AUシステム監査技術者試験 午後Ⅱ
平成28年度春期 システム監査技術者 午後Ⅱ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題
解き方のヒントを見る
投資監査を段階別に捉える視点
投資の決定時点と運用段階を分け、監査で確認すべき対象が、判断の妥当性と継続的な管理にまたがることを整理するためのヒントです。経験した組織の事実に沿って、体制、手続、目的、環境変化の関係を意識してください。
この問題で問われていること
この論述では、投資を決める場面と、運用後に目的・期待効果を見直す場面を混同せず、各段階で何を確かめる仕組みがあるかという一点に焦点を置き、自分の経験に即して整理してください。
視点
情報システム投資の監査では、意思決定の根拠、承認や評価の流れ、運用後の実績確認、環境変化への見直しがどのようにつながっているかを概念的に整理します。個別の正解や手順を決めつけず、対象組織の実態と監査目的の対応を確認してください。
確認ポイント
- 投資判断に関わる役割分担と承認の流れが、組織の実態に即して説明できるか
- 目的・期待効果を、後から達成状況と照合できる形で捉えられているか
- 運用後の環境変化を把握し、見直しにつなげる管理の観点が抜けていないか
正解と解説を見る
解説
本問は、情報システム投資について、決定時の妥当性だけでなく、運用開始後に目的・期待効果を達成・維持するための管理まで監査する力を問う問題です。
問題の全体像
企業が限られた経営資源を重要な事業領域へ集中する状況で、情報システム投資の実行可否や優先順位を適切に決めることが求められている。一方、決定が適切でも、運用開始後に顧客ニーズ、競争環境、技術環境などが変化すれば、当初の目的・期待効果を達成できない、又は達成した効果を維持できないことがある。したがって、設問アでは実際の組織と投資を具体化し、設問イでは投資決定の適切性、設問ウでは運用段階の効果管理とリスク対応の適切性を、それぞれ監査手続として論述する。提示資料の出題趣旨では、システム監査人に新規投資の実行可否・優先順位と、運用開始後の効果達成状況を評価する知識・能力があるかを問うとしている。
設問ア
800字以内なので、①投資を決定する会議体・責任者・関係部門、②起案、評価、承認、予算化などの手続、③その体制・手続で決定された一つの投資、④投資の目的と測定可能な期待効果を、相互に矛盾なくまとめる。例えば、経営会議が事業部門の起案を受け、事業戦略との整合、費用対効果、必要人員、技術面、リスク、優先順位を審査して承認するというように、誰が何を基準に決めるかを具体化する。投資概要では、導入対象だけでなく、業務上の課題、目的、期待効果を示します。設問イ・ウの監査対象になるため、効果を売上、処理時間、利用率、コスト削減などの指標として書くと、後続の監査手続につなげやすい。
設問イ
設問アの投資が、組織の事業戦略や投資方針に照らして適切に決定されたかを確認する手続を書く。まず監査基準を、事業戦略との整合、投資目的の明確性、期待効果の妥当性、費用・効果の見積り、必要な人員・技術、リスク、代替案、優先順位、承認権限などに置く。次に、投資申請書、事業計画、費用見積り、効果試算、リスク評価、代替案比較、会議議事録、承認記録、予算資料を閲覧し、手続どおりに評価・承認されたかを確かめる。さらに、見積りの前提を担当者への質問や関連資料との照合で確認し、費用を再計算し、期待効果を過去実績・類似案件・市場前提などと比較する。承認者や利用部門への質問によって、重要な前提や反対意見が適切に検討されたかも確認する。採点講評では、事業戦略との整合など基本的な手続は書かれていても、効果や費用の見積りまで踏み込んだ記述が少なかったとされているため、証拠、確認方法、判断基準を一体で示すことが重要です。
設問ウ
運用段階で、設問アの目的・期待効果の達成又は維持が損なわれるリスクを特定し、そのリスクに対応できる投資管理が行われているかを監査する。リスクは、顧客ニーズや競争環境の変化、技術の陳腐化、利用部門での定着不足、効果指標の未達、運用費用の増加、処理能力不足など、投資効果に直接影響するものを中心に書く。情報漏えいやシステム停止だけを列挙すると、設問の中心である投資目的・期待効果の管理から外れやすい。監査では、効果指標、基準値、目標値、測定頻度、責任者、報告先、判定基準を定めた資料を閲覧し、実績報告と業務実績・利用データを照合する。未達や環境変化があった場合に、原因分析、追加投資、機能変更、運用方法の見直し、予算・人員の再配分、投資継続・縮小・中止の判断が行われる仕組みと実績を確認する。会議議事録、変更申請、予算資料、対応策の進捗記録を調べ、責任者への質問やサンプル追跡で、発見から対応完了まで機能しているかを確かめる。採点講評では、技術的なリスクだけに着目した答案が多かったとされているため、効果の達成・維持を損なうリスクと、それに応じた投資管理を明確に結び付ける。
学習のポイント
投資決定監査と運用後の効果管理監査を区別し、証拠と手続を具体化する。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成28年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅱ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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