NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ

平成22年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅱ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 業務システムの再構築に関する次の記述を読んで,設問1~6に答えよ。 T社は,コンピュータ関連製品の卸売会社である。従業員数は400名で,東京に本社が,大阪,福岡に営業所がある。T社の営業員200名及び技術員100名は,外出先で活動することが多い。営業員は,担当する販売代理店への営業活動を行い,技術員は,自社の取扱商品の技術サポートを行っている。営業員と技術員は,外出先にデータ通信カードを装着したPCを携帯し,インターネット経由でSSL-VPN装置に接続して,T社内のシステムを利用している。 T社では,販売,購買,会計などの業務システムを運用している。現在のネットワークシステム構成を,図1に示す。 図1 現在のネットワークシステム構成(抜粋) T社では,業務システムの機能強化を目的に,システムの再構築を行うことにした。機能強化策の一つとして,取扱商品を大幅に増やすために,商品マスタを50万レコードに拡大する。併せて,以前から改善が求められていた,ファイルサーバのデータバックアップの見直しも行う。これらを推進するためのプロジェクトマネージャとして,情報システム部のW部長が任命された。W部長は,販売,購買,会計などの業務の責任者及びシステム基盤設計,構築,運用の責任者を選出して,新業務システム開発プロジェクトを発足させた。 新業務システムの概要設計完了後,W部長は,部下のY課長に対してシステム基盤と運用管理方式の設計を指示した。Y課長は,環境の変化に柔軟に対応できるようにすることと,運用負荷を抑えるために,新業務システムを稼働させるシステム基盤に,サーバ仮想化技術を活用することにした。 〔システム基盤の設計〕 サーバの仮想化を実現させる仕組み(以下,仮想化機構という)を動作させるサーバのことを,物理サーバという。仮想化機構によって,物理サーバ上に作成されるサーバ機能を,仮想サーバという。仮想サーバは,物理サーバ上に複数作成できる。仮想サーバが使用するディスクは,物理サーバのローカルディスクとSANに接続されたディスク装置(以下,SANストレージという)に作成することができる。仮想サーバが使用するディスクをSANストレージに作成すると,複数の仮想サーバで共用できる。 SANには,FC-SANと[ a ]がある。[ a ]を構成する代表的な技術がiSCSI(internet SCSI)である。最近は,iSCSIプロトコルがPCとサーバOSに実装されているので,iSCSIを容易に利用できるようになった。iSCSIは,信頼性のあるデータ通信を行うために[ b ]プロトコルを使用する。iSCSIでは,サーバで稼働し,[ c ]コマンドを発行して処理を要求するイニシエータと,ストレージ装置で稼働して,その処理を実行する[ d ]間で,ブロックデータの入出力を実現させている。今回は,稼働実績を重視して,FC-SANを利用することにした。 新業務システムは,アプリケーションサーバ(以下,APサーバという),データベースサーバ(以下,DBサーバという)及びSANストレージで構成する。APサーバは,仮想サーバで稼働させる。DBサーバは,APサーバのアプリケーションプログラムから使用される。T社では,仮想化機構を活用したシステム構築は初めての経験だったので,DBサーバは,2台でアクティブスタンバイ型のクラスタシステムを構成し,仮想化機構を利用しないことにした。クラスタシステムでは,ハートビートパケットで各サーバの生存を確認するが,①各サーバが稼働しているにもかかわらず,ハートビートパケットを受信できなくなると,サービスを正常に提供できなくなる危険性がある。この障害を避けるために,②各サーバの生存確認を確実に行うための対応策を実施する。 仮想化機構には,物理サーバの障害時や負荷増大時の対策機能が備わっている。しかし,この機能だけでは不十分なので,負荷分散装置(以下,LBという)を利用して,APサーバの冗長性を高めるとともに,[ e ]も向上させることにした。利用するLBには,負荷分散時に送信元IPアドレスをLBのものに付け替えるソースNAT機能があるが,APサーバを使用するPCを特定するために,この機能は利用しない。また,LBによるAPサーバの稼働状態管理を確実に行うために,APサーバからの返送パケットは,LBを経由させることにする。 APサーバを稼働させる物理サーバ(以下,SGSVという)は,障害時の影響を低減させるために,3台構成にする。各SGSVでは,APサーバを2台ずつ,全体で6台を稼働させて,能力面で余裕をもった構成にする。そのほかに,テスト用の物理サーバ(以下,TSVという)も用意する。新業務システムの構成を,図2に示す。 図2 新業務システムの構成 〔データバックアップの検討〕 現在,営業所ごとにファイルサーバのデータをTPにバックアップしており,テープの管理やエラー時の対応などで,営業所員に負担を強いている。この問題を解決するために,TPへのバックアップを止め,すべての営業所のバックアップデータを本社に集めて,新業務システムのデータバックアップと統合するのが効果的と判断した。 遠隔地にバックアップする場合は,バックアップとリストアを高速化するために,通信帯域の確保が必要になる。そこで,通信帯域をあまり必要としないバックアップ方式を調査したところ,重複除外機能をもつバックアップシステムを利用すれば,バックアップデータ量を飛躍的に削減できることが分かった。 重複除外機能は,サーバデータをブロックに分割し(以下,ブロックデータという),更新されたブロックデータが既にバックアップサーバに存在した場合,そのブロックデータをバックアップしない働きをもつ。重複除外機能をもつバックアップシステムは,バックアップ対象のデータをもつサーバに導入されるエージェントと,バックアップデータを保存するバックアップサーバから構成される。バックアップ対象のサーバでの重複除外処理の概要を,図3に示す。 図3 バックアップ対象のサーバでの重複除外処理の概要 エージェントは,ハッシュ値同士の比較によって,更新されたブロックデータがバックアップ済かどうかをチェックする。図3中に示した②のHxとHzのうち,Hxは,③のハッシュ値の中に存在するので,Dxはバックアップされない。Hzは,③のハッシュ値の中に存在しないので,Dzがバックアップサーバに送られて,バックアップされる。このように,更新されたブロックデータから生成されたHxとHzが,③のサーバデータのハッシュ値に存在するかどうかをチェックすることで,DxとDzが,既にバックアップされたブロックデータと重複しているかどうか判断される。 ハッシュ値は,低い確率ではあるが,③ハッシュ値の衝突が発生するので,発生確率を更に低くするために,様々な対応策が考えられている。今回使用する重複除外機能をもつバックアップシステムでは,独自の対応策が実施されている。 〔セキュリティ強化策と回線の検討〕 外出先からT社内のシステムを利用するときの認証は,ログインIDと固定パスワードだけで行われているので,セキュリティ上の問題を洗い出し,強化策を検討することにした。 調査した結果,ワンタイムパスワード方式の認証システムを導入し,既設のSSL-VPN装置の代わりに,PCのセキュリティチェック機能をもち,認証システムと連携も可能なSSL-VPN装置(以下,新SSL-VPN装置という)を導入すれば,少ない変更でセキュリティを強化できることが分かった。認証システムは,認証受付サーバと認証サーバで構成される。認証システムと新SSL-VPN装置の構成を,図4に示す。 図4 認証システムと新SSL-VPN装置の構成 新SSL-VPN装置と認証システムとの連携処理手順を,次に示す。 (i) 利用者は,PCのブラウザで,新SSL-VPN装置に接続する。 (ii) 新SSL-VPN装置は,セキュリティポリシに従って,PCをチェックする。 チェック項目には,セキュリティパッチ,稼働プロセス,ウイルス対策ソフトなどが設定できる。チェック結果が正常のときには,認証受付サーバにリダイレクトされる。チェック結果が異常のときには,PCとの接続が切断される。 (iii) 認証受付サーバによって,ログインID入力画面がPCに表示される。 利用者が,ログインIDを入力すると,認証受付サーバは,ログインIDを基に,ランダムな数表を取得し,次の処理に移る。 (iv) 認証受付サーバによって,認証画面が表示される。 利用者は,PCに表示されたランダムな数値で構成される数表から,事前に決めた数表の位置に表示されている数値をパスワードとして入力する。入力された数値がチェックされ,正しければ,新SSL-VPN装置にリダイレクトされ,ログインIDとパスワードが,新SSL-VPN装置に送信される。 (v) 新SSL-VPN装置は,受信したログインIDとパスワードを基に,RADIUSプロトコルで,認証サーバに対し認証を要求する。 認証後,接続可能なサーバ一覧などをPCに表示する。 (vi) 利用者が,サーバ一覧の中から接続したいサーバを指定すると,PCと新SSL-VPN装置間でVPNが設定され,本社のサーバに接続できる。 次に,本社と各営業所間の回線が,継続して利用できるかどうかを検討した。 ルータ2のログから送受信データ量を確認したところ,本社と営業所間で発生するトラフィックは,日中最大となり,7Mビット/秒であった。このうち,既存の業務システム利用のトラフィックが40%である。このトラフィックは,新業務システムの利用で,1.3倍になることが見込まれる。これらの条件から,本社と営業所間の最大トラフィックは,[ ア ]Mビット/秒であり,増加量は少ないことが判明した。 各営業所のデータバックアップは,夜間に行う。各営業所のファイルサーバのデータ量は1Tバイトである。2回目以降のバックアップデータ量は,ベンダの情報によれば,重複除外機能によって全体の0.5%以下に削減される。これらの条件から,許容時間内にバックアップを完了できる見込みである。 以上の検討によって,本社と各営業所間の回線が,継続して利用可能と判断した。 〔システムの運用管理方式の設計〕 新業務システムでは,統合監視システムを利用して,ネットワーク機器とサーバの稼働状態の監視を行う。 (1) ネットワーク機器の監視 統合監視システムには,④監視対象機器を発見して,接続構成図を自動作図する機能があるので,管理者は,接続構成図の中から,監視するネットワーク機器を選択することができる。ネットワーク機器の監視はSNMPで行われ,ネットワーク機器の稼働状態を,MIB情報の定期的な収集によって監視するとともに,Trapの受信によって異常を検知する。 (2) サーバの監視 サーバの監視は,あらかじめ設定された間隔で,各サーバから監視対象の情報を収集して行う。収集した情報の中に異常が発見されたときには,その内容がメッセージ表示画面に表示される。監視項目には,CPU,メモリなどの使用率,サービスとプロセスの稼働状態及びイベントログの内容がある。仮想サーバを活用したシステムでは,仮想サーバの稼働状態監視だけでは十分でないので,⑤通常のサーバ監視よりも複雑な監視が必要になる。イベントログの監視では,フィルタ機能の活用が必要になり,フィルタの条件設定には,⑥運用後のチューニングが必要になる。 新業務システム構築後のネットワークシステム構成を,図5に示す。 図5 新業務システム構築後のネットワークシステム構成(抜粋) 〔システムの切替え〕 W部長は,プロジェクトメンバと共同で,システム切替えまでの準備作業のスケジュールと,切替時の作業スケジュール(以下,システム切替スケジュールという)を立案した。そして,W部長は,プロジェクトメンバを各作業の責任者として,システム切替えまでの準備作業を実施させた。 各種テストの終了後,受注から代金回収までの,一連の業務の流れに沿って処理を進める方式で,総合テストを実施し,問題なく完了した。 負荷テストは,Y課長が担当した。負荷テストでは,新業務システムの処理能力を確認するために,本番と同じ6台のAPサーバを稼働させて実施した。LBには,処理を平均的に分散させるために,ラウンドロビン方式が設定されている。 負荷テストは,11:00から12:00までの間に,主要業務の販売と購買のシステムを利用する社員に,日常的に行われる業務を処理してもらって行った。負荷テストは順調に進み,ほぼ期待どおりの結果が得られ完了した。負荷テストにおける,ある時間内でのCPU使用率を,表に示す。 表 負荷テストにおける,ある時間内でのCPU使用率 負荷テストで,6台の仮想サーバに処理が振り分けられたことを確認できた。しかし,CPU使用率の高い状態が続いた仮想サーバが存在していた。振り分けられた処理との関係を調べたところ,メモリに読み込んだ商品マスタの大量のデータに対して,検索を伴う処理を実行した仮想サーバが,高負荷になることが判明した。新業務システムの中には,仮想サーバに大きな負荷を与えるプログラムがあるので,このようなプログラムを実行するサーバに負荷を集中させることなく,負荷を平準化するために,負荷分散方式の見直しを行うことにした。 データ移行テストでは,既存の業務システムから新業務システムへのトランザクションデータの移行が,正しく行えるかどうかを確認する。データ移行は,移行データの作成,移行データの取込み,及び移行データの確認の3段階で行われる。移行データは,既存の業務システムからトランザクションデータを抽出し,各種マスタとテーブルを参照して,加工処理が施されて作成される。移行データの取込みでは,取込みプログラムで,移行データを新業務システムに取り込む。移行データの確認では,新業務システムに取り込まれたデータの正当性を,新業務システムのプログラムでチェックする。データ移行テストを何回か繰り返した結果,問題なくデータ移行を行えることが確認できた。 以上の準備作業を行った後,システム切替え当日,システム切替スケジュールに従って,作業を実施した。システム切替スケジュールを,図6に示す。 図6 システム切替スケジュール システムの切替えは,月末の金曜日から3日間掛けて実施した。金曜日の業務終了後に,月末の締め処理を行い,その後にデータ移行作業を開始した。移行データの確認後,月曜日の業務開始のための準備作業を行い,システム切替作業を終了した。データ移行作業の途中で問題が幾つか発生したが,必要な対応措置をとり,無事に新業務システムを稼働させることができた。 設問1 本文中の[ a ]~[ e ]に入れる適切な字句を答えよ。 設問2 〔システム基盤の設計〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線①の状況の発生で,サービスが正常に提供できなくなるDBサーバの状態を,40字以内で述べよ。また,下線②の対応策の内容を,25字以内で述べよ。 (2) 図2で,PCからの処理要求がAPサーバとDBサーバで処理されて,処理結果がPCに転送されてくる経路を,次の【転送経路】に示す。(a),(b)に入れるサーバと機器を,図2中の名称を用いて,【転送経路】の表記方法に従い,すべて記述せよ。 【転送経路】 PC→[ (a) ]→APサーバ→L3SW→DBサーバ→ L3SW→APサーバ→[ (b) ]→PC 設問3 〔データバックアップの検討〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 重複除外処理にハッシュ関数を利用する利点を,30字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線③の衝突によって引き起こされる問題を,30字以内で述べよ。 (3) 上記(2)の問題の発生確率を更に低くする方法について,考えられる方法を,50字以内で述べよ。 設問4 〔セキュリティ強化策と回線の検討〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 手順(ii)のPCのチェックは,すべてのPCに対して行われる。新SSL-VPN装置がPCに対して行う処理を,25字以内で述べよ。また,認証受付サーバと認証サーバ間の通信が発生する箇所を,連携処理手順(i)~(vi)の中から,すべて選んで答えよ。 (2) セキュリティ強化策によって,セキュリティ面で改善される点を二つ挙げ,それぞれ25字以内で述べよ。 (3) 認証システムを導入したときに,FWに新たに許可設定すべき通信を二つ挙げ,それぞれ送信元とあて先を明確にして,25字以内で答えよ。 (4) 本文中の[ ア ]に入れる数値を求めよ。答えは,小数点以下を切り上げて整数で求めよ。 設問5 〔システムの運用管理方式の設計〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線④の発見方法を,50字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線⑤の監視では,性能管理を効果的に行うために,どのような監視方法が必要か。50字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線⑥のチューニング内容を,25字以内で述べよ。 設問6 〔システムの切替え〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 負荷テストで判明した状況を基に,負荷分散効果をより高められる負荷分散方式を,30字以内で答えよ。 (2) データ移行テストの目的を,25字以内で述べよ。 (3) システム切替スケジュールの立案において明確にすべき事項を,問題発生時の措置の面から二つ挙げ,それぞれ40字以内で述べよ。
図1 現在のネットワークシステム構成(抜粋)。本社のGSV、BSV、ファイルサーバ、TP、L2SW、PCがL3SWに接続し、ルータ1・FW・DMZのSSL-VPN装置でインターネットにつながる構成。ルータ2からIP-VPN(10Mビット/秒)経由で大阪・福岡営業所(ルータ、L2SW、ファイルサーバ、TP、PC)に接続している。
図1 現在のネットワークシステム構成(抜粋)。本社のGSV、BSV、ファイルサーバ、TP、L2SW、PCがL3SWに接続し、ルータ1・FW・DMZのSSL-VPN装置でインターネットにつながる構成。ルータ2からIP-VPN(10Mビット/秒)経由で大阪・福岡営業所(ルータ、L2SW、ファイルサーバ、TP、PC)に接続している。
図2 新業務システムの構成。SANストレージに二重化したFCSWを接続し、仮想化機構が稼働するTSV1台とSGSV3台、クラスタシステムを構成するDBサーバ2台をFCSWにつないだ構成。これらとLBはL3SWに接続し、L3SWの下にL2SWを介してPCがある。注で各SGSVのAPサーバ2台、LBの負荷分散対象、TSVの用途を示す。
図2 新業務システムの構成。SANストレージに二重化したFCSWを接続し、仮想化機構が稼働するTSV1台とSGSV3台、クラスタシステムを構成するDBサーバ2台をFCSWにつないだ構成。これらとLBはL3SWに接続し、L3SWの下にL2SWを介してPCがある。注で各SGSVのAPサーバ2台、LBの負荷分散対象、TSVの用途を示す。
図3 バックアップ対象のサーバでの重複除外処理の概要。バックアップ対象サーバ内で、更新されたブロックデータDz・Dxからエージェントがハッシュ値Hz・Hxを生成し、バックアップ済データのハッシュ値群(Hy、Hx…Hb、Ha)と比較する。一致しないHzに対応するDzだけをバックアップサーバへ送る処理の流れを、凡例とともに示す。
図3 バックアップ対象のサーバでの重複除外処理の概要。バックアップ対象サーバ内で、更新されたブロックデータDz・Dxからエージェントがハッシュ値Hz・Hxを生成し、バックアップ済データのハッシュ値群(Hy、Hx…Hb、Ha)と比較する。一致しないHzに対応するDzだけをバックアップサーバへ送る処理の流れを、凡例とともに示す。
図4 認証システムと新SSL-VPN装置の構成。インターネット上のPCが本社のルータ1・FWを経由して接続する構成。DMZのL2SWに新SSL-VPN装置と認証受付サーバを置き、認証サーバは内部のL3SWに接続する。注で認証受付サーバのワンタイムパスワード認証・連携機能と、認証サーバの数表発行・RADIUSサーバ機能を説明している。
図4 認証システムと新SSL-VPN装置の構成。インターネット上のPCが本社のルータ1・FWを経由して接続する構成。DMZのL2SWに新SSL-VPN装置と認証受付サーバを置き、認証サーバは内部のL3SWに接続する。注で認証受付サーバのワンタイムパスワード認証・連携機能と、認証サーバの数表発行・RADIUSサーバ機能を説明している。
図5 新業務システム構築後のネットワークシステム構成(抜粋)。本社のL3SWにLB、統合監視システム、DBサーバ2台、SGSV3台、TSV、認証サーバ、バックアップサーバ、ファイルサーバ、ルータ2、L2SWを接続し、SANストレージとFCSWを加えた構成。DMZには新SSL-VPN装置と認証受付サーバがあり、IP-VPNで大阪・福岡営業所につながる。
図5 新業務システム構築後のネットワークシステム構成(抜粋)。本社のL3SWにLB、統合監視システム、DBサーバ2台、SGSV3台、TSV、認証サーバ、バックアップサーバ、ファイルサーバ、ルータ2、L2SWを接続し、SANストレージとFCSWを加えた構成。DMZには新SSL-VPN装置と認証受付サーバがあり、IP-VPNで大阪・福岡営業所につながる。
表 負荷テストにおける,ある時間内でのCPU使用率。物理サーバ1~3上の仮想サーバ1~6のCPU使用率(単位%)の表。仮想サーバ1は10~40、仮想サーバ2は20~60、仮想サーバ3は50~100、仮想サーバ4は60~100、仮想サーバ5は20~50、仮想サーバ6は10~50。
表 負荷テストにおける,ある時間内でのCPU使用率。物理サーバ1~3上の仮想サーバ1~6のCPU使用率(単位%)の表。仮想サーバ1は10~40、仮想サーバ2は20~60、仮想サーバ3は50~100、仮想サーバ4は60~100、仮想サーバ5は20~50、仮想サーバ6は10~50。
図6 システム切替スケジュール。月末(金曜)、稼働2日前(土曜)、稼働1日前(日曜)の3日間にわたる作業の矢印表。月締め処理は金曜、移行データの作成は金曜から土曜、移行データの取込みは金曜から日曜、移行データの確認と業務開始準備は日曜に行う。
図6 システム切替スケジュール。月末(金曜)、稼働2日前(土曜)、稼働1日前(日曜)の3日間にわたる作業の矢印表。月締め処理は金曜、移行データの作成は金曜から土曜、移行データの取込みは金曜から日曜、移行データの確認と業務開始準備は日曜に行う。
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検討の前提と対象範囲をそろえる

業務システムの再構築を検討するときは、判断の前提となる条件と、その条件が当てはまる範囲に注目しましょう。示された情報をこの観点で整理し、同じ前提で考えているかを確かめることが出発点です。

この問題で問われていること

考える際は、ある条件がどの対象や場面まで適用されるのかを意識してください。明示された前提と自分で補った前提を区別し、条件の適用範囲を広げすぎたり狭めすぎたりしていないかを確認しましょう。

視点

条件は、それが適用される範囲と合わせて捉えると整理しやすくなります。対象や場面が異なる情報を結び付けるときも、同じ前提が使えるかを一度立ち止まって確かめましょう。

確認ポイント

  • 条件が当てはまる対象や場面を捉えているか
  • 条件の適用範囲を自分の想定だけで補っていないか
  • 考える途中で条件の適用範囲が変わっていないか
正解と解説を見る

解説

仮想化を適用した業務システムの再構築について、クラスタの冗長化、負荷に応じた分散、重複除外、認証強化、物理・仮想サーバの監視、移行と切替えの備えを問う問題です。本文と構成図から、各対策が必要になる理由を読み取ることが要点です。

問題の全体像

T社は商品マスタの拡大に合わせ、業務システムを仮想化基盤へ再構築します。同時に、営業所のバックアップを本社へ集約し、外出先からの認証と運用監視も強化します。出題趣旨では、サーバの冗長化や負荷分散、インターネット経由の利用改善、運用管理に加え、データ移行とシステム切替えまで幅広く問うとしています。技術用語だけでなく、本文の条件から必要な対策を説明できることが重要です。

設問1(a)

「FC-SANと並ぶSANの種類」と「代表的な技術がiSCSI」という記述に着目します。iSCSIを用いてIPネットワーク上でストレージへの入出力を行うSANなので、公式解答例では「IP-SAN」です。今回はFC-SANを採用しますが、空欄は比較対象となるSANの名称を問っています。

設問1(b)

空欄は、iSCSIが「信頼性のあるデータ通信を行うため」に使うプロトコルです。公式解答例では「TCP」です。IP-SANというネットワークの種類と、その上で信頼性のある転送を担うTCPを区別して押さえます。

設問1(c)

イニシエータがストレージへ処理を要求する際に発行する「コマンド」の種類を問っています。iSCSIはSCSIの入出力要求をネットワーク経由で扱う技術なので、公式解答例では「SCSI」です。通信に用いるTCPと、入出力要求を表すSCSIコマンドを区別します。

設問1(d)

サーバ側で要求を発行するイニシエータに対し、ストレージ側でその処理を実行する役割の名称を答えます。公式解答例では「ターゲット」です。採点講評では、この空欄の正答率が極端に低かったとしています。イニシエータが要求側、ターゲットが要求を受けて実行する側という対応を整理しましょう。

設問1(e)

LBを利用して「冗長性を高めるとともに」向上させる性質を問っています。処理を複数のAPサーバへ分散できれば、サーバを増やして処理能力を拡大しやすくなります。公式解答例では「スケーラビリティ」又は「拡張性」です。採点講評でも、拡張性は負荷分散装置が生み出す基本的な効果として理解してほしいとしています。

設問2(1)(状態)

DBサーバはアクティブスタンバイ型で、ハートビートによって相手の生存を確認します。双方が稼働中でもハートビートを受信できないと、待機側が相手の停止を誤認し、同じサービスを起動する危険があります。公式解答例の要点は、同一サービスが複数ノードで同時に起動する状態です。40字以内なら「同一サービスがクラスタ内の複数ノードで同時に起動する。」とまとめられます。

設問2(1)(対応策)

問題はサーバの停止ではなく、生存確認用の通信が途絶えることです。そのため、ハートビートを交換する経路を複数にし、一つの回線の障害だけで相手を停止と判断しないようにします。公式解答例では回線の複数化を挙げています。25字以内の答案では「ハートビートをやり取りする回線を複数にする。」と、何を冗長化するかを明記します。

設問2(2)(a)

図2では、PCはL2SWを介してL3SWに接続され、LBもL3SWに接続されています。要求はLBで振り分けられた後、再びL3SWを通ってAPサーバへ届きます。公式解答例では「L2SW→L3SW→LB→L3SW」です。LBとAPサーバが直接接続されていると読み違えず、同じL3SWを二度経由する点を押さえます。

設問2(2)(b)

本文には、APサーバからの返送パケットをLB経由にするという条件があります。APサーバからL3SWを通ってLBへ送り、LBから再びL3SW、L2SWを経由してPCへ返します。公式解答例では「L3SW→LB→L3SW→L2SW」です。最短に見える経路だけで判断せず、返送もLBを通すという条件を反映します。

設問3(1)

図3では、更新ブロックそのものを既存のブロックと照合する代わりに、生成したハッシュ値を比較しています。公式解答例では、データが同一かどうかのチェックを高速化できる点を利点としています。30字以内なら「データが同一かどうかのチェックを高速化できる。」とまとめます。通信量の削減というバックアップ全体の効果と、ハッシュ関数を使う直接の利点を区別します。

設問3(2)

異なるブロックから同じハッシュ値が生成されると、未保存のブロックを保存済みと誤認する可能性があります。その結果、必要なデータがバックアップされません。公式解答例の要点は、異なるデータを同じデータと判断してしまう問題です。30字以内なら「異なるデータを同じデータと判断してしまう。」と、衝突による誤判断を示します。

設問3(3)

ハッシュ値だけが一致しても同一と即断せず、照合情報を増やす考え方です。公式解答例では、CRCも生成してハッシュ値とCRCの両方を比較する方法と、ブロックを2分割して各ハッシュ値をつなぎ合わせて比較する方法を挙げています。50字以内の答案例は「ブロックのCRCも生成し、ハッシュ値とCRCの両方を比較する。」です。いずれも誤判断の確率を下げる対策であり、衝突を完全になくすという説明は避けます。

設問4(1)(PCに対して行う処理)

手順(ii)では、接続するすべてのPCについて、パッチや稼働プロセス、ウイルス対策ソフトなどをチェックします。問われているのはチェック項目ではなく、それを行うためにPCへ実施する処理です。公式解答例では、検疫のためのプログラムをダウンロードすることを挙げています。25字以内なら「検疫用プログラムをPCにダウンロードする。」とまとめます。

設問4(1)(通信が発生する箇所)

図4の注記では、認証サーバがランダムな数表の発行と認証処理を行います。認証受付サーバは手順(iii)で数表を取得し、手順(iv)で入力された数値のチェックを行うため、認証サーバとの通信が必要です。公式解答例では「(iii)、(iv)」です。手順(v)も認証サーバへ通信しますが、送信元は新SSL-VPN装置なので、この設問の対象とは区別します。

設問4(2)①

従来は固定パスワードだけで認証していましたが、新方式ではランダムな数表から得たワンタイムパスワードを使います。公式解答例では、改善点としてパスワードの安全性が高まることを挙げています。固定パスワードを繰り返し使う場合に比べ、使用済みパスワードの再利用を防げる点に着目します。25字以内なら「ワンタイムパスワードで安全性が高まる。」とまとめられます。

設問4(2)②

もう一つの強化策は、新SSL-VPN装置による接続PCのセキュリティチェックです。本文では、チェック結果が異常なら接続を切断するとしています。公式解答例では、PCのセキュリティチェックが行われる点を挙げています。25字以内なら「接続PCのセキュリティチェックが行われる。」とし、利用者の認証とは別に端末の安全性を確認することを示します。

設問4(3)①

図4では、認証受付サーバはDMZ、認証サーバは社内側にあります。数表の取得や認証処理のために、両者の通信をFWで許可する必要があります。公式解答例では「認証受付サーバから認証サーバへの通信」です。この表現は25字以内で、送信元とあて先の両方を明確にしています。

設問4(3)②

手順(v)では、DMZ内の新SSL-VPN装置が、社内の認証サーバへRADIUSによる認証要求を送ります。公式解答例では「新SSL-VPN装置から認証サーバへの通信」を挙げており、25字以内で表せます。また、公式解答例には「インターネットから認証受付サーバへの通信」も示されています。これは手順(ii)のリダイレクト後にPCが認証受付サーバへ接続するための通信です。

設問4(4)

現在の最大トラフィック7Mビット/秒のうち、1.3倍になるのは業務システム分の40%だけです。業務分は7×0.4×1.3=3.64、その他は7×0.6=4.2なので、新しい最大値は7.84Mビット/秒です。小数点以下を切り上げるため、公式解答例では「8」です。全体に1.3を掛けないよう、増加する部分を分けて計算します。

設問5(1)

下線④は、監視対象機器を発見する方法を問っています。公式解答例では、指定範囲のIPアドレスへpingを発行し、応答の有無でホストの存在を判断します。50字以内なら「指定範囲のIPアドレスへpingを送り、応答の有無でホストの存在を判断する。」とまとめます。採点講評では、ノード発見に関連するpingやARPの基本動作、ARPテーブルから分かることの理解を求めています。

設問5(2)

一つの物理サーバ上で複数の仮想サーバが稼働するため、仮想サーバの状態だけでは、物理側の負荷との関係を把握できません。公式解答例では、仮想サーバと、それが稼働する物理サーバの稼働状態を対比して監視することを求めています。50字以内なら「仮想サーバと、その稼働先の物理サーバの稼働状態を対比して監視する。」とまとめます。監視対象を増やすだけでなく、両者を対応付ける点が要点です。

設問5(3)

イベントログには、障害に関係する情報以外も含まれます。運用中のログを踏まえてフィルタ条件を調整し、障害につながる情報を検出できるようにします。公式解答例では、障害に結びつくログだけを検出することを挙げています。25字以内なら「障害に結びつくログだけを検出するようにする。」と、チューニングの目的を具体的に示します。

設問6(1)

ラウンドロビンで6台に処理を振り分けても、処理内容によってCPU負荷が異なり、仮想サーバ3と4では高い使用率が続いています。要求数を均等にするだけでは負荷を平準化できないため、実際のCPU使用率を振分けの判断に使います。公式解答例では、CPU使用率の低いAPサーバへ処理を振り分けます。30字以内なら「CPU使用率の低いAPサーバに処理を振り分ける。」と答えます。

設問6(2)

本文の移行処理は、抽出・加工、取込み、確認の3段階で、加工時にはマスタやテーブルを参照します。公式解答例では、抽出・加工ロジックの正当性、移行先のマスタデータの完全性、移行所要時間の確認を挙げています。25字以内では、その一つを具体的に示し、例えば「データ抽出・加工ロジックの正当性を確認する。」とまとめます。所要時間の確認は、図6の限られた切替期間内に作業を完了できるかを判断するために必要です。

設問6(3)①

本文では、移行テストを繰り返していても、本番のデータ移行中に問題が発生しています。スケジュールには通常の作業だけでなく、予測できる問題への対応も織り込む必要があります。公式解答例では、問題を事前に明確化し、対応策を作っておくことを挙げています。40字以内なら「データ移行時に予測される問題と、その対応策を事前に明確にする。」とまとめます。

設問6(3)②

月曜日の業務開始に間に合わせる必要があるため、問題への対応をいつまでも続けることはできません。公式解答例では、切替えを断念する判断基準と、その判断を行う時間を明確にすることを挙げています。40字以内なら「システム切替えを断念する判断基準と、判断する時刻を明確にする。」とまとめます。採点講評でも、問題発生時に必要な事項を具体的に示す解答が評価されており、基準と時刻の両方を押さえることが重要です。

学習のポイント

構成図と通信手順を追う力に加え、冗長化の障害条件、負荷分散の判断指標、ハッシュ照合の限界、移行時の対応策を整理しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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