NWネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ
平成21年度秋期 ネットワークスペシャリスト 午後Ⅰ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題



解き方のヒントを見る
観測した事実の範囲を確かめる
障害調査や対策を考えるときは、観測した事実がどの範囲について述べられているかを確認しましょう。ある範囲で得た情報を全体に広げず、分かっている範囲と未確認の範囲を区別して整理することが大切です。
この問題で問われていること
着目するのは、判断の根拠となる情報が及ぶ範囲です。通信の状況に関する記述や条件を扱う際は、その情報からどこまで判断できるのかを意識し、明示されていない範囲まで同じ状態だと決めつけないようにしましょう。
視点
観測によって分かった範囲と、それ以外の範囲を分けて整理します。ある範囲について得られた事実を別の範囲にも当てはめるには、その広がりを支える根拠があるかを確認する必要があります。
確認ポイント
- 根拠となる情報が対象とする範囲を確認したか
- 確認済みの範囲と未確認の範囲を区別したか
- 判断を根拠の及ぶ範囲より広げていないか
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解説
無線LANの電源供給不良とサーバのメモリ不足、誤配線によるレイヤ2のループを扱う問題です。観測された現象を通信経路やVLAN設定と結び付け、原因の特定、障害の波及、再発防止策まで説明することが要点です。
問題の全体像
Z社は三つの拠点を広域イーサ網で接続し、監視、販売管理、商品管理、電話の通信をVLANで分離しています。前半の障害では、APへの電源供給不良による無線LANの不安定化と、DB-SVのメモリ不足による応答遅延が重なっています。後半では、営業所のSWとL2SW2を二重に接続したため、ループするフレームが拠点間回線を占有します。出題趣旨では、L2SWと無線LANの機能・動作・設定、TCP/IPの基礎知識を使って障害現象を把握する力を問うとしています。個々の用語に加え、図の通信経路とVLANの設定を読み合わせることが重要です。
設問1(ア)
着目するのは、スパニングツリープロトコルが「制御フレームをやり取りして通信のループを回避する」という記述です。公式解答例では「BPDU」又は「Bridge Protocol Data Unit」です。スイッチ間でBPDUを交換して接続構成を把握し、ループを生じる経路の一部を転送に使わない状態にすることで、ループを回避します。
設問1(イ)
本文には、IEEE 802.3af規格によってUTPケーブルからAPへ電源を供給するとあります。公式解答例では「PoE」又は「Power over Ethernet」です。イーサネットの配線を利用して機器に給電する技術であり、本事例ではコネクタとケーブルの接続不良による電圧低下が、APの無線動作を不安定にしています。
設問1(ウ)
着目するのは、TCPが受信側からの返信に基づいてデータの到達確認と再送を行うという記述です。公式解答例では「確認応答」「ACK」又は「Acknowledgement」です。送信側は確認応答などを基に受信状況を判断し、届かなかったデータを再送します。この仕組みによって、無線LANが不安定でも通信がある程度継続できたと説明できます。
設問1(エ)
U君は、広域イーサ網の接続ポートを流れるフレームを、別の未使用ポートにつないだトラフィックモニタで解析しています。公式解答例では「ミラー」です。対象ポートの送受信フレームを監視用ポートへ複製する設定なので、本文の「ミラーポート」に当てはまります。
設問1(オ)
本文の「接続機器のポートの属性を識別して、自ポートの結線をストレート又はクロスに自動的に切り替える」が機能の定義です。公式解答例では「Auto MDI/MDI-X」又は「Auto MDI-X」です。ケーブルの結線に合わせて自動調整するため、本事例では誤って接続した二つの経路も通信可能となり、ループの成立につながりました。
設問2(1)(a)
空欄は、IEEE 802.11b規格の最大伝送速度を問うています。公式解答例では「11」で、単位を含めると11Mビット/秒です。本文で観測された1Mビット/秒は不安定な状況での通信速度であり、空欄には規格上の最大値を入れます。
設問2(1)(b)
空欄は、IEEE 802.3afのPoEで給電に使用するより対線の数です。公式解答例では「2」です。UTPケーブル全体には4対ありますが、この規格の給電に使うのはそのうち2対です。「線の本数」ではなく「対の数」を答える点に注意します。
設問2(2)
図1で、HTから本社のL2SW1へ届く経路をたどります。HTのフレームはAP、L2SW3、広域イーサ網を経由してL2SW1に到着します。L2SWは受信フレームの送信元MACアドレスと受信ポートを対応付けて学習するため、公式解答例では「広域イーサ網に接続しているポート」です。この表現は20字以内です。HTの接続APが変わっても、L2SW1から見た受信ポートは同じです。
設問2(3)
表ではHTとSK-SVがVLAN20、PCとHK-SVがVLAN10に属しています。既存のHTと追加するノートPCを同じAPで扱うには、無線側の通信をそれぞれ適切なVLANへ振り分ける必要があります。公式解答例では「通信をESS IDごとにVLANと対応付ける機能」です。答案では、指定語句の「ESS ID」と、VLANへの対応付けを30字以内で示します。APとL2SW3の間は既にタグVLANを使用しているので、その接続で複数のVLANを中継できます。
設問3(1)(フレームの種類)
公式解答例では「ブロードキャストフレーム」です。ブロードキャストは同じVLAN内の複数のポートへ転送されるため、ループがあると同じフレームが繰り返し転送されます。本事例では未使用ポートがVLAN1に属し、VLAN1は拠点間でもタグなしで中継されます。そのため、営業所で発生した大量のフレームが広域イーサ網へ流れ込みました。タグがないことは所属VLANを判断する手掛かりであり、それだけでブロードキャストと判断するものではありません。
設問3(1)(制限されない理由)
TTLはIPパケットをルータなどが転送するときに減算します。一方、今回のループはL2SWによるレイヤ2のフレーム転送で生じています。公式解答例では、L2SWの転送処理でIPヘッダを評価しないことを理由としています。30字以内では「L2SWの転送ではIPヘッダを評価しないから」とまとめられます。IPパケットを含むフレームでも、レイヤ2の転送だけではTTLによってループを止められません。
設問3(2)
図2のSWに残された二つの接続線を、L2SW2のVLAN1に属する二つのポートへ1本ずつ結びます。公式解答例の図も、この二重接続を示しています。根拠は、誤接続した二つのポートが以前は未使用であり、工場出荷時には全ポートへVLAN1が割り当てられるという記述です。さらに、大量のフレームがタグなしだったこともVLAN1での中継と一致します。SWは本来VLAN10の機器ですが、問われているのは事故時の接続なので、VLAN1の二つのポートへ描く必要があります。
設問3(3)
公式解答例では「PCを接続しても直ちに通信が可能な状態にはならない」、又は「VLAN内へのユニキャストフレームの流出が増加する」という現象を挙げています。前者は、STPが接続後にループの有無を確認し、ポートが転送可能になるまで待ち時間が生じるためです。後者は、PCの接続・切断に伴う構成変更でMACアドレスの学習情報が早く失われると、宛先ポートが不明なユニキャストのフラッディングが増えるためです。30字以内の答案例は「PCを接続しても直ちに通信可能にならない」です。ループ回避の効果ではなく、端末の接続・切断に伴う現象を書くことが要点です。
設問3(4)①
公式解答例の一つ目は、未使用ポートを使用できない閉そく状態にする方法です。誤ってケーブルを接続してもフレーム転送に使われないよう、ポート自体を無効にします。30字以内では「未使用ポートを閉そく状態にする」とまとめられます。Auto MDI/MDI-Xの設定変更だけではなく、通信に使用できない状態にすることを明示します。
設問3(4)②
公式解答例の二つ目は、未使用ポートに別のVLANを割り当て、そのVLANをタグVLANでの中継から外す方法です。本事例では未使用ポートのVLAN1が拠点間で中継されていたため、誤接続の影響が他拠点へ波及しました。30字以内では「別のVLANを割り当てタグVLANの中継から外す」とまとめられます。VLANを変更するだけでなく、そのVLANを拠点間などの中継対象から除外する点まで示す必要があります。
学習のポイント
MACアドレス学習、ESS IDとVLANの対応、タグなし通信、STPとTTLの役割の違いを重点的に学びます。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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