NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ
平成22年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題






解き方のヒントを見る
検討に用いる前提の範囲をそろえる
構成や接続、可用性を考える際は、判断に用いる前提がどこまで当てはまるかに注目しましょう。ある範囲での説明を別の範囲にもそのまま当てはめず、与えられた条件の範囲内で考える姿勢が大切です。
この問題で問われていること
この分野の検討では、ある判断を支える前提と、その判断が及ぶ範囲を対応させて考えましょう。途中で前提の範囲が変わっていないかを確かめ、明示された条件と自分で補った想定を区別して整理してください。
視点
前提には適用できる範囲があります。判断の根拠を整理するときは、その前提がどの範囲について述べられているかを意識し、範囲を広げて解釈していないか確かめましょう。
確認ポイント
- 判断に用いる前提の範囲を把握できているか
- 検討の途中で前提の範囲を広げていないか
- 前提の範囲を、明示された条件から確かめているか
正解と解説を見る
解説
本問は、ヘルプデスクシステムを仮想化基盤上でサービス提供するためのインフラ設計を扱います。物理NICの共有に伴う信頼性と帯域、負荷分散方式と外部スイッチの整合、展示会場のアドレス条件に応じたVPN接続、共有ストレージと管理通信の可用性が要点です。
問題の全体像
D社は、自社開発のヘルプデスクソフトをデータセンタの仮想サーバで提供し、展示会や客先でのデモからJ社向けの本番構築へ進めています。出題趣旨では、仮想化技術とセキュリティ技術を活用し、整合性のあるネットワークを設計する力を問うとしています。設問は、仮想化基盤の通信、外部接続の負荷分散と冗長化、IPsec-VPN、共有ストレージと管理系の可用性という順に、サービス提供を支える条件を確認する構成です。
設問1(1)(ア)
「仮想化機構を動作させるためのOSを必要としない」という条件に着目します。物理サーバ上で直接仮想化機構を動作させ、仮想サーバの実行や外部機器への接続を制御する方式を指しています。公式解答例では「ハイパーバイザ」です。採点講評では、この空欄の正答率がほかの設問1の項目より低く、仮想化技術の基本的な知識を身に付けることを求めています。
設問1(1)(イ)
複数の仮想サーバがNICなどの外部接続用ハードウェアを共有する点に着目します。共有する機器に障害が起きると、複数の仮想サーバの通信へ影響が及ぶため、故障時も利用を継続できるよう配慮が必要です。後の会話にも「信頼性や通信帯域の確保」とあります。公式解答例ではイを「信頼性」としていますが、イとウは順不同です。
設問1(1)(ウ)
物理NICを多数の仮想サーバで共有すると、それぞれの通信が同じ物理的な帯域を使用します。仮想サーバを増やしても通信帯域が自動的に増えるわけではなく、通信量に見合う帯域を用意する必要があります。公式解答例ではウを「通信帯域の確保」としています。イの「信頼性」と併せて、本文が冗長化と負荷分散の検討へ進む理由を押さえます。
設問1(1)(エ)
「NICを論理的に束ねて一つに見せる」という説明が用語を特定する手掛かりです。複数の物理NICをまとめて扱い、障害時の通信継続や通信負荷の分散を実現します。公式解答例では「チーミング」です。設問2では、このチーミングで束ねた物理NICのうち、どれを通信に使用するかを選ぶ方式が検討されています。
設問1(1)(オ)
仮想SWが外部スイッチとの接続障害をどのように認識するか、という会話に着目します。接続の有効・無効を示す状態を監視して障害を検知するので、公式解答例では「リンク」です。この検知方法では、物理NICとの直接の接続が正常でも、その先のリンクで起きた障害をそのまま検知できるとは限りません。この点が設問2(2)の対策につながります。
設問1(2)
下線(ⅰ)は、物理NICを仮想SWと外部スイッチをつなぐケーブルと見なしています。仮想サーバが送信したフレームは、物理NICを通過しても送信元MACアドレスが物理NICのものに置き換わるわけではありません。公式解答例では「仮想NIC」です。10字以内の答案では、この語だけで送信元MACアドレスが属する場所を示せます。
設問1(3)
図2で、同じ仮想SWに複数のアップリンクポートと物理NICが接続されている部分を探します。右側の仮想SWには二つの物理NICがあり、外部スイッチとの接続が③、④で示されています。公式解答例は「③、④」です。①、②は仮想NIC側の接続であり、本文が説明する物理NICのチーミングの適用部分とは異なります。
設問2(1)(方式名)
本文に示された四つの方式が、何を基に物理NICを選択するかを比較します。ポートID、仮想NICのMACアドレス、明示的な指定は、同じ仮想NICでは選択の基が固定されます。一方、IPベース方式では通信相手のIPアドレスが変わると選択結果も変わり得ます。公式解答例は「IPベース方式」で、仮想サーバが1台でも複数の通信相手への通信を分散できます。
設問2(1)(理由)
IPベース方式が送信元とあて先のIPアドレスからハッシュ値を求める点に着目します。同じ仮想サーバからの通信でも、相手のIPアドレスが異なれば使用する物理NICが変わり得ます。公式解答例では、この相手IPアドレスに応じた動的な変化を理由としています。40字以内なら「通信相手のIPアドレスに応じて使用する物理NICが変わるから。」とまとめられます。
設問2(2)(冗長化できていない部分)
図3の構成パターンⅠでは、各L2SWからL3SWへの接続がそれぞれ1本しかありません。③が故障しても①は正常なままになり得るため、仮想SWのリンク監視だけではその経路の障害を認識できません。④と②の関係も同様です。公式解答例では、冗長化できていない部分を「③、④」としています。L3SWのVRRPによる冗長化と、そこへ至るリンクの冗長化を区別します。
設問2(2)(外部スイッチにもたせるべき機能)
仮想SWは接続先とのリンク状態を監視するため、L2SWからL3SWへの障害を物理NIC側へ伝える仕組みが必要です。公式解答例では、上位リンクの障害時に下位リンクを強制的にリンクダウンさせる機能を挙げています。45字以内なら「上位リンクの障害時に下位リンクを強制的にリンクダウンさせる機能。」です。これにより、仮想SWが障害を認識して別経路へ切り替えられます。
設問2(3)(必要な設定)
構成パターンⅡとⅢでは、外部スイッチ間に複数の経路があり、本文では③~⑦が同一VLANとされています。レイヤ2の閉じた経路によるループを防ぐ設定が必要です。公式解答例では「スパニングツリープロトコル」です。15字以内の答案ではこの名称を記します。VRRPはゲートウェイの冗長化を行うもので、ここで問われるレイヤ2ループの回避とは役割が異なります。
設問2(3)(設定が不要なポート)
図3の構成パターンⅡで、a、bは物理NICに接続するL2SWのポートです。本文の仮想SWはアップリンクポート間でパケットを転送しないため、仮想SWを経由して二つの外部スイッチをつなぐループは成立しません。公式解答例では、ループ回避の設定が不要なポートは「a、b」です。通常のスイッチの動作を当てはめず、本問の仮想SW固有の仕様を根拠に判断します。
設問2(4)
IPベース方式では、同じ仮想NICからの送信でも通信相手に応じて物理NICが変わります。送信元MACアドレスは仮想NICのものなので、同じMACアドレスのフレームが二つの独立したL2SWへ送られ、外部スイッチの学習が不安定になります。公式解答例もこの点を理由としています。65字以内なら「同一の送信元MACアドレスのパケットが二つのスイッチに送られ、MACアドレスを適切に学習できないから。」です。採点講評では、この設問の正答率が低かったとされています。
設問2(5)
構成パターンⅢでは、L2SW1とL2SW2がスタック接続によって1台のスイッチとして動作します。さらに、物理NICにつながる二つのポートを論理的な一つの接続として扱う設定が必要です。公式解答例ではリンクアグリゲーションを設定します。45字以内なら「L2SW1とL2SW2の物理NIC接続ポートにリンクアグリゲーションを設定する。」です。採点講評では、この技術を負荷分散と可用性の基礎として理解することを求めています。
設問3(1)(トンネルモード)
図4では、D社開発拠点のサーバやIP-PBXと、展示会場のPCやIP電話機を、両端のVPNルータを通して接続します。保護する通信はVPNルータ自身だけの通信ではなく、その配下にあるLAN間の通信です。公式解答例では「LAN間接続をする必要があるから」です。この表現は30字以内に収まり、トンネルモードを選ぶ目的を直接示しています。
設問3(1)(アグレッシブモード)
展示会場側には「動的なグローバルIPアドレスでの接続」が提供されるという条件に着目します。会場側VPNルータの外部アドレスを固定できないことが、本問でアグレッシブモードを選ぶ理由です。公式解答例では「展示会場側では固定IPアドレスが使えないから」です。30字以内の答案でも、会場側の固定IPアドレスを利用できないという条件を押さえます。
設問3(2)
主催者はインターネットに接続するルータを準備し、図4の④で出展者に動的なグローバルIPアドレスを提供します。持ち込むVPNルータは、そのルータのLAN側へ接続してアドレスを取得する想定です。公式解答例では、LAN側ポートへの接続とDHCPによるグローバルアドレスの取得を挙げています。50字以内なら「ルータのLAN側ポートに接続し、DHCPでグローバルIPアドレスを取得する。」です。LAN側でも、本問ではプライベートアドレスの提供とは限りません。
設問3(3)
事前確認では、展示会場の主催者ルータへの接続④を、D社開発拠点のVPNルータ配下への接続⑥に置き換えます。変更するのは会場用VPNルータの外部接続側で、PCやIP電話機の設定は維持します。公式解答例では、プライベートアドレスの使用と、開発拠点VPNルータをデフォルトゲートウェイにする設定を挙げています。55字以内なら「プライベートIPアドレスを使い、デフォルトゲートウェイをD社開発拠点のVPNルータのIPアドレスとする。」です。
設問3(4)
客先デモでは、VPNルータをモバイルルータ配下のNAT環境に接続します。展示会場でグローバルIPアドレスを取得する構成と異なり、IPsecによるVPN通信がNAT機器を通過できるようにする設定が必要です。公式解答例には「VPNパススルー」「IPsecパススルー」「NATトラバーサル」が挙げられています。15字以内の答案では、そのうち一つを記せます。本問の根拠は、通信帯域の不足ではなくNATを経由する接続条件です。
設問4(1)
図5では、開発拠点とデータセンタのそれぞれにストレージがあり、障害時には別の物理サーバで仮想サーバの処理を引き継ぎます。代替サーバが同じプログラムとデータをすぐ利用できるよう、ストレージを共有ディスクとして使います。公式解答例に沿って、35字以内なら「共有ディスクとして仮想サーバのプログラムとデータを格納する。」です。採点講評では、共有ディスクを使うクラスタリングへの理解を求めています。
設問4(2)
図5で、ストレージがL2SWを介してサーバと接続されている点に着目します。iSCSIを利用すると、既設のIPネットワーク環境を活用して共有ストレージを構築できます。公式解答例もこの利点を挙げています。35字以内なら「既設のネットワーク環境を使って共有ストレージを構築できる。」です。本文のコストパフォーマンスという記述だけでなく、ネットワーク設備を活用できる理由まで示します。
設問4(3)
管理システムは、図2の管理ポートを通して管理エージェントと通信し、仮想サーバや仮想SWの構成を制御します。この通信が途絶えると管理ができなくなるため、経路の可用性を確保します。公式解答例には、管理ポートから管理サーバまでのネットワーク冗長化、管理通信の優先転送や帯域確保、管理サーバの冗長化が挙げられています。35字以内の答案例は「管理ポートから管理サーバまでのネットワークを冗長化する。」です。具体的な対象と対策を示すことが要点です。
学習のポイント
仮想SW固有の転送仕様を踏まえ、MACアドレス学習、リンク障害の検知、VPNの接続条件、共有ディスクによる切替えを図の経路と結び付けて理解しましょう。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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