AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成30年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 販売管理システムの監査に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 S社は,日用品の卸売会社である。S社では,得意先からのEDI発注への切替要請及び受注業務の効率向上に対応するため,販売管理システムの更新を行うことになった。 これまでのシステム監査では,現在の販売管理システムについて特に指摘事項はなかったが,システムの更新によって新たな情報システムリスクが発生し,コントロールの見直しが必要になることが考えられる。そこで,S社の内部監査部は,販売管理システム更新の要件定義が終わった段階で,システム監査を実施することにした。 〔現在の販売管理業務の概要〕 現在の販売管理業務の概要は,次のとおりである。 (1)受注 S社では,得意先からファックス又は電子メールで注文を受け付けている。 受注事務担当者は,注文内容を販売管理システムに受注入力する。入力された得意先コード,商品コード,与信限度額,及び在庫引当の可否を販売管理システムで自動チェックする。このとき,在庫不足で注文の全数を引き当てられない場合は,その都度得意先に不足分の納品が遅れることを連絡し,了解を得ている。このように納品が分かれる場合は,販売管理システムには,元となった注文内容を複数の受注データに分割して入力する。販売管理システムによるチェックの結果,エラーがなければ仮受注データとして記録される。 受注責任者が受注の可否を判断して承認入力を行うことによって,受注確定となる。受注確定後は受注内容の変更はできない。 受注処理は,毎日午後4時に締め切られる。その後,受注事務担当者は販売管理システムから受注伝票を出力し,得意先からのファックス又は電子メールの注文内容と照合し,漏れや誤りがないことを確認する。 (2)出荷 確定した受注データに基づいて,出荷指示データが生成され,納品日・得意先ごとの出荷指示リスト及び納品書が各配送センタにおいて出力される。 配送センタでは,出荷指示リストに基づいて,得意先ごとに商品をそろえるとともに,配送車両の手配を行う。 出荷業務担当者は,出荷当日中に出荷完了入力を行う。何らかの事情で出荷指示どおりに出荷できない場合には,即座に出荷保留入力を行い,受注責任者に連絡する。 〔新しい販売管理業務の概要〕 内部監査部は,予備調査において,新しい販売管理システムの要件定義の責任者に対するヒアリング,及び要件定義書などの関係資料のレビューを行った。その結果,販売管理業務は次のとおり変更される予定であることが分かった。 (1)受注 主要得意先の一つである大手スーパーマーケットのQ社からの要請によって,Q社からの受注は全てEDIで行う。EDIによる受発注成立の条件は,Q社とのEDI取引契約書に定められている。受注データを毎日午前6時に受信し,新しい販売管理システムで受注内容の自動チェックを行う。エラーとなった受注データは,Q社に受注エラーとして送信される。エラーにならなかった受注データは,受注確定として処理される。 Q社以外の得意先からの受注業務は,現在の販売管理業務の処理と同様とする。ただし,1件当たりの受注金額が10万円未満の受注データについては,受注責任者の承認を不要とし,受注入力が完了した時点で受注確定とする。 (2)出荷 確定した受注データに基づいて,出荷指示データが生成される。このとき,得意先から指定された納品場所,納品日,及び在庫の状況から,適切な配送センタと出荷日時が自動的に決定され,出荷指示データに付加される。この付加処理は,納品場所,納品日,営業日カレンダ,配送業者,配送所要時間などを設定した配送マスタによって行われる。 出荷日の前日に,各配送センタに出荷指示リスト及び納品書に加えて,現品票が出力される。現品票には,受注番号などを示すQRコードが印刷されており,出荷時にQRコードリーダで読み取って,出荷完了入力が行われる。また,出荷日の当日に,処理された出荷完了処理の内容を一覧にした出荷完了リストが出力される。 〔予備調査結果の検討〕 内部監査部の監査チームリーダのK氏は,本調査の計画を立案するため,監査メンバのN氏,T氏と予備調査結果について検討を行った。そのときの会話(一部)は,次のとおりである。 K氏:EDIによる受注では,受注責任者による承認が行われませんが,問題はないですか。 N氏:Q社とのEDI取引契約書で受発注成立の条件が詳細に定められていて,その条件を満たしている受注は承認されたものとして取り扱うことになっています。したがって,[a]が受注責任者による承認に代わるコントロールとして機能すると考えられます。 K氏:そうすると,監査手続はどのようにすべきですか。 N氏:[b]と[c]とを照合して,EDIによる[d]を確かめることになります。 K氏:それから,EDI受注以外の受注で1件当たり10万円未満の受注データについては,受注責任者の承認が省略されることになりますが,リスクはないですか。 N氏:少額受注についてはこれまで問題が発生していないことから,リスクは極めて小さいと判断されたのではないでしょうか。また,受注業務の効率向上を図ることも,目的の一つになっています。 T氏:しかし,10万円未満の不適切な受注もあり得るでしょうし,10万円以上の受注の承認を回避するために[e]というようなリスクが考えられます。受注業務の効率向上の観点から,1件ごとの承認を省略する場合でも,例えば[f]といったコントロールが必要なのではないでしょうか。 K氏:出荷完了処理についてですが,出荷業務担当者による手入力からQRコードの読取り入力に変更されます。これに関する要件定義段階での監査では,何を確かめればよいのですか。 T氏:QRコードの読取り漏れは売上計上の誤りに直結するので,要件定義書を閲覧し[g]を監査手続とします。 設問1 EDIによる受注において,受注責任者の承認に代わるコントロールとして,本文中の[a]に入れる字句を30字以内で述べよ。 設問2 EDIによる受注データに関する監査手続について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の[b],[c]に入れる文書名を,本文中の用語を用いてそれぞれ10字以内で答えよ。 (2)この監査手続で確かめるべき事項として,本文中の[d]に入れる字句を,40字以内で述べよ。 設問3 10万円未満の受注について,受注責任者の承認が省略されることによって発生するリスクとコントロールについて,本文中の[e],[f]に入れる字句を,それぞれ40字以内で述べよ。 設問4 QRコードによる出荷完了処理が漏れなく行われるようになっているかどうかを確かめる監査手続として,本文中の[g]に入れる字句を45字以内で述べよ。
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受注変更時の統制と監査証拠の見方

この問題では、受注方法や承認手順の変更によって、従来の統制がどの場面で置き換わり、監査人がどの資料や処理記録の対応関係を確認すべきかに注目し、処理全体のつながりを追ってください。

この問題で問われていること

一つの受注処理を、取引条件の確認、システム処理、出荷への引継ぎ、結果の記録という流れで捉え、各段階の役割と監査証拠が対応しているかを考えることに集中してください。

視点

変更された処理では、担当者の判断だけでなく、事前に定めた条件、機械的な判定、例外時の扱い、後から追跡できる記録が統制の有効性に関係します。

確認ポイント

  • 受注成立の根拠となる条件と、実際の処理記録が対応しているか確認する。
  • 承認を省略する範囲と、例外や不適切処理を発見する仕組みを区別して考える。
  • 自動入力された結果について、漏れを検出し後から追跡できる証跡が残るか確認する。
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解説

販売管理システムの更新に伴い、EDI受注、少額受注の承認省略、QRコードによる出荷完了入力が導入される。各設問は、変更によるリスク、代替コントロール、監査で確認すべき証拠を問う。

問題の全体像

S社は、受注業務の効率化と得意先からのEDI発注への対応のため、販売管理システムを更新する。更新後は、Q社のEDI受注が自動チェック・自動確定となり、Q社以外では10万円未満の受注について承認が省略される。また、出荷完了入力は手入力からQRコード読取りに変更される。出題の狙いは、比較的小規模なシステム変更でも新たな情報システムリスクが生じることを踏まえ、変更内容に対応したコントロールと監査手続を考えることです。

設問1

本文では、Q社のEDI受注について、受発注成立の条件を契約書で定め、その条件を満たしたデータは承認なしで受注確定としている。さらに、受注内容は新システムが自動チェックする。このため、公式解答例では「販売管理システムによるEDI受注内容のチェック」としている。人による承認を省略する代わりに、システムが受注内容を自動的に検査する点を押さえる。

設問2(1)(b)

本文には、EDIによる受発注成立の条件がQ社との「EDI取引契約書」に定められているとある。したがって、公式解答例の文書名は「EDI取引契約書」となる。監査では、EDI取引の成立条件を確認するための根拠文書として着目する。

設問2(1)(c)

予備調査で、内部監査部は要件定義書などの関係資料をレビューしている。また、EDI受注データは新システムで自動チェックされる。したがって、公式解答例のもう一つの照合対象は「要件定義書」であり、契約上の条件がシステム要件に反映されているかを確認する。

設問2(2)

契約書には受発注成立の条件が定められ、要件定義書にはシステムのチェック要件が定義される。そこで、両文書を照合し、公式解答例のとおり「受発注成立の条件の全てが受注データのチェック要件として定義されていること」を確認する。単に文書の存在を確かめるのではなく、契約条件が漏れなくシステム要件になっているかが重要です。

設問3(e)

10万円未満の受注は承認なしで確定するため、承認を避けたい者が、10万円以上の一つの受注を複数の少額受注に分けて入力するリスクがある。本文の「10万円以上の受注の承認を回避する」という記述に対応し、公式解答例では「1件当たり10万円以上の受注を10万円未満の受注に分割して入力する」としている。

設問3(f)

少額受注の承認を個別に行わない場合でも、後からまとめて確認する統制が必要になる。公式解答例では「定期的に10万円未満の受注の一覧表を出力し、受注責任者がチェックする」としている。答案では、少額受注を一覧化することと、受注責任者が定期的に確認することの両方を含める。

設問4(g)

QRコードの読取り漏れは、出荷完了入力の漏れを通じて売上計上の誤りにつながる。本文には、出荷指示リストと、当日に出力される出荷完了リストがあるため、両者を比較すれば、出荷すべきものが漏れなく完了処理されたかを確認できる。公式解答例では「出荷指示リストと出荷完了リストとの突合が行われるようになっていることを確認すること」としている。

学習のポイント

業務変更点からリスクとコントロールを導き、文書や一覧表などの監査証拠と照合方法まで具体的に書く力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成30年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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