AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成24年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 システム障害の再発防止の監査に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 ネット証券会社のE社では,近年,システム障害が多発している。中には,長時間取引ができなくなるなど,顧客に大きな影響を与えたものもあった。E社は,これまでにも社長の指示で,システム障害の低減に向けて,設計段階及びテスト段階でのレビュー体制の強化など,ソフトウェアの品質向上に取り組んできた。しかし,システム障害の件数は期待ほどには減少していない上に,過去と同様のシステム障害も発生している。 このような状況を打開するために,社長は監査部に対してシステム障害の再発防止に向けたシステム監査を実施するよう指示した。監査部では,幾つかのチームに分けて監査を実施することになり,D君は,システム障害の記録・分析,及び分析結果に基づいた再発防止の取組みが適切に行われているかどうかを監査するチームのリーダに任命された。 〔予備調査〕 監査チームのメンバは,D君の指示を受けて,まず,システム障害の対応に関わる体制,手順などが記載された“システム障害管理要領”の内容を確認した。その結果は,次のとおりである。 (1) 利用部門の担当者がシステム障害を発見した場合は,ヘルプデスクに連絡する。ヘルプデスクは,過去の障害対応が記録されているデータベースを参照するなどして対応する。その結果,問題を解決できた場合は,そこで障害対応を完了する。 (2) ヘルプデスクで問題を解決できないが,システム障害の切分けができている場合は,ヘルプデスクから,ハードウェア,ネットワーク,アプリケーションなどの各保守チームのうち,該当する保守チームに対応を依頼する。一方,システム障害の切分けができていない場合は,障害の切分けを担当する監視チームに連絡する。 (3) 監視チームは,ヘルプデスクから依頼されたシステム障害の切分け,及び自らが行う監視業務において確認されたシステム障害の切分けを行い,該当する保守チームに対応を依頼する。 (4) 保守チームは,障害対応が完了すると,ヘルプデスク及び監視チームに対して,完了報告と,利用部門が行うべき措置などを連絡する。関係する利用部門には,ヘルプデスクを通じて同様の連絡が行われる。 (5) 保守チームは,システム障害の原因分析及び再発防止策の検討を行った後,“システム障害報告書”を作成する。システム障害報告書の内容は,システム運用責任者,ヘルプデスク及び保守チームのリーダ,ベンダなどが参加する月次ミーティングにおいて報告され,原因分析や再発防止策の適切性などについて協議される。再発防止策は,システム運用責任者が,当該ミーティングでの結果を受けて,システム障害報告書に承認者として署名した後,実施される。 (6) 再発防止策の実施状況や有効性の確認は,その後の月次ミーティングで行われる。 また,予備調査では,発生したシステム障害の原因,再発防止策などが記録されたシステム障害報告書をサンプリングで20件確認した。表1は,監査で確認されたシステム障害報告書の例である。 表1 確認されたシステム障害報告書の例 〔本調査に向けた監査チームの検討会〕 監査チームでは,予備調査の結果を受けて本調査に向けた検討会を開いた。検討会において,D君は今回の監査で設定した次の監査要点に基づいて,意見を述べた。 (1) 監査要点 (ア) システム障害が,漏れなくシステム障害報告書に記載されていること (イ) システム障害報告書の記載項目及び記載内容が,必要かつ十分であること (ウ) システム障害の原因分析の結果が,再発防止策を検討するために十分かつ妥当であること (エ) システム障害の原因及び再発防止策が,関係者間で協議・決定されていること (オ) 再発防止策が権限者の承認後に実施されていること (カ) 実施した再発防止策の有効性が検証されていること (2) D君の意見 ① 監査要点(ア)について,予備調査の結果から,システム障害報告書に記載されないシステム障害が存在する可能性がある。本調査では,この点について確認する必要がある。 ② 監査要点(イ)について,システム障害報告書の書式には,監査要点(オ)を確認するために必要な項目が抜けている。したがって,監査要点(オ)については,他の方法で確認する必要がある。 ③ 監査要点(ウ)について,表1に記載されている障害の原因には,障害発生の根本原因が示されておらず,それに基づいた再発防止策だけでは不十分である。本調査では,根本原因が何かを調査する必要がある。 ④ 監査要点(エ)及び(オ)について,システム障害管理要領に記載された手順では“対応できないケース”が発生する可能性がある。この点について,当該ケースが発生した場合の手順などを記載した文書が存在するかどうかを確認する必要がある。 設問1 D君の意見①について,システム障害がシステム障害報告書に記載されない可能性があるケースを30字以内で述べよ。 設問2 D君の意見②について,(1),(2)に答えよ。 (1) 監査要点(オ)を確認するために,システム障害報告書に追加すべき項目を二つ挙げ,それぞれ20字以内で述べよ。 (2) 表1において,監査要点(オ)を確認するための手続を45字以内で述べよ。 設問3 D君の意見③について,根本原因を調査するための手続を50字以内で述べよ。 設問4 D君の意見④について,“対応できないケース”を40字以内で述べよ。
表1 確認されたシステム障害報告書の例。システム障害報告書KA-35の記入例。平成23年12月19日3時5分に国内株式システムでデータベース障害(重要度高・緊急度高)が発生し、10時23分に復旧。原因は最新パッチ未適用で、12月24日にパッチ適用予定。承認者の署名欄がある。
表1 確認されたシステム障害報告書の例。システム障害報告書KA-35の記入例。平成23年12月19日3時5分に国内株式システムでデータベース障害(重要度高・緊急度高)が発生し、10時23分に復旧。原因は最新パッチ未適用で、12月24日にパッチ適用予定。承認者の署名欄がある。
解き方のヒントを見る

監査要点と確認手続の対応を見極める

監査に関する問題では、確かめたい監査要点と、実際に行う手続や入手する証拠とが対応しているかが検討の軸になります。各項目について、その手続で本当にその要点が裏付けられるのかを一つずつ自問してみましょう。

この問題で問われていること

本問の検討では、監査要点ごとに、示された手続や指摘が何を対象として確認・評価しているのかを捉えることが重要です。手続が実際に確かめている対象と、監査要点が問う対象とが一致しているかという一点に注目してください。

視点

システム監査では、まず「何を確かめたいのか」という監査要点があり、それを裏付けるために手続を実施して証拠を入手します。どれほど丁寧な手続でも、確かめている対象が監査要点とずれていれば、その要点についての結論の根拠にはなりません。管理上の不備を検討する場面でも同様に、指摘されている事柄が、問われている要点とどう結び付くのかを意識することで、検討の筋道が整理しやすくなります。

確認ポイント

  • 各監査要点が「何が確保されていること」を確かめようとしているのかを、自分の言葉で言い直せるか
  • 検討している手続や指摘が、実際にはどの対象・どの時点の状態を確認するものなのかを捉えられているか
  • その手続の結果が得られたとして、それだけで当該監査要点についての結論を裏付けられるかを自問したか
正解と解説を見る

解説

ネット証券会社E社の障害再発防止の取組みを題材に、障害管理要領と表1の障害報告書から統制の不備を見つける問題です。障害報告書に記録されない経路、承認後の実施を確かめる記載項目と監査手続、根本原因を調べる手続、要領の手順では対応できない緊急ケースを、本文に即して具体的に答えることが求められます。

問題の全体像

E社では、ソフトウェアの品質向上に取り組んできたにもかかわらず、システム障害が思うように減らず、過去と同様の障害も繰り返し発生しています。D君のチームは、障害の記録・分析と再発防止の取組みを監査します。予備調査で確認した“システム障害管理要領”(1)~(6)と、表1のシステム障害報告書の例を監査要点(ア)~(カ)に照らし、統制の弱点を見つけることが求められています。出題趣旨によると、障害の記録・分析と再発防止策の策定に関わる体制及びプロセスの適切性を監査する能力を問う問題です。採点講評では、設問1と設問2(1)は正答率が高く、設問3と設問4は問題文に即した深い分析が必要なため正答率が低かったとされています。また、具体性のない記述が多かったことも指摘されています。

設問1

要領のどの段階でシステム障害報告書が作られるかに着目します。要領(5)によると、報告書を作成するのは保守チームです。一方、要領(1)では、ヘルプデスクが過去の障害対応を記録したデータベースを参照するなどして問題を解決できた場合、その時点で障害対応を完了します。つまり、保守チームに連絡が届かないまま終わった障害は、報告書に記載されない可能性があります。公式解答例では「障害が保守チームに報告されず、対応が完了したケース」とされています。30字以内で答えるには、「保守チームに届かない」と「対応が完了する」の2点を押さえます。

設問2(1)①

監査要点(オ)は、再発防止策が権限者の承認後に実施されていることです。これを確かめるには、承認した時点と実施した時点を比べる必要があります。表1の報告書には、作成日、承認者、署名欄、再発防止策の実施予定日はあります。しかし、承認した日を示す項目はありません。公式解答例では、一つ目の項目を「承認者が承認を行った日付」としています。

設問2(1)②

比較するもう一方は、実際に実施した時点です。表1には「実施予定日」しかなく、予定どおり実施されたのか、いつ実施されたのかが分かりません。公式解答例では、二つ目の項目を「再発防止策が実施された日付」としています。承認日と実施日の両方が記録されていれば、承認の後に実施されたかどうかを報告書だけで確かめられます。

設問2(2)

表1に固有の事情に着目します。報告書の作成日は12月22日(木)で、パッチ適用の実施予定日は12月24日(土)です。要領(5)では、報告書の内容を月次ミーティングで協議し、システム運用責任者が承認者として署名してから実施することになっています。この短い期間に月次ミーティングが開かれ、承認されたのかが疑わしいといえます。報告書には承認日がないため、ほかの証拠で確かめる必要があります。公式解答例では、月次ミーティングの議事録で開催日と出席者を確認し、パッチを適用したシステム上の日付と比べる手続を示しています。採点講評では、表1のケースに即した記述が求められているのに一般的な記述にとどまる解答が多かったと指摘されています。「議事録」「開催日・出席者」「パッチ適用のシステム日付との比較」を具体的に盛り込むことが大切です。

設問3

表1の「障害の原因」欄には、最新のパッチが未適用だったことが書かれています。ただし、パッチ配布時にその情報は通知されており、システム担当者が「当社では同様の障害が発生していないので適用する必要がない」と判断していました。パッチが未適用だったのは直接原因にすぎません。担当者がなぜそう判断し、なぜその判断が通ってしまったのかという点に根本原因があると考えられます。公式解答例では、システム担当者にインタビューを行い、最新のパッチを適用しなかった理由を確認する手続が示されています。採点講評では、障害管理における“根本原因”という用語を理解していない解答が見られたと指摘されています。50字以内で答えるには、「誰に」「どの技法で(インタビュー)」「何を確かめるか(パッチを適用しなかった理由)」をそろえます。

設問4

監査要点(エ)(関係者間の協議・決定)と(オ)(承認後の実施)について、要領(5)は、月次ミーティングで協議し、その後に承認して実施するという流れしか定めていません。しかし表1の障害は重要度・緊急度とも「高」で、取引が長時間止まっています。このような障害では、次の月次ミーティングを待たずに再発防止策を実施すべき場合があります。その場合、要領の手順では協議も承認もできません。公式解答例では「再発防止策を月次ミーティング前に実施しなければならないケース」とされています。40字以内で答えるには、「月次ミーティングより前に」「再発防止策を実施する必要がある」の2点を明確にします。

学習のポイント

要領の手順と表1の日付を照らし合わせて、記録漏れや承認前実施のリスクを具体的に見つける力を養います。あわせて、根本原因分析の考え方と、監査証拠を使った監査手続の書き方を身に付けます。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針