NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ
平成22年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題


解き方のヒントを見る
判断の前提を同じ範囲にそろえる
見積りや運用上の判断を考えるときは、根拠となる前提が同じ範囲を扱っているかに注目しましょう。個々の情報だけで結論を急がず、何を対象とした条件なのかを整理すると、検討の出発点が明確になります。
この問題で問われていること
この分野では、判断に使う情報と、その情報が成り立つ前提の対応を確認することが大切です。対象の範囲が途中で変わっていないかという一点に絞り、与えられた条件に沿って自分の考えを点検してみましょう。
視点
ある情報を判断の根拠にするときは、その情報がどの範囲について述べているかを確かめます。同じ話題の情報でも、扱う範囲がそろっているとは限らないため、前提と対象の対応を意識して整理しましょう。
確認ポイント
- 判断の対象となる範囲を把握したか
- 根拠となる情報の対象範囲を確認したか
- 考える途中で対象範囲を変えていないか
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解説
本問は、画面転送型シンクライアントへの移行に伴う通信経路と帯域の変化を評価する問題です。伝送効率を含めた帯域計算、測定用SNMP通信の影響を除いたトラフィック調査、TCPへの優先制御の影響、動画の再生帯域と同時再生数を関連付けて考えます。
問題の全体像
Z社は、拠点のPCを本社の仮想PCに接続する画面転送型シンクライアントへ移行し、既存ネットワークで運用できるかを評価しています。業務処理が本社へ移るため、画面転送の追加だけでなく、サーバアクセスや印刷の通信経路も変わります。公式の出題趣旨では、移行前後のトラフィック変化の推定、ネットワーク調査、優先制御が通信に与える影響などを問うとしています。各通信がどこで発生し、どの回線を通るかを整理することが出発点です。
設問1(ア)
「独立した複数のトラフィックを一つの伝送路に多重化する」という説明に着目します。各通信の使用量は時間とともに変動するので、帯域を共用すれば、個別に最大帯域を用意する場合より効率よく利用できます。公式解答例では「統計」で、本文では「統計多重効果」となります。ただし、通信のピークが重なる可能性があるため、平均使用量だけで帯域の余裕を判断してはいけません。
設問1(イ)
「映像の符号化及び復号装置やソフトウェア」という定義に着目します。映像を送信や保存に適した形式へ符号化し、再生時に復号する機能を担うものです。公式解答例では「コーデック」です。後半で説明されるTC側での動画の復号にもつながる用語です。
設問1(ウ)
本社のSNMPマネージャが、監視対象であるRT2上の機能と通信するという関係に着目します。監視対象側で管理情報を保持し、マネージャからの要求に応答するのはSNMPエージェントです。公式解答例では「エージェント」です。
設問1(エ)
ifInOctetsとifOutOctetsが「管理情報のオブジェクト」として示されている点に着目します。SNMPで扱う管理情報を体系化したものはMIBで、ポートの送受信バイト数などを管理対象として定義しています。公式解答例では「MIB」です。
設問1(オ)
「パケットを入力した順に出力する」という処理順序に着目します。先に入ったものを先に取り出す仕組みなので、公式解答例では「FIFO」又は「First In First Out」です。本文では、混雑時に優先パケットを先に転送する処理と区別して説明されています。
設問2(1)
TCは40台、1台当たりの平均使用帯域は20kビット/秒なので、合計は40×20=800kビット/秒です。伝送効率が0.8であるため、確保する回線帯域の80%がこの通信に使えると考え、800÷0.8=1、000kビット/秒を求めます。公式解答例ではaは「1、000」です。伝送効率を掛けると必要帯域を小さく見積もってしまうので、割り算になる理由を押さえます。
設問2(2)
下線①は、画面転送の情報量を減らす技術と、通信のバースト性を低減する技術を挙げています。公式解答例にある技術から、例えば「データ圧縮」と「帯域制御」を選べます。データ圧縮は送る情報量を削減し、帯域制御は送出量を調整して通信の集中を抑えます。いずれも10字以内です。公式解答例には「差分伝送」「プログレッシブ符号化」も示されています。
設問2(3)
図1では仙台拠点のPCが業務処理を行いますが、図2では本社の仮想PCが処理を行います。印刷先は仙台拠点に残るので、新たにIP-VPNを通る通信は「仮想PCと仙台拠点のプリンタ間の通信」です。公式解答例では「仮想化SVと仙台拠点のプリンタ間の通信」も示されています。一方、発生しなくなる通信は「仙台拠点のPCと業務管理SV間の通信」と「仙台拠点のPCとファイルSV間の通信」です。移行後のサーバアクセスは本社内の仮想PCが行うため、従来の拠点PCからのWAN通信がなくなります。採点講評では、TCと仮想PCの通信の関係を読み取れていない解答が指摘されています。
設問3(1)
ifInOctetsとifOutOctetsの増分は、1分間に送受信したバイト数です。これをkビット/秒に換算するには、8を掛けてビットにし、60秒と1、000で割ります。増分×8÷60÷1、000=増分÷7、500となるので、公式解答例ではbは「7、500」です。採点講評でも、提示された条件から計算式を導く力が求められています。
設問3(2)
本社のSNMPマネージャは、RT2のWAN側ポートのIPアドレスを宛先にしています。このSNMP要求はIP-VPNからRT2のWAN側へ届き、RT2のエージェントで終端されます。応答もWAN側から本社へ戻るため、この測定用通信はRT2のLAN側ポートを通過しません。WAN側のカウンタでは測定用SNMP通信も計上されますが、LAN側のカウンタを取得すれば、その影響を排除できます。公式解答例は「SNMPの通信によるカウンタ値の増加を排除するため」で、30字以内の答案でもこの目的を示します。採点講評では、インターネットVPNを想定した誤った解答が指摘されています。
設問3(3)
RT2とSNMPマネージャが正常でも、カウンタの増分が負になる点に着目します。カウンタは保持できる値に上限があり、上限を超えると小さい値へ戻ります。その前後の取得値を単純に引くと、後の値が前の値より小さくなり、増分が負になります。公式解答例では「カウンタのけたあふれ」で、15字以内です。本文の定数を加える補正は、この値の折り返しに対応する処理です。
設問3(4)
非優先パケットは優先側の待ち行列が空になるまで転送されず、待ち行列が上限に達すると新たなパケットが破棄されます。TCPでは、パケットの損失によって再送が必要になるだけでなく、輻輳への対応として送信量を抑えるためにウィンドウを縮小します。この両方が転送速度を低下させます。公式解答例は「パケットの破棄による再送とウィンドウサイズの縮小が起こるから」です。35字以内の答案では、破棄、再送、ウィンドウ縮小の因果関係を押さえます。
設問3(5)
導入予定のTCでは、通常の画面転送とは別セッションで動画情報を受信し、TC側で復号します。そのため、動画用通信の必要帯域を別に見積もる必要があります。公式解答例の二項目は「動画一つの再生に必要な通信帯域」と「拠点における動画の同時再生数」で、どちらも20字以内です。一つの動画に必要な帯域と同時再生数から合計の必要帯域を見積もり、見込余剰帯域以下になる運用条件を検討します。採点講評では、二項目を明確に示さない解答や、通信帯域の確保と優先制御を混同した解答が指摘されています。優先制御を設定しても、回線自体の帯域が増えるわけではありません。
学習のポイント
通信を実行する機器と経路を図から追い、カウンタの単位換算、測定通信の除外、TCPの再送とウィンドウ縮小を理解することが重点です。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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