NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
平成23年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題








解き方のヒントを見る
設計を考える前提条件の整理
システムの設計を検討するときは、まず判断の前提となる条件が、どの範囲に適用されるかを整理しましょう。条件を広げて解釈せず、与えられた情報と自分の想定を区別して考えることが大切です。
この問題で問われていること
この問題では、判断に用いる条件の適用範囲に注目しましょう。ある条件を別の対象や場面にも当てはめていないかを確かめ、読み取った事実と、補って考えた前提を分けて整理すると、検討の軸を保ちやすくなります。
視点
条件を整理するときは、その条件がどこまで適用されるのかを意識します。対象や場面を広げて考える場合は、その広げ方に根拠があるかを振り返りましょう。
確認ポイント
- 条件が適用される範囲を確認したか
- 対象や場面を越えて条件を広げていないか
- 明示された条件と自分で補った前提を区別したか
正解と解説を見る
解説
分散した保守サービスを統合する際の端末選定、仮想PCでの音声品質、呼量に基づく回線設計、VPNの経路と通信制限、FCoEによるSANとLANの統合を扱う問題です。本文の動作条件と図表を対応させ、技術が解決する具体的な課題を説明することが要点です。
問題の全体像
A社は、地域保守会社に分散していた保守サービスサーバ、DB、電話受付をデータセンタへ統合し、地域の端末や外出中のCEから共同利用できる構成を検討しています。出題趣旨では、利用者のニーズに応えるシステムを構築するための幅広いITインフラ技術を問うとされています。端末機能だけでなく、仮想PC利用時の音声品質、受付回線数、安全なリモートアクセス、SANとLANの統合を具体的な条件から判断する問題です。採点講評でも、暗記に加えて実際のシステムの動きと関連付けた理解が重視されています。
設問1(1)(ア)
「公共施設にあるアクセスポイントを経由して、インターネットに接続できる」という記述に着目します。アクセスポイントを介した無線接続の機能なので、公式解答例では「無線LAN」です。続くテザリングの説明と区別し、空欄が指している接続手段を読み取りましょう。
設問1(1)(イ)
空欄の直前に「位置情報を取得する」とあります。端末の位置を取得する機能として、公式解答例では「GPS」です。カメラやVPN接続など、並列に挙げられた別の機能と混同せず、空欄に対応する目的から判断します。
設問1(2)
設問は、CEが様々な場所からインターネット経由で接続する点を指定しています。公式解答例では「SSL」です。公共のアクセスポイントなどを利用する場面を想定し、SSLによるVPN接続を選ぶ考え方です。後段にある、モバイル端末接続装置へポート番号443のパケットを転送する記述とも対応しています。
設問2(1)
図3では、TC-V方式の音声はTC-VとIP-PBX間でRTPによって直接送受されます。USBリダイレクト方式の汎用的なUSB音声転送に対し、TC-V方式では音声通話向けの圧縮率の高いコーデックを利用できることが帯域削減の理由です。公式解答例も、このコーデックの違いを示しています。35字以内の答案では「音声通話用の圧縮率の高いコーデックを利用できるから」とまとめられます。経路が短いという説明だけでは、指定されたコーデックとの関連を示せません。
設問2(2)
図3のUSBリダイレクト方式では、音声データが仮想PCのソフトフォンを経由します。この処理による影響を、事象と音質劣化要因の組で示します。公式解答例の一つ目は「仮想PCでの音声処理時間の増加→音声遅延」、二つ目は「負荷変動による音声処理時間のばらつき→音声遅延のジッタ」です。遅延は届くまでの時間が長くなること、ジッタはその時間が揺れることとして区別します。採点講評でも、仮想PCの具体的な動作と音質への影響を結び付ける力が必要とされています。
設問3(1)(a)
到着率は、単位時間当たりに到着する問合せ電話の件数です。本文では各地域の最繁時に1時間当たり36件がかかってくるため、公式解答例ではaは「36」です。ここでは各地域の値を求めているので、10社分を合計しません。
設問3(1)(b)
サービス率は、一つの窓口が単位時間当たりに処理できる件数です。後処理を含む平均サービス時間が10分なので、1時間では60÷10=6件となります。公式解答例ではbは「6」です。平均サービス時間の10分をそのままサービス率にせず、時間をそろえて逆数を求めます。採点講評でも、待ち行列理論の用語の定義に関する誤解が指摘されています。
設問3(1)(c)
M/M/s/sのsは窓口数を表し、この事例では各地域の受付回線数に対応します。本文に「地域ごとに受付回線10本」とあるので、公式解答例ではcは「10」です。許容収容数もsなので、全窓口が使用中であれば新たな要求を待たせず、呼損となるモデルです。
設問3(2)(呼損率)
表1を参照するため、各地域の呼量を求めます。到着率36件/時に、後処理を含む平均サービス時間10/60時間を掛けると、呼量は36×10/60=6.0です。表1の呼量6.0、回線数10の交点は4.3なので、公式解答例では「4.3」です。表の注記により単位は%です。到着率36をそのまま呼量として表に当てはめないことが重要です。
設問3(2)(回線数)
10社分を統合するため、全体の到着率は36×10=360件/時、呼量は360×10/60=60.0です。表1の呼量60.0の行で従来の4.3%以下になる最小の回線数を探します。66本では4.6%、67本では3.9%となるので、公式解答例では「67」です。従来の合計100本を単純に維持するのではなく、統合後の呼量と目標呼損率から必要数を判断します。
設問3(3)
自動音声応答は受付情報を登録して電話を切断しますが、登録された要求は空いた受付者に順次割り当てられます。回線上で通話を保留しなくても、サービスを待つ要求が蓄積される点に着目します。公式解答例では「通話要求の待ち行列を許すモデル」で、20字以内にも収まります。採点講評でも、待ちを許さない即時系と待ちを許す系を、実際の運用に結び付けて区別することが求められています。
設問4(1)
表2のNo.5は、地域保守会社のネットワーク192.168.32.0/24への経路で、インタフェースがeです。本文には、VPNトンネルが確立すると、その仮想インタフェースが有効な経路になるとあります。したがって、公式解答例では「e」です。インターネット向けのデフォルトルートに使われるaと、VPNトンネルの仮想インタフェースeを区別します。採点講評でも、VPNトンネルがどの装置間に存在するかの理解不足が指摘されています。
設問4(2)(ウ)
No.6は、VPNトンネルが利用できないときに地域保守会社宛てのパケットをNullポートmへ送って破棄する代替経路です。対象の宛先はNo.5と同じネットワークなので、公式解答例では「192.168.32.0/24」です。この宛先に一致する経路を残すことで、トンネル停止時にデフォルトルートからインターネットへ流れることを防ぎます。
設問4(2)(エ)
No.6では、別のルータへ中継せず、インタフェースmへ直接送り、パケットを破棄します。本文には、ゲートウェイの0.0.0.0はゲートウェイを経由しない指定だと説明されています。したがって、公式解答例では「0.0.0.0」です。インターネット側のゲートウェイを指定すると、外部への送出を防ぐ目的に合いません。
設問4(2)(オ)
VPNトンネルの経路No.5はメトリック値1で、数値が小さいほど優先されます。同じ宛先を持つNo.6の破棄経路は、通常時にはNo.5より優先度を下げる必要があります。公式解答例では「2、又はそれ以上の値」です。トンネルが有効な間はNo.5を選び、無効になったときにNo.6で破棄する関係を作ります。
設問4(3)
MPCはVPN1のグローバルアドレス宛てに接続しますが、接続先となるモバイル端末接続装置のアドレスは図4の10.0.0.1です。本文で指定されたポート番号443のパケットだけを、その内部アドレスへ変換して転送します。公式解答例では、ポートマッピングによる宛先アドレス変換が示されています。60字以内の答案では「ポート番号443のパケットだけを、ポートマッピングで10.0.0.1宛てに変換し転送する。」と、対象ポート・変換先・転送方法を押さえます。
設問4(4)(機器名)
ここで制限するのは、SSLによるVPN通信の内側にある、MPCのアプリケーションが使用するポートです。VPN1から見える外側のポート番号443とは区別します。VPN通信を終端し、内部のパケットを扱える機器が必要なので、公式解答例では「モバイル端末接続装置」です。
設問4(4)(理由)
MPCのアプリケーション通信は暗号化・カプセル化されているため、中継するVPN1では内側のポート番号を認識できません。VPNを終端するモバイル端末接続装置で内部のパケットを確認し、制限する必要があります。公式解答例も、中継装置では内容を認識できないことを理由としています。50字以内なら「暗号化・カプセル化された内部パケットのポート番号を、中継装置では認識できないから。」とまとめられます。
設問5(1)
本文では、CNAが一つのアダプタでHBAとNICを兼ねられるとあります。多数のブレードサーバでSAN用とLAN用の接続を統合すると、外部接続に必要なスペースや配線を減らせます。公式解答例では、この物理的な設計上の効果が示されています。40字以内なら「ブレードサーバの外部接続スペースを節約し、配線数を削減できる。」とまとめられます。
設問5(2)
下線④では、送信側と受信側が受信側の空きバッファ数を管理して送信を制御しています。着目するのは、通信の両端だけでなく、途中にある隣接ノード間の受信バッファ枯渇にも対応できる点です。公式解答例では、局所的なバッファ枯渇への対処が示されています。35字以内なら「隣接ノード間の局所的なバッファ枯渇によるパケットロスを防げる。」と表せます。伝送路のビット誤りを防ぐという説明ではありません。
設問5(3)
図5では、優先度ごとにバッファを分け、枯渇した優先度の送信だけをPAUSEで抑止しています。これにより、低優先度の通信がバッファを使い切った影響で、高優先度の通信まで送信できなくなる状態を避けます。公式解答例も、この高優先度通信への巻き添えを回避する点を示しています。50字以内なら「低優先度通信のバッファ枯渇により、高優先度通信のパケットまで送信できなくなる状態。」とまとめられます。
設問5(4)(コスト設計)
本文では、SPFがコストを評価して最短経路を選ぶと説明されています。複数経路へトラフィックを分散するには、一つだけが最小コストになる構成を避け、利用する経路の総コストをそろえます。公式解答例では「複数経路が同一コストをもつようにする。」です。25字以内の答案でも、この同一コストという条件を示します。個々のリンクではなく、経路全体のコストに着目しましょう。
設問5(4)(効果)
同一コストの複数経路を同時に利用してトラフィックを分散すれば、利用可能な帯域を増やせます。スパニングツリープロトコルで冗長経路を待機させる構成との違いは、この同時利用による効果です。公式解答例では「帯域を増加させることができる。」で、20字以内にも収まります。冗長化による耐障害性だけでなく、問われている帯域の増加を示します。
設問5(5)
公式解答例の図では、図6に不足する線を7本追加しています。①上側FC-SWの空いている右側ポートと上側FCoE-SWの黒丸ポート、②下側FC-SWの空いている右側ポートと下側FCoE-SWの黒丸ポート、③上側L3SWの右側ポートと上側FCoE-SWの左側白丸ポート、④下側L3SWの右側ポートと下側FCoE-SWの左側白丸ポート、⑤上側FCoE-SWの下側ポートと下側FCoE-SWの上側ポート、⑥上側FCoE-SWの右側ポートと上側CNA、⑦下側FCoE-SWの右側ポートと下側CNAを接続します。FC-SWからの接続には、FCとFCoEの相互変換機能を持つ黒丸ポートを使います。各CNAから既存のSANとLANへ到達できること、二つのCNAを同時に使うこと、FCoE-SW同士を相互接続することを図で確認します。
学習のポイント
仮想PCの音声処理、待ち行列の用語と単位、VPNの終端と経路選択、FCoEのフロー制御と接続構成を重点的に学習しましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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