AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成24年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 システムの移行計画の監査に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 機械などの販売業を営むS社は、現行の販売管理システム(以下、現行システムという)を再構築することになり、現在、システムテスト及び移行の準備を行っている。 新システムへの移行に当たって、開発を担当したシステム開発部、本番運用を担当するシステム運用部、及びシステムの利用部門が、移行計画書をレビューしている。また、現行システムは専用機上で稼働しているが、新システムは他のシステムと同一機器を共有する。 S社では、以前にシステム移行のトラブルが発生したことがあるので、一定規模以上のシステム開発の場合には、監査部が移行計画を監査することになっている。監査部は、予備調査として、移行計画書、移行手順書などのドキュメントを調査し、その結果を踏まえて本調査を実施した。 〔移行計画書の概要(抜粋)〕 移行計画書の概要は、次のとおりである。 (1)トランザクションデータの移行 受注、販売などのトランザクションデータは、現行システムの本番データから抽出してデータ変換を行い、新システムへ移行する。 (2)マスタデータの移行 顧客マスタには、“顧客ランク”という項目が追加される。顧客ランクは、過去の売上実績や与信情報に基づいて、移行用プログラムで自動的に設定する。組織マスタは、別環境で稼働している人事システムから日次でデータを受信する。組織マスタは、現行システムと同じDBMSを使用し、データ構造も変更しないので、移行当日に臨時に人事システムからの受信処理を実行して準備する。その他のマスタは、現行システムの本番データから抽出して、データ変換を行う。 (3)新システムのプログラムの準備 新システムのプログラムは、事前に新環境に導入し、ジョブスケジュールなども事前に設定しておく。他システムとのインタフェース処理を除いて、バッチ処理をデータ0件の状態で1週間実行させておく。 (4)移行判定会議 移行作業の着手可否を判断するために、“移行判定会議”を開催することになっている。判定会議では、表1に示す“移行判定基準”によって移行判定を行う。 表1 移行判定基準(抜粋) 〔移行リハーサルの結果〕 システムテストで準備したデータを使用して、移行リハーサルを実施した。“移行リハーサル結果報告書”に記載された処理時間は、次のとおりである。 ① 移行用データの抽出:6時間30分 ② データ変換:7時間 ③ 新システムのデータベースの生成:7時間 合計:20時間30分 〔移行手順書の概要(抜粋)〕 本番移行は、システムを停止できる週末の2日間を使って実施する。新システムへの移行手順書の概要は、次のとおりである。 (1)移行当日の体制 システム開発部、システム運用部及び利用部門が参加する。 (2)移行タイムチャート 移行当日のタイムチャートは、表2のとおりである。 表2 移行タイムチャート (3)移行作業の検証及び移行判定 移行作業の確認は、事前に作成した“移行作業チェックシート”に従って行い、システム運用部長に報告する。システム運用部長が報告内容を確認し、移行完了と本番システムとしての稼働開始を承認する。チェックシートは、表2の“作業内容”に記載されている事項をチェックリストにしたものである。 〔本調査の実施〕 本調査の結果は、次のとおりである。 (1)システム監査人は、移行リハーサルの処理時間と比較して、スケジュールに余裕があることは確認したが、移行タイムチャートの時間設定を問題ないと判断するためには、更に確認すべき事項があると考えた。 (2)システム監査人は、全ての移行用プログラムについて単体テスト及び結合テストが実施されていることを、テスト結果報告書で確認した。移行用プログラムは、新システムのシステムテスト用のデータ作成にも使用されていた。システムテストでデータの不備が発見されると、その都度、システムテストの担当者が移行用プログラムを修正して対応していた。システム監査人は、リスクがあるので更に監査手続を実施する必要があると考えた。 (3)システム監査人は、マスタデータの移行が全て完了したことを確認するコントロールが適切かどうか、移行計画書及び移行手順書の内容を確認した。“顧客ランク”という重要項目を追加することから、システム監査人は、顧客マスタの移行結果の確認が重要と判断した。そこで、顧客マスタの移行結果の確認において、更に精度を高めるための確認内容を追加すべきだと考えた。 (4)システム監査人は、移行作業中に予期せぬトラブルが発生したときの対応が、移行手順書に記載されているかどうか確認した。トラブル発生時の連絡体制及び責任者が明記されていたので、移行作業の継続又は中止に関するコントロールを中心に確認した。 設問1 〔本調査の実施〕(1)について、システム監査人が更に確認すべき事項を35字以内で述べよ。 設問2 〔本調査の実施〕(2)について、システム監査人が考えたリスクを25字以内で述べよ。また、システム監査人が実施すべき監査手続を40字以内で述べよ。 設問3 〔本調査の実施〕(3)について、システム監査人が追加すべきと考えた確認内容を二つ挙げ、それぞれ45字以内で述べよ。 設問4 〔本調査の実施〕(4)について、システム監査人が確認したコントロールを、30字以内で具体的に述べよ。
表1 移行判定基準(抜粋)。移行作業開始の可否を判断するため、新システムテスト、移行手順書、移行用プログラム、移行リハーサルの完了基準を示す表。
表1 移行判定基準(抜粋)。移行作業開始の可否を判断するため、新システムテスト、移行手順書、移行用プログラム、移行リハーサルの完了基準を示す表。
表2 移行タイムチャート。本番移行2日間の時刻ごとの作業項目と、データ抽出・変換・生成・確認などの作業内容を示すタイムチャート。
表2 移行タイムチャート。本番移行2日間の時刻ごとの作業項目と、データ抽出・変換・生成・確認などの作業内容を示すタイムチャート。
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移行統制のつながりを確認する

システム移行計画を検討するときは、作業項目を個別に眺めるのではなく、計画上の判断や管理方法が、どのリスクへの対応として説明できるかを一貫して確認します。その関係を丁寧に見ます。

この問題で問われていること

一つの観点として、移行に伴う懸念、実施する管理、確認の記録が互いに対応づけられ、計画全体の説明に無理がないかを、問題文の条件に沿って読み取ってください。焦点を広げすぎないことが大切です。

視点

移行計画の監査では、予定されている作業だけでなく、その判断を支える根拠と、実施後に確認できる記録とのつながりに注目します。個々の記述を評価する前に、計画・管理・確認の関係を同じ粒度で追えるか整理すると、論点を限定して考えやすくなります。

確認ポイント

  • 計画上の判断と、対応づけられた管理内容を追跡できるか
  • 確認の方法や記録が、計画の説明と結び付いているか
  • 条件の違いによって、確認すべき関係が変わっていないか
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解説

本問は、販売管理システムの本番移行について、時間制約やデータ不備、予期せぬトラブルに対する監査上の着眼点と確認手続を問う問題です。

問題の全体像

S社は現行の販売管理システムを新システムへ移行しようとしており、移行計画書・手順書を基に監査を行っている。移行リハーサルの時間、移行用プログラムの修正、顧客ランクを含むマスタ移行、トラブル発生時の継続・中止判断が論点です。出題の狙いは、移行に伴うリスクを具体化し、その有効性を確かめる監査要点や手続を示すことです。

設問1

移行リハーサルの合計時間だけを見て本番スケジュールの妥当性を判断するのでは不十分です。リハーサルを実施したときのデータ量、実行環境などの条件が、本番移行時と同じかを確認する。公式解答例でも、本番移行と同じ条件でリハーサルを行ったかが示されている。35字以内なので、条件の同一性に絞って書く。

設問2(リスク)

移行用プログラムは単体テストと結合テストを実施済みだが、システムテストでデータ不備が見つかるたびに修正されている。修正後のプログラムについて、同じ水準の結合テストが確認できないため、本番移行後のデータに不具合が発生するリスクを捉える。25字以内では、発生する結果を簡潔に示す。

設問2(監査手続)

リスクの原因は、システムテストで修正された移行用プログラムの再テスト状況が不明なことです。したがって、修正された移行用プログラムについて結合テストが実施されたことを、テスト結果報告書で確認する。公式解答例の手続に沿い、対象と証拠を明記する。

設問3(1)

移行データが漏れなく処理されたかを確かめるため、移行処理の件数を現行データの件数と照合する。画面上の一部データだけを見る確認ではなく、処理件数の一致によって全体の網羅性を確認する点が重要です。

設問3(2)

顧客マスタには新たに重要項目である顧客ランクが追加され、移行用プログラムが自動設定する。そこで、顧客マスタを何件かサンプルとして画面表示し、顧客ランクが適切に付加されていることを確認する。件数確認とは異なり、内容の正確性を確認する答案にする。

設問4

連絡体制と責任者は既に手順書に記載されているため、追加の着眼点はトラブル時に移行を続けるか中止するかの判断です。公式解答例に沿い、移行を中止する場合の判断基準が明確になっていることを具体的なコントロールとして示す。

学習のポイント

移行計画の記載を具体的なリスクとコントロールへ結び付ける力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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