AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成21年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 ERPパッケージの監査に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 Z社は,日用品の卸売業者であり,財務管理,購買管理,会計などの業務システムをERPパッケージで再構築した。 【ERPパッケージの概要】 Z社が導入したERPパッケージ及び周辺システムの構成は,図のとおりである。 図 ERPパッケージ及び周辺システムの構成 (1) OS及びDBには,汎用の製品が採用されている。DBへのアクセスは,初期インストールのときを除いて,DB用IDを使用しなくてもよいようになっている。 (2) 財務管理,購買管理,会計などの業務システムは,ミドルウェアを経由して,マスタファイル及びトランザクションファイルを共有している。利用者は,ユーザIDを使用して業務システムにアクセスする。 (3) ミドルウェアの主な役割は,業務システムが基盤のアーキテクチャに依存しないで処理できるようにすることである。また,業務システムの安定運用を支援するための機能やセキュリティのレベルを設定する機能として,例えば,次のような機能が搭載されている。 ・パスワードの最少けた数の設定機能 ・多重ログイン(同一ユーザIDによる同時・複数のログイン)禁止の設定機能 ・業務システムへのアクセス,ログインの失敗,マスタデータの変更などにおけるログ採取の設定機能 (4) ERPパッケージの管理者用の機能を使用するためには,専用の管理者用ID(以下,管理者用IDという)が必要である。管理者用IDは,情報システム部のシステム管理担当者(以下,担当者という)3名だけが使用を許可されている。管理者用IDは,1ライセンス(1ユーザ)の契約で使用している。同時に1ユーザしか使用できないので,3名の担当者は,パスワードを共有している。パスワードは,暗号化してファイルサーバのフォルダに保存されている。そのフォルダには担当者以外はアクセスできないように制限されている。 (5) ERPパッケージのDBには,各種設定ファイルのほかに,商品マスタや取引先マスタなどのマスタファイルと,仕入実績などのトランザクションファイルがある。 〔周辺システムとの連携〕 販売管理システムは,ERPパッケージとは別に構築・運用されている。ERPパッケージは,販売管理システムから日次で売上実績データを受け取る。受け取った売上実績データは,会計システムに自動連携され,店舗別,商品分類別に集計される。 人事システムは,ERPパッケージとは別のシステムであり,人事システムからERPパッケージに,異動データが送られる。異動データには,所属部署及び役職の情報が含まれており,所属部署と役職に応じた利用権限が,ユーザIDに自動的に設定される。ただし,この権限については,異動データで自動削除されないようになっている。その理由は,人事異動などに伴う業務引継期間中に元の部署の権限が使用できなくなると,業務に支障を来すからである。業務の引継ぎが完了したら,異動者は元の部署の権限を削除してもらうための申請を速やかに提出し,担当者が申請に従って管理者用画面で削除する。 管理者用画面で権限が付与された場合には,ミドルウェアの機能によってログが採取される。 〔システム監査の実施〕 監査部では,Z社のビジネスの中核を担うERPパッケージを対象としたシステム監査を,毎年実施している。既に,業務面や機能面の監査は実施しているので,今年度は,アクセス管理及びバックアップリカバリの適切性を確認するシステム監査を実施することになった。担当するのは,監査部のT氏である。 (1) アクセス管理の状況 T氏は,アクセス管理に関するリスク及びコントロールを表1のようにまとめた。 表1 アクセス管理に関するリスク及びコントロール(抜粋) (2) バックアップリカバリの状況 ERPパッケージには標準で,データのバックアップのスケジュール管理機能が備わっている。担当者は,管理者用画面を使用して,バックアップの実行スケジュール,バックアップデータの記録装置,バックアップの種類(全件か差分か)などを設定する。T氏は,アクセス管理と同様に,バックアップリカバリについても,リスク及びコントロールを抽出して表2のようにまとめた。 項番①のコントロールについて,管理者用画面を確認し,バックアップデータが日次で取得されていることを確かめた。また,取得されたバックアップデータはすべて外部の保管業者に週次で送付し,保管していることを確認した。さらに,バックアップ媒体が読取り可能かどうかを定期的に確認していることを確かめた。 項番②のコントロールについて,障害発生時のリカバリ手順及びリカバリ訓練の実施記録を閲覧し,問題がないことを確認した。しかし,災害発生時のリカバリについては手順書が作成されていないので,ERPパッケージのDBのバックアップが取得されていてもリカバリできないリスクがあると考えた。そこで,コントロール項目を追加して,更に詳しい調査を行うことにした。 表2 バックアップリカバリに関するリスク及びコントロール(抜粋) 設問1 〔ERPパッケージの概要〕の(4)について,管理者用IDのライセンス契約に違反していないことを確認するための監査手続を,45字以内で述べよ。 設問2 表1中の項番①のコントロールが有効でも,リスクが十分に軽減されているとは言えない。T氏が本調査で更に確認すべきコントロールを,40字以内で述べよ。 設問3 表1中の[a]に入れるリスクを,40字以内で述べよ。また,異動者の申請による削除よりも確実にリスクを低減できるコントロールを,45字以内で述べよ。 設問4 表2中の項番②について,災害が発生したときのリスクに対して追加すべきコントロールを,45字以内で述べよ。
図 ERPパッケージ及び周辺システムの構成。販売管理・人事システムからERPパッケージへデータが連携され,ミドルウェアを介して業務システム,DB,ファイル,OSが構成される関係図。
図 ERPパッケージ及び周辺システムの構成。販売管理・人事システムからERPパッケージへデータが連携され,ミドルウェアを介して業務システム,DB,ファイル,OSが構成される関係図。
表1 アクセス管理に関するリスク及びコントロール(抜粋)。DBへの直接ログイン,ユーザIDの不正利用や権限設定などのアクセス管理リスクと,パスワード変更,ログ監視,権限リスト確認などの統制を整理した表。
表1 アクセス管理に関するリスク及びコントロール(抜粋)。DBへの直接ログイン,ユーザIDの不正利用や権限設定などのアクセス管理リスクと,パスワード変更,ログ監視,権限リスト確認などの統制を整理した表。
表2 バックアップリカバリに関するリスク及びコントロール(抜粋)。障害時や災害時にバックアップから復旧できないリスクと,媒体確認,処理監視,手順書作成,訓練などの統制を整理した表。
表2 バックアップリカバリに関するリスク及びコントロール(抜粋)。障害時や災害時にバックアップから復旧できないリスクと,媒体確認,処理監視,手順書作成,訓練などの統制を整理した表。
解き方のヒントを見る

アクセス管理と復旧統制の確認視点

ERPパッケージの利用権限とバックアップ・復旧に関する記述を、役割分担と継続運用の観点から整理し、管理策同士の関係と確認の順序を丁寧に考え、見落としを防ぎましょう。

この問題で問われていること

一つの管理策だけで判断せず、平常時のアクセス制御と障害時の復旧準備が、責任者・手順・検証方法まで整合しているかという観点に集中し、全体のつながりを確認しましょう。

視点

アクセス管理とバックアップ・リカバリ統制は、個別の機能名や設定値ではなく、誰が何を管理し、異常時にどのように業務を再開するかという統制のつながりで整理します。

確認ポイント

  • 利用者の権限付与・変更・削除を、責任と承認の流れで確認する
  • 保全したデータを必要時に使える状態へ戻す準備を確認する
  • 平常時の管理と障害時の対応が、手順・記録・検証で結び付いているか確認する
正解と解説を見る

解説

ERPパッケージの監査では、標準機能があることだけで安心せず、IDの共有、権限削除の遅れ、周辺システムとのデータ連携などによって生じる残存リスクを見抜くことが重要です。

問題の全体像

Z社は財務管理・購買管理・会計などをERPパッケージで統合し、販売管理システムや人事システムとも連携している。T氏はアクセス管理とバックアップリカバリを監査する。出題の狙いは、ERPの標準機能を表面的に評価するのではなく、管理者IDの利用制限、DBへの直接アクセス、異動後の権限残存、連携元データのバックアップ不足といった利用環境固有のリスクを把握し、適切な監査手続や追加コントロールを示すことです。

設問1

管理者用IDは1ライセンスで、同時には1ユーザしか使用できないため、3名の担当者がパスワードを共有している。したがって、契約違反の有無を確認するには、実際に複数人が同時利用できない設定になっているかを調べる必要がある。公式解答例では、ミドルウェア上で多重ログインが禁止されていることを設定画面で目視確認する手続を示している。単に担当者数やパスワード保管方法を確認するのではなく、ライセンス条件に対応する設定を確認する点が重要です。

設問2

DB用IDのパスワードを初期インストール後に変更していても、パスワードを知る人が多ければ、ERPを経由しないDBへの直接ログインによる改ざんや破壊を防げない。公式解答例では、DB用IDのパスワードを必要最小限の担当者しか知らないように管理していることを追加確認する。パスワード変更の実施だけでなく、秘密情報の知得者を限定する運用管理まで見るのがポイントです。

設問3(リスク)

人事異動データでは旧部署の権限が自動削除されず、引継ぎ完了後に異動者が申請して削除する運用になっている。申請を忘れたり遅らせたりすると、引継期間を過ぎても元の部署の権限を使い続けられる。公式解答例は、この削除申請漏れによって異動者の権限が残存し、継続利用されるリスクを示している。

設問3(コントロール)

申請を待つ方式では、本人の失念や手続遅延を防げない。そこで、異動者の旧所属部署の権限に有効期限を設定し、期限延長が必要な場合だけ申請させる仕組みにする。公式解答例も、旧権限に期限を設定し、延長には申請を必要とする手続を示している。自動的に失効させることで、申請漏れによる権限残存をより確実に抑えられる。

設問4

ERPのDBをバックアップしていても、販売管理システムから日次で受け渡される売上実績データの元データまで復旧できるとは限らない。災害時にはERPだけでなく、連携元の販売管理システムにある重要データも必要になる。公式解答例では、販売管理システムから受け渡される売上実績データを日次で外部保管するコントロールを追加する。バックアップ対象をERP内部のDBだけに限定せず、復旧に必要な周辺システムのデータまで確認することが要点です。

学習のポイント

問題文の運用事実から、既存コントロールでは抑えきれないリスクと追加対策を対応付ける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針