NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成22年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 ヘルプデスクシステムの構築に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 D社は,システム構築ベンダである。顧客企業のシステム開発を受託する以外に,自社で所有するデータセンタを活用したサービス事業も展開している。最近,D社のアプリケーション開発部門が,新しいヘルプデスクソフトを開発した。D社は,このソフトウェアの販売に当たり,顧客企業にとって導入期間の短縮及び初期コストの低減が可能なサービス型で提供できないか,検討することになった。その担当者として,データセンタサービス部門のサーバ技術者であるS君とネットワーク技術者であるN君が指名された。 S君は,“比較的小規模で,多くの顧客企業にサービスを提供する場合は,サーバの仮想化を行って,複数企業でサーバを共用すれば,投資の削減,サービス立上げの迅速化,運用効率の向上などが可能になる”と考えた。サーバの仮想化では,仮想化を行う仕組み(以下,仮想化機構という)を動作させるサーバのことを物理サーバという。仮想化機構によって,物理サーバ上に複数のOS実行環境(以下,仮想サーバという)を作成することができる。 D社の仮想サーバを採用したヘルプデスクシステム及び利用環境での機器の種類と設置場所を図1に示す。 図1 ヘルプデスクシステム及び利用環境での機器の種類と設置場所 D社のヘルプデスクシステムは,電話システムとの連携機能であるCTI(Computer Telephony Integration)機能も利用できるように作られているのが特長で,コールセンタでの顧客サポート業務に利用すると効果的である。その連携のための構成機器が,図1に示したIP-PBXとIP電話機である。ヘルプデスクソフトとIP-PBXの制御を行うCTI制御ソフトは,それぞれ仮想サーバ上で動作させる。 図1のヘルプデスクシステムで実現したいことは,次の2点である。 (1) D社データセンタの仮想サーバでホスティングしたヘルプデスクシステムを,インターネットを介して顧客企業が利用できるようにする。 (2) マーケティング部門から要望が出されていた,展示会や客先でのデモができるようにする。 N君とS君は,仮想サーバを使ったシステムの技術的特徴を整理した上で,まず,サーバ仮想化の検討を行った。 〔サーバ仮想化の検討〕 物理サーバ上に,仮想化機構を動作させるためのOSを必要としない,【ア】方式と呼ばれる方式は,仮想サーバの動作の安定性,仮想化を支援するハードウェアによる性能向上などを背景に普及しつつある。仮想化機構は,仮想サーバの実行制御,及び仮想サーバと外部のネットワークやストレージデバイスとの接続制御を行う。 仮想サーバを使用したシステムでは,1台の物理サーバ内で,多数の仮想サーバを動作させることができる。N君によると,“仮想化を行った場合は,仮想化を行わずに物理的に独立したサーバだけでシステムを構成する場合と比較すると,NICなどの外部接続用ハードウェアを複数の仮想サーバで共有するので,【イ】と【ウ】の面でより注意が必要である”ということであった。 仮想サーバと,ほかの仮想サーバや外部のスイッチとの接続は,ソフトウェアで実現する仮想的なスイッチ(以下,仮想SWという)が行う。今回採用予定の仮想SWはレイヤ2スイッチであり,その使用構成を,図2に示す。 図2 仮想SWの使用構成 物理サーバのNICを物理NICという。仮想サーバのNICに相当する機能部分を仮想NICという。 仮想SWは用途別に3種類のポートを備えることができる。 仮想サーバポート(V)は,仮想サーバの仮想NICを接続するためのポートである。 アップリンクポート(U)は,物理NICと1対1で対応し,仮想SWを外部のネットワークに接続するためのポートである。(ⅰ)仮想SWにとって,物理NICは外部スイッチに接続するためのケーブルと見なせる。 管理ポート(M)は,仮想化機構と物理サーバの外部との通信を仲介する管理エージェントが,後述する管理システムと通信するために接続するポートである。 仮想化機構は仮想SWも管理しており,送信元仮想NICのMACアドレスを把握しているので,仮想SWは通過するパケットからMACアドレスを学習する動作を行わない仕様になっている。また,仮想SW間の接続はできないという仕様になっているが,仮想SWに接続する仮想サーバの接続数には物理的な制限がないので,構成上の制約とはならない。加えて,アップリンクポート間ではパケットを転送することはできない仕様になっているが,アップリンクポートを通過するパケットは基本的に仮想サーバ及び管理エージェントを送信元かあて先とするパケットなので,これも構成上の制約とはならない。 次は,検討を開始したS君とN君の会話である。 S君:物理サーバ上で多くの仮想サーバを動作させようとすると,物理サーバだけでシステムを構築する場合とは違った配慮が必要になりそうですね。 N君:外部のネットワークに接続する部分についても,信頼性や通信帯域の確保についてよく考えておく必要があります。それには,外部接続のかなめである物理NICの使い方が重要です。このため(ⅱ)NICを論理的に束ねて一つに見せる【エ】技術を活用する必要があります。この技術によって冗長化と負荷分散が実現できます。 S君:仮想SWと外部スイッチとの接続の障害検知は,どのようにしているのですか。 N君:スイッチ間の【オ】状態を監視することで,仮想SWは障害を認識できます。 以上の検討から,N君の提案した技術を使うことにし,次に仮想サーバの外部ネットワーク接続方式について検討することにした。 〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕 論理的に束ねた複数の物理NICの,どのNICを通して外部ネットワークとパケットを送受するかについての方式の検討が必要になった。 D社で採用予定の仮想SWでは,外部接続に使用する物理NICを選択する方式(以下,物理NIC選択方式という)として,次の(1)~(4)の4種類がある。(2)と(3)の方式では,選択のために使用する値からハッシュ値を求め,そのハッシュ値を基に物理NICを選択する。 (1) 仮想NICが接続されている仮想SWのポートIDを使用する(以下,ポートIDベース方式という)。 (2) 仮想NICのMACアドレスを使用する(以下,MACベース方式という)。 (3) パケットの送信元とあて先のIPアドレスを使用する(以下,IPベース方式という)。 (4) 仮想NICごとに使用する物理NICを明示的に指定する(以下,明示的選択方式という)。 N君は,仮想SWの物理NIC選択方式と外部スイッチの構成パターンについては,組み合わせる上で注意が必要と考え,S君に説明するために,図3の外部スイッチの構成パターンを示した。 図3 外部スイッチの構成パターン 構成パターンⅠは2台のL2SWを独立させる構成,構成パターンⅡはL2SWとL3SW間のリンクを冗長化させる構成,構成パターンⅢはスタック接続によって2台の外部スイッチを1台に見せる構成である。図3中の③~⑦のリンクは,L3SW1とL3SW2のレイヤ2機能によって同一VLANとなっている。また,L3SW1とL3SW2は,VRRPによる冗長化構成を採っている。N君は,表の物理NIC選択方式と外部スイッチの構成パターンとの組合せ検討表をS君に示した。 表 物理NIC選択方式と外部スイッチの構成パターンとの組合せ検討表 (ⅲ)構成パターンⅠで物理NICと外部スイッチとを接続した場合,冗長化ができていない部分があるので,外部スイッチへの対策が必要である。構成パターンⅡとⅢでは,(ⅳ)適切な場所にループを回避するための設定が必要になる。構成パターンⅠ~Ⅲのうち,物理NIC選択方式によっては,組合せが不可能なものがある。IPベース方式では,構成パターンⅠ及びⅡとは組み合わせられない。 N君は図3と表を用いて,S君に各組合せの優劣を説明し,IPベース方式と構成パターンⅢの組合せを提案した。S君はN君の説明に納得し,提案に同意した。 〔デモシステムの構築〕 マーケティング部門は,各種広告媒体に加え,展示会,客先でのデモが有効と考え,コールセンタでの利用を想定したデモを見せたいとN君に要請した。デモ内容について検討した結果,展示会場から,D社開発拠点のIP-PBXを通して展示会場のIP電話機に電話を掛けると,PCにヘルプデスクソフトの問合せ対応画面をポップアップ表示する連係動作を見せることになった。そこでN君は,D社開発拠点と展示会場をインターネットVPNで接続するネットワーク構成を検討した。 N君が検討したD社開発拠点と展示会場間のネットワーク接続構成を,図4に示す。展示会場側のインターネット接続については,主催者がルータまで準備し,出展者に対して動的なグローバルIPアドレスでの接続を提供する(図4中の④の部分)。N君は,これらの要件から,インターネットVPNの構築にはIPsec-VPN方式のトンネルモードとアグレッシブモードを使わなければいけないと考えた。 図4 D社開発拠点と展示会場間のネットワーク接続構成 展示会場での準備には,開催前日の限られた時間しかないので,D社内で事前確認を行うことにした。会場に機器を持ち込んでも,サーバ,IP-PBX,IP電話機及びPCのIPアドレスなどの設定を変更しなくても済むように,事前確認用接続を行って動作確認を行う。会場に機器を持ち込むときは,ネットワーク接続用機器の設定変更だけで済むようにする。併せて,接続要件を示して主催者側に確認する。N君は,実際の事前確認では,あらかじめ開発拠点内で,図4中の④の代わりに⑥の接続を使って確認してから,展示会場に持ち込んだ。VPNルータの設定は,多少変更が必要だったが,無事にデモを行うことができ,来場者にも好評であった。 続いて,客先でのデモ実現方式の検討に入った。まず,N君はルータの代わりに,通信事業者が提供する,無線によるインターネット接続サービスに対応したモバイルルータを使えないか検討した。この場合,モバイルルータの配下のNAT環境にVPNルータを接続するので,帯域不足・遅延で通話は難しいものの,アプリケーションの画面を表示するには十分な帯域であり,ヘルプデスクシステムの特長をPRできることを確認した。 販売促進の結果,J社から最初の受注をし,D社データセンタにあるサービス提供用システム内に,J社向けサービス提供用ヘルプデスクシステム(以下,J社向けサービス提供用システムという)の構築に着手した。 〔J社向けサービス提供用システムの構築〕 D社がJ社にサービスを提供するための,J社向けサービス提供用システムと開発システムを図5に示す。 図5 J社向けサービス提供用システムと開発システム(抜粋) 開発システムは,J社向けサービス提供用システムとできるだけ同一の構成とするため,冗長化構成とした。 J社向けサービス提供用システムは,次の手順で構築することにした。 (1) D社開発拠点で作成したヘルプデスクシステム用仮想サーバを基に,構成情報をカスタマイズできる形式に変換したもの(以下,テンプレートという)を作成し,ストレージ1に格納しておく。 (2) テンプレートを基に仮想サーバ1を作成し,J社向けのカスタマイズを加えて必要な機能を確認する。 (3) 確認を終えたJ社向け仮想サーバを,D社データセンタの仮想環境に移動し,本番のサービスを提供する。 また,障害が発生したときに代替サーバに速やかに切り替えて運用できるようにするため,仮想サーバ1を動作させている物理サーバ1に障害が発生した場合の代替サーバは,物理サーバ2とする。同様に,データセンタの物理サーバ3に障害が発生した場合の代替サーバは,物理サーバ4とする。このとき,速やかな自動切替えを実現するために必要なストレージ1とストレージ2は,コストパフォーマンスの良いiSCSI(internet SCSI)タイプを使用することにした。 J社では社員の負担を軽減するために,導入システムの運用を極力,外部に委託したいと考えていた。そこで,D社ではヘルプデスクシステムの監視に当たって,D社データセンタ内の現行監視システムの監視対象に,今回新規に導入する仮想サーバを追加することにした。仮想サーバ上で動作するアプリケーションの状態監視については,これまでD社が導入してきた手法と同様に,各仮想サーバのOS上に監視エージェントを導入し,必要なプロセスの動作確認,イベントログの監視及びソフトウェアリソースの状態把握を行うことにした。 加えて,S君は,仮想サーバと仮想SWの接続設定,ポートの属性設定,動作モード設定などの構成制御のため,ベンダが提供する管理システムを導入することにした。管理システムは,図5中の管理サーバ上で動作し,図2に示した管理エージェントに接続して,各種管理を行う。この管理システムは,システムの構成制御に不可欠なものであり,可用性の確保が重要であった。 そこでN君は,(ⅴ)管理システムの可用性に配慮した設計を行い,ヘルプデスクシステム用の監視機能を実現した。さらに,物理サーバに障害が発生したときに,代替の別の物理サーバ上の仮想サーバに処理を移行する際に,ネットワーク情報を継承させる必要があることをS君にアドバイスした。 このようにして,D社は,J社向けのサービスを,開始できるようになった。今後は,新たな顧客企業のシステムを受注した場合に備え,仮想サーバを作成する際の基になるテンプレートを,D社データセンタに用意しておいて,データセンタで短時間に顧客用仮想サーバが生成できるようにするなど,J社向けヘルプデスクシステム構築の実績を生かしてデータセンタの提供機能を拡充し,効率よくシステム展開できるように準備を整えた。 設問1 〔サーバ仮想化の検討〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の【ア】~【オ】に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 本文中の下線(ⅰ)について,物理NICから外部スイッチに送信されるパケットの送信元MACアドレスは,どこのアドレスとなっているか。10字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線(ⅱ)について,この技術の適用部分を,図2中の番号で,すべて答えよ。 設問2 〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕について,(1)~(5)に答えよ。 (1) 4種類の物理NIC選択方式のうち,動作させる仮想サーバが1台でも物理NICの負荷分散効果が得られる方式はどれか。方式名を答えよ。また,その理由を40字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(ⅲ)について,冗長化できていない部分を図3中のリンク番号で,すべて答えよ。また,そのための対策として,外部スイッチにもたせるべき機能を,45字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線(ⅳ)について,必要な設定を,15字以内で答えよ。また,構成パターンⅡでループを回避する設定が不要なポートを,図3中のポート識別記号a~jで,すべて答えよ。 (4) IPベース方式では,構成パターンⅠ及びⅡとは組み合わせられない理由を65字以内で述べよ。 (5) IPベース方式で構成パターンⅢを組み合わせる場合,どの外部スイッチにどのような設定が必要か。45字以内で述べよ。 設問3 〔デモシステムの構築〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) N君が,D社開発拠点と展示会場間のインターネットVPNの構築に,IPsec-VPN方式のトンネルモードとアグレッシブモードを使用することにした理由を,それぞれ30字以内で述べよ。 (2) 主催者が準備する展示会場側ルータと持ち込むVPNルータの接続に関し,N君は,アドレス上の観点でルータのどのポートに,どのような設定で接続することを想定したと考えられるか。50字以内で述べよ。 (3) 事前確認のための接続で,D社開発拠点のVPNルータの配下に接続する展示会場用のVPNルータには,どのような設定が必要か。55字以内で述べよ。 (4) モバイルルータを使用した構成では,VPN接続のために展示会場で使用したVPNルータには必要でない設定が,モバイルルータには必要であった。その設定を15字以内で答えよ。 設問4 〔J社向けサービス提供用システムの構築〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 物理サーバに障害が発生したときに,速やかに自動切替えを行うためのストレージ1及び2の使い方を,35字以内で述べよ。 (2) ストレージにiSCSIを利用することで,ネットワーク環境から考えられる利点を,35字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線(ⅴ)について,N君のネットワーク設計上の具体的な対策を,35字以内で述べよ。
図1 ヘルプデスクシステム及び利用環境での機器の種類と設置場所。点線枠のヘルプデスクシステム(D社開発拠点とD社データセンタ。仮想サーバ、SW、VPNルータ、PC、IP-PBX、IP電話機)が電話網、広域イーサ網/インターネットを介して、点線枠の利用環境(顧客企業、展示会場、客先デモ環境)と接続される構成図。右端の矢印ラベル、凡例と注記を含む。
図1 ヘルプデスクシステム及び利用環境での機器の種類と設置場所。点線枠のヘルプデスクシステム(D社開発拠点とD社データセンタ。仮想サーバ、SW、VPNルータ、PC、IP-PBX、IP電話機)が電話網、広域イーサ網/インターネットを介して、点線枠の利用環境(顧客企業、展示会場、客先デモ環境)と接続される構成図。右端の矢印ラベル、凡例と注記を含む。
図2 仮想SWの使用構成。物理サーバ内に仮想サーバ2台(各仮想NIC2個)、管理エージェント、仮想SW2台がある。仮想SWには仮想サーバポートV、アップリンクポートU、管理ポートMがあり、物理NIC3個を介して外部スイッチ3台に接続される。リンク①~④と凡例付き。
図2 仮想SWの使用構成。物理サーバ内に仮想サーバ2台(各仮想NIC2個)、管理エージェント、仮想SW2台がある。仮想SWには仮想サーバポートV、アップリンクポートU、管理ポートMがあり、物理NIC3個を介して外部スイッチ3台に接続される。リンク①~④と凡例付き。
図3 外部スイッチの構成パターン。物理サーバ内の仮想SWと物理NIC2個を外部スイッチにつなぐ3つの構成パターン。Ⅰは物理NICごとに独立したL2SW、Ⅱはポートa~jでL2SWとL3SWをたすき掛けに接続、ⅢはL2SW同士をスタック接続する。リンク番号①~⑦と凡例付き。
図3 外部スイッチの構成パターン。物理サーバ内の仮想SWと物理NIC2個を外部スイッチにつなぐ3つの構成パターン。Ⅰは物理NICごとに独立したL2SW、Ⅱはポートa~jでL2SWとL3SWをたすき掛けに接続、ⅢはL2SW同士をスタック接続する。リンク番号①~⑦と凡例付き。
表 物理NIC選択方式と外部スイッチの構成パターンとの組合せ検討表。4種類の物理NIC選択方式と構成パターンⅠ~Ⅲの組合せ表。IPベース方式はⅠとⅡが×、明示的選択方式はⅠが△、ⅡとⅢが〇で、その他は網掛けで省略。表題、〇・△・×の凡例、網掛けの注記を含む。
表 物理NIC選択方式と外部スイッチの構成パターンとの組合せ検討表。4種類の物理NIC選択方式と構成パターンⅠ~Ⅲの組合せ表。IPベース方式はⅠとⅡが×、明示的選択方式はⅠが△、ⅡとⅢが〇で、その他は網掛けで省略。表題、〇・△・×の凡例、網掛けの注記を含む。
図4 D社開発拠点と展示会場間のネットワーク接続構成。D社開発拠点のVPNルータ(配下にサーバ、IP-PBXなど)がインターネット経由で展示会場の主催者提供ルータとVPNルータ(配下にPC、IP電話機)に接続する構成図。リンク①~⑤と、事前確認用の直結接続⑥を示す。
図4 D社開発拠点と展示会場間のネットワーク接続構成。D社開発拠点のVPNルータ(配下にサーバ、IP-PBXなど)がインターネット経由で展示会場の主催者提供ルータとVPNルータ(配下にPC、IP電話機)に接続する構成図。リンク①~⑤と、事前確認用の直結接続⑥を示す。
図5 J社向けサービス提供用システムと開発システム(抜粋)。開発システム(D社開発拠点:物理サーバ1・2、ストレージ1、L2SW・L3SW各2台、VPNルータ)とサービス提供用システム(D社データセンタ:物理サーバ3・4、ストレージ2、L2SW・L3SW各2台、VPNルータ2台、現行監視システム、管理サーバ)が広域イーサ網とインターネットで接続される。
図5 J社向けサービス提供用システムと開発システム(抜粋)。開発システム(D社開発拠点:物理サーバ1・2、ストレージ1、L2SW・L3SW各2台、VPNルータ)とサービス提供用システム(D社データセンタ:物理サーバ3・4、ストレージ2、L2SW・L3SW各2台、VPNルータ2台、現行監視システム、管理サーバ)が広域イーサ網とインターネットで接続される。
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検討に用いる前提の範囲をそろえる

構成や接続、可用性を考える際は、判断に用いる前提がどこまで当てはまるかに注目しましょう。ある範囲での説明を別の範囲にもそのまま当てはめず、与えられた条件の範囲内で考える姿勢が大切です。

この問題で問われていること

この分野の検討では、ある判断を支える前提と、その判断が及ぶ範囲を対応させて考えましょう。途中で前提の範囲が変わっていないかを確かめ、明示された条件と自分で補った想定を区別して整理してください。

視点

前提には適用できる範囲があります。判断の根拠を整理するときは、その前提がどの範囲について述べられているかを意識し、範囲を広げて解釈していないか確かめましょう。

確認ポイント

  • 判断に用いる前提の範囲を把握できているか
  • 検討の途中で前提の範囲を広げていないか
  • 前提の範囲を、明示された条件から確かめているか
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解説

本問は、ヘルプデスクシステムを仮想化基盤上でサービス提供するためのインフラ設計を扱います。物理NICの共有に伴う信頼性と帯域、負荷分散方式と外部スイッチの整合、展示会場のアドレス条件に応じたVPN接続、共有ストレージと管理通信の可用性が要点です。

問題の全体像

D社は、自社開発のヘルプデスクソフトをデータセンタの仮想サーバで提供し、展示会や客先でのデモからJ社向けの本番構築へ進めています。出題趣旨では、仮想化技術とセキュリティ技術を活用し、整合性のあるネットワークを設計する力を問うとしています。設問は、仮想化基盤の通信、外部接続の負荷分散と冗長化、IPsec-VPN、共有ストレージと管理系の可用性という順に、サービス提供を支える条件を確認する構成です。

設問1(1)(ア)

「仮想化機構を動作させるためのOSを必要としない」という条件に着目します。物理サーバ上で直接仮想化機構を動作させ、仮想サーバの実行や外部機器への接続を制御する方式を指しています。公式解答例では「ハイパーバイザ」です。採点講評では、この空欄の正答率がほかの設問1の項目より低く、仮想化技術の基本的な知識を身に付けることを求めています。

設問1(1)(イ)

複数の仮想サーバがNICなどの外部接続用ハードウェアを共有する点に着目します。共有する機器に障害が起きると、複数の仮想サーバの通信へ影響が及ぶため、故障時も利用を継続できるよう配慮が必要です。後の会話にも「信頼性や通信帯域の確保」とあります。公式解答例ではイを「信頼性」としていますが、イとウは順不同です。

設問1(1)(ウ)

物理NICを多数の仮想サーバで共有すると、それぞれの通信が同じ物理的な帯域を使用します。仮想サーバを増やしても通信帯域が自動的に増えるわけではなく、通信量に見合う帯域を用意する必要があります。公式解答例ではウを「通信帯域の確保」としています。イの「信頼性」と併せて、本文が冗長化と負荷分散の検討へ進む理由を押さえます。

設問1(1)(エ)

「NICを論理的に束ねて一つに見せる」という説明が用語を特定する手掛かりです。複数の物理NICをまとめて扱い、障害時の通信継続や通信負荷の分散を実現します。公式解答例では「チーミング」です。設問2では、このチーミングで束ねた物理NICのうち、どれを通信に使用するかを選ぶ方式が検討されています。

設問1(1)(オ)

仮想SWが外部スイッチとの接続障害をどのように認識するか、という会話に着目します。接続の有効・無効を示す状態を監視して障害を検知するので、公式解答例では「リンク」です。この検知方法では、物理NICとの直接の接続が正常でも、その先のリンクで起きた障害をそのまま検知できるとは限りません。この点が設問2(2)の対策につながります。

設問1(2)

下線(ⅰ)は、物理NICを仮想SWと外部スイッチをつなぐケーブルと見なしています。仮想サーバが送信したフレームは、物理NICを通過しても送信元MACアドレスが物理NICのものに置き換わるわけではありません。公式解答例では「仮想NIC」です。10字以内の答案では、この語だけで送信元MACアドレスが属する場所を示せます。

設問1(3)

図2で、同じ仮想SWに複数のアップリンクポートと物理NICが接続されている部分を探します。右側の仮想SWには二つの物理NICがあり、外部スイッチとの接続が③、④で示されています。公式解答例は「③、④」です。①、②は仮想NIC側の接続であり、本文が説明する物理NICのチーミングの適用部分とは異なります。

設問2(1)(方式名)

本文に示された四つの方式が、何を基に物理NICを選択するかを比較します。ポートID、仮想NICのMACアドレス、明示的な指定は、同じ仮想NICでは選択の基が固定されます。一方、IPベース方式では通信相手のIPアドレスが変わると選択結果も変わり得ます。公式解答例は「IPベース方式」で、仮想サーバが1台でも複数の通信相手への通信を分散できます。

設問2(1)(理由)

IPベース方式が送信元とあて先のIPアドレスからハッシュ値を求める点に着目します。同じ仮想サーバからの通信でも、相手のIPアドレスが異なれば使用する物理NICが変わり得ます。公式解答例では、この相手IPアドレスに応じた動的な変化を理由としています。40字以内なら「通信相手のIPアドレスに応じて使用する物理NICが変わるから。」とまとめられます。

設問2(2)(冗長化できていない部分)

図3の構成パターンⅠでは、各L2SWからL3SWへの接続がそれぞれ1本しかありません。③が故障しても①は正常なままになり得るため、仮想SWのリンク監視だけではその経路の障害を認識できません。④と②の関係も同様です。公式解答例では、冗長化できていない部分を「③、④」としています。L3SWのVRRPによる冗長化と、そこへ至るリンクの冗長化を区別します。

設問2(2)(外部スイッチにもたせるべき機能)

仮想SWは接続先とのリンク状態を監視するため、L2SWからL3SWへの障害を物理NIC側へ伝える仕組みが必要です。公式解答例では、上位リンクの障害時に下位リンクを強制的にリンクダウンさせる機能を挙げています。45字以内なら「上位リンクの障害時に下位リンクを強制的にリンクダウンさせる機能。」です。これにより、仮想SWが障害を認識して別経路へ切り替えられます。

設問2(3)(必要な設定)

構成パターンⅡとⅢでは、外部スイッチ間に複数の経路があり、本文では③~⑦が同一VLANとされています。レイヤ2の閉じた経路によるループを防ぐ設定が必要です。公式解答例では「スパニングツリープロトコル」です。15字以内の答案ではこの名称を記します。VRRPはゲートウェイの冗長化を行うもので、ここで問われるレイヤ2ループの回避とは役割が異なります。

設問2(3)(設定が不要なポート)

図3の構成パターンⅡで、a、bは物理NICに接続するL2SWのポートです。本文の仮想SWはアップリンクポート間でパケットを転送しないため、仮想SWを経由して二つの外部スイッチをつなぐループは成立しません。公式解答例では、ループ回避の設定が不要なポートは「a、b」です。通常のスイッチの動作を当てはめず、本問の仮想SW固有の仕様を根拠に判断します。

設問2(4)

IPベース方式では、同じ仮想NICからの送信でも通信相手に応じて物理NICが変わります。送信元MACアドレスは仮想NICのものなので、同じMACアドレスのフレームが二つの独立したL2SWへ送られ、外部スイッチの学習が不安定になります。公式解答例もこの点を理由としています。65字以内なら「同一の送信元MACアドレスのパケットが二つのスイッチに送られ、MACアドレスを適切に学習できないから。」です。採点講評では、この設問の正答率が低かったとされています。

設問2(5)

構成パターンⅢでは、L2SW1とL2SW2がスタック接続によって1台のスイッチとして動作します。さらに、物理NICにつながる二つのポートを論理的な一つの接続として扱う設定が必要です。公式解答例ではリンクアグリゲーションを設定します。45字以内なら「L2SW1とL2SW2の物理NIC接続ポートにリンクアグリゲーションを設定する。」です。採点講評では、この技術を負荷分散と可用性の基礎として理解することを求めています。

設問3(1)(トンネルモード)

図4では、D社開発拠点のサーバやIP-PBXと、展示会場のPCやIP電話機を、両端のVPNルータを通して接続します。保護する通信はVPNルータ自身だけの通信ではなく、その配下にあるLAN間の通信です。公式解答例では「LAN間接続をする必要があるから」です。この表現は30字以内に収まり、トンネルモードを選ぶ目的を直接示しています。

設問3(1)(アグレッシブモード)

展示会場側には「動的なグローバルIPアドレスでの接続」が提供されるという条件に着目します。会場側VPNルータの外部アドレスを固定できないことが、本問でアグレッシブモードを選ぶ理由です。公式解答例では「展示会場側では固定IPアドレスが使えないから」です。30字以内の答案でも、会場側の固定IPアドレスを利用できないという条件を押さえます。

設問3(2)

主催者はインターネットに接続するルータを準備し、図4の④で出展者に動的なグローバルIPアドレスを提供します。持ち込むVPNルータは、そのルータのLAN側へ接続してアドレスを取得する想定です。公式解答例では、LAN側ポートへの接続とDHCPによるグローバルアドレスの取得を挙げています。50字以内なら「ルータのLAN側ポートに接続し、DHCPでグローバルIPアドレスを取得する。」です。LAN側でも、本問ではプライベートアドレスの提供とは限りません。

設問3(3)

事前確認では、展示会場の主催者ルータへの接続④を、D社開発拠点のVPNルータ配下への接続⑥に置き換えます。変更するのは会場用VPNルータの外部接続側で、PCやIP電話機の設定は維持します。公式解答例では、プライベートアドレスの使用と、開発拠点VPNルータをデフォルトゲートウェイにする設定を挙げています。55字以内なら「プライベートIPアドレスを使い、デフォルトゲートウェイをD社開発拠点のVPNルータのIPアドレスとする。」です。

設問3(4)

客先デモでは、VPNルータをモバイルルータ配下のNAT環境に接続します。展示会場でグローバルIPアドレスを取得する構成と異なり、IPsecによるVPN通信がNAT機器を通過できるようにする設定が必要です。公式解答例には「VPNパススルー」「IPsecパススルー」「NATトラバーサル」が挙げられています。15字以内の答案では、そのうち一つを記せます。本問の根拠は、通信帯域の不足ではなくNATを経由する接続条件です。

設問4(1)

図5では、開発拠点とデータセンタのそれぞれにストレージがあり、障害時には別の物理サーバで仮想サーバの処理を引き継ぎます。代替サーバが同じプログラムとデータをすぐ利用できるよう、ストレージを共有ディスクとして使います。公式解答例に沿って、35字以内なら「共有ディスクとして仮想サーバのプログラムとデータを格納する。」です。採点講評では、共有ディスクを使うクラスタリングへの理解を求めています。

設問4(2)

図5で、ストレージがL2SWを介してサーバと接続されている点に着目します。iSCSIを利用すると、既設のIPネットワーク環境を活用して共有ストレージを構築できます。公式解答例もこの利点を挙げています。35字以内なら「既設のネットワーク環境を使って共有ストレージを構築できる。」です。本文のコストパフォーマンスという記述だけでなく、ネットワーク設備を活用できる理由まで示します。

設問4(3)

管理システムは、図2の管理ポートを通して管理エージェントと通信し、仮想サーバや仮想SWの構成を制御します。この通信が途絶えると管理ができなくなるため、経路の可用性を確保します。公式解答例には、管理ポートから管理サーバまでのネットワーク冗長化、管理通信の優先転送や帯域確保、管理サーバの冗長化が挙げられています。35字以内の答案例は「管理ポートから管理サーバまでのネットワークを冗長化する。」です。具体的な対象と対策を示すことが要点です。

学習のポイント

仮想SW固有の転送仕様を踏まえ、MACアドレス学習、リンク障害の検知、VPNの接続条件、共有ディスクによる切替えを図の経路と結び付けて理解しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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