NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ
平成23年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題




解き方のヒントを見る
要件を適用する範囲に着目する
メールアーカイブを検討するときは、示された条件がどの範囲に適用されるかに着目しましょう。用語の印象から判断を急がず、対象となる範囲をそろえて考えることが、要件を整理する手掛かりになります。
この問題で問われていること
この分野では、要件や処理について考える際に、それぞれの条件が対象とする範囲を確認することが大切です。ある範囲についての条件を、根拠なく別の範囲へ広げて受け取っていないかという観点で整理しましょう。
視点
条件を整理するときは、その条件が何を対象としているかを押さえます。対象の範囲を自分で広げたり狭めたりせず、示されている範囲に沿って考えましょう。
確認ポイント
- 条件が対象とする範囲を確認したか
- 対象の範囲を根拠なく広げていないか
- 対象の範囲を根拠なく狭めていないか
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解説
本問は、メールアーカイブの保管性能と遠隔複製の性能を検討する問題です。保管はM/M/1の平均待ち時間と処理時間、複製は転送効率を含む必要帯域とメールごとの滞留時間から、所要時間の要件を満たすか判断します。
問題の全体像
A社は、全メールの長期保管と災害対策のため、本社の正サーバと遠隔地の支社の副サーバからなるアーカイブを導入します。正サーバへの保管は平均1秒以内、副サーバへの複製は24時間以内という要件があります。図2では、保管と複製を別の待ち行列・処理に分けています。出題趣旨では、待ち行列理論の応用、必要な回線速度の算出、公式の理解とグラフの読解を問うとしています。保管は最繁時にも処理能力が到着率を上回りますが、複製はピーク時にメールが滞留するため、時間帯ごとの到着量と転送量を比較して遅延を調べることが中心です。
設問1(1)
正サーバが、受信メールにディジタル署名を付加してから格納する点に着目します。署名を検証することで、保管後にメールデータが変更されていないか確認できます。長期間保管するメールの内容の完全性を守る目的であり、公式解答例では「メールデータの改ざん防止のため」としています。この表現は20字以内に収まります。署名は変更そのものを物理的に禁止する仕組みではなく、改ざんの検出を可能にすることで、この目的に役立ちます。
設問1(2)
表1の項目fにある「24時間以内」「前日同時刻のメールは複製されていること」に着目します。本社が被災して正サーバのデータを失った場合、支社の副サーバに複製済みのメールを復旧に利用できます。RPOは、障害発生時点からどれだけ前までのデータを復旧対象として確保するかという目標です。この要件では、少なくとも24時間前までのメールを確保するため、公式解答例は「24時間」です。復旧作業にかかる時間を表すRTOとは区別します。
設問2(1)
下線①は、待ち行列αのメール到着がM/M/1の条件を満たすという仮定です。設問は到着条件を尋ねているので、メールがランダムに到着することを答えます。公式解答例は「メールがランダムに到着する」で、20字以内です。採点講評では、M/M/1はランダム到着を前提とし、単位時間の到着数がポアソン分布に従うことと、到着間隔が指数分布に従うことが数学的に同値であると説明しています。「到着順に処理する」という処理順序の記述だけでは、到着条件の説明にはなりません。
設問2(2)
表1の最繁時到着件数36、000件/時を秒単位に直すと、λ=36、000÷3、600=10件/秒なので、アは10です。処理能力は12.5件/秒なので、イは12.5です。利用率はρ=λ/μ=10÷12.5=0.8となり、ウは0.8です。本文の平均系内数4.0には処理中のメールも含まれます。平均待ち行列長は4.0-0.8=3.2件なので、平均待ち時間は3.2÷10=0.32秒となり、エは0.32です。平均処理時間は1÷12.5=0.08秒で、保管プロセスの平均所要時間は0.32+0.08=0.40秒となり、1秒以内の要件を満たします。公式解答例もア10、イ12.5、ウ0.8、エ0.32です。採点講評では、特にエの正答率が低かったとされており、平均待ち時間と、処理時間を含む平均系内時間の区別が重要です。
設問3(1)
1日のメール件数、1件当たりのデータ量、転送効率、転送期限を使います。1日のデータ量をビットに換算すると、189、000×12.5×10³×8=18.9×10⁹ビットです。回線速度をRビット/秒とすると、転送効率50%で24時間に転送できる量はR×0.5×24×3、600です。したがって、必要な回線速度は18.9×10⁹÷(0.5×24×3、600)=437、500ビット/秒=0.4375Mビット/秒です。小数第3位を四捨五入すると、公式解答例の「0.44Mビット/秒」になります。帯域は0.25Mビット/秒単位で設定するので、実際には必要速度以上となる0.5Mビット/秒を割り当てます。
設問3(2)
図3の上段と下段で、同じIDのメール群を対応させます。ID13は上段では9:00~10:00に到着し、下段では13:00~14:00に転送されるので、オは13、カは14です。両時間帯のずれから、複製所要時間は約4時間とみなし、キは4です。同様に全IDの時間帯のずれを比較すると、最大となるのはID42です。ID42は19:00~20:00に到着し、翌日の4:00~5:00に転送されるため、約9時間のずれがあります。したがって、クは42、ケは9です。公式解答例もこの値です。採点講評では、メール1件当たりの所要時間ではなく、メール全体の所要時間を計算しようとした解答が見られたとしています。この設問では、最後の転送完了時刻だけを見るのではなく、各メール群の到着から転送までの遅延を比較します。
設問3(3)
図3の注記では、0.5Mビット/秒で毎時9、000件を転送できます。帯域を3倍の1.5Mビット/秒にすると、転送可能件数は毎時27、000件です。到着件数がこれを上回るのは、36、000件が到着する9:00~10:00だけで、この時間帯に9、000件が滞留します。次の10:00~11:00の到着件数は18、000件なので、滞留分と合わせて27、000件となり、次の時間帯に滞留が解消します。この時間帯単位のモデルから、公式解答例では最大所要時間を「1時間」としています。50字以内の根拠は「到着件数が転送可能件数を上回るのはピーク時間帯だけで、次の時間帯に滞留が解消するため」とまとめられます。帯域を増やした場合も、ピーク時の滞留とその解消を確認することが必要です。
学習のポイント
M/M/1の平均待ち時間と平均系内時間の違い、転送効率を考慮した回線速度の計算、時間帯別グラフによる複製遅延の読み取りを重点的に学習しましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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