NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ

平成23年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 ネットワークの再構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 S社は、全国に100店舗以上のインターネットカフェをフランチャイズ方式で展開している企業である。本部は、商標権、営業権などの権利をもち、加盟店(以下、FCという)に営業ノウハウ、顧客管理システム、販売管理システムなどを提供している。 〔現在のネットワーク構成〕 店舗の利用者は、会員登録をしなければならないが、ある店舗で登録すれば、全国の全ての店舗でサービスを受けられるようになる。会員が利用するPC(以下、会員用PCという)は、インターネットに接続されている。会員が利用するネットワーク(以下、会員用NWという)の構成及びセキュリティ対策については、本部からのガイドラインはあるが、各FCに任されている部分が大きいので、FCごとに異なっており、本部では把握できていない。 図1は、S社のネットワーク構成の抜粋である。図1中の店舗のネットワーク構成は一例であり、S社が運用を委託しているT社のデータセンタ(以下、DCという)に設置されている業務サーバ(以下、業務SVという)を使用する業務用ネットワーク(以下、業務用NWという)だけが、全ての店舗に共通している。 図1 S社のネットワーク構成(抜粋) DCでは、T社の運用担当者が業務用NWの稼働状態を監視しており、障害を検知すると、S社の担当者にメールで通知する。一方、会員用NWに障害が発生した場合、DCで検知して状況を把握することができないので、店舗の担当者だけで対応している。その結果、解決までに時間が掛かってしまうことが多く、会員からのクレームも増加しており、何らかの対策が急務となっている。S社では、情報システム部が対策を検討した結果、会員用NWの監視をアウトソーシングすることにした。詳細な検討については、ネットワーク管理者のD君が担当することとなった。 〔ネットワーク監視サービスの検討〕 D君が調査したところ、FCに任されているセキュリティ対策も不十分であることが分かった。また、FCからは、“スキルをもった人材を確保することが困難なので、会員用NWを本部で一元管理し、店舗側での対応を必要最小限に抑えてほしい”という要望もあった。 D君は、これらの問題を解決できるネットワーク監視サービスを調査した。幾つかの会社から提案してもらい、費用とサービス内容を比較した結果、C社のサービスに絞った。C社提案の新ネットワーク構成を図2に示す。 図2 C社提案の新ネットワーク構成 C社の提案には、ネットワーク監視サービスの提供だけでなく、業務用NWを含めたネットワーク構成の見直しも含まれていた。C社によると、“構成の見直しと業務用NWの監視サービスをT社から乗り換えることで、ランニング費用を現状と同等にできる”とのことであった。さらに、セキュリティ対策と運用上の作業負荷を極力抑えられるように、新たな機器の導入と保守サービスの提案も含まれていた。次は、C社提案の要約である。 (1)新ネットワーク構成 ・DC、店舗、監視センタの接続には、インターネットVPNを利用する。 ・DC及び監視センタのルータには、VPN機能をもたせる。 ・店舗側のFWは2台構成とし、配下にL2SWを接続する。 ・FWには、VPN、Webフィルタリング、ウイルスチェックなどの機能ももたせる(このような複数のセキュリティ機能をもつ装置のことを【ア】という)。 ・店舗内セグメントでは、L2SWの機能によって、会員用PC間の通信を遮断する。 ・会員用PCが勝手に設定変更されたり、ウイルスに感染したりした場合でも、PCを【イ】すれば、元の状態に戻せるようなツールを導入する。 (2)運用上の考慮点 保守費用を抑えるために、なるべく店舗の担当者が対応できるように、次のような仕組みと作業マニュアルを用意する。 ・FW又はアクセス回線に障害が発生した場合は、店舗の担当者が、利用可能なもう1台のFWにL2SWを付け替える。 ・L2SWが故障した場合は、店舗の担当者が、あらかじめ用意してある予備機と交換する。 ・店舗側のL2SWの設定情報は、構成管理SVに保存しておき、簡易型ファイル転送用プロトコルである【ウ】を用いてデータを転送する。その作業は、店舗の担当者がL2SWにログインし、構成管理SVの【エ】とファイル名を指定したコマンドを投入して行う。 ・FWの設定や各種セキュリティ対策用ファイルの更新は、C社からリモートで実施する。通常はインターネット経由で行うが、障害時に備え、ISDN回線も利用できるようにする。DSUとFWの接続には、一般的に【オ】と呼ばれるモジュラジャックが付いているケーブルを用いる。 (3)C社の監視サービス ・ネットワークと機器の状態は、監視センタに設置された監視SVで監視する。 ・監視対象となる機器は、SNMP v1/v2c対応の機器を導入する。監視の対象範囲に【カ】名を付け、監視SVがこれを指定して、対象機器に問い合わせる。 ・監視SVは、対象機器に一定間隔で問合せを行い、対象機器の異常を検知した場合、監視用のコンソールに状況を表示するとともに、S社の担当者にメールで通知する。 〔ネットワークの再構築〕 S社は、C社の提案を採用し、ネットワークを再構築することを決定した。D君は、運用フェーズに備えて、店舗の担当者が実施する作業マニュアルの整備を進めていくことにした。作業マニュアルにおけるL2SWの交換作業手順を表1に示す。 表1 L2SWの交換作業手順 S社と各FCは、新たな契約内容で合意し、移行計画に基づいてネットワークの再構築を進めていくことになった。 設問1 本文中の【ア】~【カ】に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 新ネットワーク構成について、(1)~(3)に答えよ。 (1)VPNトンネルの設定区間を三つ答えよ。 (2)FWにL2SWを付け替える場合に、作業ミスを防止するため、FWに対して事前に準備しておくべき事項を二つ挙げ、それぞれ20字以内で述べよ。 (3)店舗内のL2SWに設定するVLANで実現させる通信条件を二つ挙げ、それぞれ30字以内で述べよ。 設問3 運用フェーズにおける考慮事項について、(1)~(3)に答えよ。 (1)店舗側のFWが故障した場合、メールによる障害通知運用に支障を来すことがある。その内容を40字以内で述べよ。 (2)上記(1)の状況の回避方法を、30字以内で述べよ。 (3)表1中の④及び⑥の作業内容を、それぞれ25字以内で述べよ。
図1 S社のネットワーク構成(抜粋)。T社DC、インターネット、IP-VPN、店舗の会員用NWと業務用NWの接続関係を示すネットワーク構成図。
図1 S社のネットワーク構成(抜粋)。T社DC、インターネット、IP-VPN、店舗の会員用NWと業務用NWの接続関係を示すネットワーク構成図。
図2 C社提案の新ネットワーク構成。T社DC、C社監視センタ、店舗をインターネットVPNとISDNで接続し、店舗に二重化FWとL2SWを配置した構成図。
図2 C社提案の新ネットワーク構成。T社DC、C社監視センタ、店舗をインターネットVPNとISDNで接続し、店舗に二重化FWとL2SWを配置した構成図。
表1 L2SWの交換作業手順。故障したL2SWを予備機へ交換する手順を、①から⑦の項番と作業内容で示した表。
表1 L2SWの交換作業手順。故障したL2SWを予備機へ交換する手順を、①から⑦の項番と作業内容で示した表。
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判断の前提と適用範囲をそろえる

店舗ネットワークの再構築について考えるときは、判断がどの前提に基づき、どの範囲に当てはまるかを整理しましょう。同じ観点で考えているつもりでも、途中で対象や条件が変わっていないかを確かめることが大切です。

この問題で問われていること

この問題では、扱われている対象と条件を、判断の前提として意識してみましょう。ある範囲で考えた内容を別の範囲へ広げていないか、明示された条件と自分が補った想定を混ぜていないかに注目してください。

視点

検討の前提は、対象となる範囲と、そこで成り立つとされている条件を合わせて捉えます。考えを進める際は、根拠のある条件と自分で置いた想定を区別し、前提が途中で変わっていないかを見直しましょう。

確認ポイント

  • 判断の対象となる範囲を意識できているか
  • 明示された条件と自分の想定を区別できているか
  • 考えを進める途中で前提を変えていないか
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解説

本問は、ネットワーク監視の外部委託に伴う再構築を題材に、VPNの接続区間、VLANの通信条件、障害時の付け替え準備、通知の集約と機器交換手順を問う問題です。設計段階から現場での運用と障害対応を考慮することが要点です。

問題の全体像

S社では、店舗ごとに会員用NWの構成とセキュリティ対策が異なり、障害対応にも時間が掛かっています。そこでC社の監視サービスを導入し、業務用NWも含めて構成を見直します。出題趣旨では、現場担当者が運用できるように、障害の発生を前提として可用性と運用管理を設計段階から考慮する力を問うとしています。機器やプロトコルの知識に加え、付け替え準備、通信制御、障害通知、設定復元を具体的な運用と結び付けて読むことが必要です。

設問1(ア)

FWにVPN、Webフィルタリング、ウイルスチェックなどの複数のセキュリティ機能をもたせるという記述に着目します。公式解答例では「UTM」です。統合脅威管理を意味し、複数のセキュリティ機能を統合した装置を指します。

設問1(イ)

設定変更やウイルス感染があっても、ある操作で会員用PCを元の状態に戻せるツールを導入するという記述が根拠です。公式解答例では「再起動」です。ここでは、導入する復元ツールによって再起動時に元の状態へ戻す仕組みを想定しています。

設問1(ウ)

構成管理SVからL2SWへ設定情報を転送する際の「簡易型ファイル転送用プロトコル」という説明に着目します。公式解答例では「TFTP」です。機器の設定情報をファイルとして転送する用途と結び付けて理解します。

設問1(エ)

店舗担当者がL2SWにログインし、構成管理SVの何かとファイル名を指定するという記述が根拠です。転送元のサーバを特定する必要があるので、公式解答例では「IPアドレス」です。サーバの指定と、取得するファイルの指定を分けて読み取ります。

設問1(オ)

DSUとFWの接続に用いるケーブルのモジュラジャックの名称を問うています。公式解答例では「RJ-45」です。本文の接続対象と、問われているものがプロトコルではなくコネクタの名称であることを確認します。採点講評でも、この用語の理解が課題として挙げられています。

設問1(カ)

監視対象機器がSNMP v1/v2cに対応し、監視SVが名称を指定して問い合わせるという記述に着目します。公式解答例では「コミュニティ」で、空欄の後の「名」と合わせてコミュニティ名となります。採点講評では、頻繁に目にする用語として把握しておくことが求められています。

設問2(1)

本文ではDC、店舗、監視センタの接続にインターネットVPNを利用し、DCと監視センタのルータ及び店舗のFWにVPN機能をもたせます。公式解答例の三つの区間は「T社DCのルータと店舗のFWの間」「C社監視センタのルータと店舗のFWの間」「C社監視センタのルータとT社DCのルータの間」です。図2のインターネットへの接続線だけでなく、拠点間の通信を保護するトンネルの両端を機器名で答えます。

設問2(2)(a)

障害時には、利用可能なもう1台のFWへL2SWを付け替えるという運用に着目します。付け替え先のFWには、追加するL2SWを接続できるポートが必要です。公式解答例では「L2SW接続用のポートを確保する」です。20字以内の答案では、この接続先ポートの確保を明記します。採点講評では、こうした事前準備を構築フェーズから考慮する必要があるとしています。

設問2(2)(b)

設問は「FWに対して」事前に準備する事項を問うています。L2SWを別のFWに付け替えると、そのFWが受け持つ接続構成が変わるため、変更後の接続構成に対応するFWの設定・構成情報を事前に用意しておく必要があります。公式解答例では「接続変更後の構成情報を用意する」です。これはFW側の設定・構成情報の準備を指します。20字以内なら「接続変更後のFW構成情報を用意する」と、準備対象を明確にまとめられます。

設問2(3)(a)

会員用PC間の通信を遮断する一方、会員用PCはFWを経由してインターネットを利用する必要があります。したがって、VLANの通信条件には必要な通信の許可も含めます。公式解答例では「FW接続ポートとPC接続ポート間は通信できる」です。30字以内では、通信する二種類のポートと許可条件を示します。採点講評でも、端末側だけでなくアップリンク側を考えることが求められています。

設問2(3)(b)

本文の「L2SWの機能によって、会員用PC間の通信を遮断する」が直接の根拠です。公式解答例では「PC接続ポート同士では通信できない」です。30字以内では、遮断する対象をPC接続ポート同士と明示します。前の回答と合わせて、FWへの通信は許可し、会員用PC同士の通信は遮断するという二つの条件を押さえます。

設問3(1)

図2では複数のL2SWがFWの配下にあり、監視SVは対象機器への定期的な問い合わせで異常を検知し、メールを送ります。FWが故障すると、その配下の複数機器への監視通信にも影響し、通知が集中することが考えられます。公式解答例では、大量のメールによってS社の担当者が重要な通知を見落とすことを挙げています。40字以内なら「S社の担当者に大量のメールが届き、重要な通知を見落とす」と、通知量と運用への影響を示します。

設問3(2)

前問の支障は、大量の通知によって重要な内容を見落とすことです。そのため、複数の検知内容を集約してメールの数を抑える方法を考えます。公式解答例では「複数の検知内容を一つのメールにまとめるようにする」です。30字以内なら「複数の検知内容を一つのメールにまとめる」と、通知をまとめる処理を具体的に示します。

設問3(3)(④)

表1では、③でL2SWをFWに接続し、⑤で設定情報を保存してリブートします。また、本文ではL2SWの設定情報を構成管理SVに保存し、TFTPで転送するとしています。このため④は、保存とリブートに先立って設定情報を取得する作業です。公式解答例では「L2SWの設定情報を構成管理SVから転送する」です。25字以内なら「L2SWの設定を構成管理SVから転送する」と、転送元と対象を示します。

設問3(3)(⑥)

①で故障したL2SWから全てのケーブルを抜き、③では交換機をFWに接続しています。⑤で設定情報の保存とリブートを終えた後、⑦で会員用PCの利用を確認するためには、PC側の接続を戻す必要があります。公式解答例では「会員用PCをL2SWに接続する」です。この表現は25字以内で、接続する機器と接続先を具体的に示しています。

学習のポイント

通信を許可する条件と遮断する条件を区別し、障害時に必要となるFWの構成情報や交換手順を設計段階で準備する考え方を学びましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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