AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成29年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 システム開発における品質管理の適切性の監査に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 C社は,全国に営業展開している金融機関X社のシステム開発及び運用を担う子会社である。ここ数年,開発中のシステムにおいて,本番稼働前のユーザ受入テスト時に不具合が発生し,本番リリースに影響を及ぼす事態が発生している。そこで,X社の監査部が,C社におけるシステム開発の品質管理の適切性を監査することになった。 〔C社における品質管理の状況〕 C社には,五つの開発部,運用部,企画部,品質管理部及び間接部門がある。 品質管理部は,システムの設計(基本設計,詳細設計),製造(コーディング,単体テスト)及びテスト(結合テスト,システムテスト,ユーザ受入テスト)の各工程において,品質管理基準,及びシステム開発で使用する各種の標準・規約の維持管理と,品質管理状況のモニタリングを行っている。 各開発部では,プロジェクトごとに,プロジェクトマネージャ(PM)が品質管理基準に従って各工程の品質管理を行っている。 〔品質管理基準の概要〕 監査部は,予備調査としてC社の品質管理基準について確認した。品質管理基準では,次のことが定められている。 (1)PMは,品質管理部が所管する標準・規約に従って開発を行い,各工程の品質評価を行う。品質管理部が所管する標準・規約は,表1のとおりである。 (2)PMは,品質評価結果について,次のような点を品質管理部に報告する。 ・設計工程におけるレビュー密度,指摘密度などの実績値 ・テスト工程におけるテスト密度,欠陥密度などの実績値 ・各工程で,実績値が指標値の上下20%の範囲を超えた場合の理由及び品質向上策 なお,ここでいう“密度”とは,例えば,指摘密度については,指摘項目数を設計書ページ数で除した数値を表している。 (3)プロジェクトが中規模(10人月以上50人月未満)又は大規模(50人月以上)の場合は,品質管理部の主導で工程完了判定会議を開催する。一方,小規模(10人月未満)の場合は,品質管理部が書面で品質評価結果を審査し,工程完了判定会議は省略される。実績値が指標値の上下20%の範囲を超えた場合は,品質管理部が審査することによって,次工程への着手が認められる。 (4)プロジェクトでは,各設計工程の完了前に設計レビューを実施する。レビュー実施時間は,設計書のページ数に応じて目標が設けられている。レビューの実施結果は,レビュー記録表に記載される。 (5)製造工程では,プログラム作成者とは別の担当者がソースコードのインスペクションを実施して,インスペクション記録表にその結果が記載される。 (6)テスト工程では,発見された不具合とその解決状況が不具合管理表に記録される。 (7)開発中及び本番稼働後に発生した障害などの不具合については,根本原因分析を実施して再発防止を図る。根本原因分析では,障害の根本原因を分析し,対策を立案・実施し,各開発部への横展開を行う。 (8)品質管理部は,年に1回,各プロジェクトから報告された品質評価の実績値を集計する。実績値が指標値と掛け離れている場合は,実績値の妥当性を評価して指標値を更新し,新たな指標値を各開発部に通知する。 表1 品質管理部が所管する標準・規約 監査部は,本調査として,品質管理基準の運用状況を確認した。詳細設計工程及びシステムテスト工程の完了判定に関する確認結果は,次のとおりである。 〔詳細設計工程の完了判定に関する確認〕 (1)昨年度に完了した50件のプロジェクトの適用状況について 50件のプロジェクトのうち,中規模以上は21件,小規模は29件であった。中規模以上の21件のうち,詳細設計工程の指摘密度が指標値の上下20%の範囲内のものは19件であった。その中から3件をサンプリングして,レビュー記録表の内容と工程完了判定会議への提出資料とを照合して確認した結果,3件ともレビュー指摘件数に差異が見られた。PMに確認したところ,次のような回答があった。 “詳細設計を担当したのが新人であったことから,教育も兼ねて全ての指摘をレビュー記録表に記載させたので,レビュー指摘件数が多くなった。このうち,単純ミスや標準に合致しない記述の修正指摘などは,重要性が低いと考え,品質管理部への報告書では除外した。” この回答を受けて,監査部は,レビュー指摘件数のカウント方法について品質管理部に問い合わせ,確認した。 (2)指摘密度が指標値の上下20%の範囲外であった2件について 工程完了判定会議の議事録を査閲したところ,2件とも,指摘密度は指標値の半分以下であった。その理由として,PMからの報告書には,“過去に開発したシステムで参考にできる機能が多く,設計書も流用できるものが多い”という記載があった。監査部は,品質管理部に確認し,工程完了の判定は妥当であると判断した。 (3)昨年度の工程完了判定会議の記録,及びレビュー記録表について 本番稼働後の障害発生が増加していることから,昨年度の中規模以上のプロジェクトにおける工程完了判定会議の記録21件を,全て調査した。その結果,詳細設計工程で作成することになっているドキュメントは全て作成され,品質評価結果の報告書についてもPM及び品質管理部の承認印があった。 次に,(1)で抽出した3件のレビュー記録表を一覧表にして比較・検討することにした。そのために,表計算ソフトを使用して,レビューアごとの指摘区分別の指摘項目数をカウントした。 なお,指摘区分とは,指摘の内容について,単純ミス,機能要件の理解不足,機能漏れなどに分類したものである。 レビュー記録表には,レビュー実施日時,レビュー対象ドキュメント,ページ数,ドキュメント作成者,レビューア,レビュー観点,指摘区分,発生原因が記載されている。 〔システムテスト工程の完了判定に関する確認〕 監査部は,X社ユーザ部門のT課長にユーザ受入テストの問題点についてヒアリングを行った。その結果,T課長からは,“本来はC社のシステムテストで発見されるべき不具合が,ユーザ受入テストで発見されることがある。C社でのテストケースが不足しているのではないか”という回答があった。 そこで,監査部がシステムテスト工程の完了判定会議の記録を確認したところ,不具合が解決すればシステムテスト工程が完了したとみなし,承認されていた。監査部は,完了判定基準の項目が不十分な可能性があると考え,品質管理部にヒアリングを行った。 設問1 〔詳細設計工程の完了判定に関する確認〕の(1)について,レビュー指摘件数のカウント方法について,監査部が品質管理部に確認した内容を,50字以内で述べよ。 設問2 〔詳細設計工程の完了判定に関する確認〕の(2)について,監査部が,工程完了の判定が妥当であると判断するために確認した内容を,40字以内で述べよ。 設問3 〔詳細設計工程の完了判定に関する確認〕の(3)について,次の(1),(2)に答えよ。 (1)監査部が一覧表を用いて確認しようとしたことを,40字以内で述べよ。 (2)監査部が実施した監査手続には改善すべき点がある。どのように改善すべきか,理由を含め,45字以内で述べよ。 設問4 〔システムテスト工程の完了判定に関する確認〕について,監査部が品質管理部にヒアリングを行って確認したことを,45字以内で述べよ。
表1 品質管理部が所管する標準・規約。品質管理部が所管する開発標準、命名規則、コーディング規約、データベースの設計標準、ドキュメント標準、レビュー標準、テスト標準を一覧にした表。
表1 品質管理部が所管する標準・規約。品質管理部が所管する開発標準、命名規則、コーディング規約、データベースの設計標準、ドキュメント標準、レビュー標準、テスト標準を一覧にした表。
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品質評価記録の整合性を確認する視点

この問題では、各工程の品質評価や完了判定を支える記録について、同じ基準で収集・分類・報告されているかという整合性に注目して整理するとよい。監査では、資料間の差異や集計結果だけでなく、その根拠と確認手続のつながりも意識する。

この問題で問われていること

確認の中心は、レビューやテストの結果が、記録・報告・判定の各段階で同じ意味を保っているかです。個々の件数や数値を推測せず、記録の範囲、分類、承認、比較方法の対応関係を考える。

視点

品質管理の監査では、実績を示す記録と、工程完了を判断する資料が、同じ定義や集計単位に基づいているかを確認する視点が重要です。記録の作成者、利用者、確認者の役割が分かれ、後から追跡できる構造になっているかも併せて考える。

確認ポイント

  • 記録された情報と報告資料が、同じ対象を扱っているか
  • 分類や集計の前提が、工程や担当者によって揺れていないか
  • 監査手続が、結論を支える十分な比較・追跡になっているか
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解説

本問は、システム開発の品質管理について、規程や記録が形式的に整っているかではなく、指標の算定、分析、承認、工程完了判定が品質確保に実効的かを監査する問題です。

問題の全体像

C社では品質管理基準やレビュー・テストの記録制度が整備されているが、本番稼働前のユーザ受入テストで不具合が発生している。監査部は、詳細設計工程での指摘件数の扱い、指摘密度が低い場合の承認、レビュー記録の分析方法、システムテストの完了基準を調査する。出題の狙いは、形式的な文書・承認の確認にとどまらず、品質管理の運用が実際に有効かを判断することです。

設問1

レビュー記録表には全ての指摘が記載されていた一方、品質管理部への報告書では単純ミスなどを除外していたため、指摘件数に差異が生じた。したがって、監査部が確認すべきなのは、何をレビュー指摘件数として数えるかの判断基準が明文化され、各開発部に周知されているかです。50字以内では、判断基準の明文化と周知を押さえる。

設問2

指摘密度が指標値の半分以下でも、過去のシステムや設計書を流用できたという理由が報告されていた。指標値から外れた場合は品質管理部の審査が必要なので、その理由を品質管理部が審査し、承認していることを確認した点が答えの核になる。

設問3(1)

3件のレビュー記録表を、レビューアごとの指摘区分別件数として一覧化することで、レビューアによってレビュー観点が異なっていないか、また特定の指摘区分に偏りがないかを比較しようとした。単なる件数集計ではなく、レビュー品質のばらつきや偏りを確認する目的を示します。

設問3(2)

表計算ソフトで傾向を分析するなら、3件のサンプルだけでは全体の傾向を代表しない可能性がある。そのため、サンプリングではなくレビュー記録表を全件調査すべきです。改善方法と、その理由である網羅性・代表性の不足を45字以内でまとめる。

設問4

システムテストでは、不具合が解決したことだけを基準に工程完了が承認されていた。しかしテスト標準にはテスト密度や欠陥密度などの指標が定められているため、それらの実績値が工程完了の判定基準に含まれているかを品質管理部へ確認する。

学習のポイント

監査証拠をリスクと内部統制に結び付け、適切な確認手続を短い答案で表現する力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成29年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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