AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成29年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 制御ネットワーク及び制御システムの監査に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 D社は,エネルギー企業グループ系列の中規模の石油精製会社である。東京に本社があり,東日本で製油所を操業している。 〔D社ネットワークの統合〕 D社では,老朽化した製油所の装置設備を,10年前に改装した。その際,製油所の石油精製制御システム(以下,制御システムという)も刷新した。また同時に,制御システムが接続されている製油所のネットワーク(以下,制御ネットワークという)と,生産管理システムなどの各種業務システム(以下,業務システムという)が接続されているネットワーク(以下,本社基幹ネットワークという)を統合した。 D社の現在のネットワーク構成(概要)を,図1に示す。 図1 D社のネットワーク構成(概要) 制御ネットワークは,広域イーサネットサービス網で本社基幹ネットワークと接続されている。また,制御システムの遠隔監視・保守のために,インターネットを介して,制御システムの導入を担当したベンダであるE社と接続されている。 〔制御システムの刷新及び業務システムとの連携〕 刷新前の制御システムは,E社独自のシステム機器及び通信プロトコルを使用して構築され,製油所内の閉域ネットワークで稼働していた。その後の情報技術の進歩で,一部の装置を除き,汎用のシステム機器を用いることが可能になったので,刷新時に,コスト面で優位であるそれらの機器を導入した。また,汎用の通信プロトコルを利用して,制御システムを業務システムの一つである生産管理システムと連携させ,リアルタイムにデータを共有することによって生産性の向上を図った。その後,順次,需給管理システム及び経営管理システムとも連携させ,D社の経営効率の向上を図ってきた。 〔予備調査の実施〕 最近,他社で制御ネットワーク及び制御システムの脆弱性を突いたセキュリティインシデントが発生したことを受け,D社の社長は,内部監査部長に制御ネットワーク及び制御システムのセキュリティ管理状況を監査するよう指示した。 制御ネットワークは本社基幹ネットワークと接続されていることから,システム監査人は,予備調査の一環として,それぞれのネットワーク及びシステムのセキュリティ管理の相違点について比較し,表1のとおりまとめた。 表1 セキュリティ管理の相違点(抜粋) 〔本調査での発見事項〕 システム監査人による本調査の結果,次のことが判明した。 (1)表1の項番1~3について,製油所安全管理規程及び情報セキュリティ管理規程の改訂は,ネットワーク統合時に各セキュリティ管理部署主導で行われている。また,製油所安全管理規程の承認は製油所安全管理委員会で,情報セキュリティ管理規程の承認は情報セキュリティ管理委員会で,それぞれ行われている。 これらの規程では,ネットワーク及びシステムのセキュリティ管理において遵守すべきルール,セキュリティ管理部署及びセキュリティ管理者の役割と責任範囲などが定められている。しかし,両規程は個別に策定されており,D社における全社的なセキュリティ管理の観点からは内容の確認が行われていない。 (2)表1の項番4について,制御ネットワークでは,物理的セキュリティが重視されており,本社基幹ネットワークに比べてセキュリティ管理対象が限定されている。 したがって,マルウェアの物理的な感染経路であるUSBポートは,セキュリティ対策が講じられているが,制御ネットワークへの論理的アクセス制御やサーバのハードニングなど,管理対象として重視されていないセキュリティ領域の対策が不十分である。このため,システム設定上の不備に起因するセキュリティインシデントが発生するおそれがある。 (3)OS開発元が提供するセキュリティパッチを制御システムに適用するに当たっては,表1の項番5に示したセキュリティ要件を満たすことを,セキュリティ管理者が事前に確認する必要がある。さらに,制御システムは,製油プロセスを制御データの数値によって正確にタイミングよく制御するために,プログラムロジック及びパラメタ値が最適化されている。このため,制御データ処理時の数値の変動とタイミングの変化が定められた範囲に収まることも,セキュリティ管理者が事前に確認する必要がある。 また,セキュリティパッチ適用の間隔が比較的長いこともあり,その間のOSの脆弱性を突いたセキュリティインシデント発生に備えた補完的コントロールが必要である。 (4)操油部計装課には情報セキュリティの専門技術者がいないので,図1に示したFW-Bの設定は,E社が推奨するポリシに基づいて,E社の技術員が行っている。 また,操油部計装課は,FW-B経由の遠隔監視・保守に伴う不正アクセスを防ぐために,次の対策①,②を講じるようE社に求めている。さらに,各対策が適切に行われていることを確認するために,四半期ごとにE社から報告を受けている。 対策① 遠隔監視・保守を行うために制御ネットワークに接続する端末及びその利用者を限定する。 対策② 制御ネットワークへのアクセス状況を記録し,遠隔監視・保守以外の操作の有無を,製油所安全管理規程で定められた頻度で確認する。異常が発見された場合には,直ちに操油部計装課に報告する。 設問1 〔本調査での発見事項〕の(1)について,“D社における全社的なセキュリティ管理の観点からは内容の確認が行われていない”ことから,システム監査人が,製油所安全管理規程と情報セキュリティ管理規程に関して確認すべき内容を,40字以内で述べよ。 設問2 〔本調査での発見事項〕の(2)について,システム監査人が想定した“システム設定上の不備に起因するセキュリティインシデント”とは何か。50字以内で述べよ。 設問3 〔本調査での発見事項〕の(3)について,次の(1),(2)に答えよ。 (1)セキュリティ管理者によるセキュリティパッチ適用前の確認が行われていることを,システム監査人が確かめる場合,どのような文書を査閲すべきか。二つ挙げ,それぞれ20字以内で答えよ。 (2)システム監査人が想定した“OSの脆弱性を突いたセキュリティインシデント発生に備えた補完的コントロール”を,20字以内で答えよ。 設問4 〔本調査での発見事項〕の(4)について,システム監査人が,対策①,②の他に,制御ネットワーク側で遠隔監視・保守に伴う不正なアクセスを防ぐための技術的対策が適切に講じられていることを確認するための監査手続を,50字以内で述べよ。
図1 D社のネットワーク構成(概要)。本社基幹ネットワークと制御ネットワークを広域イーサネットで接続し,業務システム,制御システム,ファイアウォール,遠隔接続を配置した構成図。
図1 D社のネットワーク構成(概要)。本社基幹ネットワークと制御ネットワークを広域イーサネットで接続し,業務システム,制御システム,ファイアウォール,遠隔接続を配置した構成図。
表1 セキュリティ管理の相違点(抜粋)。制御ネットワーク及び制御システムと,本社基幹ネットワーク及び業務システムについて,規程,管理部署,管理者,考え方,優先要件を比較した表。
表1 セキュリティ管理の相違点(抜粋)。制御ネットワーク及び制御システムと,本社基幹ネットワーク及び業務システムについて,規程,管理部署,管理者,考え方,優先要件を比較した表。
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監査証跡の一貫性を確認する視点

制御ネットワークと制御システムの監査では、個別の機能名に引きずられず、要求事項・運用記録・点検結果が同じ目的に沿って結び付いているかを一つの軸で確認します。記録の追跡可能性にも注目します。

この問題で問われていること

選択肢を読む際は、監査で得られる証拠が、定めた管理上の目的や責任の所在と矛盾なく対応し、後から確認できる形で残るかという観点だけに集中し、他の論点へ広げないでください。

視点

監査対象を個別の技術要素だけで判断せず、要求、実施、記録、見直しのつながりを同じ観点で見比べます。重要なのは、説明と証拠の対応関係を落ち着いて確認することです。

確認ポイント

  • 要求と記録の対応関係を確認する
  • 実施内容を後から追跡できるか確認する
  • 責任の所在と見直しの記録を確認する
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解説

本問は、業務ネットワークと接続された制御ネットワークについて、規程や管理体制の整合性、設定不備による不正アクセス、パッチ適用時の確認、遠隔保守用ファイアウォールの監査手続を問う問題です。

問題の全体像

D社では、製油所の制御ネットワークが本社基幹ネットワークやインターネット経由のベンダ接続とつながり、汎用機器や通信プロトコルも利用している。そのため、従来の物理的安全対策だけでは不十分で、論理的アクセス制御、サーバの設定、OSパッチ、遠隔保守通信などを含む多面的なセキュリティ管理が必要になる。公式解答例では、異なる規程の整合性確認、不要な権限や外部からの不正アクセス、パッチ適用前の文書確認、侵入防御、許可パケットの限定が示されている。

設問1

本文では、製油所安全管理規程と情報セキュリティ管理規程が別々の部署・委員会で管理され、全社的な観点で確認されていないとある。したがって、両規程について、セキュリティ管理のレベルが同等であり、相互に矛盾しないことを確認する。40字以内では、規程間の同等性と不整合の有無に絞って書く。

設問2

制御ネットワークでは物理的セキュリティが重視され、論理的アクセス制御などが不十分とされている。そこから、不要なアクセス権を持つ社員による情報持出し、またはインターネット経由で外部から不正アクセスされる事象を想定する。公式解答例の二つの経路を、50字以内で簡潔に示す。

設問3(1)(a)

パッチ適用前にセキュリティ管理者が確認したことを確かめるには、適用の実施予定や対象、手順を記録した文書を見る。公式解答例では、セキュリティパッチ適用計画書が挙げられている。

設問3(1)(b)

制御システムでは、パッチによる数値変動やタイミング変化が許容範囲内かを事前確認する必要がある。その確認結果を示す証拠として、公式解答例では制御データ処理時の影響調査結果報告書が挙げられている。

設問3(2)

パッチ適用間隔が長く、その間にOSの脆弱性を悪用される可能性があるため、パッチ以外の防御策を置く必要がある。公式解答例では、侵入防御システムの導入による防御を補完的コントロールとして示している。

設問4

本文では、FW-Bの設定をE社が行っているため、監査人は実際の通信制御が適切かを確認する必要がある。公式解答例では、ファイアウォールのポリシを査閲し、遠隔監視・保守に必要なパケットだけを通過させる設定であることを確認する手続が示されている。単にポリシを確認するだけでなく、許可範囲を限定している点を書く。

学習のポイント

リスクの原因を本文から拾い、対応するコントロールと監査証拠を結び付ける力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成29年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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