である。TC-Vを利用した場合、呼制御はIP-PBXと仮想PC間で行うが、通話の音声を運ぶRTPパケットはTC-VとIP-PBX間で直接送受する。 USBリダイレクト方式とTC-V方式の音声データの経路を、図3に示す。 図3 USBリダイレクト方式とTC-V方式の音声データの経路 N君は、TCを新規に導入する場合は音質を重視してTC-Vを利用し、既存PCを活用する場合は、導入の容易性・低コストの観点から、USBリダイレクト方式を利用することにした。 〔電話の着信場所のA社データセンタへの統合化に伴う電話回線の必要数の算定〕 これまで地域保守会社に委託していた保守サービス業務は、一括してA社データセンタに集約するので、再構築後の保守サービスシステムの電話回線数について、現在のシステムを分析し、その必要回線数について検討することにした。 現在のシステムの分析に当たり、まず、電話をかけても、回線がビジーとなってつながらない呼損状態が発生するモデル(待ち行列を作らないモデル)を想定した。呼損の発生確率を呼損率という。待ち行列理論では、待ち行列モデルを、“到着間隔の分布型/サービス時間の分布型/窓口数/待ち行列系の許容収容数”で表現するケンドール記法がよく使われる。この記法を使い、地域保守会社での受付のモデルを、ランダム到着(M)、指数分布サービス(M)とし、M/M/s/sと考える。現在、地域保守会社は10社あり、地域ごとに受付回線10本で対応し、最繁時は1時間当たり36件の問合せ電話がかかってくる。電話応対には、通話後の後処理時間を含め、1件当たり平均10分掛かる。この場合、各地域の1時間当たりの到着率は[a]、サービス率は[b]、sの値は[c]となる。 再構築後、地域保守会社で受け付けていた問合せ電話を、②A社で一括して受け付けるようにして、呼損率を従来と同等以下にするために、受付回線が何本必要となるかを、表1の呼損率表から求めることにした。 表1 呼損率表 実際の運用では呼損が発生すると、繰り返しかかってくる問合せ電話によって到着率が増大するので、回線が輻輳し、呼損率が急増する。A社では、その対策として、③自動音声応答用に回線を追加し、電話が着信して待ち状態になる場合は、自動音声応答機能でコールバックするための受付情報を取得して、直ちに切断する方式を導入することにした。登録された受付情報は、空きとなった受付者に順次割り当てられ、処理される。 〔地域保守会社及びMPCからA社データセンタへの接続ネットワークの検討〕 再構築後のA社データセンタ側には、地域保守会社との接続方法及びMPCとの接続方法を用意する必要がある。N君は、A社と地域保守会社間の既設ネットワークの状況をチェックした上で、CEがアクセスするための仕組みを追加導入することにした。図4は、図2中の地域保守会社及びMPCからA社データセンタへの接続部分を抜き出し、より詳細に示したものである。 図4 地域保守会社及びMPCからA社データセンタへの接続(抜粋) 地域保守会社とA社データセンタ間、及びMPCとA社データセンタ間は、インターネットを介してVPNで接続する構成とした。VPN1とVPN2は、A社データセンタと地域保守会社のLAN間を接続するVPN装置であり、ファイアウォールを兼ねている。 MPCからの接続制御を行うモバイル端末接続装置は、VPN1の配下に設置する。VPN1のインターネット側インタフェースのグローバルアドレス宛てに送られてきたパケットの中でポート番号443のパケットは、そのままモバイル端末接続装置に転送される。モバイル端末接続装置は、認証サーバに問合せを行い、認証サーバがMPCの認証を行う。認証が完了すると、モバイル端末接続装置では、MPCがあたかもインタフェースgにいて、L2SWのインタフェースhに接続しているように動作する。 N君が、今回の接続方法検討に当たり、VPN1のルーティングの設定を調べたところ、VPN1とVPN2間のインターネットVPN接続のためのアソシエーションが確立できなかった場合、暗号化されないパケットがインターネット側に送出されてしまうことを発見した。現状では、あまり大事に至らないと考えたが、念のため、外部に送出されないよう代替ルートの設定を行うことにした。今回採用したVPN1とVPN2間のVPN接続では、VPNのトンネルが確立すると、そのVPNトンネルの仮想的なインタフェースが、ルーティング上、有効な経路として扱われる。 N君が作成した再構築後のVPN1のルーティング設定の抜粋を、表2に示す。宛先の「0.0.0.0/0」は、デフォルトルートを示している。ゲートウェイに「0.0.0.0」を指定したときは、ゲートウェイを経由せず直接宛先ネットワークに到達可能であることを示している。また、メトリック値は数値が小さいほど優先度が高い。 表2 VPN1のルーティング設定(抜粋) 〔拡張性を考慮したA社データセンタ内ネットワーク構成の検討〕 A社では、保守サービスシステムをデータセンタ内に統合するに当たり、今後のシステム拡張を容易にするためのネットワーク構成を検討することにした。データセンタでは、サーバの設置台数が増加し、中でも、ブレード型サーバの使用が増えている。ストレージは、FC(Fibre Channel)を使ったFC-SANが既に構築されていた。N君の調査によると、最近では、10Gビット/秒以上の高速イーサネットを使用し、FC-SANとLANを統合するFCoE(Fibre Channel over Ethernet)技術が登場している。この技術によって、FCプロトコル(以下、FCPという)をイーサネット上で動作させることができる。 FCの上位層であるSCSIは、パケットロスを前提としないプロトコルなので、SCSIの下位層では、パケットロスを防ぐ機能の実装が必要である。 パケットロスの要因としては、伝送路上でのビット誤りよりも、バッファの枯渇の方が大きいと考えられた。FCでは、フロー制御の方法として、送信側と受信側の双方で、受信側の空きバッファ数を管理して送信を制御している。この方式を使うことによって、TCPで使われているような、ウィンドウサイズを用いたエンドシステム間の応答確認によるフロー制御では実現できないパケットロスの防止効果が得られる。 LANのMAC層でも、フロー制御の方法として、送信側に対してPAUSEフレームを送って送信を抑止する機能が、オプションとして規定されている。しかし、FCoEの実現には、この機能では不十分と考えられており、N君が調べたところ、FCoE対応のスイッチ(以下、FCoE-SWという)では、図5に示すような優先度付バッファ制御機能を実装していることが分かった。 図5 FCoE-SWの優先度付バッファ制御機能 図5に示す方式では、⑤優先度別にバッファを用意し、受信バッファが枯渇したときには優先度別に送信を抑止するためのPAUSEフレームを送出している。 N君は、既設機器との接続性を確保しながら、SANとLANの将来の統合化に備えるために、CNA(Converged Network Adapter)と呼ばれるネットワーク接続アダプタ製品を使うことにした。この製品は、10Gビット/秒のイーサネットとFCoEに対応しており、1個のアダプタでHBA(Host Bus Adapter)とNICを兼ねることができる。 加えて、CNAと接続するFCoE-SWは、IETF(Internet Engineering Task Force)で標準化が進められているTRILL(Transparent Interconnection of Lots of Links)に対応する製品とした。TRILL対応のFCoE-SWに入ったフレームは、TRILLヘッダでカプセル化され、出口のFCoE-SWでカプセル化が解除されて相手に届く。これによって、相互接続された複数のFCoE-SWが、一つの大きなFCoE-SWのように動作する。フレームの転送経路については、コストを評価して最短経路を決めるSPF(Shortest Path First)というアルゴリズムを使用している。このアルゴリズムでは、経路を冗長化する場合、⑥経路のコストを適切に設計することによって、トラフィックを分散できる。その結果、冗長化のためにスパニングツリープロトコルを使った場合には得られない効果が期待できた。 今回導入することにしたFCoE-SWには、FCとFCoEの相互変換機能が用意されているということなので、既設のシステムに追加接続する形で、図6のような拡張性を考慮したネットワーク構成を考えた。ここで、二つのCNAは同時に使用する。 図6 拡張性を考慮したネットワーク構成 このようにして、N君は、将来に向けてA社データセンタのSANとLANの統合化に配慮しつつ、保守サービスシステムの再構築に向けての設計検討を終え、システムの構築作業に着手した。 設問1 〔作業効率を高めるためのCE用PCの選定〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)本文中の【ア】、【イ】に入れる適切な字句を答えよ。 (2)本文中の下線①について、CEが様々な場所からネットワーク接続を行う観点から、適切なプロトコル名を答えよ。 設問2 〔TCシステムの検討〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)TC、TC-Vに接続しているLANの音声転送用帯域は、TC-V方式の方が少ない。使用するコーデックに関連して、その理由を35字以内で述べよ。 (2)USBリダイレクト方式で、仮想PCの処理によって発生する会話品質に影響を与える事象と、それに起因する音質劣化要因を組み合わせて二つ挙げ、答案用紙の空欄を埋めよ。 設問3 〔電話の着信場所のA社データセンタへの統合化に伴う電話回線の必要数の算定〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1)本文中の[a]~[c]に入れる適切な数値を答えよ。 (2)本文中の下線②について、従来の呼損率は幾らか。また、従来と同等以下の呼損率を維持するための必要最小限の回線数を答えよ。答えは、表1中の数値で答えよ。 (3)本文中の下線③について、対策後の方式は、どのような待ち行列のモデルとなるか。20字以内で述べよ。 設問4 〔地域保守会社及びMPCからA社データセンタへの接続ネットワークの検討〕について、(1)~(4)に答えよ。 (1)表2中、VPNトンネルのインタフェースはどれか。インタフェース識別記号で答えよ。 (2)表2中No.6の行は、VPNトンネルがActiveにならない状態で、暗号化されないパケットがインターネット側に送出されないようにする設定である。[ウ]~[オ]に当てはまるアドレスとメトリック値を答えよ。 (3)MPCがモバイル端末接続装置に接続できるようにするには、VPN1にどのような設定が必要か。60字以内で述べよ。 (4)MPCのアプリケーションで使用するポートによって、送られてくるパケットを制限する設定は、A社データセンタ内のどの機器で行う必要があるか。その機器名を答えよ。また、その機器に設定しなければならない理由を、50字以内で述べよ。 設問5 〔拡張性を考慮したA社データセンタ内ネットワーク構成の検討〕について、(1)~(5)に答えよ。 (1)A社データセンタのように、多数のブレードサーバを設置する環境で、SANとLANを統合することによって得られる設計上の効果を、40字以内で述べよ。 (2)本文中の下線④について、TCPで使われているようなウィンドウサイズによるフロー制御では実現できず、FCPのフロー制御方法によって可能になる、パケットロスの防止効果を、35字以内で述べよ。 (3)本文中の下線⑤について、優先度別制御をすることによって、どのような通信状態の発生を回避するのか。50字以内で述べよ。 (4)本文中の下線⑥を可能にする経路のコスト設計を、25字以内で述べよ。また、スパニングツリープロトコルでは実現できず、この設計で得られる効果は何か。20字以内で述べよ。 (5)図6中の破線で囲まれた部分の接続について、不足している線を追加して、答案用紙の図を完成させよ。
図1 保守サービスシステムの現状構成(抜粋)。A社データセンタと地域保守会社の間を、IP-PBX、VPN、インターネット、各種サーバ、DB、PCなどで接続した現状構成図。
図1 保守サービスシステムの現状構成(抜粋)。A社データセンタと地域保守会社の間を、IP-PBX、VPN、インターネット、各種サーバ、DB、PCなどで接続した現状構成図。
図2 再構築後の保守サービスシステムの構成概要。A社データセンタにサーバとDBを統合し、TC、仮想PC、MPC、管理用PCなどから共同利用する再構築後の構成図。
図2 再構築後の保守サービスシステムの構成概要。A社データセンタにサーバとDBを統合し、TC、仮想PC、MPC、管理用PCなどから共同利用する再構築後の構成図。
図3 USBリダイレクト方式とTC-V方式の音声データの経路。USBリダイレクト方式では仮想PCを経由し、TC-V方式ではIP-PBXとTC-Vが直接RTP通信する音声経路を示す図。
図3 USBリダイレクト方式とTC-V方式の音声データの経路。USBリダイレクト方式では仮想PCを経由し、TC-V方式ではIP-PBXとTC-Vが直接RTP通信する音声経路を示す図。
表1 呼損率表。呼量と回線数の組合せごとの呼損率を示す表。回線数10の表と、回線数66~72の表から成る。
表1 呼損率表。呼量と回線数の組合せごとの呼損率を示す表。回線数10の表と、回線数66~72の表から成る。
図4 地域保守会社及びMPCからA社データセンタへの接続(抜粋)。VPN1、VPN2、モバイル端末接続装置、L2SW、認証サーバ、MPCなどのインタフェース接続とIPアドレスを示す構成図。
図4 地域保守会社及びMPCからA社データセンタへの接続(抜粋)。VPN1、VPN2、モバイル端末接続装置、L2SW、認証サーバ、MPCなどのインタフェース接続とIPアドレスを示す構成図。
表2 VPN1のルーティング設定(抜粋)。VPN1の宛先、ゲートウェイ、インタフェース、メトリック値を示すルーティング設定表。
表2 VPN1のルーティング設定(抜粋)。VPN1の宛先、ゲートウェイ、インタフェース、メトリック値を示すルーティング設定表。
図5 FCoE-SWの優先度付バッファ制御機能。送信側と受信側のFCoE-SWが優先度別バッファを備え、受信側からPAUSEフレームを送って送信を抑止する図。
図5 FCoE-SWの優先度付バッファ制御機能。送信側と受信側のFCoE-SWが優先度別バッファを備え、受信側からPAUSEフレームを送って送信を抑止する図。
図6 拡張性を考慮したネットワーク構成。既設サーバ、新規サーバ、ストレージ、FC-SW、FCoE-SW、CNA、L2SW、L3SWを接続し、SANとLANを統合する構成図。
図6 拡張性を考慮したネットワーク構成。既設サーバ、新規サーバ、ストレージ、FC-SW、FCoE-SW、CNA、L2SW、L3SWを接続し、SANとLANを統合する構成図。
解き方のヒントを見る

設計を考える前提条件の整理

システムの設計を検討するときは、まず判断の前提となる条件が、どの範囲に適用されるかを整理しましょう。条件を広げて解釈せず、与えられた情報と自分の想定を区別して考えることが大切です。

この問題で問われていること

この問題では、判断に用いる条件の適用範囲に注目しましょう。ある条件を別の対象や場面にも当てはめていないかを確かめ、読み取った事実と、補って考えた前提を分けて整理すると、検討の軸を保ちやすくなります。

視点

条件を整理するときは、その条件がどこまで適用されるのかを意識します。対象や場面を広げて考える場合は、その広げ方に根拠があるかを振り返りましょう。

確認ポイント

  • 条件が適用される範囲を確認したか
  • 対象や場面を越えて条件を広げていないか
  • 明示された条件と自分で補った前提を区別したか
正解と解説を見る

解説

分散した保守サービスを統合する際の端末選定、仮想PCでの音声品質、呼量に基づく回線設計、VPNの経路と通信制限、FCoEによるSANとLANの統合を扱う問題です。本文の動作条件と図表を対応させ、技術が解決する具体的な課題を説明することが要点です。

問題の全体像

A社は、地域保守会社に分散していた保守サービスサーバ、DB、電話受付をデータセンタへ統合し、地域の端末や外出中のCEから共同利用できる構成を検討しています。出題趣旨では、利用者のニーズに応えるシステムを構築するための幅広いITインフラ技術を問うとされています。端末機能だけでなく、仮想PC利用時の音声品質、受付回線数、安全なリモートアクセス、SANとLANの統合を具体的な条件から判断する問題です。採点講評でも、暗記に加えて実際のシステムの動きと関連付けた理解が重視されています。

設問1(1)(ア)

「公共施設にあるアクセスポイントを経由して、インターネットに接続できる」という記述に着目します。アクセスポイントを介した無線接続の機能なので、公式解答例では「無線LAN」です。続くテザリングの説明と区別し、空欄が指している接続手段を読み取りましょう。

設問1(1)(イ)

空欄の直前に「位置情報を取得する」とあります。端末の位置を取得する機能として、公式解答例では「GPS」です。カメラやVPN接続など、並列に挙げられた別の機能と混同せず、空欄に対応する目的から判断します。

設問1(2)

設問は、CEが様々な場所からインターネット経由で接続する点を指定しています。公式解答例では「SSL」です。公共のアクセスポイントなどを利用する場面を想定し、SSLによるVPN接続を選ぶ考え方です。後段にある、モバイル端末接続装置へポート番号443のパケットを転送する記述とも対応しています。

設問2(1)

図3では、TC-V方式の音声はTC-VとIP-PBX間でRTPによって直接送受されます。USBリダイレクト方式の汎用的なUSB音声転送に対し、TC-V方式では音声通話向けの圧縮率の高いコーデックを利用できることが帯域削減の理由です。公式解答例も、このコーデックの違いを示しています。35字以内の答案では「音声通話用の圧縮率の高いコーデックを利用できるから」とまとめられます。経路が短いという説明だけでは、指定されたコーデックとの関連を示せません。

設問2(2)

図3のUSBリダイレクト方式では、音声データが仮想PCのソフトフォンを経由します。この処理による影響を、事象と音質劣化要因の組で示します。公式解答例の一つ目は「仮想PCでの音声処理時間の増加→音声遅延」、二つ目は「負荷変動による音声処理時間のばらつき→音声遅延のジッタ」です。遅延は届くまでの時間が長くなること、ジッタはその時間が揺れることとして区別します。採点講評でも、仮想PCの具体的な動作と音質への影響を結び付ける力が必要とされています。

設問3(1)(a)

到着率は、単位時間当たりに到着する問合せ電話の件数です。本文では各地域の最繁時に1時間当たり36件がかかってくるため、公式解答例ではaは「36」です。ここでは各地域の値を求めているので、10社分を合計しません。

設問3(1)(b)

サービス率は、一つの窓口が単位時間当たりに処理できる件数です。後処理を含む平均サービス時間が10分なので、1時間では60÷10=6件となります。公式解答例ではbは「6」です。平均サービス時間の10分をそのままサービス率にせず、時間をそろえて逆数を求めます。採点講評でも、待ち行列理論の用語の定義に関する誤解が指摘されています。

設問3(1)(c)

M/M/s/sのsは窓口数を表し、この事例では各地域の受付回線数に対応します。本文に「地域ごとに受付回線10本」とあるので、公式解答例ではcは「10」です。許容収容数もsなので、全窓口が使用中であれば新たな要求を待たせず、呼損となるモデルです。

設問3(2)(呼損率)

表1を参照するため、各地域の呼量を求めます。到着率36件/時に、後処理を含む平均サービス時間10/60時間を掛けると、呼量は36×10/60=6.0です。表1の呼量6.0、回線数10の交点は4.3なので、公式解答例では「4.3」です。表の注記により単位は%です。到着率36をそのまま呼量として表に当てはめないことが重要です。

設問3(2)(回線数)

10社分を統合するため、全体の到着率は36×10=360件/時、呼量は360×10/60=60.0です。表1の呼量60.0の行で従来の4.3%以下になる最小の回線数を探します。66本では4.6%、67本では3.9%となるので、公式解答例では「67」です。従来の合計100本を単純に維持するのではなく、統合後の呼量と目標呼損率から必要数を判断します。

設問3(3)

自動音声応答は受付情報を登録して電話を切断しますが、登録された要求は空いた受付者に順次割り当てられます。回線上で通話を保留しなくても、サービスを待つ要求が蓄積される点に着目します。公式解答例では「通話要求の待ち行列を許すモデル」で、20字以内にも収まります。採点講評でも、待ちを許さない即時系と待ちを許す系を、実際の運用に結び付けて区別することが求められています。

設問4(1)

表2のNo.5は、地域保守会社のネットワーク192.168.32.0/24への経路で、インタフェースがeです。本文には、VPNトンネルが確立すると、その仮想インタフェースが有効な経路になるとあります。したがって、公式解答例では「e」です。インターネット向けのデフォルトルートに使われるaと、VPNトンネルの仮想インタフェースeを区別します。採点講評でも、VPNトンネルがどの装置間に存在するかの理解不足が指摘されています。

設問4(2)(ウ)

No.6は、VPNトンネルが利用できないときに地域保守会社宛てのパケットをNullポートmへ送って破棄する代替経路です。対象の宛先はNo.5と同じネットワークなので、公式解答例では「192.168.32.0/24」です。この宛先に一致する経路を残すことで、トンネル停止時にデフォルトルートからインターネットへ流れることを防ぎます。

設問4(2)(エ)

No.6では、別のルータへ中継せず、インタフェースmへ直接送り、パケットを破棄します。本文には、ゲートウェイの0.0.0.0はゲートウェイを経由しない指定だと説明されています。したがって、公式解答例では「0.0.0.0」です。インターネット側のゲートウェイを指定すると、外部への送出を防ぐ目的に合いません。

設問4(2)(オ)

VPNトンネルの経路No.5はメトリック値1で、数値が小さいほど優先されます。同じ宛先を持つNo.6の破棄経路は、通常時にはNo.5より優先度を下げる必要があります。公式解答例では「2、又はそれ以上の値」です。トンネルが有効な間はNo.5を選び、無効になったときにNo.6で破棄する関係を作ります。

設問4(3)

MPCはVPN1のグローバルアドレス宛てに接続しますが、接続先となるモバイル端末接続装置のアドレスは図4の10.0.0.1です。本文で指定されたポート番号443のパケットだけを、その内部アドレスへ変換して転送します。公式解答例では、ポートマッピングによる宛先アドレス変換が示されています。60字以内の答案では「ポート番号443のパケットだけを、ポートマッピングで10.0.0.1宛てに変換し転送する。」と、対象ポート・変換先・転送方法を押さえます。

設問4(4)(機器名)

ここで制限するのは、SSLによるVPN通信の内側にある、MPCのアプリケーションが使用するポートです。VPN1から見える外側のポート番号443とは区別します。VPN通信を終端し、内部のパケットを扱える機器が必要なので、公式解答例では「モバイル端末接続装置」です。

設問4(4)(理由)

MPCのアプリケーション通信は暗号化・カプセル化されているため、中継するVPN1では内側のポート番号を認識できません。VPNを終端するモバイル端末接続装置で内部のパケットを確認し、制限する必要があります。公式解答例も、中継装置では内容を認識できないことを理由としています。50字以内なら「暗号化・カプセル化された内部パケットのポート番号を、中継装置では認識できないから。」とまとめられます。

設問5(1)

本文では、CNAが一つのアダプタでHBAとNICを兼ねられるとあります。多数のブレードサーバでSAN用とLAN用の接続を統合すると、外部接続に必要なスペースや配線を減らせます。公式解答例では、この物理的な設計上の効果が示されています。40字以内なら「ブレードサーバの外部接続スペースを節約し、配線数を削減できる。」とまとめられます。

設問5(2)

下線④では、送信側と受信側が受信側の空きバッファ数を管理して送信を制御しています。着目するのは、通信の両端だけでなく、途中にある隣接ノード間の受信バッファ枯渇にも対応できる点です。公式解答例では、局所的なバッファ枯渇への対処が示されています。35字以内なら「隣接ノード間の局所的なバッファ枯渇によるパケットロスを防げる。」と表せます。伝送路のビット誤りを防ぐという説明ではありません。

設問5(3)

図5では、優先度ごとにバッファを分け、枯渇した優先度の送信だけをPAUSEで抑止しています。これにより、低優先度の通信がバッファを使い切った影響で、高優先度の通信まで送信できなくなる状態を避けます。公式解答例も、この高優先度通信への巻き添えを回避する点を示しています。50字以内なら「低優先度通信のバッファ枯渇により、高優先度通信のパケットまで送信できなくなる状態。」とまとめられます。

設問5(4)(コスト設計)

本文では、SPFがコストを評価して最短経路を選ぶと説明されています。複数経路へトラフィックを分散するには、一つだけが最小コストになる構成を避け、利用する経路の総コストをそろえます。公式解答例では「複数経路が同一コストをもつようにする。」です。25字以内の答案でも、この同一コストという条件を示します。個々のリンクではなく、経路全体のコストに着目しましょう。

設問5(4)(効果)

同一コストの複数経路を同時に利用してトラフィックを分散すれば、利用可能な帯域を増やせます。スパニングツリープロトコルで冗長経路を待機させる構成との違いは、この同時利用による効果です。公式解答例では「帯域を増加させることができる。」で、20字以内にも収まります。冗長化による耐障害性だけでなく、問われている帯域の増加を示します。

設問5(5)

公式解答例の図では、図6に不足する線を7本追加しています。①上側FC-SWの空いている右側ポートと上側FCoE-SWの黒丸ポート、②下側FC-SWの空いている右側ポートと下側FCoE-SWの黒丸ポート、③上側L3SWの右側ポートと上側FCoE-SWの左側白丸ポート、④下側L3SWの右側ポートと下側FCoE-SWの左側白丸ポート、⑤上側FCoE-SWの下側ポートと下側FCoE-SWの上側ポート、⑥上側FCoE-SWの右側ポートと上側CNA、⑦下側FCoE-SWの右側ポートと下側CNAを接続します。FC-SWからの接続には、FCとFCoEの相互変換機能を持つ黒丸ポートを使います。各CNAから既存のSANとLANへ到達できること、二つのCNAを同時に使うこと、FCoE-SW同士を相互接続することを図で確認します。

学習のポイント

仮想PCの音声処理、待ち行列の用語と単位、VPNの終端と経路選択、FCoEのフロー制御と接続構成を重点的に学習しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針