AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ
平成24年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問1
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題


解き方のヒントを見る
監査観点を整理するための一つの視点
パブリッククラウドの利用計画を考えるときは、便利さだけでなく、組織の目的や管理責任との整合性を確認し、判断の根拠が一貫しているかを見直します。関係者間で共有できる形かも確認します。
この問題で問われていること
一つの観点に絞り、計画で想定している利用目的と、必要な統制・責任分担・継続的な見直しの考え方が矛盾なくつながっているかを、問題文の記述に沿って確認してください。
視点
クラウド固有の答えを暗記するのではなく、目的、前提、管理の境界、評価方法を順に切り分け、記述同士の関係が整っているかという観点で整理します。
確認ポイント
- 利用目的と計画上の判断理由が一貫しているか確認する
- 誰が何を管理する想定かを整理して記述間のつながりを見る
- 導入後も状況を確認し見直せる考え方になっているか確認する
正解と解説を見る
解説
M社が自社データセンタを縮小してSaaSを利用する際、機能や価格だけでなく、CSPの事業継続性、資源拡張性、可用性の比較方法、総合コストを監査する問題です。
問題の全体像
M社は、電子メールなどの社内向けシステムをSaaSへ移行し、運用負荷とコストを下げ、資源利用を柔軟にしようとしている。移行プロジェクトはA社、B社、C社を機能、コスト、性能、可用性、情報保護などの観点で比較し、C社を最適と評価した。しかし監査では、CSPの事業停止時のデータ保全、資源拡張性の評価方法、稼働率比較の妥当性、追加費用を含む総合コストの検討不足が指摘された。出題の狙いは、クラウド利用の企画段階で、サービス提供者への依存から生じるリスクと、それに備える契約・評価・監査の着眼点を問うことです。
設問1(1)
事業撤退や倒産によってサービスが停止すると、M社が預けたデータを利用できなくなったり、回収できなくなったりする。したがって、資産保全の観点では、サービス停止時に契約顧客のデータを保全する契約内容が妥当かを検討する。公式解答例も「サービス停止時の契約顧客のデータ保全に関する契約」を挙げているため、サービス停止の原因そのものではなく、停止後のデータ保全を答える。
設問1(2)
利用開始後もCSPの事業継続性は変化し得るため、契約中のCSPだけでなく、競合CSPへの乗換え可能性を判断できる情報を定期的に確認する。公式解答例では、契約中及び競合CSPの経営状況、経営方針の変化、契約顧客数の増減を挙げている。これらを確認し、サービス継続の見込みや、万一の他CSPへの移行判断につなげる。
設問2
B社は、システム資源ごとの追加回数に制限があることだけを理由に要求仕様を満たさないと評価している。しかし、上限を評価するには、資源を一度にどれだけ追加できるかという追加単位も確認しなければ、実際の拡張性を判断できない。公式解答例は「システム資源の追加単位」です。
設問3(1)
各CSPで稼働率の算出項目と対象期間が異なり、検討報告書にも分析方法の記載がないため、同じ基準で比較・評価されたか確認できない。したがって、表面上の稼働率の数値だけでは評価結果の妥当性を判断できず、公式解答例のいう「共通の基準で比較及び評価されなかった可能性」が生じる。
設問3(2)
可用性の評価が妥当でなければ、実際のサービス稼働率がM社の想定を下回る可能性がある。その結果、SaaSを利用する業務が停止・遅延する。公式解答例は、想定した稼働率を下回り、業務が遅延する可能性を影響として示している。30字以内なので、原因の説明を広げず、稼働率低下と業務遅延を簡潔に押さえる。
設問4
B社はデータ暗号化機能が有料オプションであるため、項番6だけでは要求仕様を満たさないとされた。しかし、SaaS利用によって得られる別のコストメリットと合算して比較しなければ、総合的な費用対効果は判断できない。公式解答例では、データ暗号化機能オプションの追加コストと、ユーザライセンス料のボリュームディスカウントを比較する。採点講評でも、B社に関する設問として、他のCSPの評価項目ではなく、B社のSaaS利用による総合コストメリットを比較することが求められている。
学習のポイント
クラウド特有の依存リスクを、契約・比較基準・業務影響の観点で具体化する力を身につける。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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