STITストラテジスト試験 午後Ⅰ
平成30年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問4
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題
解き方のヒントを見る
検討の前提をそろえて考える
製品企画や事業展開を考える際は、判断に使う前提を明確にすることが大切です。与えられた条件と、自分の経験や印象から補った想定を分け、同じ前提で検討しているかを意識して整理しましょう。
この問題で問われていること
注目するのは、判断の根拠にしている前提が、与えられた条件に沿っているかという点です。考えを進める途中で別の想定が入り込んでいないか、条件と自分の解釈の境目を確かめてみましょう。
視点
まず、考えの根拠にした条件を自分の言葉で短く整理しましょう。その際、明示されたことと自分で補った想定を区別しておくと、検討の途中で前提が変わっていないか確認しやすくなります。
確認ポイント
- 判断の前提を言葉にできているか
- 自分で補った想定を条件と混同していないか
- 考える途中で前提を変えていないか
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解説
国内市場の競争激化と新設需要の減少を踏まえ、海外の高層ビル需要を取り込む製品企画を考える問題です。利用者変動の予測による差別化と、早期投入に必要な設計を、将来の更新・保守収益につなげて理解します。
問題の全体像
R社は国内の低層・中層ビル向けエレベータを主力としてきましたが、安価な海外製品の参入と新規ビル建設の減少に直面しています。一方、新興国の都市部では高層ビルの建設予定が多く、待ち時間短縮への要求もあります。そこで、S社のビル管理システムや海外の工事・保守拠点、T社のAI技術を活用し、新機能を備えた製品で海外市場へ展開する計画を立てます。公式の出題趣旨では、市場状況から事業性を検討し、競争力の高い新機能と戦略的な事業展開を企画する能力を問うとしています。技術の説明だけでなく、新設のシェア獲得が長期の更新・保守収益につながる点を押さえることが重要です。
設問1(1)
着目するのは〔国内市場の動向〕です。海外メーカは安価な製品を投入し、国内メーカごとに異なる設置方法にも対応してシェアを伸ばしています。このため、R社は新設だけでなく、従来は自社が受注しやすかった更新工事でも競争にさらされます。また、新規ビルの建設数の減少は、新設とその後の更新・保守につながる需要を減らします。公式解答例では、20字以内の原因として「海外メーカが新規参入したから」と「新規ビルの建設数は減少傾向にあるから」を挙げています。採点講評では、原因ではなく単に実情を答えた解答が見られたとしています。「売上げが減っている」と言い換えるのではなく、その原因となる市場の変化を示します。
設問1(2)
〔海外市場の状況〕にある、新興国の都市部で高層ビルの建設予定が多く、集中した需要が見込まれるという調査結果に着目します。設問は「需要面の理由」を求めているので、ソフトウェア制御によって参入しやすくなったという技術面の事情とは区別します。公式解答例では「高層ビルの建設予定が多く、集中した需要が見込まれるから」としています。30字以内では、「高層ビルの建設予定が多いこと」と「需要が集中して見込まれること」を結び付けて示します。
設問2(1)
V氏の報告には、行き先階に応じた配車、利用者の変動予測、予防保全、地震時の制御が並んでいます。その中で公式解答例が挙げているのは、曜日、休日、時間、天気、周辺のイベントなどによる利用者の変動を予測する方法です。これらの条件と利用者の増減との関係を捉え、今後の利用者変動を予測する点がAIの活用に対応します。40字以内では「曜日・休日・時間・天気・周辺イベントによる利用者の変動を予測する。」のように、予測に用いる条件と予測対象を示します。「AIで待ち時間を短縮する」だけでは、具体的な実現方法が伝わりません。
設問2(2)
〔新機能の検討〕の冒頭にある、一度獲得した自社のシェアを守るため、他社との差別化を図った新機能を新製品にもたせるという方針に着目します。待ち時間短縮、利用できない期間の短縮、閉じ込め事故防止によって、安価な競合製品に対抗する価値を提供する戦略です。公式解答例では「自社製品には他社との差別化を図った機能をもたせる。」としています。30字以内では、製品の機能による差別化を明示します。採点講評では「通信インフラのリアルタイム性を調査する」など、競合への対抗戦略という題意から外れた解答が指摘されています。調査項目と競争戦略を区別することが必要です。
設問3(1)(目的)
本文冒頭のストック型ビジネスの説明に戻ります。更新工事のほとんどは設置したメーカが受注するため、新設時にシェアを獲得すれば、その後も長期間売上げを確保できます。海外では高層ビルの建設需要が見込まれるので、その新設需要を早く取り込むことが市場投入を急ぐ目的です。公式解答例では「新設のシェアを高めることによって長期間高い売上げを維持する。」としています。35字以内では、新設シェアの拡大という手段と、長期の売上げ維持という効果をつなげます。単に「早く販売する」「海外へ進出する」では、事業上の目的が十分に表れません。
設問3(1)(施策)
〔海外への事業展開計画〕の、AI機能の開発が遅れても後からソフトウェア更新することを前提に市場投入を急ぐという記述に着目します。先に販売して後から機能を追加するには、必要な連携手段や更新可能な設計を製品にあらかじめ備える必要があります。公式解答例では、施策として「S社2システムを対象とした通信ユニットを実装する。」と「ソフトウェア更新で機能追加できるように設計する。」を挙げています。それぞれ30字以内で表せる内容です。採点講評では、あらかじめ打つ施策という題意から外れた解答が多かったとしています。「後でソフトウェアを更新する」という将来の作業だけでなく、それを可能にする投入前の準備を答えることがポイントです。
設問3(2)
テナント会社の業務システムから従業員のスケジュール管理情報を取り込むという記述と、予定された外出や打合せの際に待ち時間を短縮してほしいという要求を結び付けます。利用予定が分かれば、利用者が呼び出す前に、その利用者の階へエレベータを移動させられます。公式解答例では「利用者の階へエレベータをあらかじめ移動させる。」としています。25字以内では、移動先が利用者の階であることと、利用前に移動させることを示します。「待ち時間を短縮する」は効果の説明なので、設問が求める具体的な動作まで書く必要があります。
学習のポイント
設問が求める原因・目的・施策・動作を区別し、本文の事実と事業上の効果を結び付けて字数内で表現する練習が重点です。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成30年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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