SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

令和6年度春期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 会員向けサービスに関わるシステム改善に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。 E社は,カードローン事業を全国に展開する大手消費者金融会社である。E社は,カードローンの契約を締結した顧客(以下,会員という)に各種サービス(以下,会員サービスという)を提供している。現在,会員の利便性向上と業務の効率化を目的として会員サービスに関わる業務及びシステムの改善を進めている。 〔E社のカードローンの概要〕 E社は,カードローンの申込みを受け付けると,審査を行い,契約を締結してカードを発行している。会員は,発行されたカードを利用して,契約した貸出枠(以下,限度額という)の範囲でATMを通じて資金を借りることができる。E社では,ATMでの貸付け以外に,インターネット経由で貸付けの申込みを受け付け,会員の預金口座へ振り込むサービスも提供している。 契約時の限度額は,本人確認書類,収入証明書,E社での借入額及び他社での借入額などの情報を基に決定される。限度額は,契約中に見直されることがある。具体的には,転職,転籍又は退職の理由で勤務先の変更があった場合や収入に大きな変動があった場合に,見直しが行われる。 E社では,貸付けのリスクと会員の情報を正確に評価するために,会員から提出された収入証明書に有効期限を設け,その有効期限が到来する3か月前に再提出を依頼している。 会員は,借入残高が0円となる(以下,完済という)まで,毎月の返済日(以下,約定返済日という)に口座振替で返済する。実際に口座から引き落としする日(以下,実約定日という)は,約定返済日から金融機関の営業日を基に決定する。口座から正常に引き落とすことができたかどうかを金融機関がE社に連携するまでには数営業日掛かる(以下,この期間を口振結果営業日数という)。また1年に2回まで,事前に決めた月(以下,ボーナス月という)に毎月の返済額に上乗せして返済することができる。会員は,口座情報,約定返済日,毎月の返済額,2回のボーナス月及びボーナス月の上乗せ金額(以下,約定条件という)を決め,契約する。 E社は,会員の返済計画をサポートするために,約定条件を柔軟に調整するサービスも提供している。ただし,毎月の返済額が利息より少なくならないように,またボーナス月の変更の際にはボーナス月が1年に3回以上とならないように調整している。 〔現在の会員サービスと関連システムの概要〕 E社の関連システムは,フロントシステム,審査システム及び基幹システムである。フロントシステムは,基幹システムと連携しており,基幹システムで管理している会員情報と契約情報を利用して会員サービスを提供している。審査システムは,限度額変更などの審査に利用する。 会員情報は,漢字氏名,カナ氏名,生年月日,電話番号,電話番号ステータス,メールアドレス,収入証明書有効期限,自宅住所及び勤務先情報である。電話番号ステータスの初期値は,“正常”としており,電話で会員に連絡した際に電話番号が無効であった場合に,“無効”に変更している。契約情報には,約定条件,契約商品,限度額,利率,契約ステータスなどが含まれる。契約ステータスは,“正常”と“解約”の二つの値があり,契約ステータスが“解約”の場合は,フロントシステムを利用できないようにしている。 基幹システムでは,金融機関に口座振替を依頼し,金融機関から口座振替の結果を受領した日に借入残高を更新している。口振結果営業日数は金融機関によって異なるので,基幹システムの金融機関マスターで管理している。 現在の会員サービスの概要は,次のとおりである。 (1) お知らせサービス 会員は,フロントシステムにログインすることで会員個々人のトップページ(以下,マイページという)を表示することができる。マイページには,会員個々人向けのメッセージ及び各種サービスを利用するためのメニューを表示している。 (2) 各種変更サービス 会員は,フロントシステムを利用して,電話番号,メールアドレス,自宅住所,勤務先情報及び約定条件を変更することができる。各種変更画面に入力された内容をフロントシステムから基幹システムに連携し,基幹システムは,入力された内容を精査して会員情報と契約情報を変更する。 勤務先情報には,勤務先名,勤務先住所,勤務先電話番号,入社年月などが含まれており,勤務先情報を変更する際には,変更する理由(以下,勤務先変更理由という)を確認している。勤務先変更理由には,転職,転籍,退職,転勤,会社の住所変更又は社名変更がある。E社では,勤務先情報の変更で再度審査して限度額を再設定する場合があるので,フロントシステムから基幹システムに連携された勤務先変更理由を事務部門で確認し,勤務先変更理由によっては審査システムに審査を依頼する。 約定条件の変更でボーナス月を変更する場合には,事務部門で変更内容を確認し,ボーナス月の反映日を調整している。 (3) 借入サービス 会員は,フロントシステムを利用して,金額を指定することで,口座振替先として登録している口座(以下,振替先口座という)に指定した金額を借り入れることができる。借入画面に入力された金額をフロントシステムから基幹システムに連携し,基幹システムは,入力された金額と契約情報を精査した上で振替先口座に送金する。 (4) 限度額の変更サービス 会員は,フロントシステムを利用して,限度額の変更を申し込むことができる。限度額の変更申込画面で,希望する限度額,年収及び他社借入額を入力し申し込む。申込みを受け付けた事務部門は,必要に応じて審査する。収入証明書が必要な場合は,会員に収入証明書を郵送で提出するように依頼している。収入証明書がE社に到着した後,事務部門が内容を確認し,審査システムに審査を依頼する。また,E社では,審査が完了した後に限度額変更に関する書類を会員へ郵送する。そこで,書類が確実に届くようにするために,事務部門が会員の現在の住所が変更されていないかどうかを電話で確認している。 (5) 各種情報照会サービス 会員は,フロントシステムを利用して,会員情報,契約情報,取引明細,返済予定表,借入残高及び契約変更履歴を確認することができる。フロントシステムは,基幹システムで管理している情報を取得し,各種情報照会画面にそれらの情報を表示する。各種情報照会画面には,実約定日も表示しており,会員は,次回の口座振替日を確認できる。 (6) 解約サービス 会員は,フロントシステムを利用して,カードローンの契約を解約することができる。解約画面に入力された内容をフロントシステムから基幹システムに連携し,基幹システムは,契約情報を精査した上で契約ステータスを“解約”に変更する。借入残高がある場合は解約を受け付けない。 (7) 問合せサービス 会員は,フロントシステムを利用して,問合せをすることができる。事務部門は,問合せの内容を確認し,会員情報のメールアドレスに電子メールで回答している。 (8) キャンペーンサービス キャンペーンの対象となる会員に事務部門から電話で連絡し,キャンペーンの内容を説明している。カードローンを申し込んだ後に会員が電話番号を変更して連絡が取れないこともある。 〔会員サービスに関わるシステム改善要望〕 関連部署から会員サービスに関わる,次のようなシステム改善要望が出された。 ・業務の効率化を目的として,事務部門が実施している作業をシステムで実施してほしい。 ・各種変更サービスで会員の姓の変更(以下,氏名変更という)を実施できるようにしてほしい。 ・フロントシステムで会員が収入証明書を提出できるようにしてほしい。 ・限度額の変更申込時に収入証明書を同時にアップロードできるようにしてほしい。 ・収入証明書の再提出が必要となる会員のマイページにメッセージを表示し,収入証明書の提出画面に誘導してほしい。 ・すぐに解約できない場合でも,解約サービスで解約を受け付けられるようにしてほしい。解約を受け付けた会員に対しては,キャンペーンは実施しないこととする。解約を受け付けた後,フロントシステムで解約の取消は受け付けないこととし,会員情報,契約情報の変更及び新規の貸付けもフロントシステムではできないようにしてほしい。 ・各種情報照会サービスで,口座振替に伴う次回の借入残高の更新日を計算して表示してほしい。 ・事務部門からの電話連絡を効率化するために,対応が必要な会員のマイページにメッセージを表示し,各種変更画面へ誘導してほしい。 〔システム改善の方針〕 E社情報システム部のF課長は,システム改善の方針を次のように検討した。 ・各種変更サービスと限度額の変更サービスで事務部門が実施している作業をシステム化する。 ・契約ステータスに“解約予約”の値を追加する。 ・契約ステータスの値の追加に伴い,会員サービスに関わる精査を基幹システムに追加する。 ・契約ステータスの値が“解約予約”の場合,①フロントシステムの一部の会員サービスだけ利用可能とする。 ・氏名変更は,フロントシステムから変更内容を基幹システムに直接連携せず,フロントシステムで氏名変更を受け付け,本人確認書類を事務部門で確認した後,基幹システムに登録する。 〔各システムの改善点〕 システム改善要望とシステム改善の方針を踏まえ,F課長は,フロントシステムと基幹システムの改善点を,次のように検討した。 (1) フロントシステムの改善点 ・各種変更画面で約定条件を変更する場合,②ボーナス月に関する変更内容をチェックし,あることを考慮してフロントシステムで反映日を導出し,基幹システムに連携する。 ・収入証明書をアップロードする機能を追加する。 ・限度額の変更申込画面に,ある内容を確認するための項目を追加する。また,限度額の変更申込時に収入証明書を同時にアップロードする機能を追加する。 ・各種情報照会サービスに口座振替に伴う次回の借入残高の更新日を導出して表示する。 ・③ある条件に該当する会員のマイページにメッセージを表示し,それぞれ対象の画面へ誘導する。 (2) 基幹システムの改善点 ・勤務先情報の変更時,④ある条件の場合には審査システムと連携する。 ・解約を受け付けた場合,契約ステータスを“解約予約”に変更する。 ・毎日の夜間のバッチ処理で⑤ある条件の会員の契約ステータスを“解約”に変更する。 設問1 〔会員サービスに関わるシステム改善要望〕について,口座振替に伴う会員の次回の借入残高の更新日を導出する方法を40字以内で答えよ。 設問2 〔システム改善の方針〕について,本文中の下線①で,利用可能とした会員サービスを全て答えよ。 設問3 〔各システムの改善点〕のフロントシステムの改善点について答えよ。 (1) 本文中の下線②について,どのようなことを考慮して反映日を導出するのか。40字以内で答えよ。 (2) 限度額の変更申込画面に項目を追加したのは,何を確認するためか。10字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線③について,マイページにメッセージを表示する条件が二つある。その条件を会員情報の属性を用いて,それぞれ25字以内で答えよ。 設問4 〔各システムの改善点〕の基幹システムの改善点について答えよ。 (1) 本文中の下線④について,どのような条件の場合に審査システムと連携するか。その条件を25字以内で答えよ。 (2) 本文中の下線⑤について,ある条件とはどのような条件か。30字以内で答えよ。
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条件が適用される範囲を確かめる

業務要件と処理条件を整理するときは、それぞれの条件がどこまで適用されるかに注目しましょう。条件の内容だけで判断せず、与えられた情報の中で、その適用範囲を確かめることが検討の出発点になります。

この問題で問われていること

検討の中心は、ある条件を、本来示されている範囲を超えて当てはめていないかという点です。適用範囲の根拠を与えられた情報に戻って確かめ、明示されたことと自分で補った前提を区別して考えましょう。

視点

条件は、内容を把握するだけでなく、適用範囲と合わせて捉えると整理しやすくなります。範囲がはっきりしない部分は、勝手に広げず、確認が必要な点として意識しておきましょう。

確認ポイント

  • 条件が適用される範囲を意識できているか
  • その範囲を与えられた情報で裏付けられるか
  • 自分の推測で適用範囲を広げていないか
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解説

現行業務の処理時点や制約を読み取り、改善要望を具体的なシステム機能へ落とし込む問題です。金融機関ごとの結果受領日、ボーナス月の回数制限、通知や審査の条件、解約予約から解約への遷移を正確に整理します。

問題の全体像

E社は、カードローン会員の利便性向上と事務部門の業務効率化を目的に、フロントシステムと基幹システムを改善します。事務部門が行っている確認や審査依頼のシステム化に加え、収入証明書の提出、メッセージ表示、解約予約などを設計する事例です。公式の出題趣旨では、現行業務を正しく理解し、改善要望から必要な機能を設計する能力を問うとされています。各設問では、現行の業務規則が改善後の機能や処理条件にどう引き継がれるかを読み取ります。

設問1

〔現在の会員サービスと関連システムの概要〕にある「口座振替の結果を受領した日に借入残高を更新」に着目します。実約定日は引落日であり、残高更新日は金融機関から結果が届く日です。その間の口振結果営業日数は金融機関ごとに異なり、金融機関マスターで管理されています。公式解答例では「次回の実約定日に振替先口座がある金融機関の口振結果営業日数を足す」としています。40字以内の答案では、起点となる次回の実約定日、対象金融機関、加算する口振結果営業日数を押さえます。日数は営業日として扱います。採点講評では、現行システムの残高更新のタイミングを十分に理解していない解答が指摘されています。

設問2

解約受付後は、会員情報・契約情報の変更と新規貸付けを禁止し、キャンペーンも実施しないという改善要望に着目します。また、解約の取消も受け付けません。この制約と各サービスの内容を照合すると、解約予約中でも必要なメッセージの確認、残高や返済予定などの照会、問合せは利用できます。公式解答例では「お知らせサービス、各種情報照会サービス、問合せサービス」の三つを挙げています。「全て」と問われているので、この三つをサービス名で漏れなく列挙します。

設問3(1)

〔E社のカードローンの概要〕にある「ボーナス月の変更の際にはボーナス月が1年に3回以上とならないように調整」に着目します。変更後のボーナス月を二つに設定しても、反映のタイミングによっては変更前と変更後のボーナス月が同じ年に重なり、年間の回数が増える可能性があります。そのため、反映日にも回数制限を適用します。公式解答例では、変更によってボーナス月が1年に3回以上とならないようにすることを示しています。40字以内では「ボーナス月の変更によって年間のボーナス月が3回以上にならないこと」という制約を中心にまとめます。

設問3(2)

〔現在の会員サービスと関連システムの概要〕の限度額の変更サービスでは、審査完了後の書類を確実に届けるため、事務部門が住所の変更有無を電話で確認しています。この確認作業をシステム化するため、申込画面に確認項目を追加します。公式解答例は「住所変更の有無」です。10字以内の答案では、この確認対象だけを簡潔に示します。収入証明書の同時アップロードは別の改善機能なので、追加項目の目的と混同しないことが大切です。

設問3(3)条件①

電話連絡を効率化するため、対応が必要な会員を各種変更画面へ誘導するという改善要望に着目します。会員情報の電話番号ステータスは、電話連絡の際に番号が無効だった場合に「無効」へ変更されます。この属性を使えば、電話番号の確認・変更が必要な会員を抽出できます。公式解答例は「電話番号ステータスが“無効”であること」です。25字以内では、属性名と判定する値を明示します。「電話がつながらない」といった状況説明だけでは、設問が指定する会員情報の属性を用いた条件になりません。

設問3(3)条件②

〔E社のカードローンの概要〕では、収入証明書の有効期限が到来する3か月前に再提出を依頼しています。改善要望では、この再提出が必要な会員にメッセージを表示し、提出画面へ誘導するとされています。したがって、会員情報の収入証明書有効期限を使って対象者を判定します。公式解答例は「収入証明書有効期限が3か月以内に到来すること」です。25字以内では、属性名と「3か月以内」という期間条件を押さえます。有効期限が切れてから通知する条件では、本文の再提出依頼の時期を満たせません。

設問4(1)

〔E社のカードローンの概要〕に、転職・転籍・退職による勤務先変更では限度額を見直すと記載されています。現行業務では、事務部門が勤務先変更理由を確認して審査を依頼するため、その判断を基幹システムの連携条件に置き換えます。公式解答例は「勤務先変更理由が、転職、転籍又は退職の場合」です。25字以内では、判断に使う勤務先変更理由と三つの理由を明示します。転勤、会社の住所変更、社名変更も本文の選択肢にありますが、公式解答例の条件には含まれません。採点講評では、事務部門の現行業務に関連しない解答が指摘されており、既存の判断規則を根拠にすることが重要です。

設問4(2)

改善後は、すぐに解約できない会員も解約を申し込めるようにし、受付時に契約ステータスを「解約予約」へ変更します。一方、現行の解約サービスでは借入残高がある場合に解約できないため、実際の解約には完済が必要です。公式解答例は「契約ステータスが“解約予約”で借入残高が0円であること」です。30字以内では、解約予約済みと残高0円の二条件を「かつ」の関係で示します。残高0円だけでは解約を希望していない契約まで対象となり、解約予約だけでは未完済の契約も対象となるため、両方の条件が必要です。

学習のポイント

業務記述から判断に使う属性・値・時点を抽出し、画面機能や連携条件、状態遷移へ対応付ける練習を重視します。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和6年度春期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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