AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成26年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 情報システムの保守業務の監査に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 S社は、保険会社の情報システム子会社である。S社で運用・保守を行っているシステムの種類は多く、ハードウェア、ミドルウェアも多岐にわたっている。一方で、親会社からは、運用・保守費用の削減を求められ、S社は保守要員を減らした。その結果、現在では、保守対象システムの多さに比べて保守要員が少ないことが、S社の課題の一つとなっている。 さらに、最近になって、保守を起因とする障害が連続して発生したこともあり、S社監査部のシステム監査チームでは、今年度の監査として、保守業務の品質確保の状況を確かめるための監査を実施することになった。 〔保守業務の状況〕 S社におけるシステムの保守業務の状況は、次のとおりである。 (1) 親会社の利用部門との調整、システムの企画・要件定義、プロジェクト管理などは、S社社員が主に担当している。プログラム開発などは、必要に応じて外部ベンダに委託している。 (2) リリースから一定の年数を経過したシステムについては、開発に携わったS社社員が担当者として一人も残っていない場合が多い。 (3) 5年以内に開発されたシステムの保守についても、費用削減のために、開発したベンダとは別のベンダに委託しているケースが多い。 (4) 開発・保守を実施する部署とは別に、全システムに共通する開発標準及び開発・保守ツールの導入・更新については、S社の開発支援チームが担当している。 (5) 保守ツールの一つとして、保守要件に伴う影響範囲の調査用ツールがある。調査用ツールは、ソースプログラム、JCL、データベース定義などに関して、項目名などから影響範囲を特定できる。 〔予備調査の実施〕 システム監査チームのT氏をリーダとして実施した予備調査の内容は、次のとおりである。 (1) 保守対象システムの内容、保守作業の状況を把握するために、表1に挙げた資料を入手した。 表1 予備調査における入手資料 (2) 保守作業マニュアルは、複数システムで共通のものもあるが、システムごとに作成されているケースが多く見られた。 (3) 障害報告レポートをレビューし、システム別・障害原因別の発生状況を確認した。その結果、同一原因によるシステム障害が何度か発生していることが分かった。 (4) 設計書・仕様書の整備状況を確認した。その結果、詳細設計書、プログラム仕様書の一部が存在しないシステム、及び最新状態に更新されていないシステムが多く見られた。 (5) 引継ぎ規程の内容を調査した。その結果、保守担当者への引継ぎに必要なドキュメントが網羅されていることを確認した。 〔本調査の実施〕 T氏は、予備調査の結果を基にリスクを洗い出し、リスクに対するコントロールを表2のとおりまとめた。 表2 リスクとコントロール 表2を基に監査手続書を作成し、次のような本調査を実施した。 (1) 表2の(1)のコントロールa)について、T氏は、保守担当者が実際に行った作業結果を記した“調査結果報告書”を査閲した。その結果、調査範囲は調査目的によって異なるので、保守担当者は、担当システムに関連するライブラリをその都度指定していることが分かった。T氏は、調査漏れを防ぐためにどのような対策を実施しているか確認した。 (2) 表2の(3)について、委託先の責任者にヒアリングを行い、障害時の対応結果を記した障害報告書を査閲した。最近発生していた障害の原因は、プログラム内部で持つテーブルの限界値を超えたことによる異常終了であった。障害報告書には、障害原因や当該プログラムの対応結果が記載されていただけであった。T氏は、障害報告書に記載すべき項目を追加する必要があると考えた。 (3) 表2の(4)について、コントロールa)の運用状況を確認した。まず、サンプリングした幾つかのシステムについて、保守担当者に引継ぎ済のドキュメントの網羅性を確認した。次に、保守担当者に、引継ぎ時におけるドキュメントの内容確認のポイントについてヒアリングした。 設問1 〔本調査の実施〕の(1)について、T氏が確認しようとした対策の具体的な内容を40字以内で述べよ。 設問2 表2の①として、T氏が考えた具体的なコントロールの内容を45字以内で述べよ。 設問3 表2の②に記載すべきコントロールを45字以内で述べよ。また、〔本調査の実施〕の(2)においてT氏が考えた、障害報告書に記載すべき項目を40字以内で述べよ。 設問4 〔本調査の実施〕の(3)において、T氏が保守担当者にヒアリングした、引継ぎ時におけるドキュメントの内容確認のポイントを45字以内で具体的に述べよ。
表1 予備調査における入手資料。予備調査で入手した資料名と、それぞれに含まれるシステム情報、作業標準、障害報告、設計書類、引継ぎ規程の内容を示す表。
表1 予備調査における入手資料。予備調査で入手した資料名と、それぞれに含まれるシステム情報、作業標準、障害報告、設計書類、引継ぎ規程の内容を示す表。
表2 リスクとコントロール。影響範囲の調査、テスト範囲、障害時対応、新規開発システムの引継ぎについて、観点ごとのリスクとコントロールを整理した表。
表2 リスクとコントロール。影響範囲の調査、テスト範囲、障害時対応、新規開発システムの引継ぎについて、観点ごとのリスクとコントロールを整理した表。
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保守監査で見る統制のつながり

情報システムの保守業務を監査するときは、作業の発生から承認、実施、記録、事後確認までを一連の流れとして捉え、リスクに対して統制がどの段階で働くかを考えると整理しやすくなります。

この問題で問われていること

一つの観点に絞るなら、想定されるリスクと、それを抑えるための統制が同じ業務の流れの中で対応しているかを確認してください。誰が、いつ、何を確認し、結果が残るかを順に見ます。

視点

監査では、業務上のリスクと統制を別々に見るのではなく、発生する場面と確認のつながりを対応づけて整理します。

確認ポイント

  • 想定されるリスクが業務のどの場面に関係するか
  • 統制を担う主体と実施されるタイミングが明確か
  • 確認した結果を後から追える形になっているか
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解説

保守要員の不足、システムの複雑化、文書の不足や未更新、委託保守による情報断絶を背景に、保守業務のリスクに対応する具体的な監査手続とコントロールを問う問題です。

問題の全体像

S社は多数のシステムを少ない要員で保守し、古いシステムでは開発担当者が残っていない。また、別ベンダへの委託、設計書や仕様書の不足・未更新、同一原因の障害再発が確認されている。そこで、保守作業に伴う影響範囲の調査漏れ、テスト不足、障害の再発、引継ぎ文書の不足をリスクとして捉え、監査上の具体的なコントロールを考えることが狙いです。採点講評でも、保守の実態を理解し、監査手続を設定・実施する力が問われたと説明されている。

設問1

影響範囲調査では、保守担当者が調査目的に応じて関連ライブラリを指定している。ここでは、指定範囲に漏れや誤りがあると調査漏れにつながるため、担当者任せにせず、別の担当者によるチェックの有無を確認する。公式解答例では、ライブラリの指定範囲に漏れや誤りがないことを別担当者が確認しているかを問う内容としている。40字以内なので、対象、確認内容、確認者の独立性を簡潔に含める。

設問2

表2のリスクは、テスト範囲が不足して不具合が残る可能性です。プログラムを修正した箇所だけをテストしても、その出力や処理結果を利用する後続プログラムへの影響は確認できない。したがって、公式解答例のように、修正箇所に加えて修正プログラムの後続プログラムもテストするコントロールを書く。45字以内では、修正箇所と後続プログラムの双方を明示する。

設問3(1)

同一原因による障害が複数回発生しているため、一つのシステムだけを直しても、同じ構造や処理を持つ他システムで再発する可能性がある。そこで、同様の原因による障害のおそれが他のシステムにもないか、全システムを対象に調査するコントロールを記載する。公式解答例も、全システムに対する横断的な調査を示している。

設問3(2)

障害報告書には原因と当該プログラムの対応結果だけが記載されていた。しかし、限界値超過のような原因が他システムにも存在すれば、同様の障害が再発する。したがって、障害原因に応じて他システムへ対策を展開する必要性と、実際に展開した結果を記載する。40字以内では、展開の要否と実施結果を一体で示す。

設問4

引継ぎ規程に必要文書が網羅されていても、実際の文書内容が保守作業に十分とは限らない。したがって、文書が存在するかだけでなく、保守担当者が作業に必要とする情報を漏れなく含んでいるかを確認することがポイントになる。公式解答例では、ドキュメントの内容に保守作業で必要な情報が網羅されていることの確認を示している。

学習のポイント

リスクの原因と、それを防止・検出する具体的なコントロールを対応付ける力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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