AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ
平成23年度特別 システム監査技術者 午後Ⅰ 問2
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題




解き方のヒントを見る
監査の目的と証拠の対応を確かめる
開発プロジェクトの監査では、確かめたい事項ごとに、どの記録や資料を根拠として何を確認するのかを意識することが大切です。問題で問われている監査上の関心事と、手続や勧告が結び付いているかという一つの観点から検討してみましょう。
この問題で問われていること
設問が監査のどの局面を扱っているかを押さえたうえで、その局面で監査人が確かめたい事項は何か、それを裏付ける証拠として何が適切か、そして改善を促す際に誰が何をすべきかを、監査人の立場から整理できているかを確かめてください。
視点
監査手続は、監査の目的(何を確かめたいか)と、その判断を支える証拠(何を見て確かめるか)の組合せとして考えると整理しやすくなります。改善勧告も同様に、発見された事実と、それを改善すべき立場の関係者とを結び付けて考えます。どの局面の話であっても、この『目的・証拠・勧告の対応関係』が筋の通ったものになっているかを、自分で一度言葉にしてから問題に向き合うと判断がぶれにくくなります。
確認ポイント
- 設問が監査人に何を確かめさせようとしているのか、その目的を自分の言葉で言い表せるか
- その目的を確かめるために、どのような記録や資料が裏付けとして役立つかを考えたか
- 改善を促す場面で、監査人自身の役割と、プロジェクト側の関係者が担う役割を区別して考えたか
正解と解説を見る
解説
C社の財務管理支援システム開発は、詳細設計とコーディング・単体テストで大幅に遅れ、6か月の遅延とコスト増加を招きました。本問は、この開発プロジェクトの進捗管理を監査する事例です。表1の監査手続は、進捗管理表のサンプリング、報告資料が提出されたかの確認、判定基準があるかの確認にとどまっています。そのため、進捗の推移や報告の網羅性、報告内容の適切性、終了判定の実効性は確かめられていません。公式解答例では、一定期間の進捗管理表をすべてレビューすること、進捗管理表と報告資料を突き合わせること、プロジェクト開始時に基準を定めて成果物で判定することを示しています。
問題の全体像
C社は財務管理支援システムの開発をJ社に委託しました。当初は1年5か月で稼働する計画でしたが、詳細設計工程とコーディング・単体テスト工程で作業が大幅に遅れ、工数も増えたため、6か月のスケジュール遅延とコスト増加が生じました。監査部は進捗管理に重点を置いて監査しましたが、〔監査結果〕の判断はどれも形式的な確認に基づいています。(1)は進捗管理表をサンプリングで見ただけ、(2)は報告資料が提出されたことを見ただけです。(3)は判定の約1か月前に作った基準と、担当者の完了報告だけに基づく判定を問題にしていません。公式解答例の出題趣旨によると、本問のねらいは、進捗管理を評価・検証するための監査ポイントの知識と、それに即した監査手続を適切に立案する能力です。採点講評では、全体として正答率は低かったとしています。
設問1(分からないこと)
着目点は、表1の項番①です。監査ポイントは「プロジェクトリーダは,スケジュール遅延を把握し,適切に対応していたか。」ですが、監査手続は「進捗管理表をサンプリングによって抽出して確かめる。」だけです。図2の進捗管理表は週単位で作られ、備考には「基本設計書の内容の再確認に時間が掛かり,作業が遅延」とあります。しかし、抽出した数週分を見ても、遅延が毎週漏れなく報告されていたかは分かりません。講じた対応でその後の遅れが収まったかどうかも分かりません。採点講評でも「進捗の推移や報告の網羅性が把握できないことに気づいてほしかった」としています。公式解答例では、分からないことを「遅延が進捗会議で網羅的に報告されていたか」と「対応が有効であったか」の2点としています。40字以内の答案では、この2要素(報告の網羅性と対応の有効性)を入れることが大切です。
設問1(監査手続)
サンプリングの限界は、時系列の推移と網羅性を確かめられないことでした。これを補うには、一部を抽出するのではなく、一定の期間を連続して全件確認する必要があります。公式解答例では「プロジェクトの一定期間を通して進捗管理表をすべてレビューする」としています。こうすれば、遅延が最初に報告された時期、その後の報告の継続、対応後の進捗の回復を追えます。答案では「対象期間を通して」「進捗管理表を全件(すべて)」「レビューする」の3要素を40字以内に収めます。採点講評でも、サンプリングは広く用いられる一方、進捗管理表によって進捗管理を検証する場合のように、適用には限界があると述べています。
設問2(監査ポイント)
表1の項番②の監査ポイントは、報告が適時だったか、大幅な遅延のときに速やかに報告したかという、報告のタイミングを問うものです。〔監査結果〕(2)でも、報告資料が「各工程終了時にすべて提出されており」、進捗状況が報告されていたことだけで問題なしと判断しています。これでは、報告の中身が適切だったか、つまり遅延の事実を隠さずに伝え、対応策も示していたかを確かめていません。公式解答例では、追加すべき監査ポイントを「報告資料に遅延の事実及びその対応策が適切に記載されていたか」としています。採点講評では、監査ポイントを「システム監査人が確かめるべき要点(システム監査人が証明する事柄)」と説明し、監査ポイントの記述になっていない解答が散見されたと指摘しています。答案は「〜が…されていたか」という、確かめる事柄の形で書くことが重要です。
設問2(監査手続)
報告内容が適切かどうかを確かめるには、報告資料だけを読んでも不十分です。現場の実態を記録した資料と照らし合わせる必要があります。本文で実態を示す資料は、毎週の進捗会議で使われた図2の進捗管理表です。公式解答例では「進捗管理表と報告資料を突き合わせ,進捗遅れや重要な課題の報告内容を確かめる」としています。採点講評では、監査手続を「監査ポイントを確かめるために,どのような資料などを用い,どのような方法によって評価し,検証するかという方法論」と説明しています。答案には、用いる資料(進捗管理表と報告資料)、方法(突き合わせ)、確かめる対象(進捗遅れや重要課題の報告内容)の3点を入れます。
設問3
〔監査結果〕(3)には問題が2つあります。一つ目は、終了判定基準が「当該工程の終了判定の約1か月前に作成されていた」ことです。工程の状況を見てから基準を作ると、実態に合わせて基準を甘くでき、判定が形だけになるおそれがあります。二つ目は、終了判定資料が「J社業務アプリケーションチームの担当者の完了報告だけに基づいて,Y氏とZ氏が作成していた」ことです。〔開発プロジェクトの概要〕(4)でも、コーディング・単体テスト工程の終了判定は「J社のテスト実施者の完了報告をもって,X氏が行った」とあり、成果物を確認していません。公式解答例では、改善勧告を「プロジェクト開始時に終了判定基準を定め,成果物によって終了判定を行う」としています。採点講評では「判定基準を定める時期及び判定根拠の2つ」を正しく押さえた解答が多くなかったとしています。40字以内の答案に、基準を定める時期(プロジェクト開始時・事前)と判定根拠(成果物)の両方を入れることが大切です。
学習のポイント
監査ポイント(何を確かめるか)と監査手続(どの資料をどう検証するか)を区別して書けるようにします。サンプリングで分かることの限界、報告の形式面と内容面の違い、終了判定を形だけにしないための要件(基準を定める時期と判定根拠)を押さえることが重点です。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度特別 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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