AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ
令和7年度秋期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問1 オープンAPI態勢の監査
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題

解き方のヒントを見る
監査の目的と記述の対応を確かめる
システム監査の設問では、各記述が監査の目的やリスクとどう結び付いているかを意識すると整理しやすくなります。指摘・改善提案・監査手続のそれぞれが、何を確かめ、何を改めるためのものかという役割の違いに着目しましょう。
この問題で問われていること
まず、問われている箇所が事実の指摘なのか、改善の方向性なのか、それを確かめる手続なのかを見極めることが大切です。次に、示された事実とリスクの結び付きに照らして、その記述が監査人の立場として妥当かを考えます。
視点
システム監査では、何が問題かを示す指摘、どう改めるべきかを示す改善提案、どのように確かめるかを示す監査手続が、それぞれ異なる役割を担います。どの記述を検討する場合も、それがどのリスクや統制上の弱点に対応しているのかをたどると、記述同士のつながりや過不足を判断しやすくなります。また、監査人は独立した立場から評価し助言する存在であり、業務を自ら実施する立場ではない点も意識しましょう。
確認ポイント
- 検討している記述が、指摘・改善提案・監査手続のどの役割に当たるかを確認したか
- その記述が、状況から読み取れるリスクや統制上の弱点と対応しているかを確認したか
- 記述の内容が、評価し助言する監査人の立場から見て無理のないものかを確認したか
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解説
A銀行のオープンAPI態勢を題材に、四つの機能(企画・改善、設計・開発・保守、運用、接続審査)ごとのリスクとコントロールを考える問題です。公式解答例では、運用報告書をリテール業務部が参照すること、仕様変更のたびにアプリ改修が必要になること、テスト環境の提供と旧APIの一定期間の並行稼働、運用報告書でサーバ負荷と接続遮断の関係を分析すること、アクセスを許可するIBサービスの範囲の広さで確認項目を決めることが示されています。
問題の全体像
A銀行は、フィンテック事業者(電代業者)のアプリからオープンAPI経由でIBサービス(照会・決済)を利用できるようにしています。オープンAPI態勢は、リテール業務部が担う(1)IBサービスの企画・改善と、情報システム部が担う(2)設計・開発・保守、(3)運用、(4)接続審査で構成されます。契約する電代業者が増えたため、内部監査部長は各機能が有効に働かない場合に電代業者や顧客へ及ぶ影響を懸念し、監査を指示しました。予備調査の結果(表1)と本調査の指摘事項(1)〜(4)は、四つの機能にそれぞれ対応しています。出題趣旨では、各機能で生じるリスクの知識、リスクに応じたコントロールを見分ける能力、コントロールの有効性を検証するための監査証跡の特定と監査手続の導出を問うとされています。採点講評では、全体の正答率は平均的で、設問2(ii)と設問4の正答率が低めだったと述べられています。
設問1
着目点は二つあります。一つは、運用報告書に『オープンAPI経由のアクセス状況』が記載されているのに、情報システム部内の回付で止まっていることです。もう一つは、表1項番1でリテール業務部が『提供している各IBサービスの利用状況を分析』して、顧客の利便性向上に役立つサービスを検討していることです。アクセス状況は、各IBサービスがどれだけ利用されているかを示す情報そのものなので、企画・改善を担う部門が使えば分析に役立ちます。そのため公式解答例では、改善内容を『リテール業務部がオープンAPI運用報告書を参照すること』としています。答案では、①誰が(リテール業務部)、②何を(運用報告書)、③どうするか(参照・活用する)の3要素を30字以内にまとめます。
設問2(i)
指摘事項(2)は、電代業者との協業・連携の促進の観点から『電代業者におけるアプリ管理への影響』を抑える必要があるとしています。オープンAPI仕様書には処理の詳細、パラメータと指定可能値、接続方法が記載されており、電代業者のアプリはこの仕様に合わせて作られています。仕様が変わると、アプリ側もそれに合わせて直さなければ動かなくなります。そのため公式解答例では、『仕様変更の都度、電代業者のアプリの改修が必要になること』を懸念点としています。答案では、『仕様変更のたびに』という頻度の要素と、『電代業者のアプリ改修』という対応内容の要素を入れることが大切です。
設問2(ii)①
改善提案(b)は、仕様変更によって電代業者がIBサービスを利用できなくなることを防ぐものです。現状は変更の通知が1か月前までに行われるだけで、電代業者が改修したアプリの動作を事前に確かめる手段が問題文には書かれていません。変更後のAPIに接続して試せる環境があれば、電代業者は切替え前に改修を検証でき、切替え時の利用不能を防げます。公式解答例の一つ目は『仕様変更後のオープンAPIのテスト環境を提供すること』です(二つの方策は順不同です)。答案では、『変更後のAPI』を『事前に検証できる環境を提供する』という点を押さえます。
設問2(ii)②
もう一つの考え方は、改修が間に合わない電代業者のために、切替え直後に旧仕様を止めないことです。旧APIをしばらく動かし続ければ、改修が終わるまでの間もIBサービスを利用できます。公式解答例の二つ目は『仕様変更前のオープンAPIを一定期間並行稼働させること』です。採点講評では、新旧両方のAPIを継続して存続させる旨の解答が散見されたと指摘され、APIの仕様を変更する意味や必要性(IBサービスの向上など)を理解するよう求められています。旧APIを無期限に残すと仕様変更の目的が果たせないため、『一定期間』という期間限定の要素を必ず入れてください。
設問3
発見された状況は、『APIサーバの能力に余裕がある状態でも接続遮断が発生している』ことと、『サイバー攻撃や不正アクセスによる遮断の形跡がない』ことです。これを確かめるには、サーバの負荷状況と接続遮断の発生状況を突き合わせる必要があります。〔A銀行のオープンAPI態勢〕(3)によると、運用ではAPIサーバの負荷状況、接続遮断などのイベント発生状況、アクセス状況が監視され、その結果が月次でオープンAPI運用報告書にまとめられています。そのため公式解答例では、『オープンAPI運用報告書を閲覧し、APIサーバの負荷と接続遮断との関係を分析した』としています。採点講評では、運用報告書が監査証拠として最も適しているのに、『各種のログ』といった明確でない解答が少なからず見られたと指摘されています。答案では、①監査証拠(オープンAPI運用報告書)、②監査技法(閲覧・分析)、③分析の観点(負荷と接続遮断の関係)を45字以内に入れます。
設問4
指摘事項(4)は、チェックリストの確認項目をすべて同等に扱うのをやめ、『アクセストークンに基づく』リスクベースアプローチで審査を効率化するよう求めています。問題文では、アクセストークンによって電代業者のアプリがアクセスできるIBサービスの範囲が決まるとされています。範囲が広い(例えば照会に加えて振込などの決済まで含む)ほどリスクは大きく、範囲が狭ければ確認項目を絞れます。そのため公式解答例では、『アクセスを許可するIBサービスの範囲の広さによってチェックリストの確認項目を決定する』としています。採点講評では、一般的なリスクベースアプローチの解答が多く、問題文の『アクセストークンに基づく』という趣旨に沿って答えるよう求められています。答案では、①判断基準(アクセストークンで許可されるIBサービスの範囲の広さ)と、②それに応じてチェックリストの確認項目を決める(重み付けする)ことの2要素を50字以内にまとめます。
学習のポイント
表1の状況と本調査の指摘事項を一対一で結び付けることと、監査証拠を問題文中の具体的な文書名で特定することが重点です。さらに、問題文の限定語(アクセストークンに基づく、仕様変更後のAPI公開に当たって、など)に沿って、一般論ではない具体的な解答を作る練習をしてください。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和7年度秋期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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