STITストラテジスト試験 午後Ⅱ

令和6年度春期 ITストラテジスト 午後Ⅱ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 新しいビジネスモデルの策定について 今日,IT ストラテジストは,事業部門とともに事業戦略に基づき,新しいビジネスモデルを策定することが求められている。新しいビジネスモデルの策定では,顧客,提供価値とそれを具現化する製品やサービス,収益の獲得方法を定義する必要がある。 IT ストラテジストは,新しいビジネスモデルを策定する際には,IT で次のようなことを新たに実現できないか検討することが重要である。 ・IT で新たな顧客接点や魅力的な顧客体験(CX)を実現できないか。 ・IT で製品やサービスの新しい価値を提供できないか。 ・IT で低コストなオペレーションを実現し,収益に貢献できないか。 例えば,新たな収益源を検討していた和服メーカーでは,建設会社や介護施設などの新規顧客の獲得を目指し,作業者や高齢者の健康を見守る,利用料金定額制の新しいビジネスモデルを企画した。このビジネスモデルでは,IoT とクラウドサービスを活用し,銀などの導電繊維を織り込んだ衣服を着るだけで,体温や心拍数を収集して,熱中症などを監視する新しい価値を提供している。 新しいビジネスモデルが事業化される際には,事業環境の変化によって,顧客数や業務量,アクセス数やデータ量などの IT の要件が,当初の要件とかい離することがある。IT ストラテジストは,このようなかい離を想定して,拡張や縮退のできる IT の採用,地域や顧客層を限定した段階的な立ち上げなどを検討し,IT の投資費用とともに,事業部門へ提案する。そして事業部門からの評価を受け,提案の改善を行う。 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。 設問ア あなたが携わった新しいビジネスモデルの策定について,背景にある事業概要と事業戦略を,事業特性とともに800字以内で述べよ。 設問イ 設問アで述べた事業戦略に基づき,あなたはどのような新しいビジネスモデルを策定したか,顧客,提供価値とそれを具現化する製品やサービス,収益の獲得方法,IT で新たに実現したことを,800字以上1、600字以内で具体的に述べよ。 設問ウ 設問イで述べた新しいビジネスモデルが事業化される際の,あなたが想定した,当初の要件とのかい離は何か,提案した内容と事業部門の評価,事業部門の評価を受けて改善したこととともに,600字以上1、200字以内で具体的に述べよ。
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事業の目的と判断の前提をそろえる

まず、何を実現したいのかという目的と、判断の土台になる前提を分けて整理しましょう。そのうえで、考察の途中で目的や前提がすり替わっていないかを確かめると、検討の筋道を保ちやすくなります。

この問題で問われていること

検討の焦点は、目的と前提の一貫性です。示された情報から確認できることと、自分で補った想定を区別しておきましょう。結論を急がず、途中の判断も同じ目的と前提に基づいているかを振り返ってください。

視点

目的は検討の方向を定め、前提は判断が成り立つ範囲を定めます。自分で補った想定は、与えられた情報と混同せず、検討を通じて同じ前提を使っているか確認しましょう。

確認ポイント

  • 検討の途中で、当初の目的を別の目的に置き換えていないか。
  • 判断の前提に、自分で補った想定が紛れ込んでいないか。
  • 途中の判断にも、最初に整理した前提を一貫して使っているか。
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解説

本問は、事業戦略に基づく新しいビジネスモデルについて、顧客、提供価値、収益の獲得方法とITによる実現内容を具体化し、事業化時に想定する要件のかい離への提案、事業部門の評価、改善までを一貫して論述する問題です。

問題の全体像

本問は、ITストラテジストが事業部門とともに、事業戦略に基づく新しいビジネスモデルを策定する場面を扱います。問題文の和服メーカーは、建設会社や介護施設を新規顧客として、衣服から収集する体温や心拍数による健康の見守りを提供し、定額の利用料金で収益を得る例です。顧客、提供価値、製品やサービス、収益の獲得方法とITの役割を結び付けて読むことが重要です。この事例を答案の題材にする指定ではなく、自身の経験と考えに基づく論述が求められています。添付の問2の公式資料は解答例ではなく出題趣旨です。出題趣旨では、ビジネスモデルの意義と実現性を考える能力、ITの革新による影響を分析・予測し、対策を助言する能力などを評価するとしています。採点講評では、新サービスや新システムの導入説明にとどまる論述、経験がうかがえない具体性の乏しい論述、実現可能性の検討が不足する論述を指摘しています。設問アの背景と戦略、設問イの事業の仕組み、設問ウの事業化に向けた提案と改善を、一つの筋道で説明しましょう。

設問ア

着目するのは、設問の「背景にある事業概要と事業戦略」「事業特性」という指定です。800字以内で、どのような事業を行っているか、その事業にはどのような特性や課題があり、なぜ新しいビジネスモデルが必要になったかを説明します。事業概要は、主な顧客、製品やサービス、現在の収益の仕組みなど、後続の設問を理解するために必要な情報に絞ります。事業特性は、顧客の利用形態、需要の変動、販売やサービス提供の特徴などから、事業戦略に関係するものを選びます。その上で、背景の課題と、新規顧客の獲得や新たな収益源の確保などの戦略を結び付け、自分が策定にどう関わったかを示します。採点講評の全問共通の指摘では、論述対象の概要が適切に記述されていないものや、本文との整合性が取れないものが見られたとされています。したがって、企業紹介を長く書くのではなく、設問イで述べるビジネスモデルを必要とする背景が伝わる粒度でまとめることが大切です。

設問イ

着目するのは、設問アの事業戦略に基づき、「顧客」「提供価値とそれを具現化する製品やサービス」「収益の獲得方法」「ITで新たに実現したこと」を具体的に述べるという指定です。800字以上1、600字以内で、対象顧客が抱える課題、提供する価値、その価値を届ける製品やサービス、誰から何の対価を得るか、ITによって可能になった仕組みをつなげて説明します。問題文が挙げる新たな顧客接点やCX、新しい価値、低コストなオペレーションは、ITの役割を検討する観点です。これらを単に列挙せず、自分のビジネスモデルでどの観点が重要だったかを明らかにします。和服メーカーの例では、衣服によるデータ収集とクラウドの活用が健康の見守りという価値を実現し、そのサービスに対して定額料金を得る関係が示されています。自身の答案でも、このようにITの機能と顧客価値、収益の関係を説明することが必要です。採点講評では、ビジネスモデルの概念を理解せず、新サービス導入や新システム導入の論述になっているものを指摘しています。技術や機能の説明だけで終えず、事業部門と何を検討し、どのような理由でその仕組みを策定したかを、自身の経験に即して述べましょう。実現可能性についても、価値の提供方法と収益の獲得方法が事業として成立する理由を、題材に応じて具体化することが重要です。

設問ウ

着目するのは、問題文の「事業環境の変化」によって顧客数、業務量、アクセス数、データ量などのIT要件が当初と「かい離することがある」という説明と、設問が求める提案・評価・改善の流れです。600字以上1、200字以内で、①想定した当初の要件とのかい離、②事業部門に提案した内容、③事業部門の評価、④その評価を受けて改善したことを、因果関係が分かるようにまとめます。かい離は「利用者が増える可能性がある」だけでは不十分です。当初の前提、前提が変わる事業上の理由、変化する要件、事業やITへの影響を示します。設問は想定したかい離を尋ねているので、実際に起きた事象として書く必要はありません。提案については、問題文が示す拡張や縮退のできるITの採用、地域や顧客層を限定した段階的な立ち上げなどを参考に、自身の想定に対応する内容とITの投資費用を説明します。事業部門の評価は、費用、収益、開始時期、事業拡大への対応など、何をどの理由で評価したかを具体化します。改善では、その評価を受けて提案のどこをどう変更したかを示し、要件のかい離への対応と事業上の実現性がどう高まったかを説明します。出題趣旨では、影響を分析・予測し、対策を助言する能力を評価するとしており、採点講評では実現可能性の検討不足が指摘されています。「提案が了承された」で終えず、事業部門の評価を改善につなげた自身の判断を示すことが重要です。

学習のポイント

システムの導入内容だけでなく、ITが顧客価値と収益の仕組みをどう実現するかを説明し、事業化の実現性を事業部門と検討する視点を身に付けましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和6年度春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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